次への6-竜人になるぞ
前回まで:魔界で見つけた結心の矢が
修復されました。
(アオ兄、クロ兄の神様って、女神様?)
(いや、オニキス様は男神様だよ)
(オニキス様!?)
(俺達が御名前を呼ぶから、気になっていたそうだよ)
(ふ~ん……それで……)
(でも、まだ何かありそうだよね)
(アオ兄も、そぉ思う?)
(うん。何か……繋がりを感じるんだよ)
大婆様の両側で、竜の側の術を唱えながら、アオとサクラは話していた。
ハクが結心の矢を放つ。
輝きが飛来した。
(うわ~♪ 磊蛇さんみたい♪)
(そうだね。また筋肉質だね)
ハクの執事長・磊蛇も、護竜剣も筋肉質な武闘派。
そして神までもが――と、兄弟皆、笑いを堪えていた。
【我が名はビスマス。
我が力、存分に使われよ】
合わせていた右手をガシッと組み、ニヤリ。
離したと思ったら、拳を合わせた。
【良い絆を得た!】「よろしく頼む!」
熱くて上機嫌な二人を眺めていると――
(アオ、サクラ、今よいか?)
(どぉしたの? 姫。
クロ兄なら、もぉすぐ馬車に行くよ)
(いや、二人に相談なのじゃ)
(クロには知られたくない事なのかい?)
(そぅではないが……
二人の方が詳しぃと思ぅての)
(またヤキモチ妬くから、内緒の方がいいね~)
(そうだね。それで、何だい?)
(竜人になるには、如何にすればよいのじゃ?)
(なりたいの?)(人に戻る事は出来ないよ?)
(出来る事ならば、竜になりたいくらいじゃ)
(いつがいい?)(竜宝は有るからね)
(今すぐにでも!)
(本当にいいんだね?
クロにも伝えるよ。いいかい?)
(クロにはワラワから伝える)(そう)(ん♪)
(クロ、よいか?)
(じゃ、箱 借りてくる~)赤虎工房へ。
(何だ? 姫)
「大婆様、竜醒の術をお願い致します」
「静香殿かの?」 (ワラワは竜人になるぞ♪)
「はい。支度致します」蔵へ。 (いつ!?)
箱とサクラが現れる 。 (今からじゃ♪)出る。
「姫……本当にいいのか?」
「クロと、ずっと一緒に居る為じゃ♪」
「姫っ♪」ぎゅっ♪ 「クロ……皆が見ておる」
「あ……すまん……」離れる。「うむ」真っ赤。
「大婆様、突然 申し出まして、誠に申し訳ございませぬ。
ワラワは、すぐにでも竜人となりたいのでございまする。
どぅか宜しくお願い致しまする」
「静香殿、我等は歓迎より他にはございませんが……よろしいのですね?」
「はい。人には戻れぬ事も存じておりまする。
その上で……
ワラワは竜になりたいのでございまする!」
「そこまで竜を……ありがとうございます。
それでは始めましょうかの」にこにこ
姫が振り返ると、アオとサクラが魔法円を描き終えていた。
「兄貴達~♪ 神以鏡 配るから、個紋の上に立ってね~」
「姫は真ん中だよ。キュルリ、手伝ってね」
魔法円の中央に立った姫の頭にキュルリを乗せた。
(神以鏡が光ったら、姫の周りの鏡に光を当ててください)
(クロ兄、領域供与ねっ)(おう)
大婆様が術を唱え始める。
掲げた神以鏡が、次々輝き始める。
姫の周りに配した竜醒鏡に、神以鏡の光が反射する。
その光はキュルリに集まった。
キュルリの輝きが姫を包む。
六人の絆神とカルサイが現れ、光を足した。
術の終わりと共に、輝きは全て姫に吸い込まれた。
きゅるるっ♪
キュルリが、姫の目の前をふよふよ飛び、差し伸べた姫の掌に乗った。
「して……終わったのか?」変わったのか?
「うん♪ 姫、だいじょぶ?」
「うむ……何とも無いぞ。
本当に、竜人とやらになったのか?」
「ん~とね~」出て行き――
大きな本棚を担いで現れた。
「はい♪ 持って♪」ぽいっ♪
「わわわっ! 何をするのじゃっ!」受けた。
「ねっ♪」「およ? これは……軽いのか?」
「竜と同じ力だよ」にこっ「竜人だからね♪」
アオが本棚を受け取ると、姫は大婆様の前に弾んで行き、
「ありがとうございまする!」ぺこりっ
「長きに渡る人と竜の懸け橋。
どうか、よろしゅうお願い申し上げます」
「しかと、お引き受け致しまする」
クロが並び、一緒に頭を下げた。
「姫、人界と行来する為の竜宝、竜鱗璧だよ」
「竜の鱗の代わりなんだ」首に掛けた。
「真、竜の鱗のよぅじゃのぅ」
「竜は竜体でなければ、天界と人界との境界を越える事が出来ないんだ。
だから鱗を持たない竜人は、越えられないと言われていたんだよ」
「もしかしてお前ら、コレ持ってるのか?」
「うん。どぉして?」「よく気づいたね」
「お前ら、ちょいちょい人姿のまま曲空しまくってるだろ?」
「当たったから、クロ兄にも あげる~」
「おっ♪ ありがとなっ、サクラ♪」
「皆の分は、明日 配るからね。
アカ、ありがとう」
「なんだよ~、配るつもりだったのかよ」
「当然だろ?」
「もぅ、あの箱に入らずともよいのか?」
「うん♪ あれは人専用だからね~」
「曲空もよいのじゃな?」「もっちろ~ん♪」
姫が消え、再び現れた。
「よぉし! ワラワも魔界に行くぞ!」
「クロ兄♪ 姫、できる事 増えてるハズだから、がんばってね~」
「姫っ、薫風の祠に行くぞ!」「おぅよ♪」
二人は曲空した。
「次の矢は、明日の昼だ」アカも消えた。
「アカ兄様も曲空を……?」
「うん。小器の壺に、曲空だけ入れたんだ。
掌握あるから、できるかな~って。
フジ兄、今日の魂主、連れて行くから、待っててね~」竜宝の国へ。
「では、お先に失礼致します」屋敷へ。
「んじゃ、城に♪」アオを掴む。
「ふむ、そうだな」同じく。
「大婆様、失礼致します」苦笑を浮かべ、
三人、礼をしたまま曲空。
少ししてサクラが戻って来た。
姫を運んだ箱を赤虎工房に返す為であったが――
「サクラ、近ぅ……」
「大婆様、如何なさいましたか?」
泰然と大婆様の前に立ち、流れるような所作で一礼すると、落ち着いた声で言った。
「兄達の天性は、順調なよぅじゃのぅ」
「はい。ようやく、クロ兄様も目標が掴めた様子に御座います」
「よかったのぅ……じゃが、無理は禁物じゃよ。
不十分なまま挑んでも勝てぬからの」
「はい。心得ております。
お気遣い、ありがとうございます。大婆様」
「兄達の事は、サクラに任せる他、無いからのぅ。
よろしゅう頼むぞ。
して、アオの具合は如何じゃ?」
「もう、ご心配なさるような事は全くございません。
ルリ姉様が支えておりますので――」
サクラがサッと振り返った。
「あ……オニキス様、如何なさいましたか?」
【お願いがあって参りました】礼。
「では」サクラが去ろうとすると――
【サクラ様も、お聞きください】
大婆様が頷く。サクラは横に控えた。
「竜の我等に如何な御用でございますか?」
【はい、私の妻が神と成りましたので、
真祐の絆を結ばせて頂きたいのです】
「もう、キンしか残っておらぬが……」
【王太子様には、もっと高位の神が相応しいと存じます。
先程、竜人と成られました静香様と結ばせて頂きたく、お願い申し上げます】
サクラは控えたまま一礼すると、立ち上がり、扉に向かって行った。
「クロ兄、姫、隠れてないで~」扉を開ける。
「わわわっ!」クロと姫が転がり込んだ。
「もちろん受けるよねっ♪」
「何を、なのじゃ?」
「竜の神様が、姫と友達になってくれるって♪」
「真か!?」
「うん♪ クロ兄の神様の奥様だって~♪」
「あちらの御方か?」「――の奥様だよぉ」
「あちらは男かっ!?」「うんっ♪」
クロが飛んで行った。
「ありがとうございます! オニキス様!」
「姫、行こっ」「オニキスじゃと!?」
「みんなで呼んでたから来てくれた~」
「然様か……摩訶不思議な御縁じゃな」
【成ったばかりの神ですが、どうか宜しくお願い致します】
「ワラワも竜人になったばかり。
どうかよろしくお頼み申す」ぺこり。
船に乗っていた頃、竜使いクロの竜が
オニキスでした。
ハクの竜がシルバスノー、
フジの竜がウィスタリア、
サクラの竜がミルキーチェリー、
そんな名を付けてました。
磊蛇は、ハクの屋敷の執事長です。
王子達の執事長の中では唯一の武闘蛟で、
クロが子供の頃、ハザマの森で迷子になった時に
ハクと一緒に駆けつけた蛟が磊蛇なんです。
凜「他の兄弟のも名付けてたの?」
桜「うん♪ フジ兄と考えてた~♪」
凜「教えて教えて♪」
桜「キン兄がゴルドシャイン、
アオ兄がラピスラズリ、
アカ兄がカーマインだよ~♪」
凜「なんかカッコいい~」
桜「でしょ♪」
凜「執事長さん達も、けっこう出てきたよね」
桜「あとキン兄トコの恒蛇さんと、
アカ兄トコの蓮蛇さんと、
俺トコの鈴蛇が出てないかな?」
凜「執事長さん達の話は、この章の
オマケにするね」
桜「くノ一さん達も、人界に残っちゃうよ?」
凜「じゃあ、それも♪」
桜「紫苑さんと珊瑚さんの話も
妖狐王様に会った後、書いてないよ?
次で書くの?」
凜「それも、オマケかなぁ……」
桜「オマケだらけ~
まだ大陸編、終われないんじゃない?」
凜「う……」




