戦乱の終結
魔族のサルとヤマカンを懲罰した僕達は再び上空に舞い上がって戦場へと向かった。しばらく行ったところで森が開けて草原地帯に出た。下を見ると兵士達が大勢倒れているのが見えた。そして、前方ではまさに両陣営が激しい戦闘を繰り広げていた。
「これじゃ、範囲が広すぎて収拾できないわよ!」
「どうしますか?シン様!」
僕は考えた。人数が多すぎて全員の意識を刈り取るには時間がかかりそうだ。かといって、このままではさらに犠牲者が増えてしまう。
「どうしたもんかな~。」
「私がフェンリルの姿に戻って説得してみましょうか?」
「それだと、後々面倒にならないかな~。」
「そうですね。」
「いいよ。僕がやるよ!」
僕は魔力を解放することにした。銀髪が逆立ち青い瞳が黄金色へと変化し、さらに全身から眩しい光が放たれる。どう見ても人族には見えない。
「何だ?あれは?」
上空に突然神々しい光が現れたのだ。戦闘をしていた兵士達が驚いて僕達を見ている。そこで、僕はその場にいるすべての兵士達に聞こえるように魔法を使った。
「武器をおさめるがいい。さもなくば、この場の全員に罰を与えることになる。」
僕は上空に向けて魔法を放った。巨大な光の球が上空へと進んでいき、そこで大爆発を起こした。
バッ———————ン
今度は上空からパラパラと雪が降り始め、徐々に激しい吹雪と変わっていく。さらに、僕は上空に向けて手をかざして魔法を発動した。
『ストーム』
すると、上空に真っ黒な雲が広がり稲妻が地面に降り注いだ。戦争をしていた人々は、僕を神と思ったのか、全員が武器を捨てて地面に平伏した。
「何をしておる!武器を取れー!タケノブを打ち取るのだー!」
地上からオダナガと思われる人物の声が聞こえてきた。さらに、反対からも同じような大声が聞こえてくる。
「オダナガを打ち取ったものは報酬は望みのままだ!戦えー!」
だが、誰も反応しない。僕はオダナガとタケノブに向けて魔法を発動した。
『リリーブ』
すると、2人の身体から黒い靄が現れ空気中に消えてしまった。2人はそのまま落馬して地面に倒れた。僕は地上に降り立ち、2人を一か所に寝かせた。兵士達は僕達に向かって平伏したままだ。
「シン様。どうしますか?」
「2人が気が付くまで待ってるよ。」
するとマギーが2人の顔を叩き始めた。
「起きなさいよ!目を覚ましなさい!」
パチン パチン パチン
すると、2人が目を覚ました。
「ここは?」
「わしは一体何を?これはどうしたことだ?」
2人は目を覚ました後、周りも見て驚いている。周りは戦争状態なのだから当たり前だ。
「2人ともフジナガに操られていたんですよ。」
「そなた達は何者だ?」
オダナガがギンとマギーを見た。そして、光り輝く神々しい姿の僕を見る。
「も、も、もしや、あなた様は神なのですか?ハッハー」
2人とも慌てて僕に平伏した。どうやら気が動転していて僕の言ったことが理解できなかったらしい。そこで、僕はもう一度説明することにした。
「僕は神じゃないよ。そんなことより、早く兵士達の武装を解除してよ。兵士のみんなに戦争は終わったよって言わなきゃ!2人とも魔族のフジナガに操られて戦争をしていたんだから。」
「な、なんと。それは誠ですか?」
すると、隣にいたマギーが言った。
「サルとかいうのもヤマカンとかいうのも魔族だったわよ。2人とも討伐したから。」
オダナガとタケノブはお互いの顔を見合った。そして、立ち上がって兵士達に大きな声で言った。
「戦は終わりだ!武器を収めろ!」
兵士達が次々と武器をしまっていく。そして、オダナガが僕達に言ってきた。
「どうやら貴殿らの言うことは正しいようだ。詳しく教えてくれぬか。」
そこで僕はシズヒサのことやモリナリのことを話した。すべて、宰相のフジナガの企みであったことも話した。
「すると、宰相のフジナガが魔族で、我らを操って戦争を起こさせていたということですかな?」
「そうさ。その監視役として、サルとヤマカンという魔族を2人につけておいたんだろうね。」
「そうだったんですか~?」
ここでマギーが2人に言った。
「2人は大変なことをしたのよ。オダナガ様はイマモト様を攻め滅ぼし、タケノブ様もトクヤス様を攻め滅ぼしたのよ。」
「そ、そ、それは本当ですか?」
今度はギンが憐れみをうかべながら答えた。
「本当よ。魔族に操られていたとはいえ、あなた方は大変なことをしでかしたんですよ。」
2人は拳を握り締め、歯を食いしばっている。そして、突然2人が腰の刀を抜いて
「ならば責任をとらねばなりません。ごめん。」
腹を斬ろうとした。僕は2人を止めた。
「ダメだよ。死んで責任から逃れようとしても、それは許さないよ。ちゃんと責任は取ってもらうから。」
「私はどうすればよいのでしょうか?」
僕は彼らの責任の取り方を考えた。
「あなた方2人は大勢の人々を殺めたんですよ。その人達にも家族がいるはずですよね。だったら、残された家族の生活を保障する必要があるでしょう。死んでしまった人々には、生涯をかけて謝り続けるしかないでしょうね。」
2人は地面に頭を付けて泣き崩れた。
「申し訳ない!申し訳ない!」
僕は泣き崩れている2人に声をかけた。
「2人にはやってもらいたいことがあるんです。」
「な、な、何をすれば・・・」
「シズヒサ様とモリナリ様と一緒に王城に来てもらいます。女王ヒメミヤ様を救い出す手伝いをしてください。」
「ヒメミヤ様をですか?」
「そうです。ヒメミヤ様も恐らくフジナガに操られていますから。」
「わかりました。すぐに王城に参りましょう。」
それからシズヒサとモリナリに連絡を入れて、3日後に王都キウトに集合することにした。そして、オダナガもタケノブも兵士達を連れて一旦自分達の領土に戻っていった。
その頃、キウトの王城ではフジナガが女王ヒメミヤの部屋にいた。
「どうやら、領主達の魔法が解除されてしまったようだな。だが、こちらには女王ヒメミヤがいる。来るなら来るがよい。シンよ!その時がお前の最後だ!アッハッハッ」
フジナガは魔族四天王の一人アルタイの100人隊長だ。自分の配下を王都や城に配置して待ち伏せしていた。




