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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第1部 鬱病剣士の新しい居場所

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3章12話 俺の説教を聞いてくれ




 まずは君から。優しくて話の通じやすい君と最初に話したがる、俺の弱さを許せ。



「ケイン。昨日は俺のが悪くてごめんな」


「ううん、大丈夫……。取り乱してごめん」


「あの状態はたまにあるの?」


 ケインは言いよどむ。少し考えた後、自信なさげに言った。


「数ヶ月に一回かな……。頻度ひんどは変わるけど。ごめん」


「わかった。把握しておく。休むことだけ伝えてくれたら問題ないよ」


「ありがとう、ごめんね……」


 昨日も、メモでも、今だって、気になっている事がある。


「ケイン。調子が悪い事を謝らなくていい」


「そ、そっか。ごめ――あっ」


 癖になっているようだ。


「皆(やまい)があるんだし、持ちつ持たれつでいこう。もし俺が倒れても、君は責めずにいてくれるだろ」


「……それはそうかもしれないけど」


「クッキー美味かったよ。ありがとう。本当に気に病むことないから」


 ケインは目に見えて戸惑っていたが、頷いてくれた。次だ。



「ウィルル」


「ひっ!」


 こんなに怯えられていては、何を言っても否定と捉えられるオチだ。


「……最初に言っておくと、俺は君を嫌いにならない。わかったかな?」


「ほ、ほんと? ――わ、わかった」


 彼女の泳ぐ視線が落ち着いたところで、ゆっくりと話し出す。


「ウィルルは、人に否定される事にとらわれ過ぎだ。良さが出にくくなってると思う」


「――え、えと?」


 少しでも伝わればいい。続けることにした。


「薬を作ってくれて、それと、俺に感謝してくれて、ありがとう。メモにありがとうと書いてくれたのは君だけだ」


 全方位への嫌味を挟んでしまった。少し伏し目がちになる各位かくいとは裏腹に、ウィルルは少し嬉しそうに照れていた。


「君は優しい。火傷の時も助けられた。嫌われる心配の代わりに、皆の事を心配してくれないか。皆嬉しいし、君のことも嫌いにならない」


「そっか。――そうなんだ。私、少しわかった。私にできること、もっとするね!」


 前向きに捉えてくれたようで、手応えを感じる。笑顔で頷き返して、隣へ目をやる。



「さてと。……カルミアさん」


「うぅ、ごめんよ……」


 また顔が土気つちけ色。昨晩の状態では当然だ。


 昨日の事については反省しているようだが、飲酒の習慣自体から正して貰わないと困る。


「深酒は前からダンカムさんに注意されてたんだろ。やめられないの?」


「……つらい時、飲まなきゃいられなくなるんだ。頭をぼやかさないと、もう――」


「わかるよ。俺もそう言う時はあるし、正直酒は好きだ」


 カルミアさんの顔がほころんだが、本質はここじゃない。


「でも、酒で意識が朦朧もうろうとして自動的に吐いちゃうのは異常事態なんだよ。命に関わるし、皆が心配する。――分かってると思うけど、再認識してくれ」


 彼はしょぼくれてしまった。だが、いきなり禁酒にするほど、俺も鬼じゃない。


「メモに、今後二杯にするって書いてくれてたな。それなら、大丈夫なんでしょ。二杯を基準にすれば、飲みすぎても三、四杯の筈だよね」


「そうだね」


「そのルール、今後絶対守ってくれ。そうでないと、本当に禁酒だ。一緒に飲む事も出来なくなる。だから、頼む」


「わかった……。情けなくてごめん」


 こんなに反省してるのにお酒がやめられないのか。ちょっと依存してるのかも。


「何か別の手段で発散できるように、俺も一緒に考えさせて」


「ありがとうね。助かるよ」


 根は深そうだが改める気はありそうだから、少しずつ良くなるだろう。そう信じたい。



 次は、今もそっぽを向いているあいつ。何のつもりの反抗ポーズなんだろう。イライラさせてくれる。


「……ログマ」


 返事はないが、聞いてるんだろ? 


「さっきもケインに言ったけど持ちつ持たれつだ。昨日のことは気にするな。怪我はなかった?」


「……少しコブとアザがあるだけだ」


「そうか。お大事に。無事ならそれでいいよ。――でも」


 返却した巾着袋を指差す。


「お金を渡すのは無しにしよう」


 ここはやはり素直じゃないログマ。はんと笑って反論してきた。


「お人好ひとよしで素晴らしいことだな」


「俺の性格は関係ない。共同生活や仕事のフォローにお金を払うのは違うと思うんだ」


 彼の眉間に少し皺が寄る。今気づいたが、彼の目の下にはまだ深いくまがある。


「――何がどう違うんだ」


 腕を組んで考えた。


「えっと。値段のつかない恩と迷惑を貸し借りして、長く一緒にやってくのが、仲間だろ」


 自分の脇腹を指差す。


「前に貰った、火傷の薬代。あれは、やったやられたの話を終わらせる役割があったと思ってる。昨日の話は、仲間同士の助け合いだろ。それを金で精算しないでくれ」


 ログマが顔を逸らし、表情が読めなくなる。


「チッ、お説教かよ。ご苦労だな。……そんなん知らねえよ」


「じゃあ、知る努力をしてくれ。それを、今回の詫びとして受け取るから」


 やっぱり返事しねえ。ムカつく。まあ、頭が良い奴だからそれなりに理解するだろ。



「皆もそうしてくれるか。お礼やお詫びの金銭授受(じゅじゅ)は極力なしにしたい」


 皆は迷わず頷いた。……もしかして、ログマが金で済ませようとした相手、俺だけ?  まあ、いいけどさ……。




 隣のダンカムさんが立ち上がり拍手を送ってきた。するどい音が耳に響いて嫌な気持ちになった。


「素晴らしい! いやあ良いリーダーだね! 皆の課題と目標を――」


「ダンカムさん座って。貴方にも言うことがあるから呼んだんだ」



 ぴしゃりと言うと、きょとんとして素直に座った。病気こそないけど、俺が一番問題だと思ってるのはこの人だ。


「昨日みたいなトラブル、ダンカムさんは何度も経験してきたんでしょう。その都度メンバーの相談に乗って、やってきたんだと思う」


 厳しい目を向ける。


「それだけでいいと、思ってませんか」


「え……」




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