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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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竜王族5-天魔竜王国の未来

 そういえば平和ですよね。


♯♯ 魔竜王国 ♯♯


 アオは前魔竜王・明緑に呼ばれ、老竜の神殿を訪れた。


「明緑様、お呼びに与り光栄に存じます」


【少しお話が致したく、失礼ながらお呼び立て致しました。

ご容赦ください】


「いえいえ、私などに そのような――」


【お気を楽にして頂けますか?

私は既に死したる身。

もう、王でも何でもありませんので。

ただ、虹藍の父。それだけです】


「しかし、それでは――」


【では……

天界では、常日頃から御先祖様方とお話しされているのでしょう?

同じように話して頂けますか?】


「そうですか……そうまで仰るのでしたら、同じように話させて頂きます」


【お呼びしたのは、アオ様が、これから……つまり龍神帝王を倒した後、如何にされる おつもりなのかを伺いたかったのです】


「あの……私にも敬称や丁寧な言葉遣いなど、不要でございます。

ただの子孫ですので」


明緑が笑った。【そうですか、では互いに】


「私は……役職や地位などは どうでもよく、ただ、出来得る事ならば、天魔両竜王国の政に携わりたいと願っております」


【兄の補佐のみならず、弟の補佐も、という事ですか?

弟が王でも構わないと?】


「私は第三王子ですので、幼少よりずっと、将来 兄達の補佐をすべく学んで参りました。

それ故、兄達の補佐は当然と思っております。

ただ、それは、これまでは魔竜王国と関われるとは思っておりませんでしたので、それのみを当然としていただけなのです。

同じ竜の国ですので、共に栄えたい。それが今の、私の願いなのです。


サクラが王に成り、私が補佐をする事に、抵抗は全くございません。

サクラの方が器量が大きいので、王に相応しいと思っております。

それに私は、補佐に誇りを持っております。

最高の補佐になる事が目標なのです。

あ……懸け橋にもなれたら、という欲ならばございます」


【お願いしようと思っていた事を、全て先回りされた思いです。

どうか、この国の将来を王、女王と共に担ってください。

お願い致します】


「ありがとうございます!」


「アオお兄様……本当によろしいのですか?」

サクラが虹藍を連れて、曲空して現れた。


「アオ兄、全部 聞いたよ。

長老様が千里眼で流してくれたんだ。

ありがとう……そこまで考えてくれて……」


「サクラ、まだ父上にも、兄さん達にも話していないんだ。

だから決定じゃない。

ただの俺の願望なんだよ」


「でも、アオ兄なら口じゃ負けないから、だいじょぶ♪

もしダメでも、そう考えてくれてる事が嬉しいから、いいんだ」

虹藍も大きく頷く。


「あ……サクラ、大臣殿を止めておいてくれよ。

父上が帰城したら、ちゃんと話すからね」


「ホントだ……また天界に出掛けそうだね。

え!? 城から出ちゃった! 早いんだからぁ」


神眼の無駄遣い的な事をしていた兄弟が、顔を見合せ――

「止めに行くよっ!」

サクラは、虹藍とアオの手を取って曲空した。



「明緑、これから、あの三人が作る国、楽しみじゃのぅ」


【はい、長老様】




♯♯ 地下魔界 ♯♯


(クロ、あの塊は何じゃろぅのぅ)


魔王の影が、鏡から闇黒色の塊を引き出している。


それを岩陰に身を隠したクロと姫が見ていた。


(生命力は感じるんだが……)

(神眼で確かめよ)

(あ……そうだな。姫、一緒に見る練習だ)

(うむ)



(何かが闇に包まれておる……魔人ではないのか?)


(そっか!

これから兵士にするつもりなんだ!)


(助けよぅぞ!)(おう!)


姫がクロの背で水銃を構える。

気を消し……曲空と同時に放水した!


闇に包まれた塊と、それを引き出していた鏡と、作業していた影と、開きかけた闇の穴が、神聖光輝をしこたま浴びた。


鏡の向こうと、闇の穴の向こうからも絶叫が響く。


フジが現れた。


(鏡に放水してくれ!)(はいっ!)


姫は闇の穴の向こうに放水した。


(この向こうは建物じゃ)


(これは……拠点か?)


紫苑と珊瑚が現れた。

(確かめて参ります)姿を消した。


(フジ、そっちは?)


(地下魔界のようですが……)


(では、そちらは私が確かめます)

コギの声だけが聞こえた。




♯♯ 地上魔界 人界への通路前 ♯♯


「大臣!」虹藍が呼び止めた。


「御揃いで……何事か御座いましたか?」


「どちらに向かわれていらっしゃるの?」


「それは――」


「天竜王城なのでしょう? 何の御用で?」


「たいした用では御座いません」


「兄の意向を確かめる為――ですよね?」


「お見通しですか……

回って参りました書類を拝見致しました。

そこに、この国の将来をお任せ出来る方を見つけましたので、お願いに伺おうと致しておりました」


「その思いは嬉しいのですが……

先に相談してくださいね」表情を和らげる。


「まだ、天竜王や王太子には相談しておりませんが――」

消していた姿を現した。


「アオ様……」


「私自身は、天魔両国の政に携わりたい、そう考えております。

大臣殿に動いて頂ける程の力が有るのか、自信はございませんが、お招き頂けたと信じ、実現に向けて行動に移しますので、今暫くお待ちください」


「ああ……安堵致しました……」


「こんな若輩者に、涙をお流しになる程の価値などございませんよ。

これから、ご指導お願い致します」礼。


「滅相も御座いません!

どの案件を拝見致しましても、ただただ感服するばかり!

私など足元にも及びません!」


「しかし、こちらの事は、最もお詳しい筈。

どうか宜しくお願い致します」更に礼。


大臣が口を開こうとした時、サクラの千里眼が鳴った。

「フジ兄、どぉしたの? ……うん。

一緒にいるよ。……すぐ行くね!」アオを見る。


「大臣殿、地下に行かねばならないようです。

虹藍様をお願い致します」

アオとサクラは曲空した。



――地下魔界。


(どっちか、この穴 保ってくれ!)

(こちらの鏡もお願いします!)


サクラが穴に、アオが鏡に手を当てた。


(穴の向こう、紫苑さんと珊瑚さんがいるの?)

(ああ。入ってくれたんだ)

(閉じ始めたから呼んで貰ぅたのじゃ)

(保てるか?)

(もっちろ~ん)


(こちらは、コギ殿だね?)

(はい)

(この向こうは地下魔界……牛魔国だね)

(そこまで分かるのですね)

(なんとなくね)


アオは片手で鏡の道を保ち続けながら、もう一方の手で魔人達を浄化し始めた。


(あ……)フジが鏡から離れ、神竜を浄化する。


(この方々を牛魔国から、穴の向こうに連れて行こうとしていたんだね?)


(そう見えたから水を掛けたんだ)


(また静かになったと思っていたら、とうとう兵士がいなくなっていたんだね。

サクラ、各国に魔王の闇を検知する竜宝を配備しよう)


(うんっ)



 コギが神竜を連れて戻った。

(アオ様、この方をお願い致します。

私は各国に知らせて参ります)


(コギ殿、後程、検知する竜宝を配備します。

合わせてお知らせください)


(畏まりました)



(アオ、結界を強化するからな)【任せよ】

アカと金虎が現れた。


(よく ここが分かったね)


(サクラに呼ばれた)



(フジ、浄化を頼むね。サクラ、行こう)

(クロ兄、また閉じ始めたら呼んでねっ)


アオとサクラは姿を消し、闇の穴をくぐった。





魔【何度言えば解るのだ!

  何故、攻撃の手を休める!?】


影「兵と拠点の不足が――」


魔【集めよ! 奪還せよ!

  簡単な事ではないか!?】


影:それが容易なら、とっくに――


魔【何を押し黙っておるのだ!

  動け! 兵を集めよ!】


影「結界にて地下魔界が覆われ、

  手が出せないので御座います」


魔【破壊せよ!】


影:それが出来れば苦労は――


前【この鏡を与える。

  破壊出来ぬならば、通り抜ければよい。

  お前も少しは考えよ。若造】


魔【グッ……】


影:龍神帝王様が叱られてる……

  意外と立場が弱いのか?

  あの御方は先代なのかな?


魔【何を見ておる! 早く行けっ!!】


影「はっ!」

  あ~、ヤバいヤバい。

  不機嫌全開だよ。ったく!



 確か、影って反抗心を抱かないのでは?

不平不満は湧くのでしょうか?


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