72話:ゴールデンウイーク?聞こえんなぁ。
ゴールデンウイーク……?
ごめんなさい、私オカルトとかはちょっと……。
私が子供の頃は、4月29日と、5月の3日と5日が祝日で……一応1日はメーデー(メイ・デイ:夏の訪れを祝う日)で、国際的には100年以上の歴史を持つ労働者の日ってことになってて、企業によっては強制的に(笑)お休みとしてたところもあるとかないとか。
これだけ聞くと、『おお、労働者の日かぁ』などと、西洋社会における先進性に思いを馳せたりするかもしれませんが、それが生まれた経緯を知るとかなりげんなりするというか、先進性は地獄を経て生まれるもんだよねと悟りを開けたりするかもしれません。
と、いうか……日本における全国統一メーデーを知ってる世代って、ほとんど定年間際になるのかな?
私にしても、新聞やテレビのニュースで知ってるだけですし。
さて、話がそれた。
世間はゴールデンウイーク。
そっかー、ゴールデンウイークかぁ。
いやあ、考えてみたら私って、ゴールデンウイークの恩恵を受けたのは小学生の時だけかも。
中学、高校は当然野球で、むしろいつもより大変。
大学も、そんなの関係ないしねえ。
え?働き出してからですか?
うん、本格的に空気ですわ、ゴールデンウイーク。(笑)
レジャーを楽しむというかなんというか……社会に提供されるサービスってのは、当然そのサービスを支える存在が必要になるわけで。
実際問題、休日ってのは基本的に社会に提供されるサービスが減少する日であると同時に、社会に要求されるサービスが増加する(ある種の偏りがあるため一概には言えないと思うが)日でもあるはずで。
資本主義社会においては、効率化の宿命というべきでもある、各個人が提供する社会へのサービスの専門化が進行します。
生きていくことに対して必要とされる社会的サービスの多くを、私たちは労働で得た金で贖うことによって受け取り、日々を過ごしていく。
まあ、経済学的、社会学的観点からの、心が憂鬱になる論説は割愛しますが……日本社会において、祝日を増やせば増やすほど、その祝日を満喫できる割合は減少するという楽しい状況だったり。
もちろん、国外からの労働力流入とかの話は抜きに。
某大学というか、某教授による(経済学部の)馬鹿学生とそうでない学生を見抜く問題がありまして。
公園でゴミをポイ捨てしている若者に注意をしたところ、『俺たちがゴミを捨てることによって、このゴミを拾うという社会的労働が生まれる。これは、経済活性化に繋がる行為で、文句を言われる筋合いはない』と反論されました。
さあ、道徳的観念は抜きにして、彼らを論破してください。
なお、社会状況は現在(当時)の日本を想定します。
まあ、この問題を解くにあたって『穴を掘って埋め戻す意味のない作業に政府が給金を出すことは雇用を生み出すことにつながり……』という、かつての経済政策というか、公共事業の元になる論理があって、それを理解しているという前提が必要……かも。
当然、真面目に答えた上で『蹴る』『殴る』『真空飛び膝蹴り』『アックスボンバー』『スピニングトゥホールド』などと、思いの丈を綴った答案用紙が続出。
そしてそれと同じぐらい、問題の意味を理解できなかったり、論破できなかったり、え、彼らは間違ってませんよね的な答案用紙も続出。
助手から採点の結果を聞いた教授が、仲の良い教授と連れたって酒を飲みにいってさんざん愚痴をこぼしたそうな。
お約束の、『最近の学生は質が落ちた』などなど。
教授、進学率が1%の時代と、30%(当時)の時代を比べたら当然質は落ちますって。(笑)
うん、ゴールデンウイークですよね、忘れてませんよ。(笑)
そんな時代もありましたよね。
私が子供の頃は、お正月とか店とか5日ぐらいまで全部閉まってたんですけど、今は元旦から空いてるとこも少なくない。
つまり、そーいうことではないかと。
社会という名の個人の集団が、サービスを求めれば求めるほど、自分の休日が消えていくのだ。
休みがないと嘆くなら、まず自分の手でいろいろな事をなすのだ。
長期的に見れば、それは自分の休みを増やすことにつながる……かもしれない。
新人歓迎会が終わったあと、会社に戻って徹夜で仕事とか……そんな昔のことは忘れたね。
ブラックとか、ホワイトとか、そんな言葉がなかった頃の、遠い昔のお話。




