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星と丸の王国  作者: 藤木美佐衛
13/41

第13話 警察と焼き鳥

–未知流−


 翌日ルイードに警察組織について訊いてみた。

 警察という言葉が通じなかった。

「犯罪者を捕まえて罰する組織です」

「犯罪者を組織で捕まえるのですか」


 存在しないものを説明するのは難しい。

 押し問答の末、分かったことは、そんな組織はないということだ。


 平民のあいだでは、犯罪に遭った人は、自ら犯人を捕まえて罰するしかない。何かを盗られたら捕まえて取り返し、傷つけられたのなら仕返しする。殺されたのならかたきを打つ。だから現行犯が基本だ。

 捕まえられなければ泣き寝入りだ。広場を警備している騎馬兵は、その場での治安の維持のためにいるだけだ。


 王家に対して罪を働いた者は、王家の法と掟により捕えられる。罪によってはその場で殺されることもある。その為に王の周りには多くの騎士が控えている。

 殺されなくても王宮には牢獄があり、そこに投獄される。裁判もある。

 

 貴族も金や権力を傘に好き勝手できる。


 そんな時代かぁ。

 ロイスの仲間たちの救出の可能性は遠のいた。

 モヤモヤを抱えながら、私たちは日々の仕事に埋没していた。


 冬が来る前に、日頃の収穫に感謝するいわば“収穫祭”が行われる。この辺りではかなり盛大なお祭りのようだ。教会や孤児院もその準備に追われていた。


 祭りでは教会主催のバザーが行われる。バザーでは、信徒が寄付した不要品を売って教会の収入にする。


「近所のキリスト教会でもやってるよねー」

「ああ、あの教会な。お袋が要らない贈答品を出してたよ」

「タオルとかお皿とかね」

「買ったことは無いな、俺は」

「私あるよ。子どもの頃、刺繍入りの財布買ったわ」

 慶太と私は家が隣同士なので、話が早い。

 現代のキリスト教会でもバザーはよく見る光景だ。宗派や時空を超えて似たような事が行われているのだろう。


 教会と孤児院の財政は国からの補助金と、信徒や地域からの寄付金で成り立っている。潤沢な資金があるわけではなさそうだ。

 この教会は、古びていてとても趣があるけど、あちこち壊れている箇所がそのままになっている。予算がなくて修理ができないようだ。


「バザーでもっとお金を集められないかな?」

 私たちは常々、お世話になっている教会に何か恩返しをしたいと考えていた。

 バザーでは孤児院の子ども達が紙や木で作ったちょっとした小物や、畑でできた野菜や果物も売る。大きな儲けは期待できない。

「私たちもなんかこの世界にないものを作るとか」

 喋りながら何か思いつくことがあるので、私は考えをすぐに口に出す癖がある。


「食べ物の屋台は出るんだよな」

 それまでずっと聞く一方だった慶太がおもむろに口を開いた。

「うん、この辺の住民が出すみたい」

 テキ屋のような存在はこの世界にはいないようだ。

「教会は出しちゃダメなのか?」

「知らないけど、今までは出してなかっただけなんじゃないかな?」

「じゃ、この世界にないメニューを屋台で出そう」

「は?例えば?」

「焼き鳥とかホットドッグとかたこ焼きとか」

「凄い!慶太、頭いい!」

「もっと褒めていいぞ。褒められて伸びるタイプだかんな」

「何よ!真似すんな」

「頭撫でてくれないのか?」

「もう!」

 私は背伸びして慶太の頭を撫でてやった。


 これは本当に大ヒットの予感がした。



 –慶太−


 ロイスの件は一旦保留になった。

 ルイードやエンゾに相談しても答えは同じだった。貴族には手を出せない。おまけに警察組織など存在しない。


 ロイスには、助ける方法は今のところ見つからないと、正直に答えた。

 監禁されているロイスの仲間達が、ずっと無事でいる事を神に祈ろう、と言って一緒に祈った。俺は決して信心深くはないが、この時ばかりは真剣に祈った。ロイスは分かってくれた、というよりも、諦めたという方が近いだろう。


 俺は諦めない。

 きっといつか、何とかしてやる。その気持ちは忘れないでおく。


☆☆☆


 屋台のアイデアは我ながらいい思いつきだった。俺は早速動いた。


「祭りで食べ物の屋台を出してもいいですか」

 まずは許可をもらうためにルイードの執務室を訪ねた。

「住民が出すものと競合しないなら構わないと思いますが」

「絶対にかぶらないです」

 そこは自信があった。

「それから、食中毒には十分注意してください」

「もちろんです。あと、食品を提供するのに免許は必要ないですか」

「免許?」

 ルイードは怪訝けげんな顔をした。

「私の国では、食品を売る人は国からの許可が必要です」

「ここにはそんなシステムはないですよ」

「よかったです。ありがとうございます」


 許可を得たので俺は次に屋台で売るメニューを考えた。

 たこ焼きは丸い穴のくぼみのついたプレートがないので現実的ではなかった。これから鋳物屋に発注しても間に合わないだろう。焼き鳥とホットドッグの二つに絞ろう。


「まずは焼き鳥用の串作りだな、この国で竹は見たことがねぇからな。木でいいか」

 未知流と細かい事に関して相談した。

「ジュールがその辺詳しいよ」


 ジュールは、ここに辿り着く前に様々な仕事に就いていた、というかさせられていた。その中には森の木の伐採とか、庭木の剪定などもあったと聞いた。いろいろな木の知識がありそうだ。竹に似た材質の木があるかもしれない。

「だったなぁ。ちょっと聞いてみるか」

「材料が決まったら、串を作るのは子ども達に手伝って貰えばいいじゃん。面白がってやると思うよ」

 未知流がそんな提案をしてくれた。採用させて頂こう。


「ホットドッグのパンは、あらかじめ焼いておけるよね」

「そうだな。焼きたてが理想的だけどちょっと無理だな。翌日分のパンを前日に準備して朝焼くしかない」

「ソーセージはその場で焼いて挟むんでしょ」

「うん、焼き鳥もその場で焼くから、炭火を入れる炉と焼き網が要るな」


 炉と焼き網は屋台のサイズに合わせて作らないといけない。すぐに発注した。形が単純なのでそれほど時間はかからないと言われた。

 焼き鳥に使う炭も備長炭みたいな炭を探した。炭火焼きの肉を売る料理店の店主が教えてくれた。

 中に挟むソーセージは、カポランの腸詰を使う。これはありふれているものだから、それにつけるケチャップとマスタードは現代のものに近いものを工夫して作ってみよう。


 祭りの規模が分からないので、何食分用意すればいいか、見当もつかなかった。

 屋台を毎年出している地域の人に、大体の売り上げ数を教えてもらって、俺は材料費の計算をした。

 ここは、今は高校生だけど本来は食品会社の営業マンである俺の本領発揮だ。しかも管理栄養士の資格を持っている。食中毒の知識も豊富だ。


 祭りの準備は着々と進んで行った。

 バザーで売る品物も次々と集まってきた。未知流と地域のボランティアさん達が、適正な価格を決めて値札を付けていった。

 子ども達も小物作りと串作りに毎日忙しくしていた。未知流は、折り紙で鶴とか風船の折り方を子ども達に教えて作らせている。この国にはないようだ。意外と売れるかも知れない。

 俺は竹トンボの作り方を思い出そうとしたが、思い出せなかった。爺ちゃんが作ってくれたのを使って遊ぶだけだったからなぁ。作り方も習っておけば良かった。


 ジュールに教えてもらった木は、竹によく似て串に最適だった。

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