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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
280/429

執事長6-幕開けを彩る音色

 大陸編のオマケは、ここまでです。

 次回からは、魔界編です。m(__)m


「まさか……故郷って……」

挨拶の為に、愛蛇の家へと竜宝艇で向かっていた蓮蛇が唖然とした。


「驚くかな~、と思って、わざと話さなかったの♪」

蓮蛇の横で道案内していた愛蛇は、すこぶる楽しそうだ。


 やはり……どこかで

 お見掛けしていたのですね……


「そこに停めて♪ もう近いから♪」


降りる。


「じゃあ、手を引いて飛ぶから~」すぽっ♪


「えっ!?」何を被せられたのでしょう?


「おとなしく被ってて♪」


引っ張られて何処かへ――




「あ、愛。何やってんだ?」


 え? その声……


「もおっ! なんで居るのよぉ~

せっかく、びっくりさせようとしてるのにぃ」


「その、袋被ってるヤツ……蓮蛇か?」


「あーーーっ!! もおっ!!

兄ちゃんは、どっか行って!!」


「兄……が、磊蛇!?」


「やっぱ蓮蛇か~♪

何やってんだ?♪ んなモン被って♪」わはは♪


「磊兄ちゃんのバカッ!!」

ポコッと叩いて、蓮蛇に被せていた袋を取った。


「あ……本当に……この家……」


「よっ♪ 蓮蛇♪

何しに……あ! マジかっ!?

まさか、これか!?

急に帰って来いって親父が言ったのは!!」


「父ちゃんなのっ!?

兄ちゃん呼んだら台無しじゃないのっ!!」


騒いでいたので玄関から顔を出していた父親が、家の中に逃げ込んだ。


「あ♪ 愛ちゃん♪」「愛姉だ♪」「休みか?」

「蓮兄、久しぶり~♪」「入ればぁ?」「ね♪」

「畏まった格好で、どうしたの?」「珍しいね」

「あ、磊兄もいる~♪ クビになったのかぁ?」


畑から磊蛇の弟妹達が駆けて来た。

子を抱いている者もいるし、小さな子供達も駆け寄って来る。

笑い声が溢れ、とんでもなく賑やかだ。


「なんで……揃ってるの!?」


「良かったぁ、間に合った~♪」


「鈴ちゃんまで……

執事長になったばかりなのに大丈夫なの!?」


「サクラ様は、お城だから~」


「ま、とにかく入れよ。

あ、こっちに卓と椅子、出すか?」


「それがいいね」「増えたからな」「ねっ♪」

「全部出すぞ~♪」「よぉし♪」「任せて♪」

「子供達は先に手を洗って~♪」「は~い♪」

「母ちゃ~ん! 皆が持って来たお菓子は?」

「父ちゃんも出て来いよ!」「早く早く~♪」


バタバタガタガタわいのわいのと大騒ぎ。

庭――というよりは空き地に、卓やら木箱やらが並び、ありったけの椅子が出されて、皆が座った。


「さ、蓮蛇さんも座って♪」


「焼けたわよ~♪」


「お♪」「鈴ちゃん、何だソレ?」「綺麗♪」

「知らないが旨そうだな♪」「美味しそう♪」


子供達が群がる。「ふわふわだ~♪」


「お茶も淹れるからね~♪」


「なんか上等な香りがする~♪」

「茶葉まで持って来たのか?」


「お家に有ったお茶よ♪」


「母ちゃん、お客様用なんて買ったのか?」

「フンパツ?」「何てお茶?」「旨そう♪」


「他になんてないないっ!

いつものだよっ」首を横にブンブン!


「蓮兄、何ぼ~っとしてんだ?」「大丈夫?」

「ふわふわ冷めちゃうよ?」「甘いのダメ?」

「いらないなら、ちょーだい♪」「こらっ!」


 変わってないな……あったかい家だよな……


何日も何日も考えていた挨拶も、ひと言も言う隙を与えてもらえないまま、賑やかな昼食に突入し――


満足した子供達を寝かしつけ、少し落ち着いたので、着いてから改めて考えた挨拶をしようと、蓮蛇が両親の方を向くと――


「蓮蛇さん、こんな娘ですが、どうかよろしくお願いします」


父親に先を越されてしまった。


「あ、あのっ、私の方こそ!

よろしくお願い致しますっ!」


それだけを、やっと言う事が出来たのだった。



♯♯♯



「やっとここまで来れたね。

やっと……幸せ掴んだねっ♪」


「鈴ちゃん……ありがとう!

ここまで来れたのは鈴ちゃんのおかげだよ。

お屋敷勤めできるように、勉強も作法も、いろいろ教えてくれたからだよ。

ホントにホントに、ありがとう!」


愛蛇と鈴蛇は、少し離れた草の上に座り、お辞儀合戦をしている両親と蓮蛇を見ていた。


「でも、鈴ちゃんは、どうするの?

磊兄ちゃん、バカだから気づかないよ?」


「私も執事長になっちゃったからね……」


「でも、これからは執事長も結婚していいって――」


「うん……でもね……

それぞれが執事長だと……

どう考えてもムリよ……」


「諦めちゃダメ!

きっと王子様方なら変えてくださるわ!」


「ありがとう――あ……」


愛蛇が鈴蛇の視線を追う。


「あっ! 磊兄ちゃん!」飛んで行った。

「蓮蛇さんを殺す気なのっ!?」


磊蛇が蓮蛇の背をバシバシ叩いていた。

もちろん最上級の友情を込めて、だが――


愛蛇が勢いよく体当たりして、磊蛇を弾いた。


「ごわっ!!」


「手加減って言葉知らないの!? バカ兄!!」

蓮蛇の背を、背で庇う。


「愛――」

蓮蛇が振り返り、後ろから愛蛇の肩に手を添えた。

「大丈夫だから心配しないで。ね?

子供の頃から、こうだったから。

慣れていますよ」


「もうっ! そんなこと慣れないでよぉ」

くるっと蓮蛇の胸に顔を埋めた。


「悪ぃ、つい――」

言いかけた磊蛇を、父親が連れて行った。

母親が蓮蛇に微笑み、夫に付いて行った。


「心配してくれて ありがとう、愛」よしよし。




「鈴姉、入ろ」家を指す。


弟妹達は、そおっと家に向かっていた。

鈴蛇は頷き、義弟に付いて行った。




「でも……本当に気づいてなかったの?」


「うん……

知っている娘さんな気はしていたけれど、あまりに綺麗になっていたから……」


「う……

確かに、蓮蛇さんが磊兄ちゃんに勉強教えてた頃の私って酷かったよね~」


「それは仕方ないよ。

畑で、しっかりお手伝いしていたんだから」


「いつも泥んこで……だから恥ずかしくて……」


「元気で可愛いな、って思っていたよ」


「え……」ますます顔を埋める。


「顔……見せてよ」


「でも……」


蓮蛇は髪を撫でていた手を止め、愛蛇の肩を少し押した。


離されて驚き、上げた顔に微笑み、顎に指を添え、そっと顔を寄せる。


驚きを宿した瞳を瞼が隠し……


唇が触れようとした、その時――


「あああっ!!」ドッバフッ!!

「きゃあっ!!」ドドドドッ!!

「うわぁっ!!」ガッシャッ!!

「うげっっ!!」「痛って~~」


二人が慌てて体を離し、音の方をサッと向くと――


「あ……」


家の壁が倒れ、皆が山盛りになっていた。


「ぃててて……」むくっ、むくっ、むくっ――


「あっ!」「やべっ!」「早く!」「戻せ!」

一斉に、散乱している家具やら何やらを集め、壁を戻そうと持ち上げた。


蓮蛇が吹き出し、愛蛇も釣られて笑った。


家族が動きを止め、笑いだした。



♯♯♯♯♯♯



 二人の結婚式もまた、準備中から賑やかだった。


親族や近所の人を集め、故郷の丘の上での人前式――の、つもりだったが――


竜宝艇が降下した。


田舎では、まずお目に掛かれない物に、子供達が歓声を上げ、駆け寄る。


艇から爽蛇が降り、扉を開けると――


「司祭様!?」


蓮蛇の声に、大人達が固まる。


天竜王城の司祭が、やわらかに微笑み、二人の前に立った。

「新たな時代の幕開けです。

私にも、お手伝いさせて頂けますか?」


緊張でカチコチの二人と親達がコクコクと頷いたところに、大きな竜宝艇が降りて来た。


箜蛇と魁蛇が扉を開ける。


その場に居た全ての者が息を呑んだ。


駆け寄ろうとした磊蛇、蓮蛇、鈴蛇を恒蛇が制した。

「今日は、主役と親族なんだからね」


天竜王子達が揃って、にこにこと寄って来た。


「蓮蛇、愛蛇、おめでとう」箱を渡した。


「アカ様……」


「私達にも祝わせて欲しい」

「だが、気になるだろうからなっ」

「隅の方で拝見させて頂きます」

「執事長達は、こっちに残れよ」

「それでは、お幸せに」にっこり。

アオに抱かれたサクラが、可愛く手を振る。


王子達は優雅に一礼し、隅に下がった。




 緊張していた人々が慣れるのを待ち、式が始まると、静かに美しい音色が流れてきた。

司祭の声を厳かに引き立てている、その音色は、王子達が奏でていた。



――――――



 素朴……?

 まぁ、大神殿に連れては行かれなかったので、

 『素朴』だったのでしょうね……



 扉が開く微かな音がし、皆が視線を送ると、茶を置いて逃げる桜色の髪が見えた。

遅れて、心地よい香りが漂う。


「サクラ様!?」


『みんな、ありがと♪

俺達、地下魔界に行きますから、あとは、よろしくお願いします』


『爽蛇は明日からだからね』


魁蛇が慌てて扉を開けたが、既に姿は無かった。


「行ってらっしゃいませ。どうか御無事で――」


執事長達は、想いを込め、頭を下げた。





 まだ結婚していない執事長達の話は――

さて、どうしましょうねぇ……



凜「蓮蛇、アカからの箱の中身は?」


蓮「耳飾りです。

  結婚指輪の代わりとなる物です」


凜「天竜王国では、耳飾りが普通なの?」


蓮「そうですね。

  指輪が邪魔になるような職業の場合は、

  耳飾りを選びますね。

  両方という方も多いですよ」


凜「もしかして、それ?」


蓮「はい。ずっと着けております。

  妻のには、指輪を付ける事が出来ます」


凜「あ、あの揺れてるのって、指輪なのね~

  いいなぁ、キラキラ綺麗」


蓮「ありがとうございます」


凜「あの指輪って、婚約の?」


蓮「あ……はい。

  お恥ずかしいですが……」


凜「いいな~

  サクラの歳くらい経ってるんでしょ?」


蓮「そうですね」


凜「あ……」


蓮「どうかしましたか? ……ああ、

  爽兄さんと琉蛇さんと風蛇くんですね」


凜「さ、話そうね♪」


蓮「は?」


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