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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
285/429

羽座魔5-リジュンと竜血環

 アオが動けない分を、サクラは補おうと頑張っています。


♯♯ 長老の山 大婆様の部屋 ♯♯


「おぉ、サクラ、よぅ来たのぅ」にこにこ。


「大婆様、これは……?」

外周祠の事で相談しようと訪れたサクラが、床に並ぶ瓶に驚いて入口で立ち止まった。


「キンが地下から持って来たのじゃ。

あぁ、リジュン殿、お加減は如何じゃな?」


「ありがとうございます。

すっかり良くなりました。

これは……私の――」

呼ばれて来たリジュンも立ち止まる。


「嫌な事を思い出させるが、きちんと始末せねばならぬからのぅ。

お教え頂けましょうか?

せめて、この記録の読み方だけでも」


「その記録は、魔王に読めぬよう書いておりますので、きちんと残します。

私自身、そうしたいと思っておりましたので」


「付いておった呪は浄化しておる。

サクラ、これを新しい蔵に運んでくれるかの。

書物はリジュン殿の工房でよいかの?」


「はい。ありがとうございます」



♯♯♯



 リジュンとサクラは、竜血環が入った瓶を棚に並べながら話していた。


「リジュンさん、竜血環を、竜の病気や呪を吸い取るよぉに改良できる?」


「この環を……役立つ物に……」

じんわりと笑みが広がり、満面の笑みに。


「できれば竜だけじゃなく、みんなの役に立つよぉにして欲しいんだ」


「やります! やらせてください!」

目をキラキラさせてサクラに抱きついた。


「サクラ様は本当に素晴らしいです!

そんな事、思いもよりませんでした!

魔王に隠れて作ればよかった!」あはははっ♪


「よろしくお願いします!

良かったね~、竜血環♪」なでなで♪


「物にまでお優しいのですね」


「竜宝にも、魔宝にも、魂があるんだ。

魔王が作った魔宝にもね。

その魂達が、滅して欲しいって泣いてたから……

だから、なんとかしたいんだ。


でも俺自身は、なんにもできないから……

リジュンさん、よろしくお願いしますっ!」


「その御言葉……私の心も救われました。

生き甲斐も得られました。

精一杯 改良させて頂きます!」


「他にも持って来ていい?」


「勿論ですよ。妹と弟も居るんですから」


「あ、そぉだ♪

教授だったんですよね?

ここにも大学ありますけど、どぉしますか?」


「改良に没頭したいのですが……」


「うん♪ じゃ、博士♪」


「サクラ様は竜宝学博士でしたよね?」


「なんで知ってるの!?」


「魔竜王国の大臣様がお見えになられて――」


「もぉっ! おしゃべりなんだからぁ」ぶぅ~


「王立大学の教授もなさって――」


「や~ん」真っ赤。「あ……クロ兄だ」


「いたいた♪

リジュンさん、ちょっと来てください」

手を取って曲空。サクラはクロの尻尾を掴む。



――地下魔界。


「クロ、ありがとう。サクラも来たのか」


「コレなぁに?」「作りかけの神禍乱です」


「やはり、そうでしたか。

移動させても大丈夫ですか?」


「はい。作動しないように、肝心な部分は付けていませんので」


「そうですか。安心致しました」


「この奥に、もうひとつ部屋を作っています」


リジュンが何も無い壁を数ヶ所 触ると、壁の一部が開いた。


「また神禍乱?」


「少し変えてあります。

箱に入れた神様から、少しだけ力を頂いて、その神様を別の場所に飛ばします。

と言っても、せいぜい地上ですが」


「それでも脱出できるから凄いよ!」


「私自身に竜血環が掛けられ、中断せざるを得なくなりましたが……」


「眠ってたのも自分で?」


「はい。操られるくらいなら死んでも構わない。

でも、そうなると、家族がどうなるか分からないので、仮死状態に」


「ってことは、そんな環を作ったの?」


「はい。そうですが……」


(魔王に掛けちゃう?)(依代が人ならばな)

(体には影響ナシで中身にだけね♪)(ふむ)


「竜に掛けても、血や力を吸わなくできるんだよね?

魔王は竜を依代にするから、中身だけ眠らせたいんだ」


「やってみましょう」


「この箱で飛ばしたら、境界の影響は、どぉなるの?」


「異空間を通る鏡を利用していますので、境界は通過しません」


「じゃあ、改良すれば、誰でも、どこでもになる?」


「鏡次第ですが……」


「いろんな鏡あるし、神様が改良してるから、きっと だいじょぶ~♪

道は多い方がいいでしょ♪

将来、三界を繋ぎたいし~♪」


「将来……それは良いですね♪」


「竜宝も魔宝も、みんな友達だから~♪

みんな、ちゃんと使いたいんだ♪」


「大いに賛成です」二人、にこにこ。



「キン兄、ここの物、ぜんぶ運んでもいいの?」


「そうして欲しい。

クロ、次の部屋は、ここなのだが、行けるか?」

地図と拠点の図で示す。


「ん……掴んだ!」キンと慎玄を掴んで曲空。



♯♯♯♯♯♯



「治癒じゃあ、ここまでだ!

フジ! あとは頼んだぞ!」「はい!」


フジは神聖光輝を両掌から放水した。


闇黒色の魔物達が、元の姿に戻っていく。


「双璧! お♪ 出た出たっ♪」


 あっという間に浄化は終わり――


「水浸しだなっ」あはははっ♪ 水筒、ぽいっ。


「運んでくれるか?」


「はい。あ……サクラが近くにいますね」

(サクラ、魔物にされていた方々を運びたいのですが、鏡はありますか?)


(うん♪ 使ってるから、ちょっと待ってね~)



♯♯♯



 少しして、サクラが鏡を持って現れた。


「水晶玉の部屋?」「そうらしいですね」


「浄化しようとしたら、魔物が出てきたんだ」


「紅蓮の祠に繋ぐね」「紅蓮に?」


「深蒼も星輝も、もぉいっぱいなんだ。

ちゃんと浄化と回復の竜宝 置いてるし、神竜さん達もいるからね~」


「他の祠は?」


「属性祠は、ぜ~んぶ浄化できるよ。

これから外周十二祠も整えるからね」


「アオとルリさんは大丈夫なのか?」


「二人とも眠らせてるよ。

ほっといたら、いくらでもムリするから~


それじゃあ、みなさ~ん、鏡くぐってね~」

手を振って、くぐって行った。


「優しいんだか、容赦ねぇんだか――わっ!」


鏡から、ヒュッと光が尾を引いて飛んだ。

――と思ったら、先端がバッと広がり、水晶玉を掴んで、鏡へと引き込まれた。


「投網ですか?」『見てないで集めてよぉ』


「あ……」集めると、再び投網。


三度で全ての水晶玉が引っ越した。

『フジ兄、神聖光輝よろしくね~』


フジが鏡をくぐると、水槽に水晶玉が入っていた。




♯♯ 竜宝の国 ♯♯


「ヒスイ、スミレ、ありがと。

そろそろ起こすね」光を当て、様子を伺う。


「アオ兄、気分どぉ?」


「あ……眠ってしまったのか……」


「ほら~、疲れてるんだから~

アオ兄が疲れると、俺にも影響あるんだよぉ」


「すまない。ありがとう、サクラ」


「でも、そうしたいんだ。でしょ?」真似る。


二人で、ひとしきり笑って、サクラはアオを抱きしめた。


「ホントに……よかった……」


「サクラ……ありがとう……」なでなで。


「クロ兄式供与~♪」「それは無理」曲空。


寝台を挟んで向かい合う。


「遠慮しないで~♪」「あのなぁ」


もう一度、心から笑った。




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


「えっ? もう一度ですか?」


「無理でしょうか?

できれば風ちゃんも一緒に……」


「そうですね……」


 もしかしたら、連れて行けば、

 何か変わるかもしれませんね……


「今でしたら王子様方もいらっしゃいますので、普段よりは安全かもしれませんね。

参りましょう」


「とーちゃ、おでかけ?」


「ご先祖様にお会いしましょうね」


「うんっ♪」





凜「リジュンさんは何族なんですか?」


潤「山羊魔(ヤギマ)族です」


凜「魔人の強い魔力の源は角なんですか?」


潤「どうなんでしょうね。

  でも確かに、魔人には有角な種族が

  多いですね」


凜「竜でなくても、魔宝が作れるんですねぇ」


潤「あ……竜でなければ作れない物だとは

  思っていませんでした」


凜「あ、そっか。作れるんだ~

  そういえば、竜宝と魔宝の違いって

  何なんですか?」


潤「厳密には、私にも分かりませんが、

  おそらく、竜宝は光の力で、

  魔宝は闇の力で命を吹き込んでいるのだと

  思っています。

  サクラ様から、魂が有ると伺うまでは

 『起動させている』と思っていたのですが」


凜「じゃあ、やっぱり同じ物なんだ~」


潤「そうですね。属性の違いだけですからね」


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