指輪の奇跡
王都カサンドラに魔物の大群が襲来した。僕は西門に向かい、ギンとマギーは東門に向かった。さすがに西門の魔物を討伐するのは容易ではなく、だいぶ時間がかかってしまった。一息ついたときに、僕はギンの声を聞いた気がした。嫌な胸騒ぎがした僕はギンのいる東門まで転移した。そして、そこで目にしたのは変わり果てたギンとマギーの姿だった。僕の頭は真っ白になった。
「な、な、何があったんだ?!」
僕は横たわるギンとマギーのところまで行った。ギンを抱き上げた瞬間、背後に巨大な魔力を感じた。振り返るとそこにはラガンがいた。
「ハッハッハッ どうだ?仲間を失った気持ちは?」
「お、お前がやったのか?」
「だったらどうするんだ?お前一人だけなら俺でも勝てるさ。」
「お前は許さん。お前には永遠の苦しみを与えよう。」
「何を言ってるんだ?」
僕は魔力を全て開放した。雲もないのに空が急激に暗くなり、雷があちこちに落ちている。僕の身体から真っ黒な光が辺り一帯に放たれ、辺り一帯に暴風が吹き始めた。生き残っていた魔物達は恐怖に怯えている。そして、僕の逆立った銀色の髪は赤く染まり、瞳は黄金色に変化した。
「お、お、お前のその姿は?」
「攻撃してみろよ!お前には恐怖を刻み込んでやるよ!」
「ふざけるな!」
ラガンが長く鋭い爪で僕に攻撃する。だが、僕には全く通用しない。逆にラガンの爪が折れてしまった。
バッキン
「一体どういうことだ?」
その後もいろいろな魔法で僕を攻撃してくる。だが、傷一つ付けることができない。僕はゆっくりとラガンに向かって歩き始めた。ラガンは後ずさりする。
「お、お前は何者なんだ?!」
「そんなことはどうでもいい。」
僕は瞬間移動でラガンの目の前に転移して、ラガンの頭を右手で捕まえた。そして、背中の翼に手をかけた。
「な、何をする?」
フンッ
僕は片方の翼を引きちぎった。
ギャー
「どうだ?痛いか?まだまだこれからだ。」
さらに逆の翼も引きちぎった。ラガンは転移でその場から逃げようとしている。
「無駄だ!お前は逃げられん。諦めろ!言っただろ!苦しみを与えると!」
僕の身体から溢れ出る真っ黒なオーラが、まるで冥府神のような姿へと変化していく。ラガンの顔が恐怖に怯えている。
「お、お、俺が悪かった。」
「そうか。だが遅かったようだな。これからお前が向かう先は地獄だ。悪魔族のお前もその世界からは逃げられん。お前はその地獄で逆らうこともできずに、鬼どもに何度も殺されるのさ。」
「ゆ、許してくれ!悪かった。」
『ヘルダウン』
僕の身体から出た黒い闇がラガンを吸い込み始める。そして、ラガンの姿がどんどん薄くなり、そして消えた。だが、未だに空は真っ黒だ。まるで僕の心のように。すると、空からギンとマギーに光が差し込み、2人の指輪が激しく光り始めた。
「ギン。マギー。」
僕は心の底から2人が生き返えるようにと願った。すると、真っ黒な世界が光り輝く世界へと一気に変化した。そして、指輪が天使の姿に変化して、その天使達が光となって2人の身体を包み込んで行った。
「ん~。ん~。」
2人の手が動いた。
「ま、まさか。」
2人がゆっくりと目を開けた。
「ギ——————ン!」
僕はギンを思いっきり抱きしめた。
「シン様。私は?」
「ギン!どうして本来の姿にならなかったんだ?本来の姿であればあんな奴相手にならなかっただろう?」
「でも、そんなことしたらシン様にご迷惑が・・・」
「何言ってるんだ!ギン!僕はお前が大切なんだ!この世界がなくなっても、ギンさえいてくれればそれでいいんだ!ギンに死んでほしくないんだ!」
「シ、シン様。ありがとうございます。」
ギンが僕を掴む手に力が入った。僕の目からもギンの目からも涙が溢れている。すると、隣から咳払いが聞こえた。
ゴッホン
「あの~。私も生き返ったんだけど!」
マギーが気まずそうに寂しそうにしていた。僕はマギーのところに行ってマギーも抱きしめた。
「良かった。生きていてくれて。ギンもマギーも僕にとっては家族だよ。絶対に死なないでくれよ!」
「うん。わかったわ。」
するとギンが言った。
「マギー!今のあなたは弱すぎます。これから毎日訓練するから、覚悟しておきなさいよ。」
「望むところよ。」
すると、東門の方向から兵士がやってきた。
「シン様。大変です。王城が攻撃を受けています。すぐに来てください。」
「ああ、わかったよ。」