次への5-アサギ復活
アオとサクラは、竜宝・魔宝達から話を
聞きつつ、実は癒されています。可愛いので。
♯♯ 竜宝の国 ♯♯
(アオ、サクラ、深蒼の祠に来る事が出来るか?)
竜宝・魔宝の魂達から話を聞いていた二人の王をキンが呼んだ。
(はい。すぐ行きます)
(私達は王の謁見が終わり次第、祠に向かう)
(解りました)
「皆、すまない。呼ばれてしまったんだ」
「また来るからね~」
【はい。
お忙しい事は重々承知致しておりますので】
【ご無理なさいませぬよう】
【今日はお聞き頂き、ありがとうございました】
「みんな♪ ありがと~」
「聞いた事、ちゃんと考えるからね」
【はい。お気をつけくださいませ】一斉に礼。
アオとサクラも頭を下げ、曲空した。
――深蒼の祠。
アサギがシロと話していた。
アオとサクラが現れた事に気付き、
「私を助けてくれた王子だな」微笑んだ。
「良かった……」
アオは呟き、二人は光を当てている神達に、深く頭を下げた。
「兄上、孫のアオとサクラです」
「孫か……改めて時の流れを感じるな……
アオ、サクラ、ありがとう」
「見つけましたのは偶然でございますので、そのような……」
「二人には本当に感謝しているのだ。
だから、私が知り得た事を話したい。
それが最も私の気持ちを表せられそうだ」
「ありがとうございます!」
「私をあの空間に閉じ込めたのは魔王だ。
時の経過を考えると、先代なのかも知れぬが――
魔王は、私を依代にしようとして失敗したのだ。
その時、垣間見た魔王の記憶では、初代魔王は、闇を産み出した時の反動で、二度と産む事が出来ぬよう、呪を受け、『産む者』つまり女性を依代には出来ぬようになったらしい。
全てに於いて拒絶――そう拾ったのだが、『全て』が、他に何を意味するのかは、私には分からない」
「という事は……初代魔王は女性なのですか?
そうなると、以降は子孫ではないのですね?
しかも全て男性……それなのに、何故その呪は代々受け継がれているのですか?」
(サクラ、落ち着いて)(あ……)
「初代魔王は女性だ。神界を追放された堕神だ。
神――つまり、既に身体は無いし、呪も受けているから、追放以降に子を産む事は出来なかっただろうが、神と成る前に産んでいた子らの子孫から、適する男子を拐い、闇に染め、次代の魔王にしているようだ」
「子孫なのか……
闇に染めた時に、呪も引き継がれるのか……
そうなると、二代目以降の魔王は、自分の意志で戦っているのではないのか……」
(サクラ……)(あ、つい……)
(珍しいな♪)(ルリ姉までぇ)
「『初代魔王の影』そう言う事が出来るだろう。
闇に染めた神竜を、無理矢理 神にする事で、魔王は強大な力を得るが、同時に不安定な存在となってしまう。
だから、どうしても依代が必要なのだ」
【属性の光と闇は……『昼と夜』と言い換える事が出来ます】
【つまり、どちらが良い、悪いと、いうものではありません】
【ですので、お二人のように、両方をお持ちでも、不安定にはなりません】
【しかし、魔王の闇は……恨みや憎しみなどの、負の感情と渾然一体となっている為】
【神竜が持つ『祝福の光』とは、反発してしまうのです】
アサギに光を当てている神達が補足した。
「アサギ様は、その秘密を知ってしまったから、あの空間に閉じ込められたのですか?」
「そうだろうな」
「アサギ様も、蒼月で女性になった事が、おありなのですか?」
「閻魔族に会いに行こうとしてな。
いや、あの時は驚いたよ」笑う。
アサギは、光を当てている神達を見回した。
「あの頃は、神竜の協力なんて、夢のまた夢だったのだ……
いや……そう、決めつけていただけなのだな……」
王と王太子達が来た。
シロがアサギに紹介する。
「そうか。王太子は他に居たのか……
王達よ、安心しろ。私は譲位するからな。
王族会が消滅したのだから、好きに暮らせるのだろう?」
すこぶる嬉しそうだ。
「兄上、『好きに』ではなく、次代の育成やら、いろいろと成すべき事が――」
「王より、ずっと楽しそうな事ばかりなのは聞こえていたのだ。
長老の山とやら、早く行きたいものだ」笑う。
「これからの百年は三王で、と議会の承認を得た所なのですが……」
戸惑いを隠せないコハク。
「折角だから、譲位までの数日ならば座ってやるが、王なんぞに戻ってしまったら、閉じ込められた恨みは晴らせぬからな」
どこまで本気で言っているのか、豪快に笑う。
「兄上っ! もしや戦いに――」
「勿論、行くつもりだが」何か?
「まだまだ療養が必要ですっ」
四王子が声を揃え、医師章を見せた。
「わっ! 皆、医者なのか!?」
「兄上……ですので、おとなしく……」
(キン兄さん、いつの間に?)
(つい先程だ)
(ハク兄も金色?)
(一緒に受け直したんだ♪)
(マグレ?)
(あのなぁ、俺だって本気出しゃ――)
(クロの頑張りに感化され、猛勉強だ)
(兄貴ぃ、バラすなよぉ)
「王子達、安心しろ。後方支援だ。
前線は任せたぞ」わははははっ「ん?」
モモとフジの先導で、神竜達が光を当てつつ、寝台を運び込んで来た。
寝台をアサギの横に並べ、ゆっくり降ろす。
「トキ!?」
「アサギ……」涙が伝う。
「鏡の空間から救出された方々の中にいらっしゃいました」
「薬を配っておりましたら、個紋が浮かび、意識が戻られましたので、お連れ致しました」
モモとフジが微笑み、礼をした。
「ずっと……一緒に閉じ込められていたのか……」
「兄上、止まっていた時を進めましょう。
婚儀の支度はお任せください」
クロとムラサキが、アサギとシロの両親を連れて曲空して来た。
(サクラ、矢が光っている)(すぐ行くねっ)
サクラが消え、直後、アカを連れて来た。
「揃ぅたのぅ……」
両親とアサギが落ち着くのを待ち、シロが、改めて王子達を紹介した。
「七人も居るのか……凄いな……」
「凄いのは人数ではなく、その能力です」
シロの孫自慢が始まり、王子達は恥ずかしさでモジモジ、視線が彷徨う。
それを見て、王達はクスクス笑っていた。
「いい空気だ。
生きていて良かったと、心の底から思う」
アサギがしみじみと言い、目を閉じた。
「お爺様、そろそろ参りましょう」
「ん? ああ。そぅじゃな」
「アサギ様、騒ぎ立てまして申し訳ございません。
それでは、失礼致します」
「あ……
そういう意味で、目を閉じたのではないぞ」
「解っておりますが、そろそろお休み頂かねばならないのも事実でございます」
医師達が頷く。
「病人扱いしおって――ん? ベニ……の娘か?」
【えっ……】(姿 見せてたの?)【いいえ……】
「そっくりだな。近くに来てくれないか?」
【はい。伯父上様】
「まさか……神なのか……?」
【父が神竜でしたので……】
「話を聞いてもよいか?」
【はい】光を当て、話し始めた。
王と王子達は、祠の外に出た。
「アサギ様の儀式について詰めたいのだが、キン、ハク、アオ、時間は有るか?」
「俺も、ですか?」
「諸々の儀式の取り纏め役だからな」ニヤッ
「仕方ありませんね……それでしたら、先に大婆様に報告したいのですが。
それに、虹紲も行いたいので、その後でよろしければ」
キンとハクも頷く。
「うむ。夜でいい。
ただし、解っているな? アオ」
「許可は得ていませんね……」ため息。
「おいおい、呼んでおいて、それはないだろ」
「いいじゃないか、コハクも見たいだろ?」
「私は、甥でも姪でも可愛い、それだけだ」
「俺だけ悪者みたいにぃ」
「その通りだろ?」
「コハクも喜んでたじゃ――」「父上っ!」
「ん?」見回す。「どこ行ったんだ?」
「兄貴達、大婆様の所に行きましたよ。
城に送りますから」二人の手を取って、曲空。
――ギンの執務室。
「俺も行きますのでっ」手を離す。
「待てっ! サクラも夜、来いよ」
「なんでぇ?」
「アオと一緒に行動してるんだろ?」
「ずっとじゃないし、忙しいのっ」曲空。
「……確かに、王は不自由だな……」
「誰かが、やらねばならんのだ。諦めろ」
コハクはギンの肩をポンッと叩いた。
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
「赤虎、帰ったと思ったら、また出掛けるの?
それなら、後にしようかな……」
「いや、構わぬ」
「そう? それなら……」掌を開いた。
「この大きさで、どうだろう?」
「そんなにも小さく……流石だ。
試したい。それを預かっていいか?」
「試すなら全てだね」
懐からも出し、五つ渡した。
「直ぐに返す」
「いや、また作るよ。それは少し大きいからね。
ああ、そうだ。
装飾品に加工するなら幺月を連れて来るけど?」
「頼む」
「何がいい?」
「そうだな……心臓に近い方がいい。
首飾りで頼む」
「では、任せて。ひと晩あれば十分だから」
「しかし、家は遠いのだろう?」
「大丈夫」曲空。
「ね?」ふふふっ♪
「幺月、親友の赤虎だよ」
「はじめまして、赤虎様。
お噂は耳に致しております」
アカが礼を返す。「子供は?」
「父に預けたよ」
「連れて来ればいい。御父上様も」
「ありがとう。皆で居候してしまうよ?」
「構わぬ」フッ……
凜「アサギ様、トキ様、
ご生還おめでとうございます」
浅「ありがとう。まさか生きて帰れるとは、
思ってもみなかったよ」
鷺「現王子様方に感謝するばかりです」
凜「アサギ様は御即位後、トキ様と
御婚約なさったんですね?」
浅「王族会が煩くてな。
貴族の娘との婚姻を強引に行うべく、
ずっと妨害されていたのだ」
凜「もう、その王族会もありませんし、
お若いままですし――って、そういえば
何歳なんですか?」
浅「シロが1230歳だとか言っていたから、
1280歳だが、竜体からの推定では、
500~600歳らしい」
凜「じゃあ、もしかしたらギン様よりも
お若い……?」
浅「かも知れぬな。妙な気分だ」わはははっ




