エピローグ
教会に王宮から早馬で伝令が来た。
「ルイード司教殿、国王からの召喚命令です。明日の朝、迎えの馬車を寄越すので応じるように」
「私が王宮に? はい、承知致しました」
翌日司教は、王宮の馬車で登城した。
「貴殿の働きにより、ローザン地区教会は他の教会に良い影響を与え、ひいてはアーマ教自体がこの国の人民に親しまれ、尊崇される存在になった。貴殿の功績は偉大である。
よってここに、貴殿を王宮教会の司教に命ずる」
謁見室で国王は、その旨を記した文書を広げて見せた。
「王宮教会の孤児院でも、子ども達の学習教育を実践して貰いたい」
「私が王宮教会の司教⁈ 畏れながらお待ち下さい、国王陛下。孤児院の子ども達の教育や、集会所での講習会の事を仰せですのなら、それは私の業績では御座いません。全てあの二人の」
ルイードは狼狽えて発言した。
「それを許可して実行させたのは貴殿であろう」
「それは、しかし‥‥‥」
「この異動は国王命令である。早速、来月一日から王宮教会で勤務してもらうぞ」
あと三週間しかなかった。
先ほど示された文書は、側近によりルイードに渡された。それには、司教の異動の件と共に、ローザン地区教会の新しい司教にノーディン院長を、次の孤児院院長をエンゾに交替する旨が記されていた。
その後、国王は私的に話があるとして、ルイードを私室に招いた。
そこにはオーティスが待ち構えていた。
「オーティス様、何故ここに」
「ルイード様、王宮教会への就任おめでとう御座います」
「何故それを?」
たった今告示された事を、何故知っているのか。
「王宮教会で働くとなると、ここの敷地内に家が必要になるだろう。実はちょうどいい物件がある事をオーティスが教えてくれてね」
国王はオーティスに目配せした。
「マリエンヌがあの男から取り上げた屋敷を売った金で買っても、まだ余る位の小さな家なのですが」
オーティスはマリエンヌの名前を出した。
「王宮教会の司教の報酬であれば、使用人二、三人くらいなら雇えるぞ」
「マリエンヌは、貴殿のプロポーズを待っているぞ、女性から言わせる気か?」
国王が続けざまに言った。最後は脅しだった。
全ては、国王とオーティスの策略(?)だった。ルイードはまんまと陥落した。
「承知致しました。お気遣いありがとうございます。オーティス殿、近々、マリエンヌ様を妻として申し受けに参ります」
「お待ちしております」
ルイードはマリエンヌにプロポーズして、王宮の敷地に用意された家でエリーザと共に暮らし始めた。
小さな家といっても、日本人から見れば、豪邸の部類に入る。コックとメイドを一人ずつ住み込みで雇い、翌年にはエリーザに弟が出来た。
エリーザはその後もローザン地区教会を度々訪れ、ロイスとの親交を深めた。
王宮教会の孤児院でも読み書き算数の教育が子ども達に施され、全国の教会に拡がった。
魔法使いはさまざまな場面で活躍して、王国に科学ではない進歩を齎した。
身を隠していた魔法使いたちも続々と名乗り出て商売を始めた。魔力を持つ者のDNAが次代に引き継がれ、魔法を使える者の人口は増えていった。
ロイスも十五歳の誕生日から王宮で働き始めた。エリーザとの親交は、だんだんと恋愛感情に変わっていった。
ここにも同い年のカップルが誕生しそうだ。マリエンヌが望んだように、ロイスはマリエンヌの義理の息子になるかも知れない。
慶太は持ち込んだ醤油で新しいレシピを考案し、教会のみんなに振る舞って喜ばれている。醤油は麹菌で、増産する事ができた。
「寿司を食わせてーな。今度、米持って来ようかなぁ。ああ、でも田んぼ作るの難しいかなぁ。ま、やってやれない事はないか!」
未知流は男児を出産した。星丸と名付けた。
『星と丸の王国』 了




