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62話:龍王祭の騒動4

二人は長い間抱き合っていた。まつりがわざとらしく咳払いをして、その雰囲気を破るまでは。


「コホン。仲直りできたのは結構なことだけれど、私たちがまだ敵陣の只中にいることを忘れないでちょうだい」


兄妹は同時に体を強張らせ、慌てて体を離した。それぞれが照れくさそうに髪を掻く。その全く同じ反応と仕草を見て、祭は珍しく微かな微笑みを浮かべた。


「ライラ、仲直りできて本当によかったわね」


「……祭、ありがとう。ここであなたに会えるとは思わなかった」


「あなたのお兄さんが、冷静さを失って血相を変えてあなたを探し回っていたからよ」


「……その話は、ここを抜け出してからにしてもらえませんか……」


居心地が悪そうに身悶えするロルの顔を見て、二人の少女は同時にクスクスと笑い声を漏らした。


祭は前に出てライラを抱き起こした。彼女の両足はまだ震えていたが、薬が効き始めたのか、祭の支えがあれば辛うじて立ち上がれるようになっていた。


「さっきライラが言っていた毒って、何なの?」


「『アオウミウシ』です。全身に毒を持つ生物で、体を麻痺させ、徐々に活力を奪っていくんです」


「解毒剤はあるの?」


「ええ。この毒の解毒剤は、決して入手困難な薬草ではありません。おそらく、どこの病院にも常備されているはずです」


祭はライラの体を軽くほぐしながら、状態を確認した。ライラはしっかりと立ち上がった後も、まだ眉をひそめていた。


「でも、おかしいな……。この種の毒は、ほんの少し揺れただけでも変質して効果を失いやすいの。だから、手に入れるのがすごく難しい毒のはずなのに……」


ライラの呟いた内容は確かに疑念を抱かせるものだったが、今はそれが重要ではない。祭はロルの方へ振り向いた。


「これからどう動くの? 確かに人質との接触には成功したけれど、忘れないで。ここは行き止まり(デッドエンド)よ。ここから離れるには、結局あの犯人と対峙するしかないわ」


祭の問いかける視線に対し、ロルはすでにいつもの自信を取り戻しており、彼女に向かってチッチッと指を振ってみせた。


「言ったでしょう、祭さん。私は最初から、犯人と接触するつもりなど毛頭ありませんよ」


ロルはバッグから四角い金属の箱を取り出し、地面に放り投げた。箱は機械的な音を立てて展開し、小型の牽引カートへと変形した。ロルは祭とライラに指示し、子供たちをその中に乗せさせた。


続いてロルは牢屋の錠を破壊して外へ出た。外の壁には、案の定、錆びついたレバーが隠されていた。彼が少し力を込めてそれを引き下げると、元々あった石壁がゆっくりと左へスライドし、脱出のための通路が姿を現した。その際に生じた巨大な摩擦音も、『沈黙のサイレントヒル』の力場によって完全に吸収された。


「ふふん。あとはこの弱った子供たちを引いて歩くだけで、誰にも気づかれずに全員を連れ出すことができるというわけです。これぞまさに、情報量の圧倒的な差ですね」


意気揚々と語るロルは、祭を先頭に立たせ、ライラにカートを引かせ、自身は最後尾でカートを押す配置についた。


「……尻尾が立ってるよ」


「兄さん、また尻尾が立ってるよ……」


二人の少女の冷めた反応を見て、ロルは(たまには賢い自分を褒めてくれてもいいじゃないか)と内心ぼやいた。


「だから、たまには——!」


その言葉が終わるより早く、空気が激しく引き裂かれた。音よりも早く、鮮血が宙を舞う。


ロルが視線を落とすと、彼の腹部は、漆黒の触手によって完全に貫かれていた。


事が起こるのがあまりにも速すぎて、祭でさえ反応できなかった。ただロルだけが咄嗟に腕を振り上げ、『十字架の手袋』から目も眩むような聖なる光を爆発させた。


白い光の塊が触手に直撃する。だが、先ほどの呪いの人形のように消滅することはなかった。それはつまり、これこそが犯人が直接操る「呪い」の本体であることを意味している。


ロルは無意識に二発の光球を打ち込んだ。呪いを使役する犯人にもダメージを与えたのか、黒い触手の力がふっと緩む。彼はそのまま膝から崩れ落ち、口からおびただしい血を吐き出した。


(なぜ気づかれた? 『沈黙の丘』が確実に音を消していたはずなのに……)


『ネズミと人間の足音が同じなわけないでしょ? 振動が全然違うんだから』


(そうだ! 振動だ! たとえ音は出なくても、あれだけ巨大な石壁が動けば、必ず振動が伝わる!)


その事実に気づけなかった自分に激しい後悔を覚えたが、もはや取り返しはつかない。なぜなら、恐怖に顔を歪めるライラと、両耳をピクピクと動かして周囲の気配を探る祭の様子から、相手が全ての呪いの人形をこちらへ呼び寄せているのが分かったからだ。


「兄さん!」


「あなた、無事なの!?」


祭が駆け寄ろうとしたが、彼は血に染まった手を挙げてそれを制した。ロルは荒い息を吐きながら、腹部から広がる激痛を必死に堪えていた。


「祭さん……私たちの目的を、忘れないでください……! はぁ……はぁ……ライラと子供たちを、お願いし……」


唇からとめどなく血が溢れ出ているというのに、ロルはライラに向かっていつもの不敵な笑みを浮かべてみせた。そして、バックパックの中の『導きの精霊』とスマートフォンを彼女に向かって放り投げた。


「ライラ……安心してください。私は、死にませんから……。一緒に花火を見る約束、しましたよね……? 私は絶対に約束を破らない……。あのクソ野郎の時間を稼いで……すぐに、戻りますから……」


腹部に深々と刺さった触手が、再び力を取り戻し始めているのを感じた。彼は激痛に耐え、低く吠えた。


「早く行けっ!」


次の瞬間、触手が猛烈な勢いで引き戻され、ロルの身体ごと、漆黒の深淵へと消え去っていった。

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