第174話 ソロ活動 お供のインテを添えて
装備を整え、おタヒに更に追加の護符を持たされ、インテを背負う。はじめてのおつかいもかくやの過保護っぷりだ。
それでも久々のソロ活動、緊張と高揚感がある。
皆とパーティーを組むのも楽しいが、俺は元々どのゲームでもソロ活動がメインだった。一人でいるのは気楽でいい。生死の責任が他人ではなく自分一人にあるのが特に良い。
「あまり無理せず様子見程度で構わないからな、何かあったら呼んでくれ、駆けつける」
「わかった、じゃあ行ってくる。ターン延長はなくていいかな、切れるまでに戻ってくるよ」
俺はそう言って【隠密行動】を発動した。
とはいえ、本当に消えた感じは自分ではしない。敵と相対し、無視されるという過程を経てやっと効果があるかどうかわかる。
そういう意味ではおタヒが心配するのもしょうがないのかもしれんな……。
高レベルの隠密行動を発動すると足音も出ないし、小声なら声も外に漏れない。
向かいからなにかのロボットが歩いてくるが、無事横をスルーしていく。俺に気がつく様子もない。
天井に監視カメラっぽいものが回っているが、何か音が出る様子もなかった。
『おおー! すごい、資材運搬ロボットがスルーしていったぞ!』
『天井の監視装置も茅原さんをスルーしてますねえ……』
機械にも無視されるのはよかった。人間相手にはかなり無双ができるのは七層の祭りで確認していた。機械にも無視されるのはかなり有り難い。
ホッとしながら進んでいくと、道が左右に分かれていた。
(どっちに行く?)
『右に曲がって資料室を見てくれないか?』
(了解)
右側に曲がると、先程遭遇した攻撃用ロボットがいたが俺に気がついている様子もない。おかげで無事資料室にたどり着いた。
(ついたけど、どうする?)
『中入れそう?』
正直わからん。何ならドアの開け方すらわからん。
幸いインテがそっと扉の非接触スイッチに触手をかざすとドアは音も立てず開き、俺は中に入ることができた。
中でも何も反応しない。
資料室には見たことのない透明な筒が大量に並べられており、筒の底に何かがこびりついていたが、俺にはそれが何かわからなかった。
筒以外にもプラスチックのような素材の板が大量に陳列されている。なんだろうな、これ。現地語でタイトルが記されている。
「製品生産記録」
「資材搬入記録」
「刑務作業記録」
「実験記録/1」
「実験記録/2」
…………
……
『茅原氏、それ持って帰ってこれる? 筒もほしいな』
エト姫は気軽にそう言うが、果たして大丈夫だろうか。俺は手袋をしているので指紋などは残らないだろうが……。そっと引き抜いて、インテにパスする。
――――じっと反応を見たが、セキュリティセンサーのようなものは何一つ発動しなかった。さて、ここでもう二十分ほど経過している。ターン延長をかけてないので残り十分しかない。俺はさっさと部屋に戻ることにした。
そこから早足で部屋に戻り、中に入る。しかし、ドアは開いたものの皆に俺の存在が気づいてもらえない。
「えっ?! やっぱり近くにいるのに全然わからないわ」
「うーん、この辺にいるはずなんだけどねえ~」
エト姫はインテから送られてきた画像を元にひょいと俺のいる場所に手を伸ばしてきたが、完全回避のせいか微妙にズレた場所を掴んでいる。ちょっと面白いなこれ。
そうしているうちに持続時間が切れ、俺は姿を表すことになった。
「すごいわ! 本当にいきなり現れたみたい!」
「いやー、監視カメラとかもスルーできるのいいねえ!」
「うーむ、しかし、なるほど。これは一般人に使わせられない魔法だな……」
グリセルダが気がついてしまった。そうなんだよな……。
「そうですねぇ……こんなスキル取ってる人がいたら、犯罪者予備軍でしょっぴいたほうがいいレベルのスキルですね……」
清野さんが珍しく酷いことを言うが、反論できない。このスキルで何かを盗んでも多分足はつかないだろう。清野さんの解錠スキルと合わせるとパーフェクト怪盗セットの完成になると思う。
「俺は犯罪なんかしないぞ! 俺はこのスキルを陰キャを極めるために使うとここに誓う!」
「陰キャとは何だ、チケン」
「陰キャとは! 影に潜み、ダンゴムシのように物陰に隠れ、人に隠れてコソコソと趣味の世界に浸る俺のような人間のことだ!」
自信満々、堂々と宣言する俺に、『ハァ?』とでもいいたそうなグリセルダとおタヒ。しかし、同志カハールカは理解してくれたようだ。
「……チケン氏、素晴らしいっす! 言われてみればそのスキルがあれば誰にも邪魔されずに動画見たり、仕事したり、作業したりできるじゃないっすか!」
「だよな! 来客もも居留守でしのげるし、休憩中も誰の視線も気にせずゲームできるし……!」
俺は本当に実生活では便利スキルとして使いたい。最近は治安的に怖い話も聞くし無と化して歩けるだけで大分安心できそうである。あと、クマとかマジで怖いし。
「隠密行動があればぶつかりおじさんとかもスルーできるのいいっすね……」
「ぶつかりおじさんマジでいるの? 車社会の地方だとあんま見ねえんだよな」
「いるんすよ……ムカついてぶつかりおじさんのスマホにスキルかけて夜な夜な叫び声の上がる呪われたスマホにしてやったっす」
仕返しの仕方が絶妙に嫌だな……。カハールカさんは怒らせないようにしよう。俺のスマホになにかされたらたまらない。現代人の生命線だからな、スマホは……。
「それで回収してきたものを見せてもらってもいいかい?」
「あ、忘れてた。何なんだ、これ。プラスチックの板と筒に見えるけど」
「私達の国の本だよ。この板にデータを詰め込んで、バックアップを取ってるんだね。こういうある程度形のあるものに分けて詰め込んでおくのが昔の主流だったんだ。……筒はわかんないけど」
エト姫は俺から受け取った筒をそのままカハールカさんに渡す。
「はい。これ残渣物の分析よろしく。朝までね!」
「ええ! 私の睡眠時間は?」
「ポーションでも飲め。もしくは五分で終わらせろ。何なら明日先頭に立つなら寝てもいいよ」
「ううー、それが嫌だから官庁に就職したのに! ヴェレルソフトかテオデジに戻りたいっす……!」
カハールカさんは涙目だが、吉田さんとは違う方向に無敵すぎるな。自国のお姫様相手にその図太い態度。俺勤務先の社長にだってそんな態度取る自信ない。
「私達は記録の分析だな。私は資材搬入を洗うか」
「はーい! 実験記録を二人でやりますね」
二人は実験記録を別の端末に繋いでデータのチェックを始めた。
「俺達なんかすることある?」
「私もう眠い……」
「私ができそうなことがあるとは思えんな」
「いや、流石に寝ていていいよ。これは私達の仕事だからね。ベッドつなげておいたから三人で寝るといい。インテだけは置いていってくれ!」
「えー、私もチケン様とご一緒したいですぅ~」
インテの言葉に、エト姫が呆れる。
「インテは茅原氏と睡眠時間以外ずっと一緒にいるじゃないか……」
「二十四時間ご一緒したいです!」
うーん、インテにはヤンデレの素質があるな。
一応俺からインテにお願いすると、チケン様のお願いでしたら! とやる気になってくれた。素直なのは助かる。




