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魔獣たちのお姫様~闇属性に極適性のある貴族令嬢のモフモフ?ファンタジー~  作者: ミジンコ


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3/3

第3話 魔獣との邂逅

お待たせいたしました! 

更新します!

 テントの前には人だかりは無く、今はまだ芸が披露されていないのが伺えた。

 するとサークラがそれを補足する説明をする。


「今はちょうど幕間の時間なのです。これから皆様には裏で待機している魔獣たちを見て頂こうかと思っております。本来外部の者は入れないのですが、公爵家の皆さまには特別でございます」


 そういうサークラに先導されて一行はテントの中に入る。

 すると真っ先に視界に入ったのは、人間が何十人も入れるほど大きな檻だった。

 そしてその中にいるのは――炎の鬣を持つ獅子。檻の中央辺りで座っており眠っているように目が閉じられている。


「ええと、トーヤはどこに……ああ、いたいた! おーい、トーヤ!」

「――どしたんすか、団長?」


 公爵家の人々が炎の獅子に視線を奪われていると、サークラに呼ばれて軽い口調の若者がやって来た。


「どうしたではない! 今日は大切なお客様がくるからと言っておいただろう!」

「あー……そうだったっすかね?」

「はぁ、本当にお前という奴は……申し訳ございません、皆様。ご紹介させてください」


 そうしてサークラが若者の隣に並ぶ。

 その若者は人間、とは少し違っているようだった。見て分かる違いとして頭のてっぺんに獣の耳がついている。そして毛深い腕や足、身体の後ろから覗く尻尾。

 それらの特徴は彼が、獣人であることを示していた。


「彼が先ほど話したテイマーのトーヤと申します」

「どーもどーもっす。自分、トーヤといいます。見ての通り狐の獣人族っす。あ、あとテイマーです」

「テイマーとしては優秀なのですがあまり礼儀作法には明るく無く……申し訳ございません」


 平身低頭といった様子のサークラに対し、トーヤは公爵家という王族に次ぐ上位貴族を前にしてものほほんと自分のペースを崩していないようだった。


 ゴルドリンはそれに気にした様子もなくトーヤに握手を求めるよう手を差し出す。


「気にするな。私はこの領を収めるブランティーグル公爵のゴルドリン・ブランティーグルだ。まさかあの炎獅子を従えるほどのテイマーと会えるとは嬉しいぞ」

「いや~、それほどでもっす~。でも従えるってのとはちょっと違うんすよねぇ。ていうか炎獅子を従えられるほどボクは強くないっすし」

「ん? たしかに君はそれほど強そうには見えないが……テイマーとは魔獣を従えるものではないのか?」

「ボクの場合はどっちかというと交渉っすね。あの炎獅子と契約したときは大変だったっすよ~? 殺されないよう三日三晩逃げ回りながら交渉を続けて、最後は泣いて土下座したっすから。そんで毎日三食うまい飯を用意するって条件で今は協力してもらってるんす」

「ど、土下座……?」


 ゴルドリンや騎士たちの知るテイマーとは似ても似つかぬその話に目が点になった。


 主人として魔獣を使役する立場のテイマーが、何がどうして魔獣に泣き土下座をする羽目になったんだ? というかそれで魔獣が協力してくれるなんて馬鹿な話があるのか?、と。


 だが実際に出来ているのだから、そういった手法もある……のかも?

 ゴルドリンたちは未知に遭遇した気分を味わった。


 そんな会話が繰り広げられる一方、その間も片時も炎獅子から目を離さないお子様が一人。

 もちろん、クラリスである。


「ふぁー……!」


 クラリスは炎獅子を見てその威容に怖がるどころか、ここ一番目を輝かせて頬を赤くするほどに興奮していた。


「まりー! まりー!」

「近くで見たいのですか?」

「うんッ!」


 クラリスは今にも飛び出していきたそうなのを懸命に堪えて、それでも我慢できずにマリーのスカートの裾をぐいぐい引っ張っている。

 そんな可愛らしい主張に応えぬわけにはいかず、マリーはテイマーであるトーヤに許可を求めた。


「トーヤ殿。クラリス様が炎獅子をもっと近くで見たいようなのですが、よろしいですか?」

「勿論っすよ! にしても炎獅子を怖がらないなんて、子どもながら肝が据わってるっすね~! ボクがそのくらいの頃だったら、この距離からでも泣きべそかいてた自信があるっすよー」

「そ、そうですか」


 なんと返事をしたらいいのか分からないトーヤの自虐にマリーは適当に言葉を濁した。

 果たしてこの男は本当に優秀なテイマーなのか?という疑問は湧くが、ここに来て嘘をつく理由も無い。変わり者のテイマーなのだろうとマリーは内心で結論付けた。


 そうして一行は、クラリスを先頭に炎獅子がいる檻へと近づいていく。


 すると接近してくる人間の気配に反応した炎獅子が、ゆっくりと閉じていた目を開いた。そして自分の契約者であるトーヤに視線を向け、それからその視線は先頭を歩くクラリスへと向けられる。


 まだ距離があるとはいえ、肉食獣の眼光に晒されて怯えの欠片すら見せないクラリスの姿には公爵家の面々もさすがに苦笑してしまった。


「ところでトーヤ殿。本当に危険はないのですね?」


 いよいよ檻の鉄格子が間近となり、念を押すようマリーが確認する。


「大丈夫っすよ。アイツは誇り高いんす。人間だろうが魔獣だろうが、子どもを傷付けるような真似はしないっすよ。まあ近くで自分の姿を見せてやろうっていうサービス精神とも無縁なんすけどね! あっははは――――って、あれ!?」


 トーヤが何に驚いたのか?

 それは炎獅子が見せた行動にだった。


 視線を向けるだけだった炎獅子は、おもむろに起き上がると堂々たる歩み方でこちらに近寄って来たのだ。


 例え契約主であるトーヤだとしても、仕事と食事の時間以外はじっとしていることが多いのが普段の炎獅子の姿。にも関わらず何かに反応するように自主的に行動を始めたことに、トーヤは驚き過ぎて耳と尻尾の毛が逆立てた。


 更にゴルドリンや護衛の騎士たちは咄嗟に腰の剣に手をかけて――すぐにその手を離した。


 何故なら炎獅子からは、こちらを害そうという敵意が感じられなかったからだ。魔獣が敵意も見せずに近づいてくるという珍しい光景に、日々魔獣と戦っているゴルドリン達は興味深そうな視線を向けた。


 そしてこの場の全員の注目を集める炎獅子はといえば、その視線を真っ直ぐにクラリスへと固定していた。


「しーしゃん! しーしゃん!」


 上手く発音できていないが、クラリスは「獅子さん! 獅子さん!」と大興奮の様子。


「いや~、珍しいこともあるもんっすね~……」

「そうなのですか?」

「はいっす。アイツは子どもには手を出しませんけど、それは言葉を変えると無関心ってことっすからね。それが自分から近づいて来るなんて、もしかして明日は雪でも降るっすかね?」


 それほどのことなのかと、質問したマリーは炎獅子に視線を向ける。

 今の言葉が本当なのか?と疑いたくなるほど、炎獅子の視線はクラリスへと釘付けだった。もしや魔獣にもクラリス様のお可愛らしさが伝わったのか?、と完全に思考が馬鹿のそれになったマリー。


 そしてお互いが触れ合えるほどの距離まで近づく。


 すると――


「しーしゃん! こんにちは!」

「……ニャン」


 クラリスの元気のいい挨拶に応えるように、炎獅子は頭を下げる。それだけでなくその場でごろんっと横になると、クラリスに腹を見せるような姿勢で横たわってしまったのだ。


 それはまるで「撫でろ」と主張しているかのような姿だった。


「ぶっっっ!? お、お前ぇ!? 今のはなんすか!?!?」


 一方のトーヤは大混乱だった。


 なに猫が甘えるみたいな声だしてんだよ!? お前は獅子だろ!? ていうか誇り高い炎獅子だろうが!? なに子どもに甘えて腹まで見せてんだよッ! ボクにだってそんなこと絶対にしないだろうがッッ!!


「お、お前まさか……幼女趣味だったんすかッ!?」

「ガアッッ!!」

「う、うそうそ! 冗談っすよ!」

「しーしゃん? どしたの?」

「ニャ~ン……」

「…………」


 その姿からは先ほどの言葉を否定する説得力は微塵も感じられなかった。


 トーヤは少し考えて……「よく分かんないけど、なんかご機嫌っぽいからいいか」――と、考えるのを放棄した。


 そしてクラリスはそんな炎獅子に触りたくてしょうがない様子で檻の中に手を伸ばそうとしているが、それをマリーが頑張って抑え込んでいる。


「と、トーヤ殿。これは触れてもよろしいのですか?」

「ああ、はいっす。クラリス様なら問題無いと思うっす。ほんと。ぜったい」

「では――」


 マリーが抑え込んでいた腕を解放すると、クラリスは待ってましたとばかりに炎獅子のお腹を撫でてさすって好き放題し始める。


「ニャ~~~ン」

「しーしゃん! かわい!」


 聞こえてくる声だけなら、幼女と猫が戯れる姿を想像するだろう。

 だが現実には幼女と、それを一口で食べられる猛獣が情けない声を出している光景が広がっていた。


「え、炎獅子とはこうも人懐っこい魔獣だったのだな。知らなかった……」

「ワタクシも本日初めて知りました」

「ボクもっす。クラリス様すげ~~……」


 男達が目の前の光景に呆然となる一方、ジョゼフィーヌとマリーの女性陣はそわそわしていた。


「く、クラリス。その、私も触ってみてもいいかしら?」

「ん? しーしゃん、おかーさまもしゃわっていい?」

「……ニャン」

「で、では私も!」

「まりーもいっしょー!」

 

 クラリス様に言われたら仕方ねえな――そんな雰囲気を滲ませた炎獅子は、素直にジョゼフィーヌとマリーの手も受け入れた。


「ふわふわですわ……! それに温かい!」

「これは……! もっとごわごわしているものと思っていましたが、これは中々の手触りですね……!」

「しーしゃんしゅてき!」

「ニャ~……」


 暫しの間、炎獅子と公爵家女性陣によるアニマルセラピーが開催されたのであった。

いかがでしたでしょうか?

ライオンみたいな大きい肉食動物と戯れるのってなんか憧れるんですよねぇ。たまにそういう動画?ドラマ?とかあると思わず見ちゃいます。ちょっと大きくて炎の鬣がある猫と化した炎獅子ですが、檻越しじゃなくてもっと触れ合いが欲しい……!と思うまる


という訳でいよいよ魔獣と交流するクラリス。もちろんこんなもんじゃ終わりませんとも! 次回をお楽しみに!


また面白い、続きが読みたいと思ってくださったらリアクション等をくれると嬉しいです! 感想の方もどしどし募集してまーす!

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