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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
1章 私のペットは女の子
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5. 休日の過ごし方

 会社がお休みの土曜日、お昼ごはんは氷でキンキンに冷やしたお素麺にした。

 ペロリと3束分くらいを、ネギと生姜たっぷりの麺つゆで平らげたキナコは、だらしなく床に転がっている。


 これはもう当然、撫でるしかない。

 最近は頭だけでなく、お腹まで撫でさせてくれるようになったキナコ。

 さわさわしていると、胃の部分が少し膨らんでいるのがわかる。


 お腹以外にも、どこでも好きに撫でさせてくれるような気はしているのだが、お胸やらお尻やらを撫でるのは、ちょっと私にまだ勇気が出ない。


 きっと最高の撫で心地なんだろうけど、嫌われちゃったらいけないし。

 控えめにお腹を撫でながら、手を胸元に伸ばしてみたい誘惑をぐっとこらえた。


 キナコはペット、キナコはペット、キナコはペット……。


「そういえばキナコ、私このあとちょっと本屋さんに用事があるんだけど、一緒に来る?」

「んー。レジのとこでお菓子買ってくれるなら行きますけど」


 そんなの、買うよ買う買う。500円分くらいまでならね。



 近所の大型書店までは徒歩10分。

 さりげなくお手々繋いでお散歩、という感じを狙っていたのだが、キナコは意外にも歩くのが速く、並んで歩くだけで精一杯だった。


 店内はクーラーが良く効いてとても気持ちがいい。早歩きでかいた汗が引いていくのがわかる。


「で、つばめちゃんは何買うの?」

「会社で使う手帳。この前コーヒーこぼして汚くなっちゃったから。キナコも欲しいものあったら見てきていいよ?」


 一応、キナコにも自由にしていいよとアピールしたつもりだったが、キナコはしっかり私にくっついてきてくれている。


 うれしいなあ、もう。

 見たいものがあるなら、あとで一緒に行けばいいもんね。

 キナコ大好き。


「ねえキナコ、このチェック柄の手帳と、こっちの革の表紙のやつ、どっちがいいと思う?」

「どっちでも一緒ですよ。会社用なら、使ってるつばめちゃんをわたしが見れるわけじゃないし」


 うむむ、なかなか真理をついている。確かにキナコ以外のことにお金を使うのは馬鹿らしい。

 ならば安い方にしておこうか。


「あ、つばめちゃん、DVD借りて帰りましょうよ。今日の夜、テレビあんまり面白そうなの無さそうだったし」

「いいね。夜はまったりDVD観賞だ」


 最近はネットでいろんな映画も見れるけど、レンタルはこうやって、選ぶ過程が楽しいんだと思う。

 キナコと一緒に選べるなら、なおさらだ。


「キナコ、ホラーはどう? 私、気になってた映画があるんだけど、一人で見るのは怖かったから……」

「うーん。途中で無駄にエッチな話が挟まる感じのB級ホラーは好きなんですけど。うわ、これはダメですよ。夜に一人で寝れなくなりそう」


 は!? 一人で寝れない!? いいじゃんそれ。

 レンタル決定。


「つばめちゃんはいじわるだなあ。あ、わたしこれ好き。このおじさんが難しいレトロゲーをクリアするまで頑張るやつ」

「それわかる。人がゲームしてるの見るのって、なんかほんわかするよね」


 これもレンタル決定。



 その後、雑誌コーナーを軽く流し見ていたとき、旅行雑誌が目に入った。


 温泉。いいよね温泉。


「ねえキナコ、今度温泉でも行かない? たまには贅沢に旅館のごはんとかさあ」

「うわあ、いいですねえ。わたし旅館の朝ごはんも大好きなんだあ」


 へへへ、温泉デート決定だな。

 

 近場の温泉の旅行雑誌を選び、購入することにした。

 なんとなくこういうのも、ネットで調べるより、雑誌を眺める方が楽しいんだよね。



 レジで精算するとなかなかの金額になったが、貯めていたポイントでなるべく相殺しておいた。

 侘しい独り身の生活で貯金はたっぷり貯まっているが、散財は禁物だ。


 もちろんレジ周りでお菓子もたくさん購入。 

 今日の夜はDVDを見ながら、お菓子をつまみつつ、キナコを撫で撫で。

 ふふ、最高の夜に間違いない。



 帰り道、買ったものを半分こにして二人で持つ。

 これだけでも、以前までの自分を思うと、幸せがこみ上げてくる。

 独りだと、重い荷物があっても誰も助けてはくれないし。

 今日のような軽い荷物でも、分け合う相手がいる、ということが無性にうれしい。


「ねえつばめちゃん、お菓子いっぱい買ってくれてありがとう!」


 キナコは満面の笑みで私と手を繋いできてくれた。


 きたきたきたああああ!

 お手々繋ぎデート達成だあ!


 すべすべした肌に、長い指。

 外の暑さでうっすらとかいた汗のせいか、しっとりとした手触りだ。

 この感触を忘れないよう、何度もにぎにぎしながら帰り道を進む。


「つばめちゃん、さっきからどうしたんですか? 急に静かになっちゃって」


 それはキナコのお手々の感触を黙々と味わっていたからだよ。

 本人には言いづら……くもないか。


「キナコはお手々もきれいだねえ。手の甲がすべすべだ」

「つばめちゃん、さっきから指の動かし方がちょっといやらしいんですけど」


 せまい歩道の向かいからおじさんが歩いてきたので、手を繋いだままキナコの後ろにまわり、道を譲ってあげる。

 どうですか、おじさん。こんなかわいい子と手を繋いでるんですよ。うらやましいでしょう?


「ねえ、つばめちゃん」


 キナコは少し小さな声で言った。

 何か引っ掛かる、いつもより少しだけ低い声で。


「さっきのおじさんに見られてましたよね、私たちが手を繋いでるの。つばめちゃんは、いい年した女の子同士でこんなことしてるの、見られて恥ずかしくないですか?」


 なんだろう。そりゃあ、会社の上司とかに見られたら少しは恥ずかしいかもしれないけども。


「んん? いや、むしろこんなかわいい子と手を繋いでますよーって、心の中で自慢してたけど。 あ、ごめん。もしかしてキナコは恥ずかしかった?」


 私はキナコほどの美人ではないしなあ。


「わたしは別に誰に見られてもかまいませんけど。へへへ、まあ、つばめちゃんが嫌じゃないなら、このままでいいですけどね」


 キナコは、ほとんど腕を組むように私にくっついて、ニヤニヤと笑った。

 よくわからないけど、私の答えは正解だったみたいだ。



 部屋に戻って夕飯までの間、ロフトでお昼寝をしているキナコを見ながら、私は幸せな気分で床のお掃除をしていた。


 リビングのすみずみまでワイパーをかけていると、ソファーの下に小さなポーチが落ちている。

 なんとなく持ち上げると、蓋が開いていたのか、中からカードがたくさんバラバラと落ちた。


 美容室の会員カードだとか、免許証だとか。

 たぶんキナコのものだろう。だらしない猫ちゃんだなあ。


 ……免許証?


 私の心臓が、とくりと跳ねた。


 ロフトを見ると、明らかにまだキナコは眠っている。

 私は、深く息を吸って、それから床の免許証を拾い上げた。



 長岡真弓。3月4日生まれ。21歳。

 

 ふ、普通だ……。

 そりゃ、キナコちゃんメス21歳、とは書いていない。


 まず、成人していたことに、心の底から安心した。未成年なら、この生活は、多分まずい。


 誕生日は魂に刻んだ。

 その日は絶対に盛大に祝ってあげよう。まだまだ先の話だけど、この先も今のような生活が続いてくれているのなら。


 真弓ちゃん、キナコちゃん、真弓ちゃん、キナコちゃん……。


 なんだかピンと来なくて、少し笑ってしまう。

 

 ロフトを見るとキナコはまだすやすやと眠っている。

 私は何事もなかったように、落ちているカードを全て拾い集め、ポーチに戻した。


 キナコめ、貧乏猫のくせに、あの会員制スーパーの有料会員カードまで持っているのか。

 今度連れて行ってもらおうかな。



 なお後日、名前をネットで調べてみると、普通に本名のまま、キナコが所属しているモデル事務所の紹介画像があげられていた。

 別に犯罪関係の情報が出てくるでもなく。

 おそらく、本人も全く名前を隠すつもりはなかったのだろう。


 ドキドキして損した。

 思わせ振りなやつめ。


 ちなみに当然、所属事務所がキナコを紹介している画像はがっつり保存した。

 普段はみれない、キナコの大人っぽい表情。まあこの画像がゲットできただけでも大満足ですけどね。

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