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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
293/429

王の道6-妖狐王太子

 各々が不安を抱いて集まってしまった夜が

明け、各々が一歩踏み出しました。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


 アオ、クロ、フジ、爽蛇と慎玄は、四ヶ所に分かれて警護していた。

魔人の軍は、その殆どを妖狐王城の警護に充てており、天魔両竜王軍は天界と地上界を警護している為、各々その区域を翌日迄、通して護ると決めていた。


(アオ、いい加減これを解いてくれないか?)


(あ、起きたの?)


(とっくに起きている!)


(でも、あと今日一日は休んでね)


(嫌だ! 飽々だ!)


(まだだよ。我慢してね)


(もう出来ぬわ!)


ルリが気を高めた 。(はあっ!!)バッ!!


(あ……流石、ルリだね♪)


(あのなぁ……)


(うん?)


(助けて貰ったし、心配も有難いが、雁字搦めは無いだろ)


(本当に元気になったら、自力で抜けると思っていたからね)くすくす♪


(ひとりの方が楽しいのかと思っていたぞ)

ぷいっと背を向ける。


(まさか! しっかり休んで欲しかっただけだよ)

背中から抱きしめた。

(良かった……本当に良かった……)


(アオ……)ルリが手を重ねる。


向かい合い、顔を寄せ――


(こんな時にっ)(行くぞ! アオ!)曲空!



――地下魔界、フジの警護区域。

(フジ!)(アオ兄様! 突然 現れました!)

(闇の穴ではないんだね?)(はい!)


(アオ、穴では無いが、歪みを感じるぞ)


(……確かに)


(神眼ならば……見えた!)光を放つ!


魔王の影が、現れたと同時に、光に包まれた。


既に現れていた影は、フジの神聖光輝を浴びた。


(来るぞ!)

ルリの声に一瞬 遅れて、歪みが生じた。


アオとルリが、光を合わせて放った。


「極炎豪放!」神聖光輝を乗せ、拡散する。


周囲、三ヶ所から現れた影達が落ちる。


アオが落下した元・影達を光で包む。

フジが別の宙に放水した。


(それ、色が着いているんだね)


(はい♪ 混ぜていますので)


話しながらも、次々と影達を落としていった。



(……弾切れかな?)


(歪みの気配も消えたな……)


暫く、警戒したまま待ち――


(また出るまでに運ぼうか)下を指す。(ふむ)


(フジ、神竜様方を運ぶから、ここにいてね)


(はい。神聖光輝で浄化出来そうですが――)


(うん、頼んだよ)(はい♪)



 轟雷の祠に、神竜を運び終え、アオが戻った。

「追加は無いみたいだね。

さっきの色は何だい?」


「いくつか混ぜていますが、色は碧守閃鉱(ヘキシュセンコウ)の粉です。

性別が変わる程の事はありませんが、魔王の因子は蒼月効果を受けるようです」


「凄いね、それは」


「毎日サクラが運んでくれる竜宝薬の知識が、とても役に立ちます♪」にこにこ♪


(アオ兄! フジ兄! ちょっと お願いっ!)


「サクラ!?」言い終わる前に掴まれた。



「ここは……?」「妖狐王城♪」「どうして?」


サクラはフジに答える代わりに笛を構えた。


その後ろで紫苑と珊瑚が微笑んでいる。

二人も笛を構える。


(そういう事ですか)アオとフジも構えた。


五人の笛の音が大広間に満ちる。


爽やかに煌めく音色に、皆、聴き惚れた。


(サクラ、今日は手薄なんだから、一曲だけだよ)

(うん♪ ごめんよぉ)(精一杯、奏でるからね)


(すみません、急に求められてしまいまして)


(昨日の今日だから想定内だよ、妖狐王太子)


(確かに、魔竜王国から、そのままいらした方も多くいらっしゃいますね)


(そうだろうね)


(一曲で済むでしょうか?)


(済まないだろうね。三曲って所かな?)


(すみません)


(俺達に遠慮しないで)


(しかし――)


拍手に包まれ、二曲目に入る。


(大丈夫、代わりにコギ殿が行ってくれたよ)


(え……いつの間に……)


(俺達が来て、すぐにね)


(気付きませんでした)


(気にしなくていいよ)


(アオ兄様、次は弦をお借りしませんか?)

(いいね、そうしよう)(俺も~♪)


三人は弦楽器を選び始めた。


再び湧いた拍手の中、フジは琴の前に移動し、アオとサクラは胡弓を借りて座った。


厚みを増した音色は荘厳華麗に響く。


(ねぇ、アオ兄……)(うん、いいよ)

(紫苑さん、珊瑚さん、次、舞わない?)

(次ですか!?)

(たぶん拍手は鳴りやまないから、頼むね)

(よろしいのですか?)(いいから~♪)


アオが言った通り、拍手は収まらない。


紫苑と珊瑚は笛を仕舞い、進み出た。


アオは笛に戻し、吹き始めた。

フジとサクラが、弦の音色を重ねる。


わざわざ呼吸を合わせる必要も無く、二人は舞い始めた。


そして、もう一曲――の途中で――


(短くするよ)(はい、クロ兄様ですね)

(うん)(サクラは来ちゃ駄目だろ)

(もぉ十分だよぉ。儀式は見たもん)

(ちゃんと役目を果たせよ、魔竜王)(ぶぅ~)


並んで立ち、優雅にお辞儀をし――


五人共、消えた。



――地下魔界、クロの警護区域。

(主役が来て、どうするんだ!)

(もう十分です♪)

魔竜王(サクラ)も!)

(この数だよ、こっちが大事!)


闇に対抗する、光と水と御札が飛び交う。


(皆、集まってたから呼ばなかったのに……)

(変な遠慮するな!)

(そぉだよ~)(そうですよ)


(一気に片付けるぞ!)

(ルリ姉、合わせるねっ)

(フジ、水と御札を拡散して!)(はい!)


「極炎豪放!」「浄癒閃輝!」


(おっしま~い♪)(魔竜王(サクラ)、戻れよ)睨む。

(え~っ)(戻れっ!)(また出るよ?)

(虹藍様をおひとりで放っておくのか?)

(戻るよぉ)(ちゃんと送れよ)(うん)


くすくす聞こえる。


妖狐王太子(紫苑殿と珊瑚殿)も!)(魔人を運びます♪)


「紫苑様! 珊瑚様!」(コギ殿がお怒りだよ)


(仕方ありませんね……では、後程また)消えた。


「また……って……」


サクラが笑う。アオが睨む。サクラが消えた。

(また後でね~♪)きゃはははっ♪


千里眼が鳴る。「どうかしましたか?」


『アオ! すぐに来てくれっ!』切れた。


ため息……

「クロ、フジ、ここを頼んだよ」曲空。



――とりあえず人界に出たとたん、

(アオ♪ 父上の執務室だ♪)

ハクの声が聞こえた。



――天竜王城。

 アオはギン王の執務室の扉を開けた。

「何ですか? ハク兄さん」


「急がない物は置いといていいって言われたんだが、急ぎが――」

忌々し気に書類の山を叩く。

「こんなにも有るんだ。手伝ってくれよ~」


「キン兄さんは……ああ、会議ですね」


「よく知ってんだなっ」「当然です」


ハクを睨んでいても仕方がないので、最上の書類に目を通す。


「次の謁見まで、あまり時間はありませんよ。

急いでください」半分取る。


「恩に着るっ♪」「半分だけですよ」


 目を通し、書き込み――三つの山を作った。

紙の小片を乗せる。


「『可』は署名だけしてください。

真ん中は『再検討』、案は書き込んでいます。

『保留』は、コハク王様のお戻りを待ってください。

明日の昼には帰城なさいますので。

それでは――」「待てっ!」「まだ何か?」


「もう終わったのか?」書類を指す。


「はい。

地下は二度も襲撃を受けているんです。

今、最前線はクロとフジだけなんですよ。

戻らせてください」


「そっか……悪かった!」掌を合わす。


「謁見の時間ですよ」「ゲッ……」


「サクラと妖狐の皆さんが戻ったら、もう一度 来ますので、頑張ってください」


「アオって……やっぱスゲーな……」


「普通ですよ」曲空。


「普通って……」アオが作った山を確かめる。


 どこが『普通』なんだよっ!!


扉が叩かれる。『ハク様、お時間で御座います』


「今、行く」


 サクラには、絶っっ対! 渡せねぇ!


謁見の間に向かうハクから、心の声が漏れた。




 キンが会議から解放され、会議書類を置く為に執務室に入ると、来客用の卓に整然と積まれた書類が目に入った。


 これは……アオの字だな。

 ハクが呼んだのだな。仕方のない奴だ。


 この案……流石だな。これも……ふむ……


 いくらサクラと仲が良かろうが、

 渡す訳にはいかぬな……


そして執務机を見る。


 まったく……仕方のない奴だ。


机上を整理し、手付かずの山を読み始めた。


四苦八苦しているであろうハクの事は忘れて……




 兄貴、遅っせ~なぁ……





 ハクに呼ばれ、執務室に向かう前に、

ルリが主になりたいと言い出した。


青(ルリ、どうしたんだい?)


瑠(せっかく城に来たのだからな。

  体を貸せ。寄り道する)


青(いいけど……どこに行くの?

  え? 衣装部屋?)


瑠(黙っていろ。なんなら眠らせるが?)


青(いや、静かにするよ)


瑠(心配するな。戦える服を選ぶだけだ)


青(え~~~っ!)


瑠(うるさい!)


青(ぶぅ~っ!)



注)ルリと話しているのは、サクラでは

ありません。


 この後、こそっと元の服に戻して、

また怒られるアオだったりします。


アオが、こんな事をするのは、

もちろんルリに対してだけですが……


父親の事、とやかく言えそうにない気もします。



青「ルリって本当は、とっても女の子なんだ」


瑠(アオ、誰に何を言っているのだ?)


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