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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
294/429

王の道7-補佐の道

 ハクだって頑張っているんです。


♯♯ 天界 ♯♯


 アオは地下魔界に戻る前に、轟雷の祠に寄った。

この日、一度目の襲撃後に運び込んだ元・影達は、既に、かなり回復していた。


「この中で一番の側近だった方、少しお話を伺っても大丈夫ですか?」


「貴方は、私達を戻してくださった――」


「ただの竜です」にっこり。


「とは、とても思えませんが、何なりと」


「魔王――龍神帝王は、ここ数日 静かでしたが、今日、襲撃を再開したのは何故でしょうか?」


「先日、鏡を使って何方かを飛ばした時、鏡からの強い光を浴び、以降、城に籠って姿を見せませんでしたが……

今朝、何故 攻撃を続けていないのかと檄が飛び、慌てて態勢を整えた次第です」


「今朝は姿を見たのですか?」


「いえ、声だけでした」


「皆様は影だった時、城に入れたのですか?」


「いえ、今は入れません。

以前――ひと月程前までは、術を掛け、鏡を使えば入る事が出来ましたが、城近くに新たな結界を成して以降、入れなくなりました」


「鏡……」


「はい。その鏡を与えられた者だけが入城出来ていたのです」


「城内の見取り図を描いて頂けますか?」


「はい。私達が知り得ている限りを描かせて頂きます」


「ありがとうございます。

御体に無理の無い範囲で、どうか宜しくお願い致します」




 長老の山に曲空し、大婆様の部屋に向かう。


(魔王は私より回復が遅いのだな。

アオの光を浴びたのであろう?)


(攻撃するつもりは無かったんだけど……

ルリを護る為に、全力で自分を包んだだけだよ)


(ありがとう、アオ)(当然だから)にこにこ♪


 もしも再び失ったら、

 今度こそ俺は死んでしまうから……



 伝わってしまっているぞ。

 それほどの者だとは思えないが……

 離れるなど考えたくもない。

 だから――


(――ありがとう、アオ)(なら、後で御褒美♪)

(それは――)(有るよね♪)(うっ)(ねっ♪)

(いや、だから――)(えっ? まさか無いの?)

(それとこれとは――)(楽しみに待ってるね♪)

(う……)(あと半日、ルリと一緒に頑張ろ~♪)

(時々サクラだな)(そぉ?)(ほら)(どこ?)

(目の前だが)(ルリにだけ特別だよ♪)(フッ)

(ああっ! 鼻で笑ったな~)(笑うだろ、普通)

(ひっど~い!)(ぷふっ♪)(また笑ったぁ~)

(着いたぞ)(話逸らしたぁ~)(事実だからな)


「大婆様、失礼致します」恭しく一礼。


「アオ、今日は如何したのじゃ?」にこにこ♪


「はい。

母が王妃修行を希望しておりますので、お願いに参りました」

(さっきとは別人だな)


「そぅか。悦ばしき事じゃな。

ボタン殿とミカン殿が王妃修行を終えた所じゃ。

丁度良いからの、空いた時に通うよぅ、伝えてくれるかの」


「はい。ありがとうございます、大婆様」

(ルリ、何か言った?)(独り言だ)(そう?)


「アオは城に通うておるのか?」


「毎日ではございませんが、皆の婚儀の調整など、母と致しておりますので」


「ほぅ、ミドリ殿が調整を……

アオはいろいろと、よぅ働くのぅ。

して、人界の任の間、城に入れぬのは不便ではないのか?」


「ルリの姿でしたら自由に入れますので、不便はございません」にこっ。


「ルリ殿の姿とは?」ぱちくり。


「このように――」変わる。


「おやまぁ……愛らしき姿じゃのぅ。

ギンが喜んでおるのではないか?」


「はい……少々困る程に……」赤面。


「もしや、サクラも、そぅしておるのか?」


「はい。ルリの妹アンズとして登城しており、ルリとアンズの部屋と、魔竜王城を繋いでおります」


「面白い事をしておるのじゃな」ほっほっほ♪


「工夫しなければなりませんので」


「また改革をするのかと思ぅとったぞ。

今後の為にせぬのか?」


「人界の任、それ自体を無くせるよう、魔王を倒すつもりですので。

ただ、王族でも、親子が自由に会えるようには、変えるべきかと考えている所です」


「ほぅ」


「しきたりにも意味は有るとは解っておりますが、風潮も変わるものです。

平和な世になれば変えてもよいのではないか、と考えるようになったのです」


「そぅじゃな……それも良かろぅな」


「勿論、長老の山での勉学や修行は無くせません。

その期間は離れる事にはなりますが……

最近、両親と接する事が増え、学ぶ事の多さを知りましたので、幼少期と成人以降は、共に居ても良いのではないかと思ったのです」


「そぅかそぅか。

アオ、出来る限り早ぅ政に加わり、皆の為、変えるがよいぞ」にこにこにこ♪


「もうひとつ……考えているのですが……」


「何じゃ? 遠慮のぅ言ぅてみよ」


「お許し頂けるならば、天魔両国の政に携わりたいのです。

元々は魔竜も天竜です。

両国共通の事案や、片方が解決済みの事案も有ると思うのです。

共に栄える為に力を尽くしたいのです」


うんうん。

「兄達と共に、そしてサクラと共に、両国の未来を開く礎と成れ、アオよ」

にこり。


「ありがとうございます! 大婆様」深く礼。


「後押しは、するからの」にこにこにこ。


「はいっ! 宜しくお願い致します」再度、礼。


「実はのぅ、いずれ魔界に行くと聞いた時、魔竜王国の事を頼みたかったのじゃ。

交流が断たれ、その後、如何な事になっておるのか、ずっと案じておったのじゃ」


「以前、力が戻ったら、と仰っていたのは――」


「その事じゃ。

父モエギより最長老を継いだ時に託され、七王子のうち誰ぞ ひとりでも、行ける力を持ってくれぬかと、ずっと待っておったのじゃ。

じゃからのぅ、アオ。

両国にて存分に、その力、発揮せよ」「はい!」




(すこぶる嬉しそうだな)(そりゃそうだよ♪)

(重責を喜んで担うとは)(重責? どこが?)

(流石、アオだな)(誉めてる? 呆れてる?)

(両方だな)(ふ~ん……そうなんだ……)

(不服か?)(まぁね)(両方だが立派だ)

(そう?♪)(それはそうと――)(何?)

(男には戻らぬのか?)(あ……)


モモの部屋の前で、慌てて戻った。



 モモは、ミドリの王妃修行を快く引き受けてくれた。



 外に出、外周の祠も収容所に出来るだろうかと、上昇すると、東端の祠近くが光っていた。


 竜宝かな?


光を目指し、降下する。


 地中か……そこそこ深いな……


神眼と掌握を使って、引き出した。


掲げて見る。「大剣だな……」浄化 。


 これは……雅剣なのかな? 五眼?


光を当てる。(目覚めて……)


「アオ兄、見っけ♪」「あ……サクラ」


「それ――」「うん、光っていてね」


繝雅(ケンガ)だ♪ ちょ~だい♪」


「知ってるの?」渡した。


「うん♪」なでなで♪

「繝雅は未完成なんだ。

だから、アカ兄トコに持って行くねっ♪

せ~のっ♪」曲空♪



――赤虎工房。


「アカ兄♪ 繝雅だよ♪」「ん……」受け取る。


アカは剣を確かめ、壁に掛けた。

そして、箱を持って来て、差し出した。

「千里眼だ」


「腕輪だ~♪」嵌める。


アオの千里眼が鳴る。「どう鳴らしたんだい?」


「アオ兄って思っただけ~♪」切れた。


「あ♪ クロ兄、何も起こってない?

……うん♪ 何かあったら鳴らしてねっ♪」


ぴょんぴょん♪「みんなに配る~♪」ぴょん♪


「アカ、ありがとう」「うむ」


「それじゃ――」サクラに掴まれた。



♯♯♯



 夜、アオが再び城に行くと――


執務室では、ハクだけが机に向かっていた。


「キン兄さんは? 予定外の何かですか?」


「アオ~♪ 待ってたんだっ♪

兄貴、大婆様んトコに行くって、夕方 出たっきりなんだ」


「そうですか。それで、残りは?」


「そっちに置いた♪」


「まさか……全然、進んでいない……?」


「兄貴が進めてくれてたんだが、追加があって、そうなったんだ」


「で、今まで何を?」「署名♪」


「って、昼に俺が見た分じゃないですか!」


「謁見が長引いたんだよぉ、しゃあねぇだろ」


「ったく――あ、キン兄さん……はい。これから……はい、大丈夫です。

ハク兄さんに任せていたら、朝になっても、このままですよ……はい、では」


「その腕輪、何だ?」「千里眼です」


それだけ言うと、アオは書類を読み始めた。


「兄貴、何だって?」「仕事をしてください」

「って言ったのか?」「話す暇ありませんよ」

「教えろよっ!」「今夜は戻れないそうです」

「何で? どこにいるんだ?」「知りません」

「聞いたんだろーが」「地下に行きますよ?」

「わかったよ」チラッと睨み、書類に戻った。



 紙を捲り、書き込む音だけの静かな時が流れる。



 カタッ。「ん?」アオが出て行こうとしていた。


「どこ行くんだ?」「終わりましたので」

「ウソだろっ!?」「失礼致します」礼。

「おいっ待てよ!」「まだ何か?」


「なぁアオ、お前……俺達の大臣になってくれるんだよな?」


「勿論です。ただ……」「な、何だよっ」


「考えている事が有るんです。

まだ、相談しなければならない方々がいらっしゃいますので、この話は後日、改めまして致します」


そう言うと、ハクの方に歩み寄り、机に二つの腕輪を置いた。


「それでは、失礼致します」にこっ。





菫【あ♪ アメシス様♪ 伺いたい事が――】


ア【すみません! 急いでおりますのでっ】


菫【行っちゃった……あ! ヒスイ!】


翡【大声で呼ばないでくれる?】


菫【昨日の続きなんだけど――】


翡【だから、僕は知らないってば!】


菫【アメシス様にも逃げられちゃったのよぉ】


翡【それは当然だと思うけど?】


菫【どうして当然なの?】


翡【ちゃんと生きていた筈なのに……

  どうしてこうも世間知らずなんだろ……】


菫【どうしてそうなるの?】


翡【そういう所だよ。

  とにかく、僕は知らないからね。

  コバルト様に相談してみたら?】


菫【それって……

  どっちもどっちじゃないのよぉ】


?【見つけた! スミレちゃん!】


菫【えっ!?】振り向きもせず逃げっ!!


?【おや? 聞こえなかったのかねぇ……

  でも、アオイさんでもいいさね♪

  ねぇアオイさん、さっきのは

  スミレちゃんだったわよねぇ?】


翡【確かにスミレでしたけど……

  あの、私はヒスイです】


?【あら、そっくりさんかい?

  それにしても……本当に違うのかい?】


翡【違いますので。失礼致します】


?【アオイさんも神に成ったらしいんだけど

  会えないのよねぇ……

  あ、そこの神様っ!】飛んで行った。


 ホッとしたヒスイも逃げた。



?【そうなんだよぉ、孫が生きていてね、

  護りたいから、早く神に成りたいのさ。

  鍛えてくれる偉い神様には、

  何処に行ったら会えるのかねぇ?】


神【鍛えると言えば、セレンテ様ですが、

  何処にいらっしゃるのかは――】


?【セレンテ様だねっ! ありがとよ♪】


 嬉々として飛んで行った。


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