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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
2章 旅行にはペットも連れて
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9. 旅の始まり

「わー、すごい温泉の匂いがしますね!」


 待ちに待った温泉旅行当日。

 私とキナコは、チェックイン時間よりかなり早い午前中に、温泉街の駅に到着していた。


 少し古めかしい、良くいえば趣がある温泉街が広がっていて、少し硫黄のような匂いもする。


 キナコが運んでくれた重い荷物は駅のコインロッカーに預けており、これから近くの観光エリアを巡るのだ。




「さあキナコ、まずはロープウェイだよ! 高原のカフェでくつろぐキナコのかわいいところ、私にたくさん見せてね!」


 ロープウェイの中では、他にもちらほらお客さんはいたが、ここぞとばかりにキナコといちゃついておいた。

 密着すると、少し汗ばんだキナコの腕の感触が最高だ。汗は私のが大半かもしれないけど。


 とにかく、この旅ではキナコとの最大限のイチャイチャを目指していくつもりだ。




 高原はとても見晴らしが良く、空気も澄んでいて気持ちがいい……かと思っていたのだが、日差しがあまりにも強く、期待していたよりはるかに暑くて、すぐにカフェへ避難することになった。


「お、このチーズケーキ、なかなかですよ。つばめちゃんにも一口あげるね」


 あーん!? あーんですね!?

 この一口だけで、わざわざロープウェイに乗った甲斐があったものだよ……。




 高原から戻り、温泉街を散策していく。

 きれいな足湯を見つけたが、平日だからか、外が暑すぎるからか、そこは誰もいない閑散とした状態だった。


「いやあ、気持ちいいねえキナコ。今から温泉が楽しみになっちゃうよ」


「わたし、なんならこの足湯に全身浸かりたいかも。足が喜んでますよ」


 キナコは履いていた踝あたりまであるズボンをめくりあげ、細くて美しい足を足湯にばちゃばちゃさせていた。


 実はキナコは、このあと足を拭くものを持っていないはず。

 仕方ないから、私がバンドバッグに忍ばせておいたタオルで拭いてあげないとな。うん、仕方ないから。うへへ。




 お昼ごはんは温泉街のお蕎麦屋さんにした。

 さっきケーキも食べたところだし、お昼はあっさり系にして、夜までにお腹を空かせておかないと。


 こちらは平日のわりになかなかの繁盛ぶりであった。

 旅行雑誌でも大きめに書かれていたし、評判のお店なんだろう。


「ひゃああ、わさび入れすぎましたあ! ちょっと辛い!」


 悶えるキナコの写真を、店内ではすでに5枚は撮っている。

 この至高のかわいさをたくさん記録に残しておかなければ。




 温泉街のお土産屋さんでは、何も買わずにお菓子の試食ばかりを楽しんだ。

 悪いな、本格的なお土産は明日帰る前に買うつもりなんだ。


 酒屋さんでは、小さめの地酒を購入しておく。

 このお酒の力を借りれば、今晩は何かしらのハッピーイベントも、可能性はゼロではない。


「つばめちゃん、持ち込みのお酒って、今日の旅館はオッケーなんですかね?」


 す、鋭いね。さすがは猫的な女子。鋭い。


「いや、ほら、お土産だからね。帰ってから二人で飲もうと思ってね。うん」


 なあに、持ち込みNGなら、旅館で注文すればいいだけさ。ちょっと割高だろうけど。




 そして待ちに待った旅館のチェックイン。

 ちょっと奮発して選んだ旅館なので、店構えからなかなか雰囲気がいい。

 中庭には池が広がっていて、キナコは泳ぐ鯉の姿に喜んでいるようだった。


 旅館の従業員に案内され、通された部屋もこれまた素晴らしい。


 清潔な畳の匂い。

 窓際にある謎スペースのテーブルと椅子。

 過剰に分厚い座布団。


 これだ、これこそ温泉旅館というものだよ。


 キナコも興奮気味の嬉しそうな表情だ。

 奮発して良かったあ!


 旅館の方が淹れてくれたお茶を飲みつつ、館内案内をチェックする。

 大浴場の他に家族風呂も借りられるみたい……だけど、二人っきりでの入浴では、理性を保てる自信がない。


 とりあえず、畳でゴロゴロしているキナコの頭をこれでもか、と撫でておく。

 何せこのあとは、二人っきりではないだろうけど、キナコと一緒に入浴タイムなのだ。


 気持ち悪いと思われては大変だ。いやらしい目でキナコを見ないよう、今のうちに心を落ち着けておかなければならない。


「ああー。畳の上でつばめちゃんに撫でられるの、すごい気持ちいいです。だめになっちゃいそう……」


「うへへ、これがいいのんか? この撫で撫でがええのんか? うへへ!」


 幸せそうなキナコの仕草に、思わずおじさん染みたセリフが出てしまう。

 旅行先だと、いつも見ているはずのキナコのかわいさが、また数割増しで襲いかかってくる。


 ほんと、来て良かった。




 しばらくして、私たちは大浴場へ向かっていた。

 あらかじめ部屋で浴衣に着替える際、キナコの下着姿はがっつり見てしまったが、ここまではギリギリ理性を保っている。


 日々、キナコのお着替え姿を盗み見ている私でなければ危ないところだった。


「つばめちゃんは、浴衣が似合いますねえ。ちょっといつもと違うみたいな雰囲気で、素敵です」


 なんだようキナコ……しゅきぃ……。


「うへへ、そう? うへへ、日本人体型だからかなあ。あっ、でももちろん、キナコの方がずっとかわいいよ? 浴衣の下の足首とか、襟元のうなじとか、すごいきれい」


「な、なんか見てるとこが妙に具体的でエロくないですか? つばめちゃんだって、その浴衣の胸のとこの膨らんだ感じ、結構エロいからね」


 うへへへへ……。


 いやしかし実際、キナコの浴衣姿は、神。

 ただし浴衣は旅館特有の地味なやつだというのに、キナコのスタイルが良すぎて、外国の人がジャパニーズユカータ! を着ているような雰囲気が出ちゃってるけど。



 大浴場の脱衣場には、すでに二人ほど先客の着替えが残されていた。

 よしよし、二人っきりはちょっと、まだ心の準備が必要だからね。


 私はロッカー代わりの籠に、スピーディーに服を脱ぎ捨てていく。

 キナコが脱ぐ前に、こちらが脱ぎ終わってしまえばいいのだ。先に大浴場に行ってしまえば問題はない。

 

「つばめちゃん! 早く早く!」


 あ、あれ?

 キナコは私のさらに上を行く素早さで服を脱ぎ終わっていた。

 薄いタオル一枚では隠し切れない、キナコの胸が、足が、お尻が。


「キ、キナコチャン、サキニイッテモイインダヨー」


 また私から溢れてしまうロボット感。

 まずいまずい。理性理性。

 キナコはペット、キナコはペット、キナコはペット……。



 大浴場には先客の気配は無かった。

 どうやら奥の露天風呂の方に行っているみたいだ。


 実質二人っきり。裸。裸のキナコ。

 

 洗い場に並んで腰かけると、どうしてもキナコの方に目が行ってしまう。

 胸がエロい。首がエロい。足がエロい。腰がエロい。


 あ、鏡越しに目が合っちゃった……。


「ふふ、つばめちゃん、見たいならいくらでも見ていいのに。見るだけじゃなくて、つばめちゃんならいくらでも触っていいんですよ? ほら、どうですか?」


 キナコはこちらを堂々と向いて、私の左手を掴むと、自分の胸に押し当てた。



 ……触ってみな? 飛ぶぞ?



 頭の中は、もはや柔らか一色。

 指が、自然に動いてしまう。

 やわらかやわらか。


 キナコに嫌われないように、だとか、恋愛絡みのあれこれは控えようとか、これまでに考えていた全てが吹き飛んだ。

 やわらかやわらか。


「……つばめちゃん、息荒すぎですよ。自分でやらせといてなんですけど、ちょっと怖いな」


 キナコがすっと私の手を避ける。


 掌の中から、幸せをよぶ柔らかふんわりの気配が消えてしまう。


「ふふ、つばめちゃん、そんな悲しそうな顔しなくったって。ほら、夜ならいくらでも触れますよ? また後にしましょ」


 心なしか嬉しそうなキナコの顔。


 ま、まじですか。これは現実ですか?


 もう絶対に、自分を抑えられる気はしない。

 キナコが悪いんだからね? 初めてですよ、私をここまで欲情させたメス猫は!


 あったか柔らかすべすべもっちりな感触を脳内に刻みこみつつ、ほとんど放心状態になっていると、キナコが私の背中にお湯を流し、泡立てたタオルでごしごししてきた。


「ふふ、つばめちゃん、背中洗いっこしましょうか。あ、わたしのシャンプーもしてくれてもいいんですよ?」


 そんなの、我慢できるわけない!


 当然、そのあとめちゃくちゃ洗いっこした。

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