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74話:こいのぼり

今住んでいるところでは、こいのぼりは見かけません。

 5月3日、4日、5日はそれぞれ憲法記念日、みどりの日、子供の日。

 ……もともとみどりの日は昭和天皇の誕生日で4月29日でした。

 昭和から平成に、その流れで『天皇誕生日』は4月29日から12月23日になって、ゴールデンウイークの一角を形成する4月29日を平日に戻すのは影響が……で、みどりの日が生まれた……はず。

 祝日と祝日に挟まれた日は……などと、まず結論ありきの帳尻合わせで生まれた国民の休日がいつの間にやら名前を変えてすり替えられたぐらいの認識しかないです。

 まあ、国民の休日を迎えるたびに『へへっ、俺たち国民じゃないんだぜ』などという笑えないブラックジョークが蔓延するのを防ぐためなのかもしれません。

 大学に入ってから曜日の感覚が失われて、働き出すことで止めを刺されて……正直、いつの間にそうなったのか全くわからないところに、現代社会の闇が垣間見えますね。


 と、いうわけで5月5日の子供の日。

 鯉のぼり。

 子供の頃、歌の歌詞の『いらか』の意味がわからなくてアレだったんですが、フレーズというか旋律そのものは結構好きでした。

 ほら、ひなまつりの旋律とか、なんでそんな悲しそうなの?短調バリバリでとても楽しいとは思えないなどと子供心にも違和感マッハだったので余計に。

 男だらけの3兄弟だったもので、ひな祭り及びひな飾りは縁がなかったのですが、鯉のぼりなら話は別です。

 薫風を受けて大空を舞う鯉のぼり。

 こういうのは冷静に考えたら負けというか、男の子は猫と一緒でひらひらしたものに弱いのです。

 都会と違って田舎ですから、陽光を遮るとか、敷地内に侵入するなとか文句をつけられない代わりに、『あそこの家、鯉のぼりの一つも…』とか『〇〇さん、羽振りは良くても所詮本家じゃないから』とか『鯉のぼりにお金かけるよりも先にやることがるでしょうに』などと、陰口を叩かれまくるわけです。

 ほんと、田舎って……。(苦笑)

 ああ、うん、田舎に限った事じゃないですね……。

 そして実家の鯉のぼり。

 大きい兄ちゃん……つまり長兄が幼児だった頃に先祖伝来(笑)のを飾ったことがあるらしいです。

 いや、伝聞なのは私が見たことないから。

 ちなみに、次兄も知らないらしいです。

 母親曰く、古い、やたら金のかかったモノらしく、でかいわ、重いわ……まあ、そういうことです。


 ちょっとやそっとの風ではなびかない、でっかい鯉のぼり。

 つまり、よその家の鯉のぼりがなびいているのをよそに、うちの鯉のぼりはだらんと……。

 祖父と祖母の『なんか違う』的な表情を見て、母は胸がすっとしたそうな。

 うん、うちの母上様、嫁姑というか、家絡みのことでは色々と心に押しつぶされたどす黒い思いがふとした拍子ににじみ出てくるから怖い。

 たぶん、本人無意識なんだろうけど。(父に対する私のそれも、他人のことは言えませんが)

 私のそれが今の感覚とは言えませんが、嫁(母)がご飯作って、みんなが食べ終わってからひとりで食べて片付けとか、うへぇって思いましたもん。

 そういうところで育った父が、良くも悪くも影響を受けたのは間違いないことですしね。

 今ではなく、私が子供の頃、そこから10年ちょっとさかのぼった価値観に対する拒絶感がどこから生まれたかというと、学校教育であり、新聞であり、テレビであり……当時は考えませんでしたが、やはり情報というものは恐ろしいと思います。

 ただ、母親としても父親の家の価値観やあり方には『うへぇ』と思ったらしいので、幼少期の私の価値観形成においては父よりも母の影響が大きかったのではと。

 良くも悪くも、子供は両親や周囲の環境に影響を受けて成長するということでしょうね。

 実際、うちの3兄弟は、『家』とか『家族』に対する思いがかなりねじまがってると思います。

 純文とか、私小説のたぐいなら、『だらんと垂れ下がったままの鯉のぼり』に何らかの意味を含ませつつお話を進めていくことになるんでしょう。(笑)

 あれですかね、ラストシーンは両親が死んで遺品の整理中にぼろぼろの鯉のぼりを見つけて……3兄弟が季節はずれの鯉のぼりを立てたりするわけですね。

 鯉のぼりが垂れ下がったままで終わるか、いきなりの突風にかすかに揺れるとか、台風が来て鯉のぼりがはためくのを見て3兄弟が子供のように大はしゃぎとか、エンドはお好みで。


 個人的には、長兄が鯉のぼりを引き裂いて、次兄は冷めた目でそれを見つめ、私がオロオロする感じかと。

 いろいろ書いてますが、3兄弟で一番の犠牲者は長兄だと思ってますので。



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