いざ!アラス王国へ
僕達は女王ヒメミヤを救うため、王城に乗り込んだ。その地下で魔族100人隊長のギガンを討伐し、魔法で眠らされていたヒメミヤを救出した。意識を取り戻したヒメミヤと大領主たちが今後のことを話し始めたので、僕達は王城を出ることにした。宿屋を探そうと王都キウトの街に出たのだが、王都はいまだに静まり返っている。誰一人として街に出ているものはいない。すると、王都全体にヒメミヤの声が響き渡った。
「悲しい戦は終わりました。戦の原因となっていた魔族は全て英雄達が討伐してくれました。国民の皆さん!もう、この国の危機は去ったのです!本日を祝日としましょう!」
しばらくして、人々が家の外に出てきた。そしていつの間にか大通りは人々であふれかえり、喜びの声と笑い声が響き渡った。
「シン様。みんな安心したようですね。」
「そうだね。戦争で一番苦しむのは国民達だからね。」
「ねえ。シン。宿屋があっても料理は期待できないんじゃないの?」
「どうして?」
「だって戦争で食料が不足してるでしょ?」
「そうだね。完全に復興が終わるまでは、しばらく期待できないだろうね。」
「もしかして、マギー!また、シン様が持ってる料理を期待してるんでしょ?」
「そうよ。別にいいじゃない!わたしだって頑張ったんだから!」
「そうだね。ギンもマギーもよく頑張ったと思うよ。」
すると、マギーがふんぞり返っていった。
「ほらね!やっぱりシンはよく見てるよね!」
ここでギンが聞いてきた。
「ところでシン様。以前、シン様はジパンの出身かもしれないと言っていましたが、何か思い出しましたか?」
ギンに言われるまで忘れていた。ここでじっくり考えてみたが、別に懐かしさもなにも感じない。僕の夢に出てきた景色とも全然違う。ただ、料理が似ているのは間違いない。
「やっぱり思い出せないよ。もしかしたら、僕が夢で見た街はジパンじゃないかもしれないな。」
「そうですか~。」
その後、王都をぶらぶらしながら今後のことを相談した。確かこの東の大陸にはジパン以外の国もあると聞いている。同じ大陸になるのなら、もしかしたら僕の記憶はその国のものかもしれない。
翌朝、僕達は王城に行った。王城では大会議室で復興に向けての相談が行われていた。
「皆さん、おはようございます。」
「シン殿。おはようございます。」
ヒメミヤが笑顔で出迎えてくれた。大領主達も席を立って挨拶してきた。
「みなさん。大事な会議中に申し訳ありません。僕達、また旅に出ようと思ってるんですが。」
すると、シズヒサが驚いた顔で言ってきた。
「シン殿。もう旅に出てしまわれるのですか?まだ、シン殿達には何のお礼もしてません。もうしばらくこの国にとどまっていただくことはできないんでしょうか?」
「ありがとうございます。シズヒサ様。でも、僕達は世界中を見て回りたいんですよ。そうなると時間もかかるだろうから・・・」
話の途中だったが、今度はオダナガが話し始めた。
「わかりました。シン殿。次にシン殿にお会いする時までに、しっかりと償いをしておきましょう。そうだな!タケノブ殿。」
「おうよ!次にシン殿が来る時にはこの国は生まれ変わってるから、楽しみにしてるがいいさ。」
ここにいる人達の目の輝きは確かなものだ。きっとこの国は立ち直るだろう。これで僕も安心して旅に出れる。そこで僕はみんなに聞いた。
「皆さんに聞きたいんですけど、この大陸には他にも国があるんですよね?」
するとシズヒサをはじめ全員が困った顔をした。そして、代表してモリナリが話し始めた。
「シン殿。言いづらい話だが、確かにこの大陸には2つの国があったのだが、今は一つなんだ。」
「どうしてですか?もしかして、滅んじゃったとか?」
「そうなんだ。アラス王国はこの国より小さくてな。農業や漁業が盛んな国だったのだが、度重なる自然災害に見舞われてな。」
するとギンが聞いた。
「国民達はどうしたんでしょうか?」
「この国に逃れてきた者もおるし、海を渡って他の大陸に移り住んだものもおる。まだ、一部の人達が残っているという噂だがな。」
「シン。もしかしたら、あなたそこから逃げてきた人達の子どもかもしれないわね。」
すると、ヒメミヤが聞いてきた。
「どういうことですか?シン殿がアラス王国の人間ってことですか?」
「昨日も話したけど僕には昔の記憶がないんだ。気付いたら森の中に一人でいたんだよ。でも、以前夢を見たんだ。そこの料理がこのジパンのものとそっくりらしいんだ。」
「そうなんですか?なら、可能性はありますね。アラス王国の料理も文化もこの国とそっくりですから。」
「シン。なんか期待できそうね。」
するとタケノブが言った。
「アラス王国はこのジパンの東南にあります。我が領地を通っていくといいでしょう。みんなに伝えておきますので。」
「ありがとうございます。」
「ただ、」
「『ただ』なんですか?」
「あの国にはほとんど人が住んでいませんから、魔物が大量発生しているんですよ。私の領地にもしばしば魔物達がやってきて困っているんです。」
「シン様。冒険者ギルドは何をしているのでしょうか?」
すると、オダナガが教えてくれた。
「あの国からは冒険者ギルドも撤退したんですよ。」
「シン!それなら私達が討伐して回ればいいよね!」
大領主達もマギーの言葉に一瞬驚いたが、何やら納得した様子だった。
「そうですね。シン殿達でしたら魔物にやられることもないでしょうから。」
僕達はみんなに見送られて王城を後にした。そして、タケノブの領地を通って旧アラス王国に向かった。
「シン!なんか楽しみだね!」
「まあね。」
僕の心には希望と不安でいっぱいだった。もしかしたら僕の出生の秘密が分かるかもしれない。ギンが横で心配そうに見えている。
「二人とも気を付けて!この先の森から魔物の反応があるから。」
「はい。」




