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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
270/429

海賊砦1-お転婆姫と海賊達

 またまたオマケに入ります。

今回より、1日1話投稿にしますので、

急に少なくなるのも――と思い、今回だけは、

ほんの少しだけ長くしました。m(__)m


♯♯ 大婆様の部屋 ♯♯


「これからの事を打ち合わせたいんだけど、俺の屋敷に移動しないかい?」


「そぉしよ~♪」「いいなっ、それ♪」


「アオ殿、少々お待ちください……あ、姫様ですか。

わかりました。

慎玄様より、姫様に伝言です」


「うむ」


「くノ一の皆様が、馬車でお待ちだそうですよ」


「また大陸で何か有ったのか?」


「いえ、お見送りのようですね」


「姫、行って来たら?」


「ふむ。そぅじゃな。

クロは先にアオの屋敷に行っておれ。

ワラワひとりで参る故」


「えっ!?」


「クロ、女性同士の話も有るだろうからね。

姫の言う通りにさせてあげたらどうだ?」


「そっか……気をつけて行けよ」


「曲空するだけじゃ♪ では後程な」曲空♪



――ハザマの森口、馬車の中。


「姫様♪」一斉。


「およ? 慎玄殿とカリヤとミズチは何処じゃ?」


「森を散歩なさるとか……」


 気を遣われてしもぅたのぅ……


「して、如何用じゃ?」


「我等は人界に残ります故、ご挨拶をば」


「然様か……しかし、人界に戻らぬ事も無いからの。

あまり心配するでない」


「然様で御座いまするか……」

「でも、危険な所に向かうんですから、せめて、これをお受け取りください」


如月が、睦月が握っていた物を奪うように取り、姫に差し出した。


「海賊のお守りなんて、嫌かもだけど、これしか知らないから……」


「遠出する仲間に、無事を願って渡す物で御座いまする。

心は共に……その想いで御座いますので……」


「如月、弥生、よく解ったぞ。

皆、ワラワの為に、誠に忝ない。

心は常に皆と共にじゃ♪」にこっ♪


姫は海賊のお守りを受け取り、竜鱗璧の組紐に通し、首に掛け直した。


「姫様ぁ」一斉に、ひしっ。


「泣くでないっ!

ワラワは死にに行くのではないのじゃっ」


「あ……」遅れて、笑いが起こった。


「でも、私らは、姫様と出会わなかったら、まだ人様に迷惑しかかけてなかっただろうし――」

「卯月、口調がっ」「あ……」


「皐月、構わぬ。普通に話せばよい。

畏まられると、志乃に囲まれておる気分になるからの」


また笑いが起こる。


「しかし、姫様に救われたのは事実。

お供できない歯痒さは、とても大きいんです」

「だから、さっきの言葉が、とても嬉しくて……」


「水無月、共に魔界には行けぬが、人界の事、ワラワの代わりに宜しく頼むぞ」


「姫様の代わり……」


「そぅじゃ。頼んだぞ。

文月、ワラワも皆が、こぅして集まってくれた事が、真、嬉しゅうて仕方がないのじゃ。

ま、一年も掛からぬ。

首が長くなる暇も無しじゃ♪」


「姫様なら、納得ですね」

「じゃあ、皆の祝言(しゅうげん)も早く出来そうね~」


「葉月だけでのぅて、皆、納得じゃろ?♪」


くノ一達、大きく頷く。


「長月、皆は何故(なにゆえ)、祝言を遅らせよぅとしておるのじゃ?」


「それは、当然、姫様をお待ちする為ですよぉ」


「待つ必要は無いぞ。

祝言の時くらいは、人界に戻るからの」


「しかし、姫様より先にしようなどとは、全く思っておりません。

睦月(ネェ)も、そうでしょう?」


「当然で御座いますれば」


「霜月まで……いや、霜月は若いから、それでも良かろぅが、睦月はワラワより七歳(ななつ)も上じゃ。

先に祝言をせよ」


「お待ち致したいので御座います」


「あ……絶対に譲らないって顔だわ……

姫様、私共はお待ちしたいのです。

一年も掛からないなら尚更です。

待たせてください」


「神無月……皆、それで良いのか?」


くノ一達、また大きく頷く。


「祝言も引退も好きにすればいいって、先日、姫様が仰ったんですから、好きにさせてくださいね」


「確かに……言ぅてしもぅたのぅ……

ならば無理強い出来ぬか……

ふむ。氷月の言ぅた通りじゃ。好きにせよ♪


あ……これも、命じておるかのよぅじゃな……

ワラワは主従じゃとは思ぅておらぬ――」


「えっ!?」「そんなぁ」「何で!?」

一斉に声が上がる。


「あの時よりずっと、友じゃと思ぅておるからの♪

じゃから、好きにすればよいのじゃ♪」


「姫様ぁ~」うるうる……



 そぅじゃ。あの時からずっと友なのじゃ……



――――――



「この辺りの筈じゃがのぅ……」


 左には、山の連なりが唐突に切れ、その崖下には海原が広がっていた。

右には、湖が在り、あとは、大小の岩山が点在している。



 高い松の枝に立っている少女は、ここ、中の国の姫君である。

お転婆姫として、その名を轟かせている静香姫は、額に手を当て、もう一度、ぐるりと見回すと、目の前の大きな岩山に視線を戻し、睨みつけた。


「怪しぃのぅ……ふむ、調べよぅぞ♪」


姫は、猫の如く身軽に飛び降りると、岩山に向かって、弾んで行った。



♯♯♯



 岩肌を撫でながら、一周する。


「上かのぅ」見上げた。


先細りしていく岩山の中腹に違和感を覚え、目を凝らしたが、出っ張りが邪魔で、見えない箇所が有った。


姫は、おもむろに岩肌の凹凸に手を掛け、登り始めた。



♯♯♯♯♯♯



「カシラ!  登って来るヤツがおりやすゼ」


「なんだとっ!?

入口も船も見つかってねぇんだな!?」


「い、いや……そこまでは……」


「確かめろィ!!

おメェは登って来るヤツの方だ!!」


海賊達が散った。



♯♯♯♯♯♯



「ここじゃな……」

姫は岩山の中腹の出っ張りに立った。

見えなかった辺りの岩肌を確かめる。

「継ぎ目も何も、見当たらぬのぅ……」


ふ~む……と首を傾げる。


 その時、視界の隅を何かの影が(よぎ)った。

地上を見る。


 何者か()るな……


山に向かって、別の影が走った。


 ここで間違いなさそぅじゃ♪


姫は、走った者達が戻るのを待つ事にした。




 暫くして――


湖の方角から人影が、小さな岩山へと素早く走った。


その岩山から、次へ――


とは、待っていても、人影が出て来なかった。


「いざ、参らん♪」


姫は、ヒラリと飛び降りた。



♯♯♯♯♯♯



「カシラ、登っていたのは、娘っ子でやした」


「娘だとぉ!?」


「子供じゃねぇかと……」


「カシラ、もしや、お転婆姫では?」


「鬱陶しぃこったなぁ……

もし、何か見つけやがったら、干支衆(エトシュウ)にでも相手させてろィ」


「へい!」



♯♯♯♯♯♯



「この岩山じゃな」ぐる~り……「ん?」


 この跡は……


しゃがみこむ。

砂を撫で、ひとつ頷くと、岩山を押した。


ズズッ……


小さな岩山が、少し動き、縄の端が現れた。


岩山から手を離すと、岩山が戻り始める。


「およっ」急いで縄を引くと――


岩山に穴が開いた。


「見つけたぞ♪」ぴょんっと入った。


穴が塞がる。

微かな足音が遠ざかっていた。



♯♯♯♯♯♯



「カシラ、船は無事でやす」


「ん。見張りは残してきたか?」


「もちろんでサァ」


別の男が駆け戻る。


「カシラ、二の蔵も無事でやしたゼ」


「そうか。見張りは?」


「あ……いえ……」


「見張ってろィ!」


「へいっ!」


踵を返――「ぅわっ!!」


「アジト、見つけたぞ♪」ふふん♪


「つけられやがって!」「すぃやせん!!」


「放り出せっ!!」「へいっ!!」


海賊達と姫の鬼ごっこが始まった。



♯♯♯♯♯♯



「おい、干支衆、出番だ」


「親父、侵入者か?」


「そうだ」


「どんなヤツだ?」


「この国の姫だとよ」


「ふぅん。なぁんだ」


「かなり、すばしっこいぞ。気をつけろよ」


「任せとけって♪ 行くぞ」


干支衆が頷き、立ち上がった。



♯♯♯♯♯♯



「どこ行きやがった!?」「上だ!!」

「消えやがった!!」「向こうだ!!」

「待ちやがれっ!!」「うわあっ!!」


姫ひとりに翻弄されている手下を見て、幹部は財宝を移し始めた。



「カシラ、干支衆は湖の口に(ひそ)みやした」


「ん」

カシラは、立ち上がると、ダッと地を蹴り、後ろに跳んだ姫の(うなじ)に手刀を打った。


姫がカクンと落ちる。


カシラは襟首を掴むと「開けろ」壁に向かった。


岩壁が開く。


カシラは、気絶した姫を放り投げた。



♯♯♯♯♯♯



「おネェ、なんか落ちてくぞ」

「あれが姫なんじゃねぇか?」


「えっ!?」「何っ!?」「ワッ!!」



 岩山から放り投げられた姫が、砂地に叩きつけられる寸前、黒くて長い影が掬い受け、上昇し、辺りを窺うと、干支衆が潜む湖に向かって飛んで来た。



「来るぞ!」「見つかってはいない筈だ!」


干支衆は息を殺して通り過ぎるのを待った。



――長く大きな影が頭上を通り過ぎた。



「竜……だよな?」「竜でなければ何だ?」

「降りたぞ」「人になった!?」「夢か?」

「いや、どうやら本当だぞ」「竜が人……」

「水を飲ませているのか?」「まさか……」


「また竜になったぞ」「黒竜だな」「ああ」

「飛んで行ったな」「あの姫、どうする?」


「私が確かめる。ウシ、ここを頼む」


「わかった」


「おネェ、私も行く」


「ん。トラ、行くぞ」


二人は湖へと、足音も立てず走った。



♯♯♯



「生きてるな……」「そうだな」


岩に(もた)れ掛け横たわっている姫の口に手を(かざ)し、息をしている事を確かめた。


「今のうちに――」「動いたっ」


「ん……」


顔を見合せ、跳び退(すざ)り、岩影から様子を窺った。


姫が目を開けた。

ゆっくり、身を起こし、辺りを見回す。


状況を理解したらしく、大きな岩山――アジトに目を向ける。


目に光が宿る。

ニッと笑うと、サッと立ち上がり、アジトの入口の小さな岩山に、真っ直ぐ駆け出した。


トラが立ち塞がる。「行かせねぇっ!」突撃!





凜「姫、この話は、いつ頃なの?」


姫「五年程前じゃな」


凜「じゃあ、天竜王子達は人界に来たトコね」


黒「そうなるな」


凜「クロは覚えてるの?」


黒「う~ん……」


姫「まさか、クロに助けられたとはのぅ」


黒「あ! あったあった!

  飛んでたら、子供が宙にポーンってのが

  見えたんだよ。

  だから、拾って、水かけたら起きるかな?

  って……そうだ! 顔にかけたんだよ!」


凜「なんで、放ったらかしたの?」


黒「人の気配が有ったんだ。

  だから、逃げたんだよ。

  人姿になるトコは見られちまった

  だろうから、もういっか~って、

  隠れずに竜に戻ってな」


凜「良かったね~」


黒「ん?」


凜「大事な姫が助かって♪」


黒「あ……まぁな」真っ赤。


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