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ヘタレな王とロリな騎士  作者: sin_crow
第一章 王と騎士は街に至った
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その3

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「わっふぅー!」


アイリスがベッドに飛び込んだ。


「お、王よ、このベッドふわふわだぞ! おひさまの香りだぞー!」

「はいはい」


こういうとこは見た目通りなんだよなぁ。

そのくせしてあの強さなんだから、ちょっとした詐欺だ。


「にしても王よー」


アイリスは、ベッドに俯して足をバタバタと打ちながら、俺をじっと見つめている。


「なんだ?」

「王はどうも——あまり良くない類の人間を惹きつけるようだな?」


そうなのだ、予定より上等の宿をとれたのも、予期せぬ収入——絡んできたものから巻き上げた金のおかげだった。


「凄い才よな。王よ、これで一財築けるやもしれぬぞ?」

「いいのか、俺がカツアゲで金稼ぐような王で」


冗談めかして言えば、それは困るな、とアイリスは眉を寄せた。


「しかし、その金を堂々と宿代に使うのだから、王も案外神経が図太くいらっしゃる」

「お前に言われたくない」


そう言ったものの、確かに昔よりは幾分が図太くなったかもしれないと思った。こいつの影響だろう、良くも悪くも。


「そもそも、お前が前の街で金を使い込んでなけりゃ、宿代も全部キレイな金で払えたんだがな」

「うっ……め、面目ない」


まぁ、本当に反省してるようだし、ここは許してやろう。金を手配する手間は省けたのだし。


「しかし、あの金を使ったのはまずかったか? 結構騒ぎになってそうだよな。お前の見かけはほら……目立つから」

「いや、問題あるまいよ」

「どうしてそう言い切れる?」


やけに自信満々なアイリスに怪しむような視線を送れば、ニヤリと笑った。


「何人もの男がこのような幼気な女子おなご一人に倒されたとあらば——面目が丸つぶれであろう?」

「うっわぁ……」


嫌な幼女ロリだ、これは嫌な幼女ロリだ。


「勿論、それはあやつらが相当な阿呆か、或いは裏に誰か強力なものがいない場合に……何だ王よ、引いた顔をされて。自らの容貌を自覚せよと言ったのは王なるぞ?」

「そうだけどさぁ」


危険性には自覚が及ばないくせに、見た目の利用価値には自覚あるのかよ。


「というか自覚するっていうなら、俺と別部屋にすべきだろ」

「む? 襲うのか?」

「襲うか馬鹿!」


何故そこで嬉しそうに跳ね起きる。

ならば構うまい、と再び倒れこむアイリスは、どこまで本気か分からない。


「しかし一応、別のベッドにしたぞ?」

「同じベッドで寝る気だったのかお前!?」

「いやそれも構わぬと……」

「少しは構え!」


本気だ、こいつ。全部本気だ。

俺は頭を抱えたくなった。


「それにしても、今日は疲れた……大会前に戦い過ぎだ」

「……悪かったな」

「はは、王のせいではあるまいよ」


フゥと柔らかい息を吐いて、アイリスは目を閉じた。


「この体は油断させるにはいいが、体力がなさすぎる……」


それだけ呟いて、眠りに沈んだようだった。規則正しい寝息だけが部屋に響く。本当に疲れていたのだろう。


「せめて布団くらいは被って寝ろよ」


掛けてやると、僅かに身じろぐ。こうしていれば、ただのあどけない子供だ。

あの強さなど、見る影も無い。


俺には、一つ疑問があった。


俺がこいつと一緒にいるのにはまぁ、納得できるだろう。もっとちゃんと理由もあるが、その強さだって一つではある。

だけど。


「何で、お前は俺なんか(﹅﹅﹅﹅)を選んだんだろうな」


当たり前に、返事は返ってこなかった。








そこは、暗い部屋だった。仄かに灯された数本の蝋燭が、その周りを少しばかり照らしていた。


「……それで? この週の分の上納金が足らないのは何故?」


まだ少年ともいえる年齢の声だ。しかしその声を発する相手に、大の男が何人もひれ伏していた。


「何さ、皆押し黙っちゃって。自白剤でも飲まされたいの? それとも、もっと強い毒の方がいい?」


ヒィと誰かが喉の奥をひりつかせるような悲鳴を上げた。

彼らは皆、自白剤を飲んだ奴らの末路をよく知っていた。


「た、旅人に盗られたんです!」


一人が言えば、続いてガクガクと頷く。


「旅人、ね。それって、どんな奴ら?」

「ひ、一人はひょろひょろの男で、もう一人は——」

「もう一人は?」

「半端なく強い、お、女のガキです」

「は?」


その少年としても、まるで予想していなかった答えだったろう。それきり黙り込んでしまう。


「そ、そいつら、変なこと言ってたんです! 」


沈黙に耐えかねて、男たちの一人が声を上げた。


「変なこと?」

「ぜ、前世がどうとか、ああ、お互いを王とかレヴァだとか呼び合ってて……」

「前世? 王? ……レヴァ?」


少年は一瞬黙ると、次の瞬間、


「あ——はははは! そうか、レヴァね。あの騎士が、この街に来たんだ、とうとう!」


と大きく笑い出した。男たちは思わずぽかんとそれを凝視してしまう。


「ならまぁ、負けたのも仕方ないや。今回はお咎め無しにしてあげる」

「あ、ありがとうございます!」


理由は分からないが、許されたことに安堵した男たちに、少年は続けた。


「その代わり、そいつらの情報を急ぎ集めて。どうせ彼らの目的は——」


と言葉を切って、自らの後方、闇の奥に目を向ける。


あれ(﹅﹅)だろうから」

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