西航行10-種の禍
竜宝名とか、技や術とか、漢字がよく連なっていますが、読めなくても、覚えなくても、あまり支障はありません。
ほとんど言葉遊びですので……
ハクは仁佳の帝都に着いた。
大国の帝都らしく賑わっていたが、よく見れば、そこここに、人探しの貼り紙が有った。
帝都だけでも、随分と行方不明になってんだな。
この国は戦中だから、おそらく、
人知れず不明になっている者も多い筈だな……
一枚の貼り紙の前で考えていると、男がスッと寄って来た。
「兄さん、心当たりが有るのかい?」
「いや、随分と不明者が多いんだな、と思ってな」
言いながら、男の気を探る。
一般人だな……悪意は無い……か。
「ああ、このひと月程、急に増えたんだ。
兄さん、その髪の色……東の国の人かい?
だとしたら、こんな人目につく所に居ちゃあ危険だ。
こっちへ――」路地に手招きする。
「髪か……俺は、中の国から来たんだが、この色はマズいんだな?」
男が頷いたので、ハクは髪色を戻した。
「驚いたな……どんな魔法だい?」
「隠密だからな。このくらい朝飯前だ」
なんて、自己紹介する隠密なんか居ね――
「そうなのか……」
信じたのか!? んじゃ、そうゆう事で――
「実は……俺は、この国で不明者が急増した原因を探っている。
よかったら、話してくれないか?」
「アイツは幼馴染なんだが、半月前、突然、高熱を出したかと思ったら、獣みたく唸ったり吠えたりし始めて、次の日にゃあ、鬣や尻尾が生えてたんだ。
そんで、部屋に閉じ込めてたのに、煙みたいに消えちまったんだよ」
「熱を出す前に、腕輪を拾って来たりしなかったか?」
「ああ、なんか、綺麗な輪を手首にしていたな。
街で見知らぬ婆さんの手助けしたら、お礼に貰ったとか言ってたかな……」
「アンタは、その腕輪にゃ触っていないんだな?」
「触っちゃいない。
アイツは婚約者にあげるんだって、触らせてくれなかったんだ」
「婚約者の方は?」
「今、実家――伊牟呂の出なんだが、挨拶やら荷造りやらするのに帰ってる」
「その腕輪は、今は?」
「アイツが着けたまま消えたからな……
一度は贈るために梱包するって外してたんだが、熱出した時にゃあ、また着けてたな。
あの腕輪に何か有るのか?」
「まだ分からないんだが、あちこちで腕輪の話が出るんだ」
「そうなのか……
怪しい腕輪にゃあ触らないよう広めておく。
なんとかアイツを見つけ出してくれ」
「もちろん、そのつもりで努める。
話してくれて、ありがとう」
頭を下げ、上に跳んだ。
「消えた……凄いな……」
ハクは屋根に降りた。
魔獣に変わるのか……
乗っ取られた結果なのか?
竜だと、どうなるんだ?
「ハク様」声だけが近くから聞こえた。
「コギか?」
「はい。
早速、動いて頂き、ありがとうございます。
これまでの情報では、そこまでの変化が起こる前に不明となっておりましたから、貴重な情報を得ることが出来ました。
これからは、見た目も、内なる気も、魔獣化していると踏まえて調査致します」
人姿のコギが現れ、恭しく一礼して消えた。
♯♯♯
ハクは埋葬許可書を受け取り、船に戻った。
「睦月、姫様かリリスさんが熱を出したら、すぐにアオかフジに伝えてくれ」
「畏まりました」
そして、アオとフジに、禍の種による変化を伝え、天亀の湖へと飛んだ。
♯♯♯
「翁亀様! 急ぐのですが如何ですか!?」
桜の大木が揺れ、翁亀が顔を出した。
「来たか……早いのぉ」よっこいしょ
「まだ、種は牙を剥いておらんのじゃな?」
「ええ、まだ。
ですが、いつ変化が起こるか分かりませんから、急ぎ、お願いします!」
「護竜盾は妖狐の所に有ったか?」
「はい、三の姫様から頂きました。
翁亀様がお願いしてくださったのですか?」
「記憶が曖昧での。自信が無かったがな」笑う。
「今は誰が持っておる?」
「アオが持っています」
「うむ。今は、それでよかろう。
キンが適しておると思うのじゃが……
アカは、暫く戦うどころではないからの」
「アカに何を依頼したのですか?」
「竜宝の再現じゃ。幾つか頼んでおるが……
最も欲しており、最も難しいのが、護竜宝を本来の用途に使う為の物での。
ただ、それが使えるのは一度きりでのぉ。
もう、欠片すら残っておらんのじゃ。
じゃから、難儀すると思うのじゃ」
「それが再現できれば……」
「この先、魔王と戦う為には、必要不可欠な力となろうな」
「魔王?」
「お前さんらの父親が、魔界の黒幕の事をそう呼んどったぞ」
「そうですか。では、俺達も、そう呼びます。
それで、その力とは、どのような?」
「あまり期待させるのも何じゃからのぉ。
アカが再現できれば教えよう」
「……わかりました」
「三の姫殿より、護札を貰うたか?
それは、竜血環用にしておるな。ふむ。
ええ物を貰うたな。
それが有れば、まず、竜血環に掛かることはないじゃろ。
竜は、特に、それを離すでないぞ」
「はい!」
「で、残る護竜槍なんじゃが……
確かな在り処は、知らん。
じゃが、手掛かりは有るんじゃ。
フジには言えんかったがの」苦笑い。
「また、覚悟して聞かねばならない事なのですね?」にこっ
「そうじゃ。耳を貸せ」
ハクが頷き、離れた。
「ハザマの森より先では、キンもアカも戦わねばならんじゃろうて。
それまでには見つけ出してくれよのぉ。
儂の考えが合うておれば、アオとサクラには、護竜宝は不要じゃ。
お前さんら五人、持っておらねば、魔界では戦えん。
クロが曲空を会得して戻ったならば、すぐに探しに行ってくれ」
「曲空ですか……アイツ、考えたな……」
「お前さんも出来るんじゃろ?」
「ええ……まぁ……」
「歯切れが悪いのぉ」笑う。
「不向きと言うか……
精度が、今ひとつで……」
「なんじゃ。
儂の額に、額を着けてみよ」
ぴと。
「お前さん、確か雷じゃったのぉ?
ならば、不向きという訳でもなかろうがな……
曲空するつもりで気を高めよ」
はい。では――
「ああ、それでか。
こっちを上げて、こっちは平らに、それで、真ん中をもっと細く鋭くじゃ」
こうかな?
「もっと鋭く!」
はい!
「それで、モモさんの気を掴めるか?」
掴みました!
「なら、団子を貰うて来てくれ」
畏まりましたっ!
ハクが消え……
大きな重箱を持って現れた。
「作ってくれとるのは知っとったんじゃ♪」
「利用しましたね?」笑う。
「使えるようになったじゃろ♪」
「ありがとうございます」ぺこり
「四眼は、シロとムラサキが目処を付けたようじゃ。
すぐに見つかるじゃろ。
アオの力が戻るまでは、アオが使い、その後は、サクラが使えばよいじゃろ」
「サクラ……ですか……」
「そうじゃ。まぁ、いずれ解る」ぱくり♪
「種は、護竜宝の声を聞け。
種のままなら、極大の治癒の光ならば、消せるじゃろうて。
あぁ……そうじゃな。
治癒の光ならば、元にも戻せるかもしれんのぉ……
その系統の術に弱い筈じゃ。
竜血環が、聖水で、おとなしくなるくらいじゃからの。
ま、試してみよ」
「はい。
翁亀様、ありがとうございました」丁寧に一礼。
ハクは、天界の門に曲空してみた。
これなら使えるな。練習しておこう。
凜「カリヤさ~ん!」
刈「あ……凜様ではございませんか!」
凜「今度は、どこに急いでるの?」
刈「三の姫様からのお手紙を翁亀様に
お届けしようと急いでいるのでございます」
凜「ふぅん……あ、そうそう、
クロと会ったのよね?」
刈「はい。天兎王様からのお届け物を
キキョウ様にお持ちしまして、
外に出ましたら、クロ様が宙に突然……
驚きましたよ~」
凜「それで、翁亀様のお手紙を預かったの?」
刈「はい。その通りでございます」
凜「で、狐の社に行ってたのね?」
刈「はい♪ 三の姫様がお待ちくださって
おりまして、感激致しましたのです♪」
凜「あ、カリヤさんは、もう回復したの?」
刈「はい。仕事に復帰しまして、代理を
育てているのでございます」
凜「あ、そちらの方?」
刈「はい。娘婿のミノリと申します」
実「はじめまして、凜様」
凜「これからヨロシク~」
実「宜しくお願い致します」
刈「では、急ぎますので、失礼致します」
凜「引き留めてゴメンね~」




