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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高次元存在の調査開始

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微妙な雰囲気

 しばらく黙った後

「亜空間層の侵食ってなんですか?」

尋ねた直後に、目がかすみ、身体は震え出し、俺は強い吐き気でその場にしゃがみ込んだ。シーネがそんな俺を躊躇無く抱え上げると、真っ白な何もない空間へ向け、投げた。


 次の瞬間、辺りが黒い炎で燃え盛る森の様に見えると、その炎が別の世界から全ての事柄を照らしているのまでわかってしまう。自分でも考えていることに理解が追いつかないが、正しいのはわかる。俺はまるで光に導かれる虫のように宙を飛びながら、その炎の微かな裂け目を見つけ出し、両手を入れて左右にこじ開け出した。裂け目が広がるほどに快感が全身に広がっていく。もっと……もっと!開け!開いてしまえ!


 ある程度裂け目が広がり、俺が自然とその中へと入り込もうとすると、シーネから羽交い締めにされ元の白い世界と荒野の境目まで一気に引き戻され、更に押し倒されると、いきなりキスをされた。シーネは頬を染めながら、俺の体内から何かを大量に吸い取っていく。次第に身体が軽くなっていき、頭も正気に戻るとシーネは唇を離し

「……ふふーっ……美味しかったですねえ」

俺にまたがったまま、満足げに言った。

「……あの」

シーネが黙って横を見たので、寝転んだままそちらを見て驚く。白い世界の一部がまるで剥がれるように開き、その中から漆黒の森が姿を見せていた。


 シーネは俺の上から動かないまま

「ああ……成功しましたねえ……」

恍惚の表情を緑髪の女性に向ける。女性はぼやけた顔で頷くと

「追加したスキルを削除しました。現実世界で急ぎ、裂け目から入るべきでは?」

シーネは苦笑いすると

「少し面倒なことになっているのですよお……もう少しこのままで居たいのですが……」

そう言うと、また俺に覆い被さりキスをした。直後に意識が落ちる。



 ……



 周囲が騒がしい。

「ちょっと!シーネさん!ナランから離れて!」

リースの声で目を開けると、現実世界でもシーネに跨がられていた。リースが必死にシーネを退かそうとしているがビクともしない。

「あの……」

少し離れたミヤが言いにくそうに

「シーネさんが、寝ているナランにいきなり跨って……キスした……2回も」

「こっちでもか」

つい、そう漏らしてしまうと、リースが顔を真っ赤にしながら

「向こうでも同じことを!?精神世界でも!?」

完全に失言だった……。リースは完全に激怒してしまい、瞬時に槍を組み立てシーネに構える。シーネはヘラヘラ笑いながら

「減るものではありませんよーっ?」

何とリースを挑発してしまい、俺が慌てていると、とうとう槍の柄で殴りかかったリースを伸ばした右手であっさり受け止め、槍ごと、瘴気の壁にいつの間にか出来ていた大きな裂け目に投げ入れる。そして立ち上がり、俺の手を引き、ミヤの方を向き

「ミヤさんも行きましょうかあ。お姉さんも間に合ったようですし」

上空から超高速で降下してきたアンジェラを横目に俺を引っ張って、瘴気の裂け目へと入って行った。


 裂け目の中は、暗黒地帯東部と同じような漆黒の森だった。すぐにリースが俺に駆け寄ってきて、シーネから引き離す。シーネは上機嫌に微笑みながら八重歯を見せ

「王侯というのは、夫人を複数もてるのですよー?」

また挑発したが、リースは一度深呼吸した後

「……キスは何らかの儀式ですよね?すいません、驚いてしまって」

輝く王族スマイルをした後、俺を強く抱きしめ、唇を重ねてきた。


 しばらくリースは動かず、ようやく俺と顔を離すとまた王族スマイルしながら、薄ら笑いを浮かべるシーネに

「私の、ナランです」

そう言い切ると俺の右手を強く握る。シーネは何も答えず、薄ら笑いを浮かべたまま、ジッとこちらを見つめているのが怖い。どうにかしてくれえええ!と俺の心が悲鳴を上げ始めた直後、アンジェラとミヤが裂け目からようやく入って来た。


 ミヤが楽しげに

「さっきの動画、国に提出するって!」

この間と同じ格好のアンジェラはサングラスを外し

「シーネさん、良い?」

シーネは仕方なさそうにアンジェラの方を向くと

「私はですねえ、情報公開を支持する立場ですよ。それよりも今、リース姫とナランさんをめぐって女の戦いを繰り広げていたのですが」

何と不満げに抗議した。ミヤとアンジェラが唖然として、リースがまた俺に強く抱きつき、俺は慌てて

「あの!シーネさん!そろそろ冗談は止めにしましょう!真面目なリースをからかうのは良くないですって!?」

シーネは八重歯を見せてニカッと笑い

「リース姫、大変失礼をしました。ナランさんへのキスは全て、体内の瘴気を吸い取るためだったのです」

そう謝った後、リースに深く頭を下げ、そして俺を嬉しそうに見ると

「レッスンツー、クリアですよーっ。混乱した状況を収束させようと頭を使うのは良いことですー。さ、行きましょうか」

クルクル踊りながら、暗い森の中へと進み始めた。釈然としないが、とりあえずリースの手を引いて付いて行く。ミヤとアンジェラも小声で何か話しながら後ろから付いて来て、リースがポツリと

「あの人……ナランのこと本気で好きみたい」

「そ、そうかあ……?」

俺はそう答えるしかない。この微妙な雰囲気を誰か早く何とかして欲しい……。

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