第2部 第2章2話 ケーテ商会の設立
さすがに、あの灼熱の『S-50プラント』という場所に居続けるのは限界だった。
熱すぎる。
別の棟に移動すると、そこは爽やかな冷気が満ちており。
さっきまでの灼熱地獄とは、別世界の様だった。
なんだろう、初めてラムスさんと会った『ラボ』っていう神殿と同じような感じがする。
「涼しい、生き返る。なんなんだここ、やばいくらい快適だな?」
「不思議なところですね、これも魔法ですか?」
ヴォルター団長が、感嘆の声を上げていた。
エリス副隊長が目を丸くしている。
「こちらをどうぞ。」
「あ、ありがとうケーテ。」
無表情のケーテが運んできた飲み物は、異様に冷たかった。
しかも、これは氷が浮いている。
冬でもないのにどうやって?
たぶん、ただの水だろう。
でも、異様に透明な綺麗すぎるくらい綺麗な水だった。
「さっきのあれ、どうやって作ったんだ?」
僕が、先ほどまでいた『S-50プラント』という場所の、猛烈な蒸気と轟音が渦巻いている無数の細長い金属のパイプが森を思い出して、つい、言葉が漏れてしまった。
ラムスさんが、優しく微笑みながら、速足で僕に近づいてきた。
やばい、また、高速説明に捕まってしまう。
「ドワーフの皆さんに、製造を依頼したんだよ。」
ドワーフ?
「ドワーフって、あのお伽話に出てくる毛むくじゃらの人達ですか?」
僕は、ついつい、好奇心が勝ってしまっていた。
ラムスさんが、またも、僕の両肩を掴んで、目を血走らせ始めた。
「サバンナの低放射能帯に住んでいた原始人類は、
環境の変化による食料の減少により、一部はサバンナに残る、
一部は、他の環境に移動していくんだけどね。」
始まってしまった…。
でも、ここはさっきの場所よりは涼しくて、少しは話きいていても、そんなにつらくないかも。
傍にいた、プープラが僕とラムスさんから距離を取った気がする。
僕を見ている表情がどことなく、険しく見える。
眉間にしわが寄っているな…。
コンラート辺境伯は、うんうんと頷いている。
この人は、ラムスさんの言っていることの意味わかるのか?
「通常人類とは別に、環境の変化による食料の減少により人類の拡散が始まるんだが、
高放射能地帯に適応した人類は、4重螺旋遺伝子を獲得し、エルフと呼ばれる長命人類に進化し、
地下迷宮世界に適応した者は、2重螺旋遺伝子及び2重螺旋RNAを獲得し、
ドワーフと呼ばれる強固な肉体を持つ亜人種に進化したんだよ。」
「は…はあ?」
なんでそれがドワーフなの?
相変わらず、意味がわかりません。
頷いているコンラート辺境伯も、ただ頷いているだけなんでは?
鼻息が凄まじい。
「色々分類があってね、ぞれぞれ、ホモ・ノビリス|(高適応人類)、
ホモ・サピエンス|(普通人類)、ホモ・ロンガエヴス(エルフ)、
ホモ・ロブストゥス(ドワーフ)等に分化し、
それぞれ、離れ離れの孤島のように都市国家を形成した。」
ほもほもって何なんだよ?
早く解放してくれ。
ヴォルター団長がケーテから水をお代わりしている。
羨ましい。
なんだろう?
ベルトラン副隊長は、ケーテのことを見て複雑な顔をしているな。
プープラがベルトラン副隊長に一瞬だけ目線を向けていた。
その瞳が剣を帯びているように見えたのは気のせいだろうか?
ラムスさんの早口説明は、全くお構いなしに続いている。
「狩猟採集時代から都市国家時代に至る過程で、2重螺旋遺伝子の炭素生物である人類には、
魔石と言われる生物濃縮炭素14同位体結晶や鉱物由来の同位体等の高頻度使用個体系統、
王族、貴族、戦士、呪術師、技術者、
低頻度使用個体、一般市民、奴隷、において、
RNA遺伝子バックアップを獲得する個体が発生しており、高い魔法特性を獲得していた。」
「そ、そうなんですね。」
僕が付き合うような表情で相槌を打った時、ラムスさんは、一拍おいて、僕の顔をまじまじと見つめてにっこりとほほ笑んだ。
なんだ、なんだ気持ち悪い。
「そう、ホモ・フォルテスなんていうレアな人類もいるんだよ。」
ラムスさんが、僕の頬を触れるか触れないかで優しく撫でた。
プープラが僕のことを凝視している。
そもそも、この説明はなんなんだ、ドワーフの説明なの?
本当、意味が分からない。
「それでね、もともとローリアクム要塞があった場所には、
ドワーフの都市があったんだよ、大昔に滅ぼされたんだけど。
でも、近くのゲルマニア大森林の地下に、その末裔のコロニーがあってね、
そこに製造を発注したって訳さ。」
コンラート辺境伯がうんうんとニコニコしながら頷いている。
たぶん、この人聞いていない。
しかも、絶対意味解っていないやつだ。
「おかげで、だいぶ資金を使ってしまったよ、
樹海竜の素材を売却して得たお金もほとんど残っていない。」
ラムスさんがしゃべり方が急に芝居かかってきた。
早口のスピードが落ちてくる。
僕の両肩を掴むのを止めて、解放してくれてもいた。
樹海竜…。
まさに、このローリアクム要塞を壊滅させた元凶だ。
コンラート辺境伯、ヴォルター団長、エリス副隊長、ベルトラン副隊長の表情が冷たい風が吹いたように、表情が硬くなっていた。
「そこでですねぇ、この『S-50プラント』で生産される、
この青色ルミネセンスのいわゆる『ラエティアの宝石』は、
コンラート辺境伯に全て納品させていただきます。」
「よろしいのですがラムスどの?」
「はい、当然ですよコンラート辺境伯。」
「おお、これは頼もしい。」
「そして、このグラファイトの方は、樹脂で固めて、一般流通用魔石として、
各都市に販売したいと思います。たのまれていただけますか、コンラート辺境伯。」
「任せてくれたまえ、販路については、当てがある。」
コンラート辺境伯が興奮し始めたように鼻息が荒くなっていた。
つまりなんの話をしてるんだよ?
僕には全く意味が分からない。
聞いたこともない単語で話するの止めてくれよ。
僕は無意識にため息が出てしまった。
「商会を立ち上げますよ。」
「はい?」
「ケーテ、商会長を頼みましたよ、私は色々やることあってね、手が回らないからさ。」
ラムスさんが、ケーテを見て優しく微笑んだ。
ケーテが恭しく頭を下げた。
ケーテって田舎育ちじゃなかったけ?
読み書きできるの…算術だって必要なはずだ。
僕より遥かに頭良かったんだ。
知らなかった…。
「お任せくださいラムス様。」
ケーテの返答は、なぜか硬質な感じがして異様だった。
仲が良かったはずのベルトラン副隊長と喧嘩でもしたのだろうか?
ケーテは、まるで別人のようにベルトラン副隊長に反応しない。
ベルトラン副隊長が戸惑う表情でケーテを凝視して観察している。
そのベルトラン副隊長をプープラがなぜか観察していた。
コンラート辺境伯の愉快そうな笑いが響く中。
なんだろう…この感覚?
この部屋が涼しい…寒く感じる。
僕は異様な殺気を感じたような感覚がした。
MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_
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型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE
PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1
セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域
観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN
PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED
[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.06]
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* 目的関数: 【観測対象報酬累積最大化】
* 閾値判定マトリクス:
‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬高発火[READY]
‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象感情多様性 > 閾値:FALSE
‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE
‐………
* 安全装置プロトコル
‐マスター命令優先度:69.8%
‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先
[PROCESS_STATUS: NORMAL]
* ENEMY 0
* DANGERROUS INDIVIDUAL 0
[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_039 ONLINE]
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対象の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。
外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。
次回ログ生成時の再接続を要望します。




