第14回 攻撃 (シスル視点)
「ご機嫌よう。皆さん。」
「よろしくお願いしますね。皆様!」
ジーンと、彼の腕に抱きつく、金髪の美少女、エイプリル・ブラインダー嬢。彼女はジーンの腕に抱きつきながら、満面の笑顔で周りを見渡している。
唖然としているのはソードフィッシュ家とそれにつらなる家々の人々だ。まず口を開いたのは義姉さんだ。
「ジ、ジーン様! 本日は突然エスコートを断ったと思ったら、これはどういう事ですか!?」
「あら? ソードフィッシュ家のお方ですね? はじめまして。私は、ジーン様の婚約者、エイプリルと申します。以後お見知りおきを」
義姉さんに対し、全く委縮せず、そう言って、にっこりと笑う彼女。その瞳の奥には、まるで獲物を狙う肉食獣の様なものがある。
「こ、婚約者!? 」
突然、訳の分からない事を言い出したエイプリル嬢。義姉さんは、訳が分からないといった顔で、婿殿を見ていた。
「いい機会だ。この場で宣言する。クローバー・ソードフィッシュ! 僕は貴様との婚約を破棄させてもらう。そして新たに、このエイプリル・ブラインダー嬢を婚約者にさせてもらう!」
勝ち誇ったような表情を浮かべて、義姉さんを見るエイプリル嬢。
「婚約破棄って……ジーン様、本気ですか?!」
義姉さんは困惑気味だ。一方の僕はというと、こんな都合の良い事が起こって良いものか、と、義姉さんとは逆の意味で困惑していた。
「ああ、勿論だとも。君の様な我の強い女より、彼女の方がずっと素敵だからね。エイプリルはいつも僕の事を気にかけてくれた。僕のために泣いてくれる事もあった。……君は、僕が浮気をしていると疑い、勝手に怒り、僕に暴力を振るってきた。」
「ちょっ、ちょっと待って! 貴方が浮気していたのは事実だし! 私、暴力なんて振るってないじゃない!」
「暴力自体は振るっただろ! 10歳の時! 顔面殴打合計22発! 僕が忘れたと思ってるのか?!」
「……あれは……ほんとごめん。やり過ぎた。でも、そもそもあれも最初に殴って来たのはジーン様だし! 最近は暴力なんて振るってない!」
「何を言うか!痴れ者め!そういうのを過剰防衛というのだ。また、お前はこのエイプリルにまで暴力をふるっただろ!お前みたいな悪竜の様な女とは、もう付き合いきれん!」
「だから、敵国人以外に、暴力なんてふるって無い!いい加減にして!」
捏造された主張に、流石に義姉さんは怒りを露わにした。
それを無視して、ジーンは、義姉さんの罪状とやらを並べ立てた。ほとんどがエイプリル嬢を虐めたなどという、捏造ばかりだった。彼女達は今日が初対面だ。いじめなんてしようがない。
が、何しろこの場にいるのは、ゴシップ大好きな貴族、王族連中である。このままでは、デマが拡散してしまうだろう。
どうしたものか、と、僕も困惑していると、いつの間にか、僕の後ろにヘリオトロープさんとピンギキュラさんの乳母姉コンビが立っていた。
「弟様。参戦するなら今ですよ」
「え? それはどういう……」
「……早くあの場に入って、妹様……クローバー様を助けてやれって言ってるんです。……向こうがいらないって言っているんです。拾うなら今ですよ」
そう言うと、ピンギキュラさんはウインクしながら僕に、数枚の写真と書類を握らせた。
「こちらには証拠があります。それに、あの男爵令嬢の事も色々調べときましたよ。色々と、ね!」
書類にざっくりと目を通す僕。確かに、そこにはいろいろと衝撃的な事が書かれていた。
これがあれば、義姉さんを救えるかもしれない。
「……ありがとうございます!有効に活用させてもらいます」
「お礼なら、私じゃなくて、アコちゃんとヘリオさんに言ってね。私は技術屋として、カメラを作って置いただけ。置き場を指示したのはアコちゃんだし、詳細な証拠はヘリオさんが集めてくれたから」
「可愛い乳母妹の為頑張りましたよ! さぁ、今度は弟様が頑張る番です!」
「はい!」
僕は、意を決して、言い争っている3人の間に、義姉さんを庇う形で押し入った。
今日中にあと3話投稿します。




