執事長1-幼馴染①
三つ目のオマケは、執事長達のお話です。
オマケばかりで本編を忘れそう、ですか?
ちゃんと繋ぎますので、お許しくださいませ。
……すみません。m(__)m
この夜は、兄弟だけでなく、婚約者達も、紫苑と珊瑚も、アオの屋敷に集まっていた。
クロが、慎玄と爽蛇とカリヤを連れて曲空して来た。
「馬車はコギが預かってくれたぞ」
「およ?
慎玄殿は、箱に入らず来れたのじゃな?」
「竜人だからね」
「いつの間になったのじゃっ!?」
「伽虞禰の件が終わって、すぐだったよね~」
「ワラワが一番乗りではなかったのかぁ」
「お国を担う姫様であらせられれば、大きな御決断で御座いましょうが、私は身軽で御座いますので」合掌。
「然様か……真、思い切りのよい事じゃのぅ」
「皆様、お食事をお持ち致しました♪
執事長、お帰りなさいませ♪」
「ただいま戻りました。
鈴蛇さん、いつもお世話になってしまって、すみません」
「いえいえ、皆、お仕事を頂けて喜んでおりますのですよ♪」
「ではでは、ワタクシにも、お手伝いさせてくださいませ♪」
「そんなっ、右大臣様にそのようなっ」
「ワタクシ、執事歴の方がダンゼン長いのでございますよ♪
ですので、その方が落ち着くのでございます♪」
「そうで御座いますかぁ?
では、皆のご指導をお願い致します」
「では、カリヤ様、宜しくお願い致します」
「ね~ね~鈴蛇~♪ 苺ある?
ふわっふわ焼いて~♪ 苺もりもりねっ♪」
「はい♪ サクラ様♪
ただいま焼いておりますよ♪
苺は甘白雪と紅櫁をご用意致しております♪」
「うんっ♪♪♪」
「お~い、爽蛇♪ 酒は?」
「ハク兄さん、明日は魔界に向かうんですから、今夜は控えてくださいよ」
「ちょっとだけならいいだろ?
アオん家にゃ、上等の酒がワンサカ有るのは知ってんだからなっ♪」
「あれは、外交の際に手土産として――」
「なら、国の金で集めてんのか?」
「お酒だけでなく、倉の物は全て、アオ様の著者からの収入で御座いますよ」
「本なんか書いてたのか?」ぱちくり。
「ハク……つい先日、猛勉強した際の教科書だ。
あの医学書は、全てアオが書いたものだ」
「ゲッ……マジかよ……」
「だから、ここの酒は希少で極上なものばかりなのだ。
ハクも少しは見習うように」
「まぁ、キン兄さん、そのくらいで。
ハク兄さんが小さくなってしまいましたので。
爽蛇、一本だけ選んでくれるかい?」
「畏まりました♪ アオ様♪」
爽蛇、鈴蛇、カリヤは恭しく一礼し、退室した。
♯♯♯
「鈴蛇さん、お引っ越しは、いつなさいますか?」
「サクラ様より、急ぐ必要は無いと伺っておりますので、執事長がお戻りになるまでは、こちらでお世話になってもよろしいでしょうか?」
「私は、馬車の方はカリヤ様にお任せしまして、もう、屋敷で留守番をしようかと――」
「そうなのでございますかっ!?」ぴょこん!
「もちろん、交替には参りますよ」にこっ♪
「いえいえっ、そうではなくっ!
アオ様がお寂しくお思いになられるのではございませんか?」
ぴょんこぴょんこ――
「私は……
あ、さておき、サクラ様のお屋敷を魔竜王国にお引っ越ししなければなりませんからね。
鈴蛇さん、お手伝いさせてくださいね」
「はい。
執事長のお手を煩わせまして申し訳ございませんが、よろしくお願い致します」
「あのぉ、鈴蛇さんも執事長ですので、その呼び名は、どうかと……」
「こちらでは、爽蛇様が執事長ですので♪」
厨の扉を開けようとしたら、開いた。
「あ、執事長、お帰りなさいませ♪
鈴蛇様、お菓子が焼き上がりましたので、お確かめくださいませ」
「ワタクシも拝見してよろしいでしょうか?」
「はい。カリヤ様♪
私は倉に参りますので、厨の方は、よろしくお願い致しますぅ」
「爽兄、どこ行くんだ?
あ、鈴蛇、これも使えよ」
「磊蛇様、ありがとうございます♪
これは?」
「希苺と紫玉苺だ」
「そんな珍しい苺を……
ありがとうございます!♪」
三人は爽蛇に一礼し、厨に入った。
扉の隙間から、箜蛇と蓮蛇の姿も見えた。
でしたら、魁蛇さんもいらしてますね。
爽蛇は微笑みつつ倉に向かった。
皆、揃って王子様方の執事長になれて
本当に良う御座いました。
皆、頑張りましたものね……
倉の扉を開ける。
「あ……恒蛇様まで……」
「ああ、お帰りなさい。執事長」
「おやめくださいませよぉ、恒蛇兄さん」
「久しぶりに、そう呼んでもらえたな、爽蛇」
「あ……つい……すみません」
「いや、嬉しいよ。
キン様にお選び頂いて以降、そう呼んでもらえなくなったからね」
「それは……当然で御座いますので……」
「だから、今日くらいは……せめて、この倉で二人きりの間だけでも、昔のように呼んでくれないか?」
「そうですかぁ?」
「厨には、皆揃っているのだろう?」
「はい……ですが……」
「だったら、これを届けたら、あとは皆に任せて、のんびり昔話でもしよう。
たまには、爽蛇も息抜きしないとね」
「あ……はい♪ 恒蛇兄さん♪」
――――――
アオ達が孵化する百五十年程前――
「ソウダ兄ちゃ~ん! ライダがイジメるぅ!」
「やめてよぉ、ライダってばぁ~」
「磊蛇、小さい子を苛めてはいけないよ」
爽蛇の後ろに、双子が逃げ込む。
「オレ、イジメてなんかいねぇよ!
キタえてるだけだよぉっ!
それに、コイツら、オレよりちょっと下なだけだろーがよぉ」
「それでも年下には違いないんだよ。
それにね、蛟族は、磊蛇みたいな武闘が得意な者と、勉学が得意な者との差が大きいんだ。
箜蛇と魁蛇は勉学が得意なんだよ」
「どうやって見わけるんだ?」
「体格がハッキリ違うだろ?」
磊蛇の両肩をポンポンする。
「ここがガッチリしていて、足もシッカリしていて、尾が太いのが武闘が得意な蛟だよ」
「ふぅん。じゃあ、クウダとカイダはキタえなくてもいいのか?」
「鍛え方が違うんだよ。
今日はもう十分だから、勉強をしよう」
「う……」「は~い♪」「今日は何?」
「そうだね。
今日は、この竜宝を使って効率良く掃除をしよう」
「それ、勉強?」箜蛇と魁蛇が首を傾げる。
「ソウジなんか、足腰キタえるシュダンじゃねぇかよ」
「僕達は、将来、天竜王族の執事になるんだよ。
机の上の勉強だけじゃ、立派な執事にはなれないんだよ」
「は~い♪」箜蛇と魁蛇が手を挙げる。
「それじゃあ、恒蛇兄さんのお家をピッカピカにしようね」
「は~い♪」
「なんで、コウダ兄貴の家なんだ?」
「恒蛇兄さんのご両親は、コハク王様のお屋敷で、住み込みで働いているからね。
お手伝いは僕達に丁度いい勉強になるよ」
「ふぅん」
「ぞろぞろ、どこ行くの?」
後ろから声が掛かった。
「あ、蓮蛇も一緒に行こうよ。
恒蛇兄さんのお家を掃除するんだ」
「レンダ♪」ガシッ「行こうなっ♪」
「放してよぉ、ライダ。行くからぁ」
♯♯♯
「恒蛇兄さん、掃除に来ました」
「あ、爽蛇、いつもありがとう」
「これも勉強ですから、させてくださいね。
みんな、頑張ろうね」
「は~い♪」「ああ」「うんっ」
仲の良い幼馴染の六人は、いずれ生まれるであろう王子、王女の屋敷の執事長を目指して、勉強や武術に励み、育っていった。
大婆様の部屋から移動しました。
お馴染み、アオの屋敷です。
凜「爽蛇、蛟の名って、みんな『蛇』が
ついてるの?」
爽「そうとは限りませんが、多いですね」
凜「読み方は?」
爽「普通に読みますよ。
『ダ』が殆どですが、『ジャ』も
けっこうおりますよ。
あとは『ミ』とか、
もちろん『へび』とも読みますよ」
凜「サクラにも、お屋敷があったのね~」
爽「当然で御座いますよぉ」
凜「出てこなかったからねぇ」
爽「お城から森に移られましたからねぇ。
その後は人界で御座いましたし」
凜「箜蛇と魁蛇って、双子だったんだ~」
爽「はい♪」
凜「区別つかないと思ってたのよね~
どっちも厳しくて」
爽「私と違って、きちんとしているのですよ」
凜「爽蛇が話しやすくていいのよね~
で、歳の順は、恒蛇、爽蛇、磊蛇、
蓮蛇、箜蛇&魁蛇なのね?」
爽「はい。
それに致しましても……私共の話なんぞで
よろしかったので御座いますか?」
凜「ずっと『謎の執事』状態だし、
ここらで出してもいいかな~、と♪」
爽「謎……で御座いますかぁ……」
凜「あ、故郷って、王都じゃないの?」
爽「はい。王都の南に隣接しております
蛟の村で御座います。
天竜王国には、いくつか蛟の村が
御座いまして、殆どが農家なんです。
王族や貴族のお屋敷勤めを代々しております
名門の方々は、王都にお住まいで
御座いますけどね」
凜「蛟は、み~んな王族のお世話してる
んだと思ってた~」
爽「昔は、そうで御座いましたが、
今は蛟も増えましたので、様々な職に
就いております。
全ては天竜王族方々の庇護下に有りました
からこそなので御座います」




