次への7-新妖狐王
苗木からの結心の矢も出来上がりました。
翌朝、クロと姫が大婆様の部屋に行くと――
「あれ? 貴女は……」
【はい。
あの時は、お助け頂きまして、ありがとうございます】にこにこ♪
人界上空で助けた神竜の魂が、神と成って微笑んでいた。
「オニキス様の奥様だったのか……」
【あ♪ スミレ♪】【オパルス♪】
二神は楽しそうに話し始めた。
「クロ、オパルス様が、ワラワの神とお成りくださるのか?」
「ああ、そうだ」
「して、もぅおひと方は?」「アオの神様だ」
「あちらは?」「サクラの神様だ」
「皆、神様が居るのか?」
「キン兄が まだだけど、絶対 結ぶからな」
【静香様、こちらに】オパルスが呼ぶ。
【クロ様、護竜杖を】オニキスが微笑む。
(護竜杖、オレで使ったのに、いいのか?)
【はい。互いに夫婦の場合は可能です】
(婚儀は、まだだけど……)
【儀式など、術には関係御座いません。
互いの心の関係で御座います】
(護竜杖にとって、オレと姫は夫婦なのか?)
【はい】キッパリ。
(そっか……)嬉しさ溢れる~
【お気に障りましたか?】
(んなワケねぇだろ)頬緩む~
「クロ、何をニヤケておるのじゃ?
早よ、それを渡してくれぬか?」「あ……すまん」
【クロ様は、護竜杖の主として、こちらで立ち会いをお願い致します】
「オレ、ここなのか……」ふ~ん……
前日、立った位置には、サクラが立っていた。
【私が、術の立ち会い神であり、護竜杖が二組目の絆ですので】
「いろいろあるんだな……」
やっぱオレ、知らない事だらけだな……
昨日のサクラも……
なんかオレ、迷惑かけてんだろなぁ……
(今日のサクラは、いつも通りじゃな。
昨夜のは、神か誰ぞおったのではないのか?)
(いや……気を探っても、神眼で見ても、大婆様とサクラしかいなかったんだ)
(我等のよぅに、気を消しておったのでは?
姿も消せる者が、ここにおったのでは?)
(神眼でも見えねぇヤツか……)
(術が始まったぞ)(あ……ああ、後でな)
そのサクラは、アオと話していた。
(この後、キン兄の虹紲だよね?
終わったら深魔界に進む?)
(紫苑殿と珊瑚殿も解放してもらったからね。
進みたいけど……)
(クロ兄の神眼待ち?)
(それも有るけど……)
(腕輪の干渉の方?)
(それも有るね。
俺達を介さずに、直接 話せた方が有利だからね)
(人数 多いからね~)
(そうだね。
それと、もうひとつ解決したくてね。
皆が魔界に揃っている時ならまだしも、人界、天界に離れると、魔界とは話せないからね)
(アオ兄と俺でギリギリだもんね~
そっちも問題だね~)
(とりあえず、魔界で戦う時の為に……そうだな。
天界に居るスミレが、魔界に居る俺と話していたな……
俺達とは話し方が違うんだろうな。
なら、神様を介して、皆と話せないのかな……)
(そっか! それ、試してみよ~♪)
(それと、皆の神様を、俺達が運ぶ事は出来るんだろうか……)
(俺もヒスイは連れて行けたよ。
誰か入ってみてもらう?
きっと、入れたら一緒に行けるよ)
【術が終わるわよ】(うん、次も頼むよ)
【オパルス♪ ちょっといい? ヒスイも♪】
スミレが、オパルスとヒスイの手を取って飛んで来た。
オパルスはオニキスと手を繋いでいて――
四神纏めてアオに入った。
(スミレ! いきなりっ!)【入れたわ♪】
(そうだけど……)【皆様、呼んだから♪】
(危険とか――スミレ!)出て行った。
スミレは絆神達を連れて、また入った。
【アオ、地下界に行ってみてよ】
(ゆっくり移動します。
何かありましたら、些細な事でもご遠慮なさらず、止めてください)
境界へ。
♯♯♯
(ルリ、闇障 保ってね)(解っている)
(越えます)一歩踏み出す。(大丈夫ですか?)
【平気よ♪】神達の驚きの声が聞こえる。
【地下界よね?】(深魔界だよ)【えっ!?】
スミレが出てきた。【出られるのね……】
(光を拒絶しているのは境界だけらしいんだ。
察知されたらマズいから戻って)
♯♯♯
アオが大婆様の部屋に戻った。
(行けた?)(深魔界まで行けたよ)(♪)
アオから、ぞろぞろと絆神達が出た。
(昨夜のは、サクラの中に、神が誰ぞ入っておったのではないのか?)
(かもしれねぇな……)
いや……あれはサクラだ。
サクラは、いろいろ俺達に隠している。
「アメシス様は、先にいらしていたのですね」
フジが現れ、矢を持ったアカも現れた。
「では、始めましょうかの。
神様方々、よろしゅうお願い致します」
弟達皆で囲み、キンの虹紲が始まった。
♯♯ 人界 ハザマの森口 ♯♯
「紫苑殿、珊瑚殿……これはまた、随分と大きくなられましたな」
「慎玄様も、竜の気が輝いておりますよ」
「いえいえ、小さき力に御座います」
「若様♪ 姫様♪」「カリヤ様、何でしょう?」
「ですからぁ、ワタクシに『様』など――」
「私共も、何度も申しておりますよ?」
「ですが、正式に、妖狐王様の後継と――」
「カリヤ様っ!!」「あっ……」
「そうですか。おめでとうございます」
「いえ、何も……めでたくなど……」ため息……
「何を仰いますか!?
妖狐王とお成りあそばすのですよっ!」
「母と伯母達が、大層 喜んでいるのを見るにつけ、損な役回りを押し付けられたのではないかと……思ってしまうのです」
「まだ、そんな事 言ってるの?
二人の力を皆で認めただけなのよ。
何代か飛ぶのは通例なのよ」乗り込む。
「桜華様、おかえりなさい」
「嬉しいわ♪ その『おかえりなさい』って♪
只今、戻りました♪」
「母様、国で何かなさっていたのでは?」
「あとは姉様達に任せたわ♪
王太子を御護りせねばなりませんからねっ♪」
「母様……」揃って、ため息。
「でも……あなた達……
将来、結婚とか考えているの?」
「えっ!?」顔を見合わす。「まさか……」
「何を考えてるの? それぞれよ」当然でしょ。
「いえ……全く……」揃って俯く。
「でしょうね。ホント、仲良過ぎだわ。
ま、そうなったら、ここから子狐 作りましょ♪」
「その水晶は……?」
「あなた達から溢れた力が入っているの。
もう十分、作れるわ♪」
「まだ器が不十分だったのですね……」
「力が大き過ぎるのよ!
……器は私より、ずっと大きいわよ」ふくれる。
「え?」また顔を見合わす。そして笑顔に。
「あなた達、出来る事が増えてるんだから――
どこに行ったのかしら?」
「天界のようですね」
「一瞬で……」ため息。
♯♯ 大婆様の部屋 ♯♯
「紫苑、珊瑚、それは曲空か?」
「さぁ、同じか否かは存じませぬが」
「姫様を追いましたら、こちらに」にっこり。
「狐殿も来ておるぞ」
「おや……コギ殿」「あら、天竜尊貴嫗様」
「ここは……」二人、慌てて大婆様の元へ。
(姫様、こちらに)(フジか!?)
振り返ると、兄弟と絆神達が集まっていた。
(神様方に中継して頂いているのだ)
(キン殿……では、皆と話せるのですか?)
(アオとサクラが思いついたらしいんだ♪)
【鏡で反射するが如しだ】肩を組んでいる。
(アカ、せっかく奮闘してくれていたのに、すまない)
(いや、丁度いい。腕輪は千里眼にする。
先程 試した限りでは、魔界と天界では、神を中継には出来ぬからな)
(すっご~い♪ さっすがアカ兄♪)
(それなら、干渉しないんだね?)
(別物だからな)
(千里眼って事は、城や長老とも話せるんだね?)
(当然だ)
(アオ殿、そちらのお支度は如何ですか?)
(紫苑殿……)振り返る。(もしや、誰とでも?)
(はい♪)もちろん揃う。
「天竜尊貴嫗様、ありがとうございます。
話せました!」
「そぅかそぅか」うんうんにこにこにこ。
これにて、まずまず準備が整いました。
あとは、少しずつ進みながらです。
という事で、大陸編はここまでです。
次回からは魔界編――ではなく、
オマケを挟みます。
凜「もう魔界に進んでもいいって思えたの?」
青「絆神様は揃ったし、心で話せるように
なったからね。
あとは、進みながら高めていくよ」
凜「隠し部屋の方は?」
青「それも進みながらね。
戦線維持もしないといけないんだからね」
凜「人数の多さを生かすのね?」
青「もちろん。これまでは、攻め込まれて
対処するばかりだったけれど、
これからは進攻するんだからね」
凜「すぐに入るの?」
青「オマケを書くんだよね?」
凜「うん。書くよ」
青「なら、もう少し準備と……
あ、その前に皆と話さないとね」
凜「またアオのお屋敷に集まるのね?」
青「そうなるだろうね」




