切っちゃっていいですよー
神殿跡を出て、俺と手を繋ぎ、組み立て式槍を担いだ旅装のリース、そして遠足に行くようにリュックを背負った軽装のミヤ、そして薄笑いを浮かべるシーネと共に、俺達は廃墟群を侵食した山林を進んでいく。シーネは恐らく剣らしき、白布に包まれた何かを提げている。
高低差がかなり激しく、途中で大きめの川を渡る必要もあったがシーネがあっさり
「ストーンストロンガ」
そう唱えると、俺が以前サンズリバーに架けたものより広いアーチ式の石橋を作り出してしまう。
「ふふーっ……これから通る者達に便利ですからねえ」
などと言ってクルクルと踊るように先頭を歩くシーネの背中を見ながら、ミヤと共にずっと黙っているリースに
「……えっと……何かごめん」
謝ってしまうと、ミヤと共に噴き出して
「怒ってるんじゃなくて」
ミヤが笑いながら
「ナランのスキルを固定したってシーネさんから聞いたよね?」
「こっちのシーネさんも話してくれたのか……」
やはり精神世界と現実世界でシーネは別々に動いている様だ。リースは軽やかに前を進むシーネを見ながら
「その話を聞いた直後に一瞬、寝かされてたナランの身体が光ったから、少し心配してただけ」
「なんもなさそーで良かったー」
能天気にミヤがそう言うと、橋を渡り終えた。
更にシーネを先頭に1時間程歩いていくと、草木の無い平坦な廃墟が広がる街の跡らしき場所に出た。広大に逆三角に切り取られた夜の闇よりも黒い壁が空の上まで遮っている。シーネはピタッと立ち止まると、白布から真っ青な鞘に入った剣を取り出し、ノールックで俺に投げ渡してきた。
どうにか受け取ると、それはサナーが欲しがっていたあの彗星剣だった。シーネは振り向かず
「出てきなさーい!」
声を上げると、そこら中の廃墟から人の形をした影が無数ににじみ出てくる。シーネは前を向いたまま、俺の横まで後退すると
「……どうやらですねえ……暗黒地帯の支配者が東部を再統合しようとしてますねえー」
八重歯を見せて楽しげに笑う。そして
「場所の記憶を繰り返すですねえ、思念体を利用しているだけなのでー。切っちゃっていいですよー。精霊と女神の星の下、聖なる祈りを呼び覚ませ……ホーリーエンチャント!」
手元の彗星剣が鞘ごと光り始め、リースの背中の組み立て式槍も白く光り出した。ついでに、俺達の背後に隠れたミヤの全身も光っている。
「私も!?」
シーネは頷いて
「彗星剣は、鞘も武器として使えますねえ。二刀流でどうぞーっ」
そう言うと更に下がった。もうこれはやるしかないようだ。
無数の人影はゆっくりとこちらへと迫ってくる。俺が彗星剣を抜くよりも早く、背後から
「あちょーっ!」
ミヤが飛び蹴りで突っ込んでいき、腹の辺りに直撃した長身の人影が
「お……お、おおお……」
と慄きながら消えた。俺とリースも頷きあい、背中をかばい合いながら、瞬時に組み上がった光り輝く長槍と青く光りながら虹色の粒子を発する鞘、そして鈍く光る彗星剣を振りながら人影を斬ったり、突いたりしながら消し始める。




