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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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絆の島9-なかよしさん

 竜は本能的に人が好きなんです。

そして、長く生きるだけあって、とっても一途です。


 朝食後、クロが小屋に戻ると、アオと蛟が出掛けようとしていた。

蛟は、六分儀が入った袋を持っている。


「渡しに行くのか?」


「はい♪

まだ、鏡を調整しないと使えませんので、空龍さんに、お手伝い頂きたく存じまして」


「オレも行っていいか?」


「はい♪」


サクラは? と見ると、誰かと楽しそうに話していた。



♯♯♯



 航海士の父娘は、卓に海図を広げていた。


「ちょうど、航路に戻る道筋が、おおよそ決まったので、そちらに伺おうと思っていたんですよ」


「では、それを先に伺ってもよろしいですか?」


 二人から説明を受ける。

リリスが悩んでいた箇所は、迂回する事に決めたようだが、その距離は予想より随分と短くなっていた。


「娘から、皆さんが、魔物と戦っていると聞きました。

ただただ、ご無事を祈る事しか出来なくて、申し訳ありませんが……

後の補正は、お任せください」


「いえ、こちらこそ、何の知識も無くて、頼るばかりになりますが、どうか宜しくお願いします」


アオと空龍が、何度もお辞儀しあっているのを、三人は、心から嬉しそうに見ていた。


「そろそろ、よろしいでしょうか――」

と、蛟は卓に六分儀を置いた。


「もう完成したのですか?」

卓に近づいた父娘は、目を見張った。


「これは……」


「はい♪ 本当に偶然なのでございますが、竜のリリスと矢太少年だと存じます」


父娘は涙ぐんでいた。


「まだ、鏡を調整しなければ使えませんので、お手伝い、お願い致しますね」


「はい! もちろん!」


「でも、その前に……

この、至るところにございます、浮き彫りのお話、伺ってもよろしいでしょうか?」


父娘は、更に感激していた。



 話の途中で、サクラが加わり、姫が加わり――

皆、紙芝居を見る子供のように、ワクワクしながら父娘の話を聴いた。


浮き彫りの、最後の話が終わった時、

(アオ兄♪、クロ兄♪ キン兄、来たって♪)


(サクラ、先に森で竜になっててくれ)


(うん♪)


 皆が六分儀を囲んで、わいわいしている中、サクラは、そっと抜け出した。

姫は、それに気付いたようだが、何も言わなかった。


「キン兄が、不足分の木材を運んで来るんです。

会いますか?」


「金色の竜さんの!?」

「この六分儀をくださった……」


「ええ」

(キン兄に、航海士、連れて行くって伝えてくれ)


(うんっ♪)



♯♯♯



 森では、綺桜の竜が待っていた。

皆を乗せ、船を修理している浜とは、反対側の浜に向かう。


木材の山と、人姿のキンが待っていた。


皆を降ろした綺桜の竜(サクラ)に、木材を指す。

サクラが頷き、運び始める。


(どこ持ってくんだ?)


(みんなを乗せたトコ~♪)


(そっか。置いたら戻って来てくれよ)


(うん♪ どっちで戻ったらいい?)


(ん~ 、竜だな)


(わかった~♪)



 アオと蛟が、丸太を運んで来た。

それを置いて、キンと航海士父娘を手招きする。


クロは、少し離れた所から、それを眺めていた。


 確かに、キン兄、楽しそうだな……


姫がクロに並んだ。

「今日は、誰もサクラにならぬのじゃな」


「今なら、居なくても気づかれないだろ」


「それにしても、クロも、アオも、サクラの真似が上手いのぅ」


「見た目が同じに出来るからな」


「いや、話し方や笑い方、動作の細かい所まで、よく似せられるものよ、と感心したわ」


「その後、立ち上がれないくらい疲れるんだけどなっ」

あはははっ


クロは、くるっと姫に向かい合い、両肩に手を置いて、

「そこでだっ、頼みがあるっ!」


「なっ、なんじゃっ!?」たじろぐ。


「秘密を共有する者として――」


ごくり……


「姫にも、サクラをやって欲しいんだ♪」

満面の笑み。


「な……な……」


「なっ♪ 頼むっ!」姫を拝む。


「何を申すのじゃっ!

如何にすれば、ワラワがサクラになれるのじゃっ!!」


クロは、し~っ、と口の前に指を立てる。


「堂々と見送りに出るワケじゃねぇ。

竜が飛んでから、ちょっと姿を見せて、手を振る程度だ」

にこにこにこ♪

「だから頼むっ!」と、また拝む。


姫が黙ったままなので、クロは顔を上げ、真剣な眼差しで見詰めながら、更に一歩近付く。


「まだまだ、竜は、人に姿を見せることが出来ねぇ。

今、人に混じって――竜が人に化けて、暮らしていると知られれば、オレ達は、人界(ここ)には居られなくなる。

解るよな?」


再び、姫の両肩に手を置く。


「昨日、人と竜の未来への懸け橋になろうと決めたよな?」


「うむ……」


「だから、オレ達は、人界(ここ)から追い出されるワケにはいかねぇ。

オレ達は『竜使い』として、竜の姿を、少しずつ、人に見せていきたいんだ。

だから……協力してくれるよな?」


とうとう、姫は頷いた。


「ありがとなっ! 姫っ♪」ぎゅっ!



♯♯♯



「クロ達は、何をしているのだ?」

キンがアオに問う。


「見ての通りとしか……」あははは……


(ほらねっ♪ とっても、なかよしさん♪)


(そう……なのか……)霧の中で一体何が……


(うんっ♪)



♯♯♯



「クロ! やめよっ! 皆が見ておる!!」


「んあ?」…………この状態…………マズッ!!


クロが、振り返り、固まった。

姫は、クロを突き飛ばし、森へと逃げた。


「あ……おいっ! 待てっ!」追う。



 森に入った所で、クロは姫に追い付いた。


(わり)ぃ、つい嬉しくて――」


「婿に来てくれるのじゃな? 黒之介♪」


「え……ち、ちげーよっ!」浜へと脱兎!


「待つのじゃっ♪」嬉々として追いかける。



♯♯♯



(ふむ、確かに……)あのクロが、こうなるか……


(でしょ♪)


(長老会には打診しておいた)


(ん♪)


(それにしても、楽しそうだな)


(うんっ♪)


遠くで、クロが姫に追いかけられている。


(何故、森で竜にならなかったのだろう……)


(じゃれてるだけだからでしょ♪)





青「そういえば、この物語は最初から

 『ハッピーエンド』と断言しているけど、

  あの二人の事かい?」


凜「そこまで考えてないよ」キッパリ


桜「じゃあ、どぉして『ハッピーエンド』なの?」


凜「たぶん、キミ達が頑張って、そうしてくれる

  って信じてるから~♪」


青「え? それって……」

桜「ホントに、なんにも考えて……」


凜「ないって言ってるでしょ?」それが何か?


青「そうならなかったら?」


凜「外すだけよ~♪」


青「軽い……軽すぎる……」ぼそ

桜「さっすが、凜だねぇ」 こそ

青「そうか、凜だったね」 こそ


凜「何か言った?」


青&桜「なんにもっ!」


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