0393 主人公の命
物質虚化、これは非常に強力な超能力だ。少なくとも盧安から見れば、この能力は自分の導力超能力よりもいくらか高度なものに思える(隣の芝生は青く見える)。
その能力が作り出す物理的条件は、盧安が現在最も模倣するのが難しい存在のいくつかであり、空間能力と同じレベルにある。
この世界の研究水準と研究能力に制限され、超能部門は破壊力に基づいて超能力者を評価しており、多少主観的な色合いが含まれている。この世界の基準では、李星霽はレベル4だが、もし盧安が李星霽を評価するなら、決してレベル4程度で済む話ではない。
盧安は予行演習の中で思わず仮定してみた。「もし李星霽が自分と同じ方向を向いていたら、どうなるだろうか?」
盧安は結局、この考えを取り下げた。人それぞれ道は異なるものであり、盧安は無理に求めることはできなかった。
あるレーザー研究所で、盧安は李星霽のためにテストーー用の場所を申請した。
「ブンブン……」レーザーの発射には本来音はないが、空気中には塵が存在し、レーザーが通過する際に塵が瞬間的にイオン化されることで、この独特な震え音が発生するのだ。
100メートル先の金属ターゲットが絶えず焼灼され気化している。強い光が金属層に照射されると、まるで拡大鏡で太陽光を集めてトイレットペーパーを焼くかのように、金属は溶けることさえなく、鉄線が純酸素中で燃焼するように、無数の白く輝く火花を炸裂させた。
このような威力は李星霽の想定を大きく超えていたので、李星霽は慎重に自分の手にあるこの親指ほどの太さのレーザーポインターを停止させ、同時に放電構造の歯車発電機を自分の体に装着した虚化システムから取り外した。
この小さなレーザー発振器は、出力が1キロ瓦特で、およそ電子レンジ一台分の出力だ。この出力は第3世代戦車のレーザー兵器の範疇であり、対戦車ミサイルへの対処に使用できる。このようなシステムは、少なくともジープに車載する必要があるが、虚化能力により物質を重ね合わせることができるため、盧安は李星霽のためにこの武器を設計した――多数の通常のレーザーポインターの発振器構造を同時に励起させ、現実化する際にレーザーを瞬時に放出するのだ。
もし李星霽の操作がより細やかであれば、より複雑な機械構造を同時に虚化させ、必要な動作と高エネルギー放出の瞬間に、絶妙なタイミングで実体化させることができれば、理論上、李星霽はパックパック一つで艦載用レーザー砲の装置を持ち運べるが、現在の李星霽の制御力ではこれができない。
電子ペンでタブレットにデータを記録している隣の盧安をちらりと見て、李星霽はため息をついた。
二日前、李星霽は盧安を炭素繊維の生産工場へ案内したが、今日、盧安は李星霽を引っ張って、自分のためにオーダーメイドされたこの品をテストーーしに来た。盧安の恩返しに李星霽はとても驚いた。
もともと李星霽が以前、個人用武器の工場へ行った目的も、工場のエンジニアたちに自分の武器をオーダーメイドしてもらうためだった。そして今、盧安が明らかにその仕事を代わりに引き受けてくれたのだ。
李星霽が以前に依頼した工場はまだテストーー段階にある。これはその工場のエンジニアを責めるわけにはいかない。なぜなら、その工場のエンジニアはまだ李星霽の能力を理解していないからだ。例えば、重要なバッテリー構造をどれだけ重ねられるか、重ねた後、李星霽の超能力で物質を虚から実に切り替える速度はどれくらいか。そのため、設計がまだ確定されておらず、盧安のように大胆に踏み切れない。李星霽の超能力状況を理解しなければ、李星霽が使えるものをカスタムメイドすることはできない。
同じ銃器でも、ロシア人の体格と東アジア人の体格は異なり、だから銃器の反動や重量などの要素はデザイナーが考慮すべきことだ。そして超能力者が使用する道具も、超能力者の能力状況に応じて考えなければならない。
盧安は李星霽の超能力に精通している。これは数ヶ月前、李星霽が自身の超能力テストーーのデータと関連作業を盧安に提出した後、盧安が予行演習で大規模な質問を行ったからだ。盧安は李星霽の超能力の状況を把握しただけでなく、ついでに盛怡苒の超能力の状況も少し理解した。そして、李星霽の能力はこの数ヶ月、安定して変化していたため、盧安は彼らの需要に合わせて必要なものをおおよそカスタマイズすることができた。
今となっては、李星霽は手にしたこの道具が非常に使いやすいと感じているだけだが、李星霽はまさに盧安が意識的に自分のデータを記録していたからこそ、これほど使いやすい道具を提供してくれたのだと気づいていなかった。
この時代のほとんどの人はそうで、テクノロジー製品は科学者の仕事であり、自分たちが欲しいものは優秀な科学者が作り出せると常に考えている。実際には、テクノロジー製品の完成にはユーザーフィードバック情報が必要であり、それに基づいて改良が行われる。詳細なユーザーフィードバックがなければ、製造元が作り出す製品には無数の欠陥が存在する。医療用品を例にとると、薬剤や医療機器の設計上の考慮不足は人命に関わることもある。時には、その欠陥の深刻さゆえに、製造元はユーザーを騙して使用させる必要すら生じる。
李星霽はこれをしまった後、今度は盧安と向き合うことになり、どうにも気まずさがある。数秒後、李星霽はようやく「ありがとう」と一言絞り出した。
李星霽から見れば、盧安の助けはとても親切で、その親切さが李星霽に少なからぬ気まずさを感じさせるほどだった。
李星霽はもともと、双方が“还能做朋友”というような社交辞令の関係に属していると思っていた。而现在、盧安は関係を死党まで発展させようとしているようだ。
白い研究員の服装を着た盧安は手を振りながら言った。「看来、你还没对我的习以为常。如果我们关系再好一点、你应该用挑剔的语气抱怨为什么不能做得更好一点。」
盧安は“你和我谁跟谁啊”という悪友のような笑みを浮かべ、テストーー場(飛秒物理学の看板)を指さしながら、李星霽に言った。「如你所见、如果在超能上试图在高能光束上有发展、我会尽可能提供你想要的。当然、一些研究所的通行证、则需要拜托你了。我可不会和你客气。」
それを聞いて、李星霽は笑みを浮かべ、冗談めかして言った。「お前、技術スパイかよ!? あんなに多くの研究部門の通行証を持ってるなんて!」
「趣味さ、ただの個人的な趣味だよ」と盧安も同じく笑いながら、李星霽がポケットに入れているレーザー装置を指さして言った。「俺の趣味が君の役に立ってるだろう?」
西北、玄鳥部。
今、療養所の中では大勢の人々が慌ただしく動いている。玄鳥部の複数の重要部門の責任者たちは、携帯電話を手に静かに隣のビルで待機している。中核研究区から明確な連絡が入り次第、彼らは自分の後ろ盾――元老会の元老たちに電話をかけるのだ。
今、療養院の核心区域では、すべての設備が地面にしっかり固定されている。この区域を歩く人がいると、まるで波のうねる小船の上を歩いているように感じるだろう。玄鳥部の研究員の大半はガーナーヅチで、この揺れ動く環境では数分も経たないうちに船酔いのような感覚を覚える。
これらすべては、重力場の変動によって起こっている。核心区の中央では、盧九重が無意識に超能力を放ち、二百から三百メートル範囲の重力変化を引き起こしている。この範囲内では、重力の方向と強度が非常に激しく周期的に変動している。
もし引力の強さをグラフにすると、この立体空間内に渦が存在することがわかる。渦の腕は引力の強い領域で、腕の間は引力の弱い領域であり、引力はわずか0.1から0.2gしかない。この渦の中心付近では、引力はなんと24gにも達する。一方、盧九重のいる位置では、引力環境は安定した状態にある。
ここ数日、盧九重が目覚める兆候がますますはっきりしてきた。最初はまばたきから始まり、次第に指を動かすようになり、顔にはしばしば歪んだ表情が浮かび、まるで熟睡している人が金縛りに遭っているかのようだ。
療養所から三百メートル離れた場所で、輪廻者の小隊も盧九重が目覚めるのを待っている。彼らは時折、目の前の池の波紋を見て、盧九重の様子を判断している。
池では、3~4メートル幅の波紋が震えているのが見える。この波の形状は片持ち梁の一部のように見える。盧九重が引き起こした重力変動は療養所の陸地環境ではあまり目立たないが、水中では非常に明確に見える。盧九重を巨大な湖に置けば、半径数百メートルの大渦の全貌が見えるだろう。
池で跳ねる魚を見ながら、ある輪廻者は感心して言った。「事情を知らなければ、地震かと思ってしまうよ。」
周囲600メートルの範囲では、地下のネズミがここ数日でみな逃げ去り、鳥もここを避けて飛んでいる。池の底の堆積物が震動するため、魚たちは水面に向かって活発に跳ねる。これは確かに地震の前兆のように見える。もし広範囲で起きている現象なら、まさに地震の前兆に違いない。
一人の輪廻者が言った。「盧九重が目覚めたから、これからの展開はもっと複雑になるな。今、各チームはすでに自分たちの主役チームを選んでいる。物語を進めるために、彼らはかなり激しく争宇田ろう。」
そのチームのリーダーがまとめた。「原作の展開では、李星霽、湯宏康、盧九重という三人の主人公は性格も道筋も異なるが、みな危険を切り抜けて幸運を掴み、各自の勢力で中核人物となった。これからは、皆が自分たちの推す主人公と、他の連中が推す主人公を衝突させて、最後に誰が笑うのかを見守ることになる。今、勢いに乗じられるポジションは他のチームに占められてしまった。我々のような弱小チームは連中が格好つけるのを見ているしかなく、ついでに残り物を拾宇田けだ。」
別のメンバーがリーダーに尋ねた。「リーダー、じゃあ今回の任務では我々は何をすればいい?何もしなければ、次は天雲がもっと困難な任務を割り当ててくるに決まってる。」
隊長は振り返って言った。「君たちは白銀の超能力を手に入れたんだろう、だからいいところで引き際だ。あの強いチームの主導によれば、白銀はこの先、砲灰になる可能性が高い。私の推定では、超能力戦争はおそらく第一部(『宇宙の影1』)で勃発するだろう。まずは生き延びることだ、私の言うことを聞いて間違いない。次の任務については……はあ、もしかすると私たちのチームの方がもっと適しているかもしれないね。」
ちょうどその時、実験室の位置から微かな震動が伝わってきた。まるで数万頭の象が同時に足を踏み鳴らすようで、地面に恐ろしい震動をもたらした。
盧九重が目を覚ました。




