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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
特定監視対象スキルの観察とデータ収集

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サンズリバー

 しばらく薄暗い河原で無言の時が続き、耐えきれなくなったサナーが

「あ、あの、ちょっとナランと相談してくる。お前ら待っとけ」

俺とリースの近くに駆け寄って来た。そして縋るような目付きで俺を見つめてきたので

「……河を凍らすか、飛んでいくかだろうな」

ローウェルが後ろから

「どっちも難しい。情報によると氷は極短時間しか持たないし、飛行は上空から魔法による狙撃がしつこく入るとのことだ。基本的にサンズリバーは船で渡るしか無い」

サナーが涙目で俺に縋りついて

「どっ……どうすんだよ……!」

リースが覚悟を決めた表情で

「こうなったら橋を作るしか無いわ」

と言ってきた。


 亡者達やスケルトンも交えた会議で、恐らく数キロメートル先の対岸へと橋をかけることが決まった。造るとしたら浮き橋を連結するしかないので、数キロメートル分の浮き橋を作る為の膨大な材木と、人足が必要だという話になる。サナーが涙目で

「作業者増やすために亡者と悪魔狩ってくる……」

提案してきたので、賛同したローウェルとアンジェラと他の亡者やフクガナハラ、スケルトン等とゾロゾロと来た道を戻っていった。


 残された俺とリースは浮き橋の設計……というか、リブラーにどうするか尋ねる役目で残された。新しく知り合った者達には当然リブラーの存在は秘密なので、こういう回りくどいことになるのは仕方ないと思う。

「リブラー」

唱えるといつもの声が


 サンズリバーの成分分析をしたところ、通常の河川の水に加え、多量の混沌粒子を検出しました。これは魔法などに使われる粒子で物質や事象の反応や形状変化等を物理法則外で行えるものです。空気中に混ざっている割合より多いので、混沌粒子を使い、この河の水自体の形状を強固に変化させれば、容易に渡ることができます。時限式のスキルの追加を行います。


 ”揺るぎない意志””無限の想像力””硬質化魔法の達人”スキルを追加しました。これらは目的達成後に削除されます。河を見つめ、ストーンストロン、橋よ現れよ、と唱えてください。


 言われている意味がほぼ分からなかったが、とりあえず流れ続ける大河を向き

「ストーンストロン!橋よ現れよ!」

と唱えると、瞬く間に河の水が一直線に固まっていき、向こう岸まで続く長い石橋が出現した。驚いていると、ちょうどサナー達が帰ってきた。どう見ても、引き連れている亡者の数が倍に増えている。アンジェラとフクガナハラ以外の悪魔……いや、ヒトは見当たらないので、そっちは増えてはいないようだ。


 自分のミスが帳消しになり、すっかり元気になったサナーがナズナと肩を組み、先頭で石の橋を渡っていく。その後を亡者達とスケルトンがガヤガヤと続き、ローウェル達と最後尾を歩いていくと、フクガナハラが

「すげえっすね。これ上級石化魔法ですよ。ナランさんが?」

「ええ、まあ……」

アンジェラが微笑みながら

「ナラン君は国も監視しているわ。私が彼の監視者でもあるの」

「ふえー……ってかアンジェラさん、あと五百名くらい社員いるんすけど、ナランさん居ればどうにかなりそうですね」

「そうね。ちなみに他メンバーも強力よ」

「お世話になります!」

この怖い暗黒地帯にあと五百人もヒトが居るのか……マジか……何となく悲観的な気持ちになりつつ、とにかく進んでいく。


 全員、無事に対岸の河原に渡り切ると、石の橋は突如崩れだし、大河に呑まれて消えた。ローウェルが

「あれだけの強度があって、これか」

腕を組んだアンジェラも冷製に

「形状記憶が強すぎて、困ったものね」

も、もしかしてギリギリだった……?ちょっと遅かったら河に流されてたとか……リブラー?お前、いつも大事なこと伝えないよな?……多分、わざとだよな?


 俺が橋があった痕跡など何処にもない大河を振り返り背筋が寒くなっていると

「ナラン!明かりが!」

リースが肩を叩いてきて前方を見ると、前方に広がる赤黒い荒野の先に伸びている山々の頂付近に、確かに明かりが見える。ローウェルが

「恐らくマシズ集落だな。亡者や、魅了が解けたヒト達が寄り集まっているはずだ」

アンジェラが

「とりあえず、あそこまでたどり着けば序盤は終わりってとこね」

「河は過ぎたし、飛んでいくとかダメなんですか?」

「不可能ではないけれど、地上での低速移動が安全だし、データ収集も大事だからね」

ローウェルが真顔で

「携帯端末で自動データ分析してるんだと」

リースが羨ましそうな顔をするがアンジェラは微笑みながら

「仕事だからね。あくまで業務の為よ」

「……良いなあ」

話しながら進んでいくと、前方を進む三十人以上の亡者達が騒ぎ始めた。ナズナが慌てて走って来ると

「サナーさんがお呼びです!」

そう言ってくる。


 ローウェル達と前方へ急いで行くと、遠くで数名の異様な殺気を放つ集団がこちらを眺めているのが見える。フクガナハラが

「あれ……トオノジビ係長だ……あとはフリーのヒガミンナカさんとホシノブルさん……」

アンジェラが取り出した手帳を素早くめくりながら

「……ベヒーモス、バラム、マヒシャか……土木責任者、測量士、特殊作業員ね。地上風に言うと」

3名はゆっくりとこちらへと向かって来ている。アンジェラは仲間を見回すと俺に

「ナラン君が良いわ。ちょうど相手も自分も大怪我しない強さだと思う」

「俺ですか……?」

ローウェルがニヤニヤしながら

「石刀スズナを使ってやれ」

更にサナーが嬉しそうに

「こんな時の為に亡者達に応援マナーと応援ソングを伝授しておいた!」

「う、うん」

また変な踊りと歌だろうな……一切期待は出来ない。荷物をサナーに預け、石刀スズナを右手に握り締めると前方へと進み出る。


 集団から10メートル程離れ、石刀を両手持ちして構えると、背後から

「お前を勇者がー!応援しているー!」

野太い声が響き、そして

「にゃん!にゃ!にゃん!にゃ!応援団!」

多少女性亡者も増えたがほぼ男性亡者による野太い合唱が聞こえてくると更に

「ポポンにゃん!ポポポンにゃん!」

結局、腹を打ち鳴らす音と共にいつものあれが聞こえてきて、もうサナーネタ切れかよ……バリエーションねえな……と脱力しながら振り返ると、亡者達とスケルトンが真剣な様子でポポンにゃんを唱えながらペチペチと腹を打ち鳴らしていた。中央では発案者のサナーまで真剣な様子で打ち鳴らしている。もう見なかった聞かなかったことにして、前を向き直る。


 近づいてきた3人のヒトは、ムキムキマッチョで紫の肌の上半身裸を晒し、割れた眼鏡をかけた七三分けの男と、ボロボロの作業着を着てボサボサの茶髪を腰まで伸ばした痩せた女、そしてぽっちゃりした小柄な同様の作業着姿の女だった。全員不気味な笑みが顔に貼り付いている。2本の紫の角も生やしているので間違いなくヒト族だ。


 俺は3人に脅威は感じなかった。緊張もせずに石刀を両手持ちしたまま突っ込み、先制攻撃を仕掛けた。ぽっちゃりした女の脇腹をあっさり打ち据え吹き飛ばし

「ガアアアアアアア!」

唸り声を上げて殴りかかってきた男を横にかわすと後頭部を正確に打ち据え、最後に取り出したナイフを二刀流して切りかかってきた痩せた女の背後にあっさり回り込み、背中を打ち据えた。


 気絶した3人が同時に荒野の土の上へと倒れ、亡者達から歓声が上がる。流石に上手くいき過ぎだ。俺如きがこんな格好良く、地上人より遥かに強い悪魔達に圧勝できるはずがない。絶対、リブラーが俺のスキルを勝手に入れ替えたか、そうでなければ、この石刀のスキル効果だろ……俺自身に何の才能も無いのは分かってるんだからな!騙されないぞ!等と考えていると、駆け寄って来たリースから抱きしめられ

「ナラン!ナラン!いつの間にそんな強くなったの!?すっっっごく!かっこよかった!」

興奮した様子で称賛される。

「そ、そうかな……あ、ありがとう……」

リースに言われるのは素直に嬉しいので受け取ることにした。


 その後、サナーとにゃんにゃん奴隷団による大げさな解呪が始まり、リースと遠巻きに眺めていると、何事もなく成功し、アンジェラはフクガナハラと共に、正気を取り戻した三人と離れて話しだした。

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