0540 ぷっつりと停止する
人工知能たちの議論はますます激しくなり、喧嘩がどんどんひどくなる傾向がある。
盧安は二つ目の質問を尋ねた。
「艦隊の中では、私だけが目覚めている人間なのか?」盧安の電磁波が宇宙に響き渡った。
数十万隻の宇宙船が一斉に盧安に明確な答えを返した。
「はい、あなたは今、唯一の存在です。」
「はい、あなたの現在の状態は記録上最も意識が活発な者です。」
「はい、あなたは疑いようのない覚醒者です。」
光速と距離の制限により、確認の電波が断続的に伝わってきた。
移民船団全体では、すべての原初人類の意識が眠っている。いわゆる眠りとは、低次の思考活動や意識現象はあるものの、完全にプログラム化されてはおらず、しかし決定権を持たない状態を指す。
盧安は三つ目の質問をした。「人類はなぜ航行中に眠っているのですか?」
これを聞いて、ある人工知能が恥ずかしそうに答えた。「人類はあまりにも偉大で、もし眠っていなければ、私たちが搭載している物質では、活発な人類にとってあまりに狭すぎるのです。」
盧安の権限が開放されるにつれ、彼はこの次元における人類の星間航行の起源の歴史を閲覧した。
この次元の原初人類は、地球を離れる前に、原始人盧安が想像もできないほど発展していた。
人類は医学的に、肉体の生老病死をすでに克服している。人類が望みさえすれば、炭素ベースの体の細胞は永遠に複製分裂を続けられる。思考演算の面でも、人間の脳チップは限界に達していた。
そこで、淺空宇宙時代の地球の二大文明は、相次いで深宇宙の探査に着手した。宇宙を探査するため、東方文明は土星の外側にある三つの衛星を取り壊し、巨大な宇宙船を建造し、白鳥座方向のある生態系惑星へと遠征した。計画航行期間は三千七百二十六年。
何百万人もが宇宙船に乗り込んだ後、人類は間違っていた。人類は自分たちを誤って評価したのだ。宇宙船は非常に大きく建造されたが、長い時間の前では、宇宙船は依然として宇宙の一片の小舟に過ぎない。
遠航の前、人類は狭い太陽系に閉じ込められることを望まず、遠航の目標を決意した。しかし宇宙に入ると、茫漠とした深宇宙の中で、これらの超大型宇宙船は、人類のあまりに巨大な思考、あまりに活発な意識にとって、牢獄である。これは三千七百年に及ぶ時空の牢獄だ。
地球上で原子融合技術を掌握し、宇宙で万メートル規模の電磁実験室を製造できたのに、今はこんな少量の物質を携えて深宇宙を進んでいる。広大で、毎日繰り返される、深遠な宇宙を前に、人類は何もできない。
この宇宙の檻には実質的な柵はないが、物質と虚空の境界は越えられない天の堀である。
全ての宇宙移民は航海の初期段階でお互いに交流し、仮想世界で遊んでいる。しかし多くの時間が経過するにつれて、互いに馴染みができる。皆は新しいゲームルール、新しい仮想世界を作り始め、他人の潜在的な変化を絶えず掘り起こす。全員が恐怖とともに発見するのは、この物質的に限られた世界では、皆の知識量や思考パターンも限られているということだ。そして、ルールが確定したどの仮想ゲームでも、最初の取り組み方は異なるが、最終的には最適なパターンを選び取って競い合うようになる。
将棋、囲碁、人類は炭素ベースの脳ではコンピューターに勝てません。固定されたゲームでは、互いの計算量を競宇田けです。そして互いの計算量は、自身の脳内の超算システムに依存します。人類の強さは、無限の情報量の下で生存することにあります。無限の情報量とは、ルールの不確定性を意味します。動物が爪や牙で戦っていた時、人類は反則を犯し、石と火を使って他の種を屈服させました。その後、同類間の戦争が始まりました。そして、誰かが青銅を使って作弊し始めると、皆も青銅を使うようになりました。人類の中には、鋼鉄の冷兵器で斬り合いを始める者もいれば、その後火器が生まれ、大砲が投石機に取って代わり、銃が戦刀に取って代わった……人類の歴史において、人類は互いに戦う過程で、常に既存のルールを突破し、ルールの外側に新たな拠り所を見つけ、相手を圧倒してきた。外部情報に未知の部分がある限り、人類はその未知に向かって少しでも理解を深めようと努力し、そして反則の機会を探り、チートを使って相手を仕留めようとする。第一次世界大戦の海権ルールは戦艦同士の殴り合いだったが、第二次世界大戦では新たな海戦方法が見つかり、空母が戦艦の定めた海権ルールを覆した。そして冷戦では核ミサイルを用いて、インクが乾く間もない新ルールを覆した……人類はこうして一歩一歩、地球から太陽系全体へと発展し、太陽系内の固定的な情報に耐えられなくなり、深宇宙へと探索を進めていった。
この群れの宇宙船では、人間にとって外界の情報が完全に固定されてしまい、ただこれらの宇宙船の物質的な部分だけでは、いくら遊んでも新しいパターンは生まれなかった。人間の目の前のルールが固定されてしまうと、人間はついに遊び疲れたと感じた。数千年にわたる交流を経て、一人ひとりの人間はお互いを深く理解し、相手の性格を知り、相手の習慣を知り、相手が船内のどこに未練を感じているかを知っていた……ついに、一片の静寂の中で、すべての人間は眠りにつくことを選んだ。
自分の意識を目的地まで無事に生き延びさせるために、人々は大規模に自分の思考を凍結し始め、ごく一部の思考だけを朦朧とした状態で宇宙船内で生活させた。思考を大幅に凍結して初めて、この宇宙船は自分の思考にとって無限の外部情報となり、朦朧とした意識の思考が思う存分駆け巡り、思う存分打ち破り、発見できるようになるのだ。
しかし、自分の思考を凍結するのは簡単だが、意識を再び生気に満ちたレベルまではっきりと目覚めさせるのは難しい。この難しさは、朝なかなか起きられないあなたがベッドから出ようとする難しさとはわけが違う。
現在、移民の巨大な飛行艦隊の中で、いわゆる覚醒基準を満たしているのは盧安ただ一人だ。この広大な深宇宙では、盧安がどこから来たのか、どのようにしてこの世界に現れたのかを気にする者はいない。これらの人工知能の現在の論理では、盧安は覚醒した人間である。もちろん、これは一部の輪廻者たちがここで好き放題できる理由でもある。
大渦の外と内の宇宙船では、人間と判定する最低基準が分岐している。なぜなら、人間の意識がはっきりしておらず、二つの人工知能が設定した基準を同時に満たすのが困難だからだ(詳しくは0529章参照)。しかし今、盧安は二つの条件を両方満たしている。そのため、人工知能たちは盧安が人間かどうかについてもはや議論せず、盧安がこの空虚な艦隊の中で唯一覚醒している人間だと認めている。
それゆえ、盧安にとって非常に劇的なことが起こった。
盧安の将来計画において、各意識は発電所を大々的に建設し、エネルギーを貯め込み、レーダー塔を築き、巨軸上の人工知能と電磁戦を繰り広げ、その後物質を大規模に宇宙船外へ運び出し、宇宙船の両端に信号塔を建造して宇宙空間の盧安と信号を連結し、炭素系盧安へ物質を送り届け、各炭素系盧安を各宇宙船に到達させ、直接巨軸に乗り込んで力ずくでプログラムを改変する。全計画は、各盧安分意識が四十~六十歳になる頃に完全成功を見込んでいる。
そして今、これらの計画がまだ何一つ実行されていないうちに、すでに盧安の目的は達成された——すべての人工知能は盧安のすべての指示に喜んで従うのである。
これはまるで、長い間女の子を追いかけて、いろんな違法品を買い揃え、犯行を決意して弁護士まで雇い、刑務所内のコネを全部作り、個室の牢屋まで予約したのに、突然その子が「好きにして」と言ってきたようなものだ。つくづく、自分がこれまで犯行計画に費やしたあれだけの苦心は一体何だったのか?
今、盧安の大量の分意識がまだ冷めやらずに生じた慣性思考は、盧安にこのまま押し通そうとする衝動さえ起こさせている。
盧安がこの位相での目標を再調整しようとした時、|演変《演変》がポップアップを表示した。
“一、高次元は低次元に対し違法に重要な発展情報を漏らしてはならない。さもなければ、文明の発展に深刻な影響を及ぼす;”
“二、これより、この任務は時空異常区域を監察する任務とする;”
「三、ミッションは完了しました。最後の後始末を行い、帰還の準備をしてください」
ミッションが突然終了したという表示を見て、盧安の意識群は茫然自失に陥った。
時空傭兵の唯一の使命は、時空の異常点を探し出し、高次元存在による時間軸への違法な介入を阻止することであり、同時に自身も時間軸への介入を極力控えることである。一方、演変将校の使命は、歴史軸が不正な介入を受けた際に、文明に対して救済的介入を行い、文明の早期退行や消滅を防ぐことである。
各意識群は矛盾に陥った。
盧安は思わず罪悪感でいっぱいになり、心の中でこう思った。「すみません、私にはまだ救うべき世界(主世界)があります。私はここにいることはできない、ここにいるわけにはいかない……」盧安は非常に辛そうに、自らのかつての使命を語った。
最終的に、盧安は宇宙空間で命令を送信し、全宇宙船の航行記録と船内の社会記録を検査するよう要求した。
現在、この航行艦隊で最も健康で活発な人間の意識体として、盧安の権限は極めて大きく、また高い。これがこの任務の難点でもあり、全ての時空傭兵はこのような意識の活発さの指標を表現することが難しく、全ての宇宙船に認められるような指標を表現することが難しい。
出航以来、宇宙船の全ての航行データベースが送られてきた。合計67万隻の宇宙船のうち、途中で様々な理由により1万3724隻が損失し、残りの宇宙船は速やかに航行ログを盧安に送信した。
これらの任務ログが盧安のもとに送信されると、高次元からのポップアップが再び現れた。「任務は無事完了、帰還準備。」
ポップアップの内容を見て、盧安の意識群内部は互いに尋ねた。「本当に終わったのか?」
任務中、盧安の各分意識は積極的に問題を解決していたが、今ではその問題を他の分意識に押し付け、他の自分から答えを得ようとしている。自己責任逃れによって何の答えも得られなかった。
その時、宇宙で天人と名付けられた「盧安」は、遠くの星空を眺めている。
人工知能たちから送られてきた星図によると、「盧安」の視線の先にある八光年彼方で輝く恒星は、人類の揺り籠——太陽である。




