王の道2-親子
アオは幼い頃から、離れて暮らす兄弟を
繋いできました。そして今度は――
♯♯ 天竜王城 ♯♯
(スミレ、父上は?)【ミドリ様の所よ♪】
(うまくいったんだね?)【もちろんよ♪】
ルリは、ミドリの部屋に向かった。
そして――「失礼致します」
「アオ、また来てくれたのか」
「アオなの?
あなた、どうしてお分かりになるの?」
「ん? 気が――いや、雰囲気が違うだろ?」
「そうなの? アオ?」
「ええ。俺です」
「で、どうしたんだ?」
「はい、父上。
母上の御協力が得られるのでしたら、王太子の婚儀を早める事が叶いますが、よろしいでしょうか?」
「アオが、それでいいのなら、異存は無い」
「母上、こちらの調整は、全てお任せしなければなりませんが、宜しくお願い致します」
「いいの? 私……参じても?」
「王太子の婚儀ですので、大変な御面倒を押し付けてしまいますが、構いませんか?」
「いいえ! 面倒だなんて! 嬉しくて……」
ルリの胸で泣く。
「母上、これから皆の婚儀が控えております。
天界での調整は、全て宜しくお願い致します」
「さっき、王も、これから会議や公務に加わってよいと仰ってくださったの。
私……産卵の為だけに嫁いだのだって、勘違いしていたわ。
だから、王妃修行も無くて、何も知らないまま城に入ったのだと……」
「ミドリ……俺が悪かった……」
「母上……」背を擦る。
「父上は、母上には苦労させたくはなかったのです。ただそれだけ。
父上の優しさなのです」
「そうなのね……」「アオ……」美化し過ぎだ。
「アオ、私、きちんと勉強したいわ。
今更かもしれないけれど……」
「勉強には『今更』などありません。
大婆様とモモお婆様には、お願いしておきますね」
「ありがとう、アオ。
あなたって、本当に優しい子ね」
「父上と母上の子ですから」にっこり。
そうやって丸め込むのか……
「ただ……この先、魔王に近付けば、天界に戻る事は非常に難しくなります。
特級儀式ではありますが、王太子を除いて、皆、影武者となる可能性も含めて、御取計いお願い致します」
「わかりましたわ。任せてね」
「そんなに無理をしてまで……それに、さっきは不可能だと言ってなかったか?」
「母上の御協力があれば可能ですから。
それに、もうひとつ早めなければならなくなりましたので」
「もうひとつ、だと?」
「魔竜王国の為に、サクラの婚儀を早めたいのです」
「虹藍様の為に……そうだな。
確かにサクラならば、俺よりもずっと王に相応しいな……」
「母上、その調整もお願い出来ますか?」
「ええ! サクラの幸せの為ですもの!
私、精一杯 力を尽くしますわ!」
「父上、母上、サクラの入城と謁見許可を得ております。
迎えに行きますので、謁見の間に御移動お願い致します」
「ねぇ、アオ……
ひとつ聞いてもよろしいかしら?」
「何でしょう? 母上」
「今、アオなのよね?
どうして姿がルリさんなの?」
「人界の任の最中ですので、入城許可を得ていない時は、ルリの姿を借りています」
「不思議な事が出来るのねぇ。
それに――」ぷにぷに「本物なのねぇ……」
「母上っ、あのっ、恥ずかし過ぎます!」
真っ赤になって両手で胸を覆い、背を向けた。
両親が愉しげに笑う。
初めて見る両親揃っての笑顔に、これからの幸せを願って止まないアオだった。
♯♯♯
【貴方が アオね?】
謁見の間の前でサクラ達を見送ったアオに、声が掛かった。
「はい。貴女様は?」
【私はディアナ。
真神界で、この子に会ったの】
きゅるる~♪
「あ、キュルリ……
もしかして、一緒に飛ばされてたのかい?
ありがとうございます、ディアナ様」
【こんなに素晴らしい芳小竜を初めて見ました。
大切になさってね】
「はい。無事で良かった……」なでなで。
【ではまたね、キュルリ】
きゅるきゅるる♪ 手をぴよぴよ振る。
【またお会いしましょう、アオ】
「本当に、ありがとうございました!」
【アオ、今の方は……?】
「ディアナ様だそうだよ。
キュルリを拾ってくれたんだ。
スミレ、知っているの?」
【その御名は……昔、最高神をされた大神様よ】
「凄い御方に拾って頂けたんだね、キュルリ」
きゅるきゅきゅるっ♪ きゅる~♪
【術のお手伝いをしたみたいね】
「分かるの?」
【だいたいね】
「俺も話せるようになりたいな……」
【竜宝の国でなら話せるかもしれないわ】
「なら、行こうか」
きゅるきゅる♪ ふよふよよ~
――竜宝の国。
【アオ王様、本日は如何な御用ですかな?】
「この子と話したいんだけど、可能かな?」
【祠でしたら、話せるかと存じますよ】
「ありがとう、壺美善」曲空。
――祠。
【アオ~♪】祠に入るなり喋った。
「キュルリ、声も可愛いんだね」
【ボク、かわいい~♪】くるくる♪
「それに、ちゃんと解っているんだね」
【あそぶの? じゅつ? サクラどこ?】
「じゃあ、これは?」掌に小さな光の球を出す。
【ちょ~だ~い♪】ふよふよ飛んで離れる。
光の球を追いかけ、楽しそうに喋っているキュルリを見ていると、サクラ達が幼かった頃を思い出した。
子供……か……
キュルリと自由に話せるようには
出来ないのかな……
本物の子供は無理だけど、キュルリなら
俺達の子供にいいかもな……
「アオ兄、見っけ~♪
話せないから、ここだと思ったんだ」
【サクラ~♪ あそぼ~♪】ふよふよ~
「え!? キュルリ喋ってる……」きょとん。
「うん、ここでなら話せるらしいんだ」
【あっそぼ♪ あっそぼ♪】
「父上達が呼んでるんだけど~」光ポ~ン♪
キュルリが追いかけてポ~ン♪
「まだ何かあるのかい?」ポ~ン♪
【きゃっ♪ きゃっ♪】ポ~ン♪
「来たら話すって~」ポ~ン♪
【あ~~~っ、えいっ】ポ~ン♪
「急ぐのかい?」ポ~ン♪
【まって~~、きゃっ】ポ~ン♪
「それは言ってなかったよ」ポ~ン♪
【あっあ~~っ、あ~あ……】テ~ンテンテン……
「俺だけ?」「ううん、俺も~」「そうか……」
キュルリが両手で光の球を抱えて、飛んで来た。
「キュルリ、城に戻らないといけないらしいんだ。行こう」
【うんっ♪】
「ここを出ると『きゅるきゅる~』に戻っちゃうんだね~」なでなで。
「ここの何が通訳してくれているんだろうね」
「そぉだね~、誰かなぁ?」
建物自体が明滅する。
「さすがに持ち運べないね~」あはは……
♯♯ アオの屋敷 ♯♯
「風ちゃん、あなたは、本当は――あ、爽蛇さん♪」
「すみません、お迎えに行ったのに、呼ばれてしまって……
良かった。陽なたぼっこしていたんですね」
「はい♪ 良いお天気ですので、お庭に出てみたんです。
でも、そろそろ入ろうかと思っていたんです」
「そうですか。
では、運ぶのをお手伝いしましょう」
「ありがとうございます♪」
「すみません、こんな事しか出来なくて……」
屋敷の託児所で預かっている子供達がお昼寝している籠を抱え、歩き始める。
「いいえ。私の方こそ、執事長のお手を煩わせてしまって……」
風蛇を抱いたまま追いかける。
さっきは、つい……
お名前を呼んでしまったけれど……
聞こえていなかったのかしら?
それとも――
「あの……爽蛇さん……」
「何でしょう?」にこっ。
「あっ、何でも……すみません」
「そうですかぁ?」
「はい。何でもございません……」
「……では、急ぎましょう。
冷えてまいりました」にこっ。
「はい、執事長♪」
並んで歩く二人を見つけた使用人達は、暖かい眼差しで静かに見送った。
ギンとミドリは仲良くなれました。
子供が欲しくなったアオは、親心や
「親」という存在が少し理解できました。
離れ離れだった親子も、
これから良い家族になれそうです。
?「姫さまぁ~♪」
姫「およ? ワン太郎♪」
桃「姫さま♪」ぱふっ♪ 尻尾ぶんぶん♪
姫「まさか、ひとりで森に来たのか?」
桃「父ちゃんとキツネのお兄ちゃんが、
つれて来てくれたんだ♪」
姫「さよぅか♪ ならば少し遊ぼぅぞ♪」
桃「うん♪ あ、竜のお兄ちゃん達は?」
黒「姫、何してるんだ? その子犬は?」
桃「真っ黒ツヤツヤ! カッコいい~♪」
黒「お? そっか♪ いいコだなっ♪
乗せてやるぞ♪ 姫も乗れよ♪」
クロは上機嫌で飛んで行った。




