7大精霊からの情報
アスラ王国の自然災害やスタンピードはどうやら濃い魔素が原因のようだ。そこで、魔素を取り除く方法を考えたが、面積が広すぎてどうにもできない。そこで、ギンの提案の通り7大精霊にお願いしようと祈りをささげてみた。すると、目の前に7大精霊達がやってきてくれた。
サラマンダーはどうやらかなり短気のようだ。
「早く要件を言え。」
僕はこの国の置かれている現状について説明した。
「この国は魔素が多すぎて作物は育たないし、魔物は強力になってるんです。どうにか皆さんの力を借りてこの国を立て直したいんですが、協力してくれませんか?」
すると、ノームが聞いてきた。
「この国をよくすることがお主にとって何の利益があるんだ?」
「別に僕に利益はないと思います。でも、困ってる人がいたら放っておけないんです。お願いします。協力してください。」
僕は深々と頭を下げた。すると、ウンディーネがニコニコ笑いながら近寄ってきた。
「いいわよ。あなた可愛いもん。協力してあげるわ。」
他の大精霊達は顔を見合っている。サラマンダーは腕を組んでそっぽを向いていた。そして、いきなり僕に言ってきた。
「協力してやってもいい。ただし、俺に勝てたらだ。どうだ?戦ってみるか?」
するとギンとマギーが近寄ってきた。
「シン様。どうしますか?相手はサラマンダーです。かなり強いですよ。」
「勝てるの?シン!やめときなよ!相手は大精霊でしょ?魔族四天王だって勝てないわよ!」
「大丈夫さ。彼から殺意は感じられないからね。多分、僕の本気度を確認したいんでと思うよ。」
僕は深呼吸して答えた。ギンとマギーは心配そうだ。他の大精霊達は何やら笑っている。
「わかりました。本意ではありませんが、協力していただけるならやりましょう。」
「お前、大精霊のこの俺に勝てると思っているのか?」
「わかりません。でも、何もせずに諦めたくないですから。」
2人のやり取りをギンとマギーが心配そうに見ている。
「シン様。大丈夫ですか?」
「シン。無理しちゃだめだよ。」
「大丈夫だよ。ギン。マギー。この国の人達のためにやってみるよ。」
僕とサラマンダーはみんなから距離を取って対峙した。サラマンダーは本気で戦うようだ。全身から燃え盛る真っ赤なオーラが溢れ出た。僕も今までにないほどに魔力を高めて、魔力を完全に開放した。治まっていた僕の銀髪が再び逆立ち青い瞳が黄金色に変化する。そして、全身からは七色の光が辺り一帯に放射された。
「なるほどな。ただの人族ではなさそうだな。どこからでもかかってきていいぞ!」
僕は背中のマサムネを空間収納に仕舞い、最初に使っていた剣を取り出した。その剣を見てサラマンダーが目を細めた。
「行きますよ。」
僕は瞬間移動でサラマンダーの目の前に行き剣を振った。サラマンダーはぎりぎり避けたが、サラマンダーの後ろにあった木々が見事に切断された。今度はサラマンダーの攻撃だ。サラマンダーは翼を広げてパタパタと始めた。すると、翼から出た火の粉が巨大な炎へと変化して僕に襲い掛かる。僕は目の前に手を出して結界で防いだ。
「なかなかやるではないか。」
「そちらこそ。やはり大精霊だけのことはありますね。」
僕は手を天に掲げて魔法を発動する。
『ウォータートルネード』
すると、大量の水がうねりながらサラマンダーに襲い掛かる。サラマンダーは目の前に炎の壁を作ってそれを防いだ。僕は瞬間移動でサラマンダーの後ろに転移し、剣に魔力を流し込んで上から斬りつけた。七色の光を放つ剣がサラマンダーの頭上ギリギリで止まった。
「俺の負けだな。」
それを見ていた大精霊達がいきなり僕の前に来て片膝をついた。
「えっ?!何?何なんですか?」
ウンディーネが言ってきた。
「大変失礼しました。あなた様のことを試させていただきました。」
「えっ?!ぼ、僕は普通の人間ですよ。」
「あなた様の御名前を教えていただけないでしょうか?」
「シンですけど。」
「やはりそうでしたか。」
「どういうことですか?僕のことを知ってるんですか?僕は記憶がないんですよ。もし僕のことを知っているなら教えてください!」
「あなた様のことは精霊女王様から聞いておりました。ですが、詳しいことは存じ上げません。申し訳ございません。」
本当に知らないのか、知っているが答えられないのかわからない。でも、これ以上聞いたら大精霊達に迷惑が掛かりそうだったので、諦めることにした。
「皆さん。立ってください。僕は普通の人族です。ですので、そのつもりで対応していただくと嬉しいです。」
すると、大精霊達が全員立ち上がった。そして、銀髪の少女が可愛らしく言ってきた。
「なら、これからはシンでいいよね!」
「はい。そう呼んでくれると嬉しいです。」
「ウイスプ!あまりなれなれしくすると精霊女王様に叱られるわよ!」
「なら、あなたは何て呼ぶのよ!シャウプ!」
「そうね~。シンちゃんがいいかな。」
「同じじゃない!」
ハッハッハッ
その場の硬い雰囲気が一気に和んだ。そして、サラマンダーがやってきた。
「申し訳なかった。確かめたかったのだ。」
「いいですよ。気にしてませんから。」
「そうか。感謝する。では、我らの力を存分に使ってくれ!」
それぞれの大精霊の配下がこの世界には無数にいるようだ。その配下達に命令してこの国の魔素を浄化してもらうことにした。
「ありがとうございます。皆さん。」
「いいのよ。また、何かあったら呼んでね。」
「シン!絶対に呼ぶのよ!」
「シンちゃん!またね!」
大精霊達は帰って行った。すると、マギーが聞いてきた。
「シン!あなたやっぱり普通じゃないわよ。大精霊っていえば四天王だってよくて引き分けよ。何で勝っちゃうのよ!信じられない!」
「マギー。シン様はそういう方ですよ。」
ギンは終始ニコニコしていた。
「なんか今日は疲れたよ。どこかに寝る場所ないかな~。」
「なら、街に戻ってガリレさんに家を貸してもらおうよ。ほとんど人が住んでないんだから、きっと空いてる家もあるわよ。」
「そうね。マギーもたまにはいいこと言うわね。」
「たまにじゃないわよ!いつもです!」




