羽座魔4-最高神
アオ達のご先祖様は神でした。
そして、ルリも天竜王族でした。
そんなこんなで、絆神様だけでなく、
ご先祖な神様も、今後どんどん出てきます。
♯♯ 竜宝の国 祠 ♯♯
「サクラ、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「アオ兄……俺に嘘は通用しないんだからね」
ため息をつきつつも、光は絶やさない。
「無理し合う訳にはいかないだろ」
「俺、伸び盛りだから平気だよ。
疲れとか、アオ兄に影響してないでしょ?」
「うん……元気だね……」
「百も若いからねっ」「誤差だろ」
「アオ兄も俺も、言われて止めるなんて出来ないんだから、コレ続けてる間に、これからを考えようよ」
「そうだね」
アオとサクラは作戦を練り始めた。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
宙に灯した光が、その空間を露にした。
(これは……全て実験体なのでしょうか……)
(生きている……眠らされているようね……)
紫苑と珊瑚が入った部屋には、闇黒竜が隙間無く横たえられていた。
(他に何も無いのかしら?)
探っていると――
(鏡ですね……
通路に出来る物が有るようですから、実験体を運び込む為の物でしょうか……)
(出入りされると)(今は嫌ですね)
二人は宙に御札を出し、放った。
御札が貼り付いた鏡は、念鎖で封じられた。
(足の踏み場も無いとは)(正に、この事ね)
念網で覆い、実験体の内を探る。
(魔王の因子を神竜に植え付ける試みをしていた頃とは、遥か昔なのですね……)
(この因子の怨みの強さ……初代なのでは?)
(私も、そう感じます。
怨念により、この実験を成し、方法を確立して二代目を作ったようですね)
(浄化を試みる前に、何方かを呼びますか?)
(この数ですから……そうですね)
♯♯♯♯♯♯
キンは大拠点の通路から、壁の向こうを神眼で確かめていた。
「確かに、この向こうに空間が在ります。
慎玄殿、よろしいですか?」
頷いた慎玄の肩に掌を当て、曲空した。
「この部屋は、既に荒らされておりますね」
「これは……サクラの痕跡のようだな。
という事は、リジュン殿が閉じ込められていた部屋なのか?」
キンが、四方の壁に沿って並ぶ物入れの扉のうち、手近なものを開けると、環が入った瓶が詰まっていた。
「竜血環か……
ならば、リジュン殿の部屋で確定だな。
浄化後、天界で確かめて貰おう。
慎玄殿、お願い致します」
キンは次々と扉を開けていった。
壁の一面は、全て竜血環であった。
「こんなにも……」
必死で時間を稼ぎつつ、家族を護る為に作り続けたリジュンの想いを受け止め、キンは次の壁に向かった。
次は、アカの工房で見るような器具や、初めて見る用途不明な物が並んでいた。
「これは……全て魔宝なのか?
実験器具なのか?」
次の壁に向かった。
同じ形の器が並んでいる。
「これが神禍乱なのか?
しかし、気を感じない……」
次は竜の像が並んでおり、その次は――
「扉の内に扉?
この強い力は、炎鉱石だな……
壁の扉の内面には、凍鉱石か……ふむ」
その次の扉を開ける。
「また二重扉か……」気を探り、開ける。
「神禍乱はこちらなのか?」
内側の扉の向こうは部屋になっており、若い竜が入れる程の扉付きの箱が有った。
その上に、最初の器が載っており、器の蓋に、竜の像が立っていた。
竜血環を運び、リジュンに確かめてからにしようと、扉を閉めた。
残りの物入れには書物が並んでいた。
キンも浄化を始めた時――
(キン様、お確め頂きたいのですが――)
(紫苑殿ですか?)
(はい)大きな九尾の白狐が現れた。
(術を保っておりますので)
(この姿で失礼致します)
(お乗りくださいませ)(慎玄殿も)
白九尾は二人を乗せ、闇黒竜の部屋に戻った。
(これは……)(強い気ですね)
(依代……いや、影か? まさか魔王を――)
(私共も、そう思います)
(次代の魔王とすべく)
(試みていたのではないかと)
(この因子の気、初代だと思うのですが)
(如何でしょうか?)
(確かに……物凄い怨念ですね)
(一体、天界に運びたい)
覆っている念網から、一体の闇黒竜が浮き上がり、新たな念網で包まれた。
慎玄が、その表面を浄化した。
(では、暫くお待ちください)曲空。
「クロ、大婆様の部屋に頼む」「あ、うん」
――大婆様の部屋。
「大婆様、この因子の気を御覧頂きたいのですが……」
「恐ろしい気じゃな……」
【間違いなく初代だ】キンの絆神が現れた。
「ありがとうございます、ゴルチル様」
【歴代魔王は全て、初代の因子を込められてはおるが、どうやら徐々に、その力は失われているようだな。
この強烈さを目の当たりにして、初めて、それを実感した】
カルサイが、薄ぼんやりした神――隠居神を伴い現れた。
【ディアナ様、如何ですか?】
【間違いございません……
自身の手に依る術にて、込められております】
【ありがとうございます】連れて消えた。
【情報は得た。浄化する。星輝の祠に運べ】
「大勢おりますが」【任せろ】「はい」
「クロ、曲空を頼む。
赤虎工房、星輝の祠、紫苑殿の順に頼む」
「おう」
こうして、星輝の祠も満員御礼となった。
闇黒竜達を運び終えたキンは、星輝の祠を訪れた。
「ゴルチル様、アオともサクラとも話せないのですが、何か御存知でしょうか?」
【それか。心配無用だ。
回復に集中する為、静寂の祠に入ったままなのであろう】
「静寂の祠、ですか」
【竜宝の国に在る。
そこに入れば、外界からは遮断される。
出るよう伝えるから、暫し待て】消えた。
(キン兄、なぁに?)
(サクラ、アオ――いや、ルリ殿の具合は?)
(あとは回復待ちかな。もぉだいじょぶだよ)
(その話し方なら大丈夫そうだな。
頼みがあるんだが、少し離れられるか?)
少し間があり、(うん、いいよ。なぁに?)
(浄化系の竜宝を薫風、紅蓮、轟雷の祠に配置して欲しい)
(うん。後手になって、ごめんね)
(忙しくしているのは解っている。
謝らないで欲しい)
(じゃ、ちょっと待っててねっ)曲空。
――長老の山、上空。
薫風は回復の祠だけど、
あとは回復系の竜宝も持って行こ~
あ♪ 新しい祠が出来てるね~
じゃ、結界も張らなきゃ。
(サクラ、複製が消えちゃったわ)
(あ……すぐ行くっ)曲空。
――魔竜王城。
「ラン~♪」「本物?」「本物だよぉ」
「区別つかないんですもの」「そぉ?」
「疲れてるんじゃない?」「ないない」
「天界とか地下界に居て、ここの複製を保つのって大変なんでしょ?」
「だいじょぶだよ~
さっきは、ちょっと考え事してて、気を抜いちゃっただけだよ~」複製 作る。
「この近さなら執務もできる~♪」
複製は机に向かった。
「ランこそ疲れてない? だいじょぶ?
ひとりで頑張りすぎてない?」
「大丈夫よ♪ 複製でもサクラが いつも傍に居てくれるんですもの。楽しいわ♪」
「あと少しの辛抱だからね……」
「うん……」
(一緒に居たいから……俺、頑張るからね)
(うん。でも、無理しないでね)
♯♯ 最高神殿 ♯♯
最高神と隠居神が対峙していた。
【ディアナ様! その術は、なりません!】
【禁忌ではありませんよ?】
【ですが……】
【闇の神を封じるには、この術しかありません。
滅する術は、最高神様にお願いするより他にありませんが――】
【封じる為の術も、私にお任せください!】
【いいえ、この戦は、私達の戦です。
私が封じなければならないのです。
二人の闇使いの天竜を見て、確信しました。
今こそ好機なのです。
この戦を終わらせるには、この術しかないのです。
私にしか成せない、この術しか】
【しかし……それではディアナ様も――】
【解っております。
その上でのお願いなのです】
【最高神であられた貴女様に、そのような――】
【私から最高神を継いだのだ。
お前にもディアナ様の想いは解るであろう】
【ゴルチル様……】
【現最高神である、お前が決める事だが……
私も共に行くのだ。
その術の為、ディアナ様の御望みを叶え、御力を戻してはくれまいか?
この戦と共に、ディアナ様の御苦しみも、終わらせてはくれまいか?】
【……わかりました】
悔しさを滲ませ、項垂れたままの最高神が杖を振ると、魔法円が現れた。
【ディアナ様、中央へ……】
術を唱える――
その頬を涙が伝った……
【最高神に与えられし力を以て、ここに……失われしディアナ様の御力を呼び戻し、新たなる翼と光輪とを成す!】
魔法円が輝き、無数の光の球が飛来する。
【復輝降臨!!】
輝きが魔法円の中央へと吸い込まれ、若く美麗なる女神が現れた。
【泣かずともよいのですよ。
私が望んでいるのですから】
【ディアナ様……】
【私の願いを叶えてくださって、ありがとう。
最高神カルサイ様】
【貴女様に、そうお呼び頂くなど……畏れ多き事にございます】
【どうせ、夫婦揃って、息子も孫も一緒に行くのであろう?
御護りするだけだ。そうではないか?】
【はい。ゴルチル様】
カルサイ様は現最高神でした。
キンの絆神ゴルチル様が前最高神。
新たに登場の女神ディアナ様も、
かつての最高神のようですね。
凜「何方がイチバン偉いんですか?」
始【だいたい古い程、偉そうにしてるな】
凜「これでやっと王子達の絆神様が
揃いましたね~
まとめると――」
絆竜 絆神
――――――――――
キン ゴルチル
ハク ビスマス
アオ スミレ
クロ オニキス
アカ 金虎
フジ アメシス
サクラ ヒスイ
静香 オパルス
凜「これでいいですか?」
始【だな】
凜「シルバコバルト様、ゴルチル様が
偉~い神様だって判りましたけど、
他の絆神様は、どうなんですか?」
始【オッサンと鍛冶屋は大神。
筋肉は中堅神。
残りはヒヨッコだ】
凜「シルバコバルト様は?」
始【大神に決まってるだろ!】




