フドウとマジクって7大神様なの?
僕はドワーフ王国の王都に現れたヒドラを討伐しようと西の湖に向かった。ヒドラを倒して安心したところに魔族四天王の一人ベガが現れた。ベガと戦いになったが、シンは圧倒的な力でベガを討伐した。そして、僕はゼネグの家へと戻った。
「シン。無事で何よりだ!」
「終わりましたよ。もう子ども達も外に出て大丈夫ですから。」
「本当か?よかったな!お前達!」
「お兄ちゃん!ありがとう!わ~い!」
子ども達は外に出て行った。僕はゼネグさんの家で飲み物をご馳走になって、その足でギルドに向かった。ギルドでは僕の姿を見て大騒ぎになった。
「ギルマス~!戻ってきましたぜ~!」
ドタドタドタ
「シン殿ご無事で何よりです。」
「ありがとうございます。やはり魔族がいましたよ。」
「本当ですか?」
「ええ。四天王のベガとか言っていましたけど。」
「それでその魔族は?」
「ヒドラも魔族もすべて討伐しましたよ。」
すると、ガンツは驚いた様子で言った。
「ヒドラだけでなく、魔族の四天王まで討伐されたのですか?やはりシン殿は神の使徒様なんですね?」
「どうかな~?自分では普通の人族のつもりなんですけどね。」
「それはないですな~。ハッハッハッ」
少し話をした後で僕が立ち去ろうとすると、豪華な馬車がギルドにやってきた。そして中から、執事のような男性が出てきた。
「シン殿ですな。ギルドマスターのガンツから話は伺っております。是非、王城にお越しください。」
「わかりました。」
僕は馬車に乗って王城に向かった。いつもなら周りにギンやマギー、メアリーがいるが今日は一人だ。なんか寂しさと同時に不安を感じた。
「到着しました。シン殿。こちらにどうぞ。」
僕は謁見の間に案内された。そこには玉座に座るドワーフ王国の国王と、貴族らしきメンバーが揃っていた。僕は一応王の御前なので片膝をついた。
「おお、来てくれたか。シン殿。立ってくれ!」
「お招きにより参上しました。シンです。」
「わしはドワーフ王国の国王ドルドンだ。シン殿にはこの度、この国を救っていただいたお礼をしようと思っているんだ。望みがあれば言って欲しい。」
ここでお金をもらっても仕方がない。
“確か~。ギンも剣を持ってるし、メアリーもあるよな~。でも、マギーは剣も何も武器を持ってないよな~。”
「国王陛下にお願いします。」
「なにかね?」
「剣を1本作っていただけませんか?」
すると、ここで貴族の中から声があがった。
「貴様~!無礼であろう!国王陛下に向かって!もらえるだけありがたいと思え!」
どうやらドワーフ王国では一応褒美を尋ねられるが、『陛下の御心のままに』と答えるのが普通だったようだ。でも、そんなことを知らない僕は本当に希望を言ってしまったのだ。
「まあ、よいではないか。」
「ですが、陛下。この者は人族の分際で自分の欲求を口にするとは許しがたいです。」
なんかこのまま転移で違う場所に行ってしまおうかと思った。すると、目の前に光の球が現れた。
“この光はノームさんだな。”
思った通り、そこに大精霊のノームが現れた。国王をはじめとして、全員がノームに向かって平伏した。
「我が子達よ!そなたらは大きな間違いを犯しているのだ。こちらにいる『シン様』は、自分のためではなく、お前達のためにコカトリスや地竜、ヒドラに魔族四天王を討伐してくれたのだぞ!『シン様』がいらっしゃらなければ、この国は滅んでいただろうに!何故わからん!」
すると国王が驚いた顔で聞いた。
「魔族の四天王ですか?」
「ああ、そうだ。名はベガと言っておった。」
すると、ドワーフ達は全員が僕に頭を下げてきた。そしてノームが謝罪してきた。
「申し訳ございません。シン様。知らなかったこととはいえ、ご無礼の段、平にお許しください。」
「構いませんよ。それより、ノームさん。わざわざこのために来てくれたんですか?」
「ええ。精霊界の鏡の中から見ていたら、我が子達がご無礼を働いていたものですから、私からもお詫びします。どうか、この者達を許し上げてください。」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。そんなことで僕は怒ったりしませんから。」
「さすがです。シン様。」
その後、ノームは精霊界に戻っていった。国王をはじめ全員が僕に平伏したままだ。
「皆さん。立ってください。僕は人族の冒険者ですから。皆さんが僕に頭を下げるのはおかしいですよ。」
「シン様がそうおっしゃるなら。」
「それで、ドルドン陛下。先ほどお願いした件ですが。」
「お任せください。私どもの超一流の職人に作らせますので。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
僕は王城を出た。剣ができるまでに約5日はかかるようだ。それまでどうしようかと悩んでいると、フドウから念話が届いた。
“シン様。修行が終わりました。”
“ありがとう。そっちに向かうよ。”
僕はフドウのいる場所まで転移した。そこにはマジクとフドウがいた。
「シン様。彼女達は頑張りましたよ。もう、魔族ごときに後れを取ることはないでしょう。」
「そうね。魔法の方もそれなりに使えますよ。特にあのマギーって子には才能があったみたいですから。」
「ありがとう。2人とも。」
「いいえ。シン様のお役に立てて幸せですから。お父上とお母上にはお会いにならないんですか?」
「まあね。修行の途中だからね。」
3人を見るとクタクタで意識がもうろうとしているようだ。彼女達から溢れ出る魔力が修行のすさまじさを物語っていた。
「じゃあ、3人を連れて行くね。本当にありがとう。」
僕は3人を連れて魔物の森の家に転移した。そして、一人ひとりをベッドに寝かしつけると、彼女達は三日三晩寝ていた。よほど疲れていたのだろう。4日目の朝、3人が僕のベッドに入ってきた。
「ダメだよ!みんな!自分のベッドで寝なよ!」
「何言ってるの!もう朝よ!まったく、シンはよほど寝坊なのね!」
窓から日がさしていた。どうやら僕が寝坊したようだ。僕は気を取り直してみんなに言った。
「みんな、よく頑張ったね。」
すると、3人の目から大粒の涙が流れた。
「シーン!大変だったんだからね!」
「私もです!シン君!死ぬかと思いました!」
「私も久しぶりにきつかったです。シン様。さすがは武神のフドウ様です。」
「えっ?!」
メアリーとマギーが顔を見合わせた。そしてキョトンとしている。
「ギン!今、なんて言ったの?」
「さすが武神のフドウ様ですって言ったんだけど。」
「えっえ———————!!!」
「もしかして、あの鬼教官って武神様だったの?」
「そうよ!マギーがよく怒られていた教官はマジク様よ。」
「もしかして、あの2人は7大神の武神様と魔法シン様だったの?」
「だから、そうだって言ってるじゃない!」
するとメアリーが的をついたことを言い出した。
「だって、お二方ともシン君のことを『シン様』って呼んでたわよ!どういうことなの?なんでシン君が7大神様に『様』って呼ばれるのよ~?」
なんか話が複雑になりそうなので、僕は2人が喜びそうな話に話題を切り替えた。
「マギーもメアリーもお腹空いてるだろ?食事を作るから食べなよ。今日は特別にデザートも作ろうかな~。」
マギーとメアリーは何やらぶつぶつ言っている。しばらくして、僕は料理を作り終わった。彼女達の目の前には僕の特性の料理が所狭しと並んでいた。
3人が一斉に料理を口にし始めた。
「そういえば、私達が修行していた時間ってどのくらいなの?なんかすごく長く感じたんだけど。シンはわかる?」
「5日ぐらいかな。」
「えっ?!それだけ?なんか物凄く長い時間修行して敵がするんだけど。でも、不思議なのよね~。」
「何が?」
「だって、私もギンもメアリーも一度も寝なかったんだよ。それに、何も食べてないのにお腹が空かないんだもん。」
するとギンが言った。
「それはそうよ。私達が修行した場所は天界なんだから。」
「えっ?!そうなの?」
「ギンが言う通りだよ。あの世界では時間の経過がここよりも大分違うからね。恐らく、マギーたちが修行していた時間はこっちで言えば数十年ぐらいじゃないかな。」
「ええ——————!!!どうしよう?お父様は生きているかな~?」
「大丈夫さ。さっき言った通り、こっちでは5日しか経ってないから。」
「どういうことなの?」
ここでギンが説明した。
「シン様が説明した通り、この地上と天界では時間の流れが違うのよ。」
「なるほど納得だわ。だって、私の胸も成長してないもん。」
なんかマギーらしい感想だ。すると、メアリーがポツリと言った。