竜王族3-御対面
またまたまたお墓参りです。
♯♯ 天界 竜骨の祠前 ♯♯
【サクラ、アオは何処に行ったのだ?】
「地下だと思います。
婚約者を連れて挨拶に参ったのですが、つい、連れて来てしまって……」
【なら、さっさと済ませろよ。
待ってるからな】気配が消えた。
「サクラ……どなたとお話ししていたの?
お姿が見えなかったのだけれど……」
「シルバコバルト様だよ」「えっ!?」
「今は神様なんだ」「どうして御先祖様が?」
「もともと神竜だったんだって。
魔王の呪で神界に入れなくなって、天界で竜王になったんだって。
それで、ここが王族の墓地。入ろう」
サクラは虹藍の手を取って祠に入った。
拝聴の間で祈ると、モエギが現れた。
【サクラ、如何しましたか?】
「はい、今日は婚約者と挨拶に参りました。
始祖様には入口でお会い致しました」
【魔竜女王様に、水晶を御覧頂くのですね?】
「はい。よろしいでしょうか?」
頷き、【中央の扉から奥に進みなさい】示した。
「ありがとうございます、モエギ様」
サクラと虹藍は奥へと進み、広い場所に出た。
「綺麗……こんなに沢山……この水晶は何?」
「この ひとつひとつに、御先祖様の魂が込められているんだ。
さっきのモエギ様は、前の長老様なんだよ」
「じゃあ……」「そう。亡くなっているんだ」
「普通にお話ししていたわ」「うん」
【サクラ、今日は何だ?】
「あ、グリッターローズ様。
今日は婚約者を連れて参りました。
魔竜女王の虹藍です」
【そうか。もう結婚するのか。
まぁ、サクラなら大丈夫だな。
魔竜王として励めよ】
グリッターローズが話している間に、沢山の魂が次々と現れた。
【虹藍、魔竜も我等の子孫だ。
同じく水晶に込める事が出来る。
サクラ、それを見せに来たのであろう?】
「はい。グレイスモーブ様」
「サクラ……それは、どういう……?」
驚き過ぎて固まっていた虹藍が、やっと口を開いた。
「初代魔竜王のスカーレット様は、六代天竜王だよね。
こちらのお二方は、三代王と女王なんだよ。
魂をあの水晶に込めた御先祖様方とは、こうしてお話し出来るんだ。
解ったかい?」
「うん……あっ!
ご挨拶が遅れました!
サクラ様と婚約させて頂きました虹藍と申します」おもいっきり礼っ!
【サクラを宜しく頼むぞ】
【魔竜王国との国交再開、悦ばしく思うぞ】
【これからの両国の発展、楽しみにしている】
先祖達が口々に話し始めた。
どの言葉も二人を祝福し、両国共に栄える事を願っていた。
「二人で天魔両国の懸け橋と成る所存です」
サクラの言葉に、虹藍は大きく頷き、
「共に発展出来るよう、先ずは天竜王国に追い付きたく存じます」
瞳をキラキラさせて言った。
【流石、若くても女王だな。期待しているぞ】
「ありがとうございます!」
♯♯♯♯♯♯
その頃アオは、フジを連れ陶芸工房を訪れていた。
「この色……」しげしげ「綺麗ですね……」
眺めているフジを置いて、アオが消え――
唔器呟を二つ持って戻った。
シトリンとアマリンが近寄って来た。
「おや? この器は……」「あの試作ですよね?」
【いや……何だ……その……】しどろもどろ。
「試作の器も、実は気に入ってたらしいんだ」
「そうですか♪」【黙っとれ!】赤く光る。
「照れているだけだからね」【王!】真っ赤!
「この中に、混ぜた薬品の魂主が入っているんだ。
ほら見て、こんなに良い色になったんだよ」
【こんな……】【毒として生み出されたのに……】
「釉薬には、毒劇薬も普通に有りますよ」
「素晴らしい色が出て、嬉しくて堪りません」
【……喜んでくださっているのですか?】
「当然ですよ!」「この美しさですよ!」
「シトリンさん、アマリンさん、この薬達に名を付けて頂けますか?」
「私達が?」「よろしいのですか?」
「アオ兄様、この壺をカームセラドン様にお見せしたいのですが――」
フジが寄って来た。
「カームセラドン様!?」陶芸家達一斉!
「わわっ!?」「有名人らしいね」
「このカムセラブルーは『幻の青』と呼ばれておりました。
この色を生み出したのが『陶芸の父』なんです。
その御名を知らない陶芸家はおりませんよ」
「会いに行きますか?」
「え……? ……何と?
まさか、神だったのですか?
天竜だと習ったのですが……」
「俺達の祖先ですので天竜ですが、話す事は出来ますよ。ね、フジ」
「はい。参りましょう」
壺と唔器呟を抱え、
「肩に手を当ててください」
塊になって曲空した。
――竜骨の祠。
モエギの案内で、紫水晶の広間へ――
「カームセラドン様、先日の薬品は、このように素晴らしい色になりました」
フジが壺を差し出す。
【これは美しいですね……
この素敵な色を出したのは、貴殿方なのですね】
シトリンとアマリンは、感激して言葉を失ったまま頭を下げた。
【この薬品も、腕前も素晴らしい。
私も焼きたくなりました】
「おや? 泣いているのかい?」
アオが唔器呟を撫でる。
【これ程の感激は御座いません】
【皆様、ありがとうございます】
魂主達は嬉し涙に咽びながら、なんとか言った。
「良かったですね……」フジも うるうる。
【素敵な出会いですね……
釉薬も色々な出会いで生まれます。
しかし、生み出す事が出来るのは、体が有るうちだけ。
神竜様方、どんどん生み出してくださいね】
「はい! ありがとうございます!」
シトリンとアマリンも感極まって、うるうるしながら、やっと言った。
「カームセラドン様、陶芸工房が新しく出来たのですが、御覧になられますか?」
【連れ出して頂けるのですか?】
「はい。水晶を示して頂けますか?」
【では、私を追ってください】
付いて曲空すると、水晶の間にはサクラと虹藍が居り、大勢の魂が集まっていた。
【お爺様、少し出掛けて参ります】
【ほう、いい壺だな。見に行くのだな?】
【はい♪ アオ、お願いしますね】
水晶が ひとつだけ明滅する。
アオは それを手に取り、先祖達に礼をして、曲空した。
――ひとまず祠の外に出ると、紫苑と珊瑚が現れた。
「何かあったのか!?」
「いえ、お招き頂きまして」
「誰に?」「天竜王の始祖様に」にっこり。
「まさか……」【来たか、妖狐王】「やっぱり」
「サクラが出て来る迄お待ちください。
フジ、ここで待っていてくれるかい?
始祖様を頼んだよ」「え? あ……はい」
「美しい壺ですね」紫苑が寄って来た。
「ありがとうございます♪」
陶芸家と魂主、大喜び。
「伯母達が毎日 花を活けているので、私共にも壺を作って頂けませんか?」
「どのような壺を?」
「それと同じ物が良いですね」
「これは色見本ですが……」
「その色の変化が、時の流れのように美しいと思ったのです」
「この壺でよろしければ、どうぞ」
「見本がなくなっても、よろしいのですか?」
「見本板はございますので大丈夫です」
「ありがとうございます」
「では皆さん、少し待っていてください」
アオはシトリン達を連れて曲空した。
――陶芸工房。
「シトリンさん、先程サクラと並んでいた女性の鱗の色を覚えていますか?」
「はい♪ きっとそうだと思って覚えました」
「では、お願いしますね」「はい♪」
「カームセラドン様、こちらが陶芸工房です」
【大勢 神竜様方がいらっしゃるのですね。
驚きました。
あ……私の好きな青が沢山……】
「お教え頂きましたので、皆 喜び、こぞって作っております」
【それは嬉しい。
アオ、私は暫く、こちらで土の匂いを感じていたいのですが、置いておいてくださいますか?】
「勿論です。台座も持って来ております」
【ありがとう。気が利くね】上機嫌。
「では、お教え頂きたい事がっ!」
神竜達が集まって来た。
【おやおや、慌てなくても、暫く居るつもりだし……私なんぞの話など――】
「いえっ!『偉大なる陶芸の父』と呼ばれております貴方様のお話を伺えるなど、滅多な事ではございませんのでっ!」
【神竜様が、ただの竜の私に、そのような――】
「いえいえっ!! ただの竜などとっ!!」
「シトリンさん、御先祖様は楽しそうだから、暫く よろしくお願いします」
水晶を乗せた台座を渡した。
紫苑と珊瑚が大きな袋を持って現れた。
「先程の壺のお礼と申しては何ですが」
「地下魔界より、土をお持ちしました」
「なんとも触り心地の良い、滑らかで、きめ細かい土ですね!」
瞳キラキラ!
「喜んで頂けて良かった」にっこり。
桜「凜~、外に始祖様いる?」
凜「フジと話してるわよ」
藍「こちらの方も、ご先祖様なの?」
桜「違うよ。たぶん人」
凜「たぶん、って、おい」
桜「魔竜王城まで曲空しよかな……」
凜「それはそれで怒られるよ?」
桜「だよねぇ……仕方ないなぁ……」
サクラは渋々出て行った。




