37話:良いことをした人には相応の報いがあるべきだ
路地裏では、二人の少女と一人の小さな影衣族の子が、肩を並べて地面に座り込んでいた。
もし今、警察が通りかかったら、自分は間違いなく不審者として連行されるだろうな——ロルはそんな自嘲気味な考えを振り払い、スマートフォンを取り出した。
そして、鼻をすすりながらカナイが語り始めた物語に耳を傾けた。
「ゴブオくんとやり取りを始めたのは、一ヶ月くらい前かな……」
ライラが時間をかけて少女の情緒をゆっくりと落ち着かせた。隣のシャティは何が起きたのか分からず、心配そうにカナイの周りで体をゆらゆらと揺らしている。
「最初はね、彼がカナイと同じゲームをやってるのを見かけたのがきっかけ。本当に! 本当にただの遊び心で話しかけただけだったの」
一度泣いたせいか、今のカナイが浮かべる笑顔は先ほどのように強張っておらず、どこか吹っ切れたようだった。
「最初はね、彼からちょっとお小遣いでも巻き上げてやろうって思ってたのよ。今考えると、カナイって最低よね! 彼と一緒に過ごすのが、あんなに楽しくなるなんて思いもしなかった……」
カナイは恋に落ちた少女のように甘く笑い、ライラの肩に寄りかかって自分を揶揄した。
ロルは口角が上がるのを必死に堪えながら、電話の向こうで焦るゴブオを口八丁で丸め込み、友達が遅れるのはよくあることだと適当な嘘を並べ立てていた。
「ゴブオくんは優しくて面白いし、ゲームの考え方もぴったり合うの。いつの間にか、ずっと一緒にいたいって思うようになっちゃって……」
そこまで話すと、彼女は再び明るく笑った。
「昨日、ゴブオくんに会えると思ったら興奮して眠れなくて、本当に寝坊しちゃった! 急いで家を出たらあんな変態に捕まっちゃうし。後悔はしてないけど、でも、なんていうか——」
カナイは少し言葉を切り、意を決して続けた。
「これがカナイへのバチなんだって思ったわ。あんな悪い下心を持って近づいたから、この友情を続けたいなんて望むのは贅沢なんだって……神様に制裁されちゃったのかな。サキュバスのくせに、こんなこと言うの恥ずかしいわね……」
「そんなこと、全然恥ずかしくなんてありませんよ。仲の良い友達とずっと一緒にいたいと思うのは、当たり前のことです」
カナイは呆気に取られ、そして目を丸くして泣き笑いの表情を浮かべた。
「おおお! お姉さんかっこいい! 惚れちゃいそう!」
なるほど、これで事の全貌をロルは理解した。
最初は確かに不純な動機でゴブオに近づいたカナイだったが、その意図は交流の中でいつの間にか消え去り、今はただ純粋に友達でいたいと願っている。
ゴブオは劣等感からカナイを疑い、そんな自分に嫌気がさしている。カナイは最初の動機のせいで罪悪感に苛まれている。
なんてピュアすぎる中学生コンビだ。今から役所に連れて行って婚姻届を出させても間に合うんじゃないか。
ロルは少し考えた後、昨日ゴブオにしたのと同じ質問を投げかけた。
「カナイは、ゴブオと恋人同士になりたいのか?」
「え、ええっ!? な、何その質問!」
カナイはガバッと顔を上げ、顔を真っ赤にして狼狽えた。
「む、む、無理に決まってるじゃない! ゴブオくんみたいな優しい人に、カナイなんて釣り合わないわ! 友達でいられるだけで十分幸せなんだから!」
またしても恋愛漫画のヒロインのような答えが返ってきた。
ロルは慌てて自分の口を押さえた。そうしないと、ニヤけそうになる口角を止められないからだ。
ライラも当然ロルの表情に気づき、「真面目にして」とばかりに睨みつけてきた。
「だから、もう遅刻しちゃったし……今回は——」
「カナイ、今から何の関係もない質問を一つだけします」
ライラはカナイの手を握り、もう片方の手で少女の頭を撫でた。
「あなたの今の気持ちは? 本当に行きたくないの? それとも……行きたい?」
ライラの問いかけはあまりに純粋で直球だった。カナイの顔は次第に赤くなり、彼女は縋るようにライラの手を握りしめた。
「カ、カナイ……もちろん行きたいよぉ……せっかく夏休みに会えるんだもん……楽しみにしてたんだから……」
「ええ。時にはそう口にするだけで十分です」ライラは微笑みながら頷いた。
「兄さん!」
「ああ。脱げ」
「ええええええっ!!! お姉さんたち、何するの!?」
ロルの指示の下、ライラはカナイの白いワンピースを脱がせた。もちろんその前に、氷魔法を使って臨時の試衣室を作っておいたが。
試衣室の中で「環境マント」を羽織ったカナイは、赤面しながら、ロルが破れたワンピースを持っているのを困惑して見ていた。
ロルの指示の下、ライラはカナイの白いワンピースを脱がせた。もちろん、その前に彼女は氷の魔法で臨時の試着室をしっかりと作っていた。
試着室の中で環境クロークを羽織ったカナイは、顔を真っ赤にして、ロルが手に持っている破れたワンピースを困惑した様子で見つめていた。
ロルは破損部分を確認し、リュックから小さなハサミを取り出し、ライラに手渡して魔力を注入させた。するとハサミは彼の掌の中で変形し、裁縫に適した専用の道具に変わった。
これも一種の魔道具で、その用途は5種類のハサミを自由に切り替えられることだった。
ロルはハサミを手に取り、自信満々にライラとカナイに言った。
「豆知識だ。影衣族は、服や布地に寄生して暮らす種族だから、大人も子供も生まれついての仕立屋なんだよ」
彼は言った。
「さっき『悪いことへの報い』だって言ったよな。なら、良いことをした人には相応の報いがあるべきだ」
ロルは腰を落とし、破れた純白のワンピースを優しくシャティに見せた。
「君はシャティ、だよね。何が起きたかよく分かっていないかもしれないけど、さっき君を助けてくれた恩人のお姉さんが今、困ってるんだ。手伝ってくれるかな? このドレスを元通りにするのを」
最初、少女はただ呆然と彼を見つめていた。だが、やがて彼女の瞳がわずかに輝き、視線がカナイに注がれた。突如、赤いポンチョの下から影が解き放たれたように躍り出た。
その影は一度カナイの体を包み込むと、ロルの手にある白いワンピースへと移り、漆黑の影がロルの手をも一緒に包み込んだ。
影がロルの手を纏い、抗えない力が伝わってくる。彼はその導きに従って動くしかなかった。
ワンピースから光が溢れ出し、直視できないほどの眩しさの中、「カチャ、カチャ」という裁断の音だけが響いた。
「わぁ……」カナイは息を呑み、驚きに目を輝かせた。
光が収まると、黒い影は赤いポンチョの下へと戻っていった。シャティは少し脱力したように地面に倒れ込んだが、その満足げな様子からして、出来栄えは悪くないはずだ。
ロルは完成したワンピースをライラに返し、彼女はすぐに試衣室の入り口を塞いで、カナイに着替えさせた。
ロルは横に座り込んだシャティを自分の腕に乗せたが、予想通り、全く重さがなかった。
ライラが氷の魔法の試着室を解除した後、カナイは修繕されたばかりのワンピースに着替えていた。
純白のワンピースには修繕の痕跡が一切見えず、さらに夏にぴったりのウェーブ感が加わり、サイズも彼女の体にぴったりと合っていて、まるでオーダーメイドのようだった。
シャティを守る際に乱れた髪も、ライラの梳きのおかげでより美しくなり、ライラがリップクリームを塗ってあげたことで、身だしなみも整った。
今のカナイは、家を出たばかりの頃の姿に決して負けていないだろう。
生まれ変わった自分を見て、カナイの声は思わず震え始めた。
「かわいい……」
「行きましょう、カナイ。彼が待っていますよ。」
相手が反応する間もなく、ライラはカナイを背負い上げ、彼女が驚きの声を上げる間もなく、そのまま噴水広場へと連れて行った。
「兄さん、そっちはお願いします!」
「ああ、ここは私に任せてくれ」
実はそんなに急ぐ必要はなかったのだが、ロルもゴブオから、たとえ11時になっても待ち続けるというメッセージを受け取ったばかりだった。
二人の少女の去っていく背中を見て、ロルも安堵のため息をついた。どうであれ、両方の問題が解決したことは何よりだった。
「さて、私たちも行こう。ブートさんをあまり待たせられないからな——」
一歩踏み出したところで、ロルは例のロリコン変態のことを思い出した。関わりたくはなかったが、やはり彼を連邦警察に引き渡さなければならない。
「そうだ、お前もだ。こんなに静かにして、まさか完全に意識を失ったんじゃ――」
相手を揶揄する言葉を口にする間もなく、ロルは言葉を止めた。
なぜなら、今氷漬けにされていた場所に、人影は全くなく、ただ破れたクロークが一つ残っているだけだったからだ。




