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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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竜王族3-御対面

 またまたまたお墓参りです。


♯♯ 天界 竜骨の祠前 ♯♯


【サクラ、アオは何処に行ったのだ?】


「地下だと思います。

婚約者を連れて挨拶に参ったのですが、つい、連れて来てしまって……」


【なら、さっさと済ませろよ。

待ってるからな】気配が消えた。


「サクラ……どなたとお話ししていたの?

お姿が見えなかったのだけれど……」


「シルバコバルト様だよ」「えっ!?」


「今は神様なんだ」「どうして御先祖様が?」


「もともと神竜だったんだって。

魔王の呪で神界に入れなくなって、天界で竜王になったんだって。


それで、ここが王族の墓地。入ろう」


サクラは虹藍の手を取って祠に入った。


拝聴の間で祈ると、モエギが現れた。

【サクラ、如何しましたか?】


「はい、今日は婚約者と挨拶に参りました。

始祖様には入口でお会い致しました」


【魔竜女王様に、水晶を御覧頂くのですね?】


「はい。よろしいでしょうか?」


頷き、【中央の扉から奥に進みなさい】示した。


「ありがとうございます、モエギ様」


サクラと虹藍は奥へと進み、広い場所に出た。


「綺麗……こんなに沢山……この水晶は何?」


「この ひとつひとつに、御先祖様の魂が込められているんだ。

さっきのモエギ様は、前の長老様なんだよ」


「じゃあ……」「そう。亡くなっているんだ」


「普通にお話ししていたわ」「うん」


【サクラ、今日は何だ?】


「あ、グリッターローズ様。

今日は婚約者を連れて参りました。

魔竜女王の虹藍です」


【そうか。もう結婚するのか。

まぁ、サクラなら大丈夫だな。

魔竜王として励めよ】


グリッターローズが話している間に、沢山の魂が次々と現れた。


【虹藍、魔竜も我等の子孫だ。

同じく水晶に込める事が出来る。


サクラ、それを見せに来たのであろう?】


「はい。グレイスモーブ様」


「サクラ……それは、どういう……?」

驚き過ぎて固まっていた虹藍が、やっと口を開いた。


「初代魔竜王のスカーレット様は、六代天竜王だよね。

こちらのお二方は、三代王と女王なんだよ。

魂をあの水晶に込めた御先祖様方とは、こうしてお話し出来るんだ。

解ったかい?」


「うん……あっ!

ご挨拶が遅れました!

サクラ様と婚約させて頂きました虹藍と申します」おもいっきり礼っ!


【サクラを宜しく頼むぞ】


【魔竜王国との国交再開、悦ばしく思うぞ】


【これからの両国の発展、楽しみにしている】


先祖達が口々に話し始めた。

どの言葉も二人を祝福し、両国共に栄える事を願っていた。


「二人で天魔両国の懸け橋と成る所存です」


サクラの言葉に、虹藍は大きく頷き、


「共に発展出来るよう、先ずは天竜王国に追い付きたく存じます」

瞳をキラキラさせて言った。


【流石、若くても女王だな。期待しているぞ】


「ありがとうございます!」



♯♯♯♯♯♯



 その頃アオは、フジを連れ陶芸工房を訪れていた。


「この色……」しげしげ「綺麗ですね……」


眺めているフジを置いて、アオが消え――


唔器呟を二つ持って戻った。


シトリンとアマリンが近寄って来た。

「おや? この器は……」「あの試作ですよね?」


【いや……何だ……その……】しどろもどろ。


「試作の器も、実は気に入ってたらしいんだ」


「そうですか♪」【黙っとれ!】赤く光る。


「照れているだけだからね」【王!】真っ赤!


「この中に、混ぜた薬品の魂主が入っているんだ。

ほら見て、こんなに良い色になったんだよ」


【こんな……】【毒として生み出されたのに……】


「釉薬には、毒劇薬も普通に有りますよ」

「素晴らしい色が出て、嬉しくて堪りません」


【……喜んでくださっているのですか?】


「当然ですよ!」「この美しさですよ!」


「シトリンさん、アマリンさん、この薬達に名を付けて頂けますか?」


「私達が?」「よろしいのですか?」


「アオ兄様、この壺をカームセラドン様にお見せしたいのですが――」

フジが寄って来た。


「カームセラドン様!?」陶芸家達一斉!


「わわっ!?」「有名人らしいね」


「このカムセラブルーは『幻の青』と呼ばれておりました。

この色を生み出したのが『陶芸の父(カームセラドン様)』なんです。

その御名を知らない陶芸家はおりませんよ」


「会いに行きますか?」


「え……? ……何と?

まさか、神だったのですか?

天竜だと習ったのですが……」


「俺達の祖先ですので天竜ですが、話す事は出来ますよ。ね、フジ」


「はい。参りましょう」


壺と唔器呟を抱え、

「肩に手を当ててください」

塊になって曲空した。



――竜骨の祠。

モエギの案内で、紫水晶の広間へ――


「カームセラドン様、先日の薬品は、このように素晴らしい色になりました」

フジが壺を差し出す。


【これは美しいですね……

この素敵な色を出したのは、貴殿方なのですね】


シトリンとアマリンは、感激して言葉を失ったまま頭を下げた。


【この薬品も、腕前も素晴らしい。

私も焼きたくなりました】


「おや? 泣いているのかい?」

アオが唔器呟を撫でる。


【これ程の感激は御座いません】

【皆様、ありがとうございます】

魂主達は嬉し涙に咽びながら、なんとか言った。


「良かったですね……」フジも うるうる。


【素敵な出会いですね……

釉薬も色々な出会いで生まれます。

しかし、生み出す事が出来るのは、体が有るうちだけ。

神竜様方、どんどん生み出してくださいね】


「はい! ありがとうございます!」

シトリンとアマリンも感極まって、うるうるしながら、やっと言った。


「カームセラドン様、陶芸工房が新しく出来たのですが、御覧になられますか?」


【連れ出して頂けるのですか?】


「はい。水晶を示して頂けますか?」


【では、私を追ってください】


付いて曲空すると、水晶の間にはサクラと虹藍が居り、大勢の魂が集まっていた。


【お爺様、少し出掛けて参ります】


【ほう、いい壺だな。見に行くのだな?】


【はい♪ アオ、お願いしますね】


水晶が ひとつだけ明滅する。

アオは それを手に取り、先祖達に礼をして、曲空した。



――ひとまず祠の外に出ると、紫苑と珊瑚が現れた。


「何かあったのか!?」


「いえ、お招き頂きまして」


「誰に?」「天竜王の始祖様に」にっこり。


「まさか……」【来たか、妖狐王】「やっぱり」


「サクラが出て来る迄お待ちください。

フジ、ここで待っていてくれるかい?

始祖様を頼んだよ」「え? あ……はい」


「美しい壺ですね」紫苑が寄って来た。


「ありがとうございます♪」

陶芸家と魂主、大喜び。


「伯母達が毎日 花を活けているので、私共にも壺を作って頂けませんか?」


「どのような壺を?」


「それと同じ物が良いですね」


「これは色見本ですが……」


「その色の変化が、時の流れのように美しいと思ったのです」


「この壺でよろしければ、どうぞ」


「見本がなくなっても、よろしいのですか?」


「見本板はございますので大丈夫です」


「ありがとうございます」


「では皆さん、少し待っていてください」

アオはシトリン達を連れて曲空した。



――陶芸工房。


「シトリンさん、先程サクラと並んでいた女性の鱗の色を覚えていますか?」


「はい♪ きっとそうだと思って覚えました」


「では、お願いしますね」「はい♪」



「カームセラドン様、こちらが陶芸工房です」


【大勢 神竜様方がいらっしゃるのですね。

驚きました。

あ……私の好きな青が沢山……】


「お教え頂きましたので、皆 喜び、こぞって作っております」


【それは嬉しい。

アオ、私は暫く、こちらで土の匂いを感じていたいのですが、置いておいてくださいますか?】


「勿論です。台座も持って来ております」


【ありがとう。気が利くね】上機嫌。


「では、お教え頂きたい事がっ!」

神竜達が集まって来た。


【おやおや、慌てなくても、暫く居るつもりだし……私なんぞの話など――】


「いえっ!『偉大なる陶芸の父』と呼ばれております貴方様のお話を伺えるなど、滅多な事ではございませんのでっ!」


【神竜様が、ただの竜の私に、そのような――】


「いえいえっ!! ただの竜などとっ!!」



「シトリンさん、御先祖様は楽しそうだから、暫く よろしくお願いします」

水晶を乗せた台座を渡した。


紫苑と珊瑚が大きな袋を持って現れた。

「先程の壺のお礼と申しては何ですが」

「地下魔界より、土をお持ちしました」


「なんとも触り心地の良い、滑らかで、きめ細かい土ですね!」

瞳キラキラ!


「喜んで頂けて良かった」にっこり。





桜「凜~、外に始祖様いる?」


凜「フジと話してるわよ」


藍「こちらの方も、ご先祖様なの?」


桜「違うよ。たぶん人」


凜「たぶん、って、おい」


桜「魔竜王城まで曲空しよかな……」


凜「それはそれで怒られるよ?」


桜「だよねぇ……仕方ないなぁ……」


 サクラは渋々出て行った。


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