ナルシア王国の闇
ボルトンシティーで知り合った謎の男性キッドと、王都を目指して旅をしていた。王都の直前でキッドがいきなり告白してきた。どうやら、キッドはこのナルシア王国の第1王子ウイリアムのようだ。僕達のことはアプルシティーのギルドマスターパリスから報告を受けていた様だ。確かパリスもSランクの冒険者だ。何かつながりがあるのかもしれない。
「そうさ。シン君。君の想像通りだよ。パリスは僕と同じパーティーにいたんだよ。彼からこの国について聞いてるだろ?」
「詳しくは知りません。」
「この国は、今、混乱状態にあるんだ。情けない話さ。ザクロス侯爵一派が勢力を伸ばしてきてね。東の大陸に攻め込むんだと息巻いているのさ。当然、父上も僕も反対してるんだけどね。」
するとギンが聞いた。
「どうしてそのザクロス侯爵を粛清しないんですか?」
「彼はどんな方法を使っているかわからないけど、何人もの貴族を従えているのさ。さすがに彼を粛清すれば内乱になるのは確実だからね。そうなれば一番の被害は国民でしょ。」
確かにウイリアムの言う通りだ。ウイリアムが続けて言った。
「君はアルベル王国に現れた魔族を討伐したんだよね?」
「・・・」
「もう隠さなくていいんだよ。僕は全て調べたからね。そこで君達にお願いがあるんだ。」
ウイリアムは真剣な顔で言ってきた。
「この国をこの国の民を魔族から救いたいんだ。一緒に協力して欲しい。お願いできないだろうか?」
ここでずっと黙っていたマギーが言った。
「その何とか侯爵っていうのが魔族なの?」
「恐らくそうだろうね。」
「どうします?シン様。」
「そのザクロス侯爵っていうのはあの代官の父親だよね?」
「確かそうだったと思います。」
「なら、あの代官も魔族だったのかな~?彼からは魔族の魔力を感じなかったんだけどな~。」
「恐らく魔族がザクロス侯爵の身体を乗っ取ったのでしょう。あの代官は魔族が乗り移ったザクロス侯爵に精神支配を受けていた可能性があります。」
「じゃあ、他の貴族達も同じだよね?」
「はい。」
マギーは何か言いたそうだがずっと黙っている。
「わかりました。協力しましょう。」
「そうかい!助かるよ!君達が味方になってくれるなら100人力だよ。」
その頃、ザクロス侯爵の館では怪しい2人が話をしていた。
「ラガン様。もうすぐこの国が手に入ります。どうかベガ様によろしく伝えてください。」
「喜ぶのはまだ早いぞ!この街にはあのシンとギンが向かってきているからな。」
「そのシンとギンというものはそれほど強いのですか?」
「まあな。裏切者のマギーだけなら俺だけでもなんとかなるが、あの二人が一緒となると厄介だな。」
「ラガン様にそこまで言わせるとは!ならば、私も油断しないようにしましょう。」
「その方がよいな。」
僕達はウイリアムに連れられて王城までやってきた。さすがは第1王子だ。門兵も他の貴族達も全員がウイリアムに挨拶する。
「お帰りなさいませ。ウイリアム殿下。」
「ああ、サデルン伯爵か。ザクロス殿は元気か?」
「は、はい。お変わりないようでございます。」
「そうか。それは執着至極だ。ハッハッハッ」
サデルン伯爵は真っ青な顔をして離れて行った。マギーが聞いた。
「今の誰よ!」
「ああ、あいつはザクロスの腰巾着さ。小心者で自分では何もできない小物だよ。」
僕達は応接室に案内された。少し待っていると、そこに国王スチュワートがウイリアムと一緒にやってきた。ギンとマギーが片膝をついて挨拶するが、僕は立ったままだ。
「シ、シン様!」
「えっ?」
「よいよい。椅子に座ってくれたまえ。」
僕達は椅子に座った。どうやら、ギンとマギーの仕草は国王に会った時の礼儀作法のようだ。
「すみません。国王様に会うなんて経験ないものですから。」
「構わんよ。むしろ、こちらの方が感謝しているぐらいだからな。まさか、アルベル王国の英雄殿が来てくれるとは思っていなかったからな。」
「僕はそんな大した存在じゃないですよ。」
「謙遜しなくてもよいのだ。」
「父上。それよりも、シン殿とギン殿が来てくれたのですから、今後の対策を検討したほうがよいのではありませんか。」
「そうだな。」
国王とウイリアムと僕達3人が今後の相談を始めた頃、ザクロス侯爵の館ではラガンとザクロス侯爵が話し中だった。
「どうやらシンとギンがウイリアム王子と王城に入ったようです。」
「やはりな。ウイリアムのことだ。必ずそうすると思っていたさ。シンという男は、ジニートを倒したんだからな。」
「それでこれからどうするんですか?」
ラガンが薄気味悪い笑顔をしながら言った。
「この前も話したが、シンとギンの2人が相手となるとこの俺でもかなり厳しいな。だから、2人を別行動させればいいのさ。」
「どうするのですか?」
「魔物達を使うのさ。」
「なるほど、さすがラガン様ですな。」
「では、私はその機に一気に王城を攻め落としましょう。」
「頼むぞ!ザクロス!」
「ハッ!」
僕達3人は、問題が片付くまで王城で寝泊まりするように言われたが丁重に断った。そして、王都カサンドラの宿屋に泊まることにした。王都の様子を下調べしようと3人で王都を歩いた。
「シン様。不思議なんですが?」
「何が?」
「もし、ザクロス侯爵が魔族とすると私の魔力感知にかかるはずなんですが。」
するとマギーが答えた。
「多分、100人隊長のラガンよ。あいつなら魔力の偽装ぐらいできると思うわ。」
「それにしては、マギーは魔力の偽装が下手だね。」
「私は今はまだ成長中なのよ!」
「なら、胸と一緒ね。マギー!」
「いいのよ!ほっといてよ!フン!」




