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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
287/429

羽座魔7-進む為に

 主役が寝ていては、お話が進みませんので――


♯♯ ハザマの森 ♯♯


「爽蛇、この辺りに立っててくれ。

姫、気を掴む練習だ。

オレを追いかけて、爽蛇に戻る。

それの繰り返しだ」


「あい解った♪」


「この森で気を掴めれば、地下魔界での移動も大丈夫だ。

ゆっくりでいい。確実に掴めよ」


「うむ♪ いざ始めよぅぞ!」


「爽蛇、姫が慣れるまでは、気を高めておいてくれよ」


「徐々に下げればよろしいので御座いますね?」


「ああ、姫の気を見て加減してくれ。

姫、行くぞ!」曲空。


「確かに……掴み難いが……見つけたぞ!」曲空!




ガサッ。「およ!?」少し離れた場所から声。


「姫様~、こちらで御座いますよぉ」

気を少し高める。


姫が駆けて来た。「もぅ一度!」目を閉じる。


「参る!」曲空!




ガササササッ! 「あやややっ!!」

「えっ!?」ドサッ! 「う……」


「ミズチ、何処じゃ?」


「下で御座いますぅ」いたた……


「下? ……すまぬっ!!」慌てて立つ!


「いえ、大丈夫で御座いますよ」


「なかなかに難しいのぅ」


「しかし、ここで出来なければ、地下魔界で失敗しますと、異空間に出てしまいますので」


「異空間とな?」


「鏡の中など、この三界とは別の空間で御座いますよ」


「さよぅか……

然らば確実にせねばならぬのじゃな。

よしっ!」

目を閉じ……曲空!




♯♯ 真神界 ♯♯


 ディアナは、掌から小首を傾げて上目遣いに、こちらを見詰めている芳小竜の力を見ていた。

そして、元竜――アオと、サクラの心も――


 これ程までに強い芳小竜が作れるなんて……


 この強い想い……


 私は、ただ滅することだけを考えていたのに、

 この子達は――


 アオとサクラなら、本当に救えるのかも……


【ディアナ♪ あそぼ~♪】


【この魔法円に入ってね】


【うん♪ じゅつ おてつだい~♪】


【術を知っているのね】


【アオもサクラも、じゅつ するの♪】


【お手伝いしているのね。良い子ね】


【ボク、よいこ~♪】きゃっ♪ きゃっ♪


【ちゃんと解っているのね】なでなで。


ディアナは術を唱え始めた。




♯♯ 竜宝の国 祠 ♯♯


「アオ兄~、まだ寝てなくちゃダメだよぉ」


「解ってはいるけど……

魔王が待ってくれるとは思えないからね」


「でも、ルリ姉に負担が――」


「眠らせているし、光も当てているよ。

ちゃんと考えているし、無茶はしないよ」曲空。


「アオ兄ってばぁっ!」追いかけて曲空。




「え? 城?」「無茶はしないって」ぽふっ。


「これから存分に戦うためには、こっちを片付けておかないとね。

アンズも来るかい?」着替えに行く。


「もぉっ、心配したんだよぉっ」


「説明が足りなかったね、すまない。

この前の打合せでは調整しきれなくてね。

さっき父上と兄さん達と話して、今からならって決まってね」


「父上とも?」


「サクラが手を当ててくれていただろ?

だから話せたよ。

ああ、そうか。

あの祠に居たんだから、兄さん達とも話せない筈だよね。

手を繋げば話せるんだね」


「そっか~♪」


「サクラ、心配してくれて、ありがとう。

でも、大丈夫だからね。


サクラは、サクラにしか出来ない事をしないとね。

父上に見つかる前に行った方がいいよ」


扉を叩く音。

「来てるのか?」「着替えています」


(ほら、行って)(うん。後で合流しよぉね)


「執務室で待ってるからな」「はい」


(老竜の神殿に行くからね)(うん)手を振る。


サクラは双掌鏡をくぐって行った。



♯♯♯



「では、アサギ様の御婚儀は、そのように進めます。

それでは、これで――」


「なぁ、キン、ハク。婚儀を早めないか?」


「何かあったのですか?」


「いや、久しぶりに国の空気が良くてな。

この前の襲撃なんぞ、すっかり忘れられているんだ。

だから更に高めて、情勢を安定させたいんだよ」


「アサギ様の御婚儀では足りないと仰るのですか?」


「アサギ様に続けて王太子も、と考えている」


(アオ、どう考える?)

(父上は、王に飽きてしまったのでは?)

(やっぱ、そう感じるか~)


「しかし、魔王との戦は、これからが山場です。

深魔界に入れば、天界に揃うのは、かなり難しくなりますが――」


「だから、入る前に。どうだ?」


(シロ爺が俺達と絡んでるのが、すこぶる楽しそうに見えるんだろな)

(きっとそうですね)

(だが、まだ退位は早いよな)

(うむ)(はい)


「遅くなって、すまなかったな」

コハクが入って来た。


「コハク王様も同じ御意見なのですか?」


「アオ、何の事だい?」


「王太子の婚儀を早める件です」


「早める事に、特に異論は無いが、どうして、そんな話になっているのだ?」


「国の空気が良いから、そうした方が良さそうだと思っただけだ」


「そうか。

王子達さえ集まる事が出来るのなら、良いとは思うが……」

キンとハクを見る。


「深魔界に入れば、いつ集まるなどと確約する事は出来ません。

それでも、と仰るのでしたら、大至急 準備しなければなりませんが、アサギ様の御回復を考慮致しますと、実現は出来ないと考えます」


「確かにアオの言う通りだな。

ギン、アサギ様の御生還と御婚儀で盛り上げたらどうだ?」


「アオ、お前に無理とか不可能とかは無いんだろ?」


「ありますよ。

俺を何だと思っているんですか?」


「その姿で睨むなって」


「好き好んでしていません!」更に睨む。


「キンとハクは、どうなんだ?

早く結婚したくはないのか?」更に嬉しそう。


「国内情勢も考慮しなければならない事は理解していますが、出来る事ならば、魔王を倒す方を優先したいと思います」


「模範解答だな。ハクは?」


「婚約した事で、今は満足してますから、急ぎはしません。

国の為、ただそれだけでしたら、早めても構いませんが……早めるのは婚儀だけ、と御約束頂けますか?」


「ギン、他に何かあるのか?」


「いや……何も。早めたいのは婚儀だけだ」チッ。


「それなら、俺は調整出来るならば、早めても構いません。

現状、まず無理ですがね」


「何故、無理だと断言する?」


「魔王は既に動き始めました。

俺達も動かねばならないからです」


「何かあったのか?」「はい」王子達、揃う。


「アオ、調整してくれないのか?」


「これから魔界に行きますので、アサギ様の御婚儀のみ調整致します。

父上、最初から考えていたなどと仰って、他の何かを早めないでくださいね」

ルリ(アオ)が立った。


「何かって――」睨まれて口籠る。


「アオ、ルリ殿は?」キンが心配そうに見る。


「大丈夫です。眠らせていますので。

今だからこそ、せねばならぬ事もあるのです。

それでは、お時間を頂き、ありがとうございました」

お先に失礼致します、と礼。スタスタスタ――



「何があったんだ?」


「ルリ殿が襲われたのです」

「無茶しそうなので、魔界で様子を見ます」

キンとハクも退室した。




「アオの中に居るルリ殿が、どう襲われたんだ?」


【それは私からお話し致します】


「スミレ……ずっと居たのか?」


【私は、アオの守護神ですもの】にこっ。




♯♯ 地下魔界 ♯♯


「アオは、地上かぁ?」


「ふむ。魔竜王国だな」


「兄貴、追い掛けるのか?」


「いや、サクラが近くに居る。大丈夫だろう。

拠点調査に戻ろう」


「なぁ、兄貴」


「何だ?」


「兄貴も曲空回数、増えたのか?」


「クロの曲空を入れた小器を込めて貰った。

アカと同じだ」


「んなっ! 何で俺だけ!?」


「その点は聞いていない。

アオかサクラに確かめればいい。

ただ、まだ私は曲空を控えるつもりだ。

クロを鍛える為にな」


「そっか……なら、俺も、その為なのかなぁ?」


「与えれば酒泥棒になるから、ではないのか?」


「兄貴ぃ~」


キンは笑って曲空した。





 ギンが王太子の婚儀を早めたいと言い出した時、

アオはスミレを呼び出した。


青(スミレ、この前の話、どうなったの?)


菫【この前って?】


青(父上と母上を仲良くしたい、って話だよ)


菫【進むとでも思ってるの?】


青(なら、俺が執務室を出たら姿を見せて、

  きっかけを掴むのは任せるから、

  その後で――)



 アオが何を吹き込んだのかは次話以降で。



菫【えええっ!? それを私が言うのっ!?】


青(父上の性格は、よ~く知ってるだろ?

  大丈夫だよ。慈愛の王妃様)


菫【そんなぁ……】


青(今が好機だからね。頼んだよ。

  それじゃ、行くからね)


菫【ま、待って! 兄様っ!

  もぉっ! 待ってよぉ~】


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