96話:傘を折って折って折り続けた日々
私は大学進学の際、故郷から脱出しました。
雨の日に買い物をして、速攻で傘を盗まれました。
『田舎ではどうか知らないけど、都会じゃ傘は傘立てに置いたらすぐ盗まれるよ。ちゃんと店の中に持っていかないと』
なるほど。
一人暮らしを始めて約1ヶ月、アパートの窓から布団を干し、お風呂の掃除。
掃除を終えて窓の方を見ると、干しておいた布団がありません。
あれ、下に落ちちゃったか?(4階)
色々と手を尽くしましたが……布団は出てきませんでした。
息子の一人暮らしのために奮発した羽毛ぶとん……多分盗まれたんでしょう。
自転車が盗まれました。
原付のミラーが盗まれました。
二度、三度……ムカつくので、工業用接着剤で固めてみたところ、割られました。
都会は怖いところだなあと思いました。
と、言うわけで傘です。
以前コンビニで働いていました。
そう、放置および放棄傘の処理なのです。
通勤通学時は雨が降っていたけど、今は晴れているからそのまま忘れちゃった。
もともと盗んできた傘だから、ここに置いておこう。
傘が風で壊れたんだけど、捨てるのが面倒だからそのまま放っておこう。
などなど。
様々な理由はあれど、雨が降るたびにコンビニでは大量の傘が放置されてしまう運命にあります。
特に、駅のそばのコンビニはその傾向が強いですね。
私はロックがかからない限り、店の傘立てに傘を置くことはありません。
盗まれて嫌な思いをするより、手間をかけるほうがマシだと思っていますので。
さて、この放置傘、もしくはゴミ。
数日保管だったり、即廃棄だったり、店によって対応は違います。
地方行政によって違いはありますが、傘を捨てるのにお金がかかるケースがあります。
まあ、壊れた傘はそのまま放棄ですね。
絶対に、持ち主が取りに来たりしません。
そういうわけで……傘をそのままゴミとして捨てることが出来る地方行政は希ですから、コンビニ店員は黙々と、放置された傘を処理しなければいけません。
大抵、店長か、深夜勤務の人間に丸投げされますが。(笑)
いやあ、梅雨の時期はすごいんですよ。
毎週毎週、数十本~百本程度の傘を、骨からビニールや布を外して分別し、まとめて縛って……。
ビニール傘は処理するのが簡単(1本で十数秒)なんですが、そうじゃない傘は1本に数分時間がかかったりするので……当然、残業でタダ働きですが、何か?
しかも、処理したあと、捨てるのが無料じゃないんだよなあ……。
最初に務めてたコンビニだと、1年で千本以上処理したはず。
そういえば、店の近所の飲食店の廃油(当然、業者に頼んで処理してもらわなくちゃいけないもの)を店のゴミ箱に捨てていくババアは、まだ生きているんだろうか。
憎しみで人が殺せるなら、死んでいておかしくないはずだが。
いやもう、コンビニのゴミ箱は宇宙ですよ。(笑)
市が指定しているゴミ袋に空き缶を詰めて店までやってきて、ゴミ箱に投入していく男性の行動理念は未だに理解できません。
その袋のまま、決められた場所に捨てればいいんですよ?
別の店の話ですが、使用済みの男性用自慰玩具には、驚きを通り越して爆笑しました。
うん、使用済みってわかる状態だったってことで察してください。(笑)
動物の死体。(嫌がらせか?)
学校のテスト。(笑)
アダルト雑誌の束。
……いけない、話がそれた。
一言で言うと。
傘は大事に使いましょう。
通算で、1万本は超えてるか?




