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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
289/429

王の道2-親子

 アオは幼い頃から、離れて暮らす兄弟を

繋いできました。そして今度は――


♯♯ 天竜王城 ♯♯


(スミレ、父上は?)【ミドリ様の所よ♪】

(うまくいったんだね?)【もちろんよ♪】

ルリ(アオ)は、ミドリの部屋に向かった。




 そして――「失礼致します」


「アオ、また来てくれたのか」

「アオなの?

あなた、どうしてお分かりになるの?」


「ん? 気が――いや、雰囲気が違うだろ?」


「そうなの? アオ?」


「ええ。俺です」


「で、どうしたんだ?」


「はい、父上。

母上の御協力が得られるのでしたら、王太子の婚儀を早める事が叶いますが、よろしいでしょうか?」


「アオが、それでいいのなら、異存は無い」


「母上、こちらの調整は、全てお任せしなければなりませんが、宜しくお願い致します」


「いいの? 私……参じても?」


「王太子の婚儀ですので、大変な御面倒を押し付けてしまいますが、構いませんか?」


「いいえ! 面倒だなんて! 嬉しくて……」

ルリ(アオ)の胸で泣く。


「母上、これから皆の婚儀が控えております。

天界での調整は、全て宜しくお願い致します」


「さっき、王も、これから会議や公務に加わってよいと仰ってくださったの。


私……産卵の為だけに嫁いだのだって、勘違いしていたわ。

だから、王妃修行も無くて、何も知らないまま城に入ったのだと……」


「ミドリ……俺が悪かった……」


「母上……」背を(さす)る。

「父上は、母上には苦労させたくはなかったのです。ただそれだけ。

父上の優しさなのです」


「そうなのね……」「アオ……」美化し過ぎだ。


「アオ、私、きちんと勉強したいわ。

今更かもしれないけれど……」


「勉強には『今更』などありません。

大婆様とモモお婆様には、お願いしておきますね」


「ありがとう、アオ。

あなたって、本当に優しい子ね」


「父上と母上の子ですから」にっこり。


 そうやって丸め込むのか……


「ただ……この先、魔王に近付けば、天界に戻る事は非常に難しくなります。

特級儀式ではありますが、王太子を除いて、皆、影武者となる可能性も含めて、御取計いお願い致します」


「わかりましたわ。任せてね」


「そんなに無理をしてまで……それに、さっきは不可能だと言ってなかったか?」


「母上の御協力があれば可能ですから。

それに、もうひとつ早めなければならなくなりましたので」


「もうひとつ、だと?」


「魔竜王国の為に、サクラの婚儀を早めたいのです」


「虹藍様の為に……そうだな。

確かにサクラならば、俺よりもずっと王に相応しいな……」


「母上、その調整もお願い出来ますか?」


「ええ! サクラの幸せの為ですもの!

私、精一杯 力を尽くしますわ!」


「父上、母上、サクラの入城と謁見許可を得ております。

迎えに行きますので、謁見の間に御移動お願い致します」


「ねぇ、アオ……

ひとつ聞いてもよろしいかしら?」


「何でしょう? 母上」


「今、アオなのよね?

どうして姿がルリさんなの?」


「人界の任の最中ですので、入城許可を得ていない時は、ルリの姿を借りています」


「不思議な事が出来るのねぇ。

それに――」ぷにぷに「本物なのねぇ……」


「母上っ、あのっ、恥ずかし過ぎます!」

真っ赤になって両手で胸を覆い、背を向けた。


両親が愉しげに笑う。


初めて見る両親揃っての笑顔に、これからの幸せを願って止まないアオだった。



♯♯♯



【貴方が アオね?】


謁見の間の前でサクラ達を見送ったアオに、声が掛かった。


「はい。貴女様は?」


【私はディアナ。

真神界で、この子に会ったの】


きゅるる~♪


「あ、キュルリ……

もしかして、一緒に飛ばされてたのかい?

ありがとうございます、ディアナ様」


【こんなに素晴らしい芳小竜(ホウコリュウ)を初めて見ました。

大切になさってね】


「はい。無事で良かった……」なでなで。


【ではまたね、キュルリ】


きゅるきゅるる♪ 手をぴよぴよ振る。


【またお会いしましょう、アオ】


「本当に、ありがとうございました!」



【アオ、今の方は……?】


「ディアナ様だそうだよ。

キュルリを拾ってくれたんだ。

スミレ、知っているの?」


【その御名は……昔、最高神をされた大神様よ】


「凄い御方に拾って頂けたんだね、キュルリ」


きゅるきゅきゅるっ♪ きゅる~♪


【術のお手伝いをしたみたいね】


「分かるの?」


【だいたいね】


「俺も話せるようになりたいな……」


【竜宝の国でなら話せるかもしれないわ】


「なら、行こうか」


きゅるきゅる♪ ふよふよよ~



――竜宝の国。


【アオ王様、本日は如何な御用ですかな?】


「この子と話したいんだけど、可能かな?」


【祠でしたら、話せるかと存じますよ】


「ありがとう、壺美善」曲空。



――祠。


【アオ~♪】祠に入るなり喋った。


「キュルリ、声も可愛いんだね」


【ボク、かわいい~♪】くるくる♪


「それに、ちゃんと解っているんだね」


【あそぶの? じゅつ? サクラどこ?】


「じゃあ、これは?」掌に小さな光の球を出す。


【ちょ~だ~い♪】ふよふよ飛んで離れる。




 光の球を追いかけ、楽しそうに喋っているキュルリを見ていると、サクラ達が幼かった頃を思い出した。


 子供……か……


 キュルリと自由に話せるようには

 出来ないのかな……


 本物の子供は無理だけど、キュルリなら

 俺達の子供にいいかもな……



「アオ兄、見っけ~♪

話せないから、ここだと思ったんだ」


【サクラ~♪ あそぼ~♪】ふよふよ~


「え!? キュルリ喋ってる……」きょとん。


「うん、ここでなら話せるらしいんだ」


【あっそぼ♪ あっそぼ♪】


「父上達が呼んでるんだけど~」光ポ~ン♪


キュルリが追いかけてポ~ン♪


「まだ何かあるのかい?」ポ~ン♪


【きゃっ♪ きゃっ♪】ポ~ン♪


「来たら話すって~」ポ~ン♪


【あ~~~っ、えいっ】ポ~ン♪


「急ぐのかい?」ポ~ン♪


【まって~~、きゃっ】ポ~ン♪


「それは言ってなかったよ」ポ~ン♪


【あっあ~~っ、あ~あ……】テ~ンテンテン……


「俺だけ?」「ううん、俺も~」「そうか……」


キュルリが両手で光の球を抱えて、飛んで来た。


「キュルリ、城に戻らないといけないらしいんだ。行こう」


【うんっ♪】


「ここを出ると『きゅるきゅる~』に戻っちゃうんだね~」なでなで。


「ここの何が通訳してくれているんだろうね」


「そぉだね~、誰かなぁ?」


建物自体が明滅する。


「さすがに持ち運べないね~」あはは……




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


「風ちゃん、あなたは、本当は――あ、爽蛇さん♪」


「すみません、お迎えに行ったのに、呼ばれてしまって……

良かった。陽なたぼっこしていたんですね」


「はい♪ 良いお天気ですので、お庭に出てみたんです。

でも、そろそろ入ろうかと思っていたんです」


「そうですか。

では、運ぶのをお手伝いしましょう」


「ありがとうございます♪」


「すみません、こんな事しか出来なくて……」

屋敷の託児所で預かっている子供達がお昼寝している籠を抱え、歩き始める。


「いいえ。私の方こそ、執事長のお手を煩わせてしまって……」

風蛇を抱いたまま追いかける。



 さっきは、つい……

 お名前を呼んでしまったけれど……

 聞こえていなかったのかしら?


 それとも――


「あの……爽蛇さん……」


「何でしょう?」にこっ。


「あっ、何でも……すみません」


「そうですかぁ?」


「はい。何でもございません……」


「……では、急ぎましょう。

冷えてまいりました」にこっ。


「はい、執事長♪」


並んで歩く二人を見つけた使用人達は、暖かい眼差しで静かに見送った。





 ギンとミドリは仲良くなれました。


子供が欲しくなったアオは、親心や

「親」という存在が少し理解できました。


離れ離れだった親子も、

これから良い家族になれそうです。




?「姫さまぁ~♪」


姫「およ? ワン太郎♪」


桃「姫さま♪」ぱふっ♪ 尻尾ぶんぶん♪


姫「まさか、ひとりで(ここ)に来たのか?」


桃「父ちゃんとキツネのお兄ちゃんが、

  つれて来てくれたんだ♪」


姫「さよぅか♪ ならば少し遊ぼぅぞ♪」


桃「うん♪ あ、竜のお兄ちゃん達は?」


黒「姫、何してるんだ? その子犬は?」


桃「真っ黒ツヤツヤ! カッコいい~♪」


黒「お? そっか♪ いいコだなっ♪

  乗せてやるぞ♪ 姫も乗れよ♪」


 クロは上機嫌で飛んで行った。


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