竜王族1-魔竜王族の魂の行方
妖狐王城を警護していた魔人の軍も
前線警護に戻り、アオは屋敷で休みました。
♯♯ アオの屋敷 ♯♯
日付が変わったばかりの頃――
(アオ兄、そろそろ交替時間だよ)
(ん……ありがとう、サクラ)
(疲れ、だいじょぶ?)現れ、光を当てる。
(大丈夫だよ)にっこり。(ありがとう)
(ん……)
サクラがアオの顔を覗き込む。
(ハク兄に こき使われてるんでしょ?)
(大した事じゃないよ)笑う。(行こう)
(うんっ)曲空♪
――地下魔界。
「クロ、交替するよ。長時間ありがとう」
「大丈夫なのか? アオ」
「クロ兄も、そぉ思う?」
「うん……なんか、疲れてそうだよな」
「自覚は無いんだけど……」
「お前、まさか昨日一日、食わずに動いてたんじゃないのか?」
「あ……」「忘れてたの?」「すっかり……」
「すぐ作って来るからなっ」曲空。
「アオ兄、医者なんだから、ちゃんと健康管理しよぉね~」睨む。
「気をつけます、サクラ先生」
「その呼び方イヤ~」ふるふる。
「畏まりまして御座います、サクラ王様」
「もっとイヤッ!」ふくれて睨む。
「でも、もう ちゃんと王だし――」(闇!?)
二人、瞬時に警戒したが――
(影や幹部じゃなさそぉだけど……)
(そうだね……)
唐突に現れた気配が、フラフラと漂うように飛んで来る。
闇まみれの何者かは――
(竜だよっ)(行こう)二人、飛び寄った。
「大丈夫ですか!?」光で包み、受け止める。
アオとサクラは、浄化と回復に全力を注いだ。
「アオ殿! サクラ殿!」「アオ様~!」
慎玄を乗せた爽蛇が飛んで来る。闇まみれで。
サクラは二人を浄化した。「どぉしたの?」
「隠し部屋を浄化しておりましたら、壁から鏡が浮き出て参りまして、その鏡を浄化しておりましたら、その方が弾かれるようにお出になられ、双方、飛ばされたので御座います」
竜に纏わり着いていた闇が薄れていき、次第に色が見えてくる。
「個紋だよ!」
次第に個紋が明瞭になる。
「天竜ではなさそうだね」
「あっ……この方は――」「知ってるの?」
「この個紋は、天藍様だ!
前王妃様だよ!」
「サクラ、天界にお連れしよう!」
「うん! せ~のっ!」
――深蒼の祠。
「夜中に すみません! 急ぎ浄化を!」
どの祠も満杯なので、深蒼の祠に飛び込んだ。
カルサイとドルマイが現れた。
【お任せください】杖を振り、魔法円を出す。
【内深き呪を浄化すれば大丈夫です】
二神が術を唱える。
見詰めていると――
クロに掴まれた。
――深蒼の祠の庭。
「食ってからにしろ!」
「あ……」夜風が寒い。
サクラが暖かい光で包み、食事が始まった。
「アオ兄、祠が光ってるよ」サクラも食べる。
「神の光ではなさそうだね……行っ――」
「食ってからだっ!」「う……」「ったく~」
食べ終わり、クロに礼を言って、祠に入った。
光っていたのは、虹藍の父と兄の剣だった。
「異変を感じ、参りましたら、光っておりました。
何方か剣に込められているようです」
傍に立っていたムーントが言った。
「もしかして……」「きっと そうだね」
カルサイとドルマイが来た。
「剣に込められている魂は、各々の持ち主でしょうか?」
二神が手を翳す。
【はい。そうです】
「御体に戻す事は出来ますか?」
【それは……残念ながら……】
【この魂は、亡くなってから、この剣に施されていた術に依り、引き寄せられています。
ルリのように、亡くなる直前に込められていれば戻せるのですが、死に依り、完全に体から切り離された後では、戻す術はありません。
ですが、コバルトの子孫である王族方々は、竜骨の祠にて存在しておりますよね】
「それなら……お願いします!」
【ムーント、竜魂の水晶を】「はい」
「剣の術者は、何方なのでしょう?」
【前王妃・天藍。
彼女の祖先は、代々この六祠を守ってきた神官の家系です。
交流があった時、嫁いだジョンブリアンが伝えたのでしょう】
ムーントが二つの水晶を持って来た。
「サクラ様、背の剣が輝いております」
「本当だ……借りるよ」アオが抜いた。
「ここにも何方か込められている……」
「アオ、サクラ」アカが現れた。
手に輝く雅剣を持っている。
「全ての雅剣に何方か入ってたんだね……」
サクラが剣を撫でた。
水晶に魂を移したカルサイが近付いた。
【おそらく、術者である天藍が現れた為に、この二人の剣に施されていた封印が解け、雅剣達が、それに呼応したのでしょう】
「封印?」
【込められている魂が、魔王に見つからぬよう、封印が施されておりました】
「だから気づかなかったのか~」
カルサイが剣を確かめる。
【こちらの術者はジョンブリアンの孫・白輝。
華雅のみ、天藍の曾祖母・紫華】
「じゃあ、魔竜王城にある剣は全部――」
【可能性は有りますが、魂を引き寄せた時に封印が発動し、他の場所へと飛ばされてしまうようです】
「だとすると、残っている剣は未発動ですね?」
【そうなりますね】
ムーントが、もう一度 水晶を運んで来た。
【移しますね】「お願いします!」
雅宝剣から水晶に移された魂は、虹藍の祖父母と伯父一家であった。
「カルサイ様、術を施されているのは、剣ばかりなのでしょうか?」
【おそらく、そうでしょう。
竜宝剣は強い力を持っていますので。
水晶や鏡、璧にも込める事は可能ですが、結び付く力が強過ぎる為、竜魂の水晶に移す事が困難となります。
ですので、剣が、この術には最適でしょう】
「サクラ、宝物庫の目録と照合しよう」
「うん! 剣を探したい!」
【竜魂の水晶は作っておきます。
いつでもお持ちなさい】
「ありがとうございます。
カルサイ様、ドルマイ様」二人、揃って礼。
♯♯♯
アオとサクラは、地下魔界に戻った。
元の場所に行くとクロが居た。
「もういいのか?」
「交替したのに、すまなかった」
「んな事いいよ。また何かあったら呼べよ」
「ありがとう」「んじゃなっ」曲空。
「サクラ、次、交替したら、長老様の所に行こう。
竜骨の祠を新たに造るか、天界に納めるか決めて頂こう」
「アオ兄……忙しいのに、いいの?」
「勿論だよ。
その後で、サクラは虹藍様を竜骨の祠にお連れして、この事を報告してね」
「うんっ」
「今までお連れ出来なかったんだろ?」
「そぉなんだ……ツラいかなって思ってね。
でも、これで挨拶に行けるよ」にこにこ♪
【おい、子孫共】「はい?」「始祖様?」
【他に誰が、こんな呼び方をするんだ?】
「そうですね」「確かに……」
他に、こんな乱暴な物言いの神は知らない。
【フンッ、魔界の子孫の魂だが――】
「何かご意見がございますか?」
【いや、何も無い。好きにしろ。それだけだ】
「それをわざわざ……?」
【忙しいだろうからな。
手間を省いてやった。では、な】
「ありがとうございます!」揃った。
意外と優しい……
【『意外と』は余計だ!】
聞こえてた……
二人、顔を見合す。
【神をナメんなよ】わはははは!
尊敬は、しております。
【なら、こっちでも笛を吹け。
地下で吹いてたのも知ってるんだからな】
畏まりまして御座います。
【よし! 待ってるからなっ♪】
はい。
アオとサクラは、そお~~~~っと笛を置き、曲空した。
(他所で吹いたから拗ねたんだね)
(笛が聞きたかったんだね~)
(認めてくれるのは嬉しいけど……)
(絡むのは、ちょっとね~)
(父上は確かに子孫だよね)
(そぉだね~)きゃははっ♪
(いつ行くの?)
(報告が終わったら、千里眼で呼んでね)
(おとなしく待っててくれるかなぁ?)
(なら、交替したら、まず吹いて行動しよう)
(そぉだね~)
(後で行く時には、フジも連れて行くから)
(うん♪)
(笛を取りに行かないと、また煩いだろうね)
(だよね~、行こっ)
案の定、その後、始祖様はさんざん絡んだ。
翡【スミレ、説明だけはしてよ】
菫【うん……あの方も王族なんだけど、
私は知らない方だったのよね。
ほら、王族も大勢でしょ?】
翡【ほら、って言われても知らないよ】
菫【多いのよ~、知らない方が沢山――】
翡【それはいいから、続き】
菫【つれないんだからぁ。あ、続きねっ。
いきなり『姉貴!♪』って抱きつかれて
ひとりで大騒ぎよぉ】
翡【で、何方に間違われてたの?】
菫【母様。騒いでる言葉から、やっと
『ベニ姉』って拾って、つい娘だって
言っちゃったのよね~】
翡【そこが間違いの始まりだね】
菫【そんなこと言わないでよぉ】
翡【僕は人違いってだけしか言わなかったよ】
菫【だってぇ、凄い騒ぎようだったんだもん】
翡【で、神にしろ、って?】
菫【うん……】
翡【僕達みたいに半神竜だったのかなぁ……】
菫【そうではなかったみたいよ。
再誕したみたいだったから】
翡【何を成して認められたんだろう……
それに、何方が再誕させたんだろう……】
菫【確かに、そうよね……】
翡【あっ、僕は行くよ】消えた。
菫【え?】
?【捕まえた♪】
菫【ぅえっ!?】
?【セレンテ様を知らないかい?♪】
菫【あ……セレンテ様なら大抵、
白百合神殿に――】
?【白百合神殿だねっ!♪ ありがとよ♪】
うろうろしてないで修行すればいいのに……
スミレでも、そう思ってしまうのだった。




