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魔獣たちのお姫様~闇属性に極適性のある貴族令嬢のモフモフ?ファンタジー~  作者: ミジンコ


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第1話 魔獣の姫、誕生す

ちょっと新しい連載を始めてみました!

しばらくお付き合いくださると嬉しいです!

 大陸に覇を唱える大国『グランベル』――


 グランベル王国は中央に王都を置き、そこから東西南北を四つの公爵家が守護していた。それぞれの方角にて王国を守る四公爵家は、国王に次ぐ権力と発言力を持ち、それそのものが小さな国の君主といわれるほど。

 それもあってか四公爵家を指して『国守の四君主』などと呼ばれることもあった。


 そんな四公爵家の中でも西方を守護する『ブランティーグル家』。

 王国西に広がる大森林――そこから迫る強力な魔獣から王国を守護するお役目を担っていた。


 そんなブランティーグル家に今日、一人の赤ん坊が生まれようとしていた。




『ふぅー、ふぅー! んっー!!?』

『気を確かに! がんばるんじゃよ!』


 扉の外に漏れてくるのは苦しそうな女性の声と、それを励ますしわがれた老婆の声。


 扉の向こうの部屋では、今まさに出産が行われていた。


「っ……」


 女性の叫びが聞こえる度に、廊下に立つ白髪の男の肩がびくりと震える。それもそのはず、この扉の向こうで出産しているのは男の妻なのだから。

 既にこういったことは三度目にも関わらず、男の顔には緊張が隠せない。手慣れた産婆や信用のおけるメイドも手伝っているから、大丈夫だと分かっていてもこうして仕事を放りだしてくるぐらいにはじっとしていられなかった。


「っ……!!」


 もちろん男が部屋に入る訳にはいかないが、それがやはりもどかしい。今すぐにでも妻の傍にいって手を握ってやりたい、と歯噛みしていた。


 せわしなく扉の前の廊下を行ったり来たり、そわそわしながら歩くうち――部屋の中からこれまでと全く違った泣き声が聞こえてきた。


『ギャー! オギャー!』

「っ! う、産まれたのか!?」


 それは間違いなく赤ん坊の泣き声だった。


 今すぐにでも扉を開け放って中に入りたい衝動をぐっと堪えて、男は扉の前で待つ。

 すると暫くして扉が内側から開けられた。出てきたのは見下ろすほどの老婆で、男はその老婆の姿を見た瞬間詰め寄った。


「ジルケッ! ジョゼは、赤ん坊は大丈夫なのかッ!?」

「慌てるんじゃないよっ! 大の大人がなさけない……安心おし。母子ともに無事じゃ。もうはいって構わんから、顔を見にいってやるといい」

「分かったッ!」

「じゃから慌てるなといとろうに!!」


 産婆――ジルケの許可を得た男は後ろから聞える注意も聞かず、せわしなく部屋の中に入った。


 部屋の中には疲労を滲ませながらも達成感を感じさせる笑顔のメイドたちがいた。本来なら主人として声をかけるべきだが、男の目はそれよりもベッドに横たわる妻と――その枕元の小さなおくるみに釘付けだった。


「ジョゼッ!」

「あなた……! もうちょっと落ち着いて入って来てください。この子が驚いちゃうでしょ?」

「す、すまない……」


 さすがに妻の言葉は効いたらしく、男はベッドに近づく前に何度か深呼吸をして自分を落ち着かせる。しかし高鳴る心臓だけは落ち着いてくれず、表面上だけ何とか取り繕って一歩一歩静かにベッドに近づいた。


「ジョゼ、身体は大丈夫か?」

「ちょっと疲れたけど、もう慣れたものよ。最初に比べればほら。こうしてあなたと話して、この子を抱きしめる余裕もあります」

「そうか……そうか……!」


 妻の様子を見て、確かに疲労はあるものの元気そうで一安心する男。

 次いでその視線は自然と、妻に抱きかかえられた存在へと向かう。


「元気な女の子よ。抱いてあげて」

「だ、大丈夫だろうか……?」

「大丈夫ですよ。赤ん坊を抱くのが初めてでもあるまいし。何をそんなにおどおどしているんですか?」

「だ、だって女の子だぞ!? 初めての娘なんだぞ!? 男よりもずっと可憐で繊細で――私が抱いたら壊れてしまわないか!?」

「ガラス細工じゃないんですから……」


 男の狼狽っぷりに妻もさすがに苦笑する。

 そしてこのままじゃ埒が明かないとばかりに、男の手を引っ張って強制的に赤ん坊を抱かせる。


「だ、大丈夫か? 抱き方は合ってるか? 力が強かったりしないか??」

「大丈夫ですよ」


 男はこわごわとした様子で、ゆっくりとおくるみを妻の手から受け取った。

 そして自らの腕で抱きかかえながら、綿毛にでも触るよう繊細に白い布を捲る。するとそこには、まだ目も開いていない小さな命があった。


「この子が、わ、私の……娘ッ!」

「私達の、ですよ。もうしっかりして、ゴルド」

「す、すまないッ」


 男はおっかなびっくり再び赤ん坊を妻の手に戻す。そうしてベッドの縁に腰掛けると、妻と赤ん坊を優しく抱きしめた。


「ありがとう、ジョゼ。よく頑張ったな。本当に……愛してる」

「私も愛してますわ、ゴルド!」


 二人の熱々な雰囲気に挟まれつつ、一方の赤ん坊は我関せずとすやすや眠っていた。

 そんな甘い空気をぶち破るように部屋の外から子どもの声が届けられる。


「母上っ! 妹が誕生したとは本当ですか!?」

「お母さま! 僕のいもうと!? いもうとが生まれたの!?」

「あらあら……」


 勢いよく部屋に飛び込んできた二人の男子。その後ろから遅れてやってきた産婆のジルケが二人に拳骨を落とした。


「親子そろって落ち着きがないねえ! ちょっとは母親と赤ん坊に気を遣いな!! まったく似なくてもいいところばっかり父親に似おってからに……」

「「ごめんなさい……」」


 瞬く間にしゅんとした態度をとる子どもたちと、まるで自分が怒られたように感じて同じようにしゅんとなる父親。その姿は紛れもなく似た者親子の姿だった。


 しかし反省したのも束の間、二人の少年は今度こそ両親と赤ん坊の元にやって来る。


「二人とも。あんまり慌てて、この子を怖がらせたらダメですよ」

「「気を付けます……」」

「分かったらほら、いらっしゃい。あなた達の妹に挨拶してあげて」

「「はいっ!」」


 二人は母親の腕の中にいる赤ん坊を覗き込む。


「ち、ちいさい……兄さま、小さいです!? こんなに小さくて大丈夫なのでしょうか!?」

「赤ん坊とはこれが普通なんだぞ。お前が生まれたときもこれぐらい小さかったからな!」

「ぼ、僕もこんなに小さかったんですか!? ふぁ~……ぼ、僕が兄さまだよ!」

「この子が、妹……! 初めまして、私が君の兄だぞ!」


 子どもらしい反応ながら興味津々に赤ん坊を見つめる二人を見て、母親は思わず笑みをこぼした。父親である男の方は赤ん坊を見るのは三度目のはずなのに「たしかに小さい? だ、大丈夫なんだろうか?」とおろおろし始める。


「ほれ男どもっ! そろそろ二人を休ませてやる頃合いじゃ! 今日のところは出でけ!」

「そ、そんなッ! もう少しだけ!」

「そうですジルケ! 私たちはさっき来たばっかりなのですよ!?」

「僕ももっと妹をみてたい!」

「お黙りっ!!」


 産婆の言葉に反論する男衆だったが、それ以上の迫力で威嚇されてすごすごと部屋から退散してく。その際にも後ろをちらちら振り返って後ろ髪を引かれるような態度でわずかながらの抵抗をしてみせたが、ジルケには通用しなかった。


 男衆が出て行くと、部屋の中にはメイドも含めて女性陣だけが残される。


「さあジョゼも休むんじゃ。かなり消耗したじゃろ」

「ええ、ありがとうございますジルケ様。それではお言葉に甘えて――」


 そうしてジルケの言葉に促され目を瞑ろうとした直前、ジョゼは視線を再び赤ん坊に向ける。


「起きたらすぐ、あなたの名前を決めるからね。それまでゆっくりお休みなさい。可愛い私達の娘……」






 こうしてグランベル王国西方守護を任される大貴族、ブランティーグル家に三人目で長女となる女の子が誕生したのであった。


 後に命名された名は――クラリス・ブランティーグル


 クラリスの誕生にブランティーグル家の領地は大いに沸き立った。

 家族に、領民に、様々な存在にその誕生を祝福されたクラリスはすくすくと成長していき、あっという間に三歳となったのであった。

いかがでしたか!

今回な久しぶりにハイファンタジー系の作品を書いてみることにしました。最近は現代舞台ばっかり書いていたので、まだまだ手探りって感じです。というか異世界系って一から世界創造をしなくちゃいけないから、たいへん! ハイファンタジーを書いてらっしゃる作家さんたち本当にすごい……!


というところでこの続きも楽しんでくれると嬉しいです!

面白いと思ってくださったらブックマークとか評価とかしてくれるともっと嬉しいです!

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