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36話:大丈夫、私は怖くない。

57話まで、1日おきのペースで更新します。

 前話はあまりにも一方的な書きっぱなしのような気がしまして。(笑)


 ちなみに、タイトルのそれはあるレーサーの最後の言葉だと言われています……実話かどうか知らないけれど、こんなお話。

 場面は外国のサーキット。

 バイクのレースも終盤、ピットインしたレーサーが給油後すぐに発進しようとしたところ、メカニックの一人が警告を発しました。


「待ってくれ、タイヤが随分摩耗している。危険だから交換しよう」


 まあ、実話だとしたら今と違って昔の、随分と穏やかな時代のことだったんでしょうね。

 このメカニックに対して、レーサーはさわやかな笑顔を浮かべながらぽんと肩を叩いて言ったそうな。


「大丈夫。私は怖くない」


 そして彼は、軽やかにバイクにまたがって旅立った……あの世に。

 摩耗したタイヤは高速コーナーでグリップを失い、ハイスピードのまま観客めがけて吹っ飛んだのだ。

 本人はもちろん、観客3人を巻き込んでの事故である。


 うん、悲劇のはずなんだけど、初めて聞いたときは爆笑してしまった。

 ここで悲劇なのは、『大丈夫、私は怖くない』に巻き込まれてなくなった観客……といっても昔のレースにおける観客の死亡事故は、割と自業自得の部分もあるからなあ。

 それはさておき、私の仲間内でこの言葉がしばらく流行した……主に、自分の都合で他人を巻き込む時に。

 ただこの話、嫌になるぐらい交通事故の本質をついているように私は思う。

 責任はさておいて、衝突事故において傷つくのは物理的な弱者である。

 どこかのメーカーの、『ご覧下さい、運転手は死亡しましたが車はほぼ無傷です(ドヤぁ)』みたいな特殊なコンセプトまでいかずとも、人は車を破壊できないが、車は容易く人を破壊する。

 人と人の衝突においても、時速30キロでぶつかり合えば合わせて60キロだ。人体の弾力性もくわわって衝撃は余すところなく浸透し、頭部にダメージを受ければ死に至る。

 質量と速度。

 速度が上がると飛躍的に殺傷率は上がる。

 もちろん、これをもって短絡的に『車は凶器である。それを自覚して……』などと言うつもりはない。

 交通事故は、被害者と加害者が、種類は違えどともに痛みを負うからだ。

 まあ、ごくごく僅かに例外もいるようだが……人の心の深淵を他人が知ることは能わないと逃げをうっておく。


 私が子供の頃、年間交通事故死の数は1万人を超えていた。

 数年前に受けた免許更新の講習によれば、その数は随分減ったようだ。

 まあ、事故そのものが減っていないことから分かるとおり、この数字にはトリックがある。

 いわゆる警察から発表される交通事故の死者の定義は、『事故発生から1日以内に死亡が確認された者』なのだ。

 本当は細かく定義があるのだが、事故の3日後に死亡した場合、その数はカウントされない。


『我々とみなさんの努力で、交通事故死はこれだけ減りましたぁ(ドヤぁ)』


 うん、お医者さんが頑張ったんですね。

 あと、自動車メーカーも。

 世間ずれしてくると、統計やら表現やら、世間の欺瞞ばかりが良く見えてきていやになりますねほんと。

 まあ、警察が頑張ることと交通事故云々は、本質的に無関係だと私は考えてますので、特に何も思わないんですけどね。


 交通ルール、みんなで守れば大渋滞。


 高校ぐらいの時に、深夜ラジオか何かで聞いたネタだったと思うのですが……まあ、その通りだな、と。

 ごくごく当たり前に、青信号で交差点を通過する車。

 これ、交通ルールに違反してますからね。

 本来は、交差点の手前で充分に減速し、左右を確認してから……まあ間違いなく、後ろからクラクションの大合唱及び、オカマ掘られますわ。(笑)

 わりと、『車の走ってないことを確認した道路で、赤信号を守っている意味はない』という意見を耳にしますが、それを是とすれば上記のように『青信号のばあい、交差点手前に充分に減速して…』運転する必要が出てきます。

 どんな状況であれ、赤信号は止まる。

 これが守られているからこそ、青信号で減速せずに交差点を通過できるのであって、これはセットになっている。

 その時その時で、自分の判断を優先されると他人の判断と衝突するからだ。

 何もない大平原の交差点、何も来てないよ……の状況においても、自己判断は社会的利益を損なうリスクをはらんでいる。

 人間は、ミスをする。

 人間は、楽をしたがる。

 数を重ねれば重ねるほど、あなたの判断は『大丈夫、私は怖くない』へと近づいていく。

 その日は、死ぬまでこないかもしれない。

 でも、次の瞬間あなたは他人を巻き込んで吹っ飛んでいるかもしれないのだ。

 それでもあなたは言うのだろう。


 大丈夫、私は怖くない。 

私は怖い。

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