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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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闇拠点15-カラクリ鏡

 前回まで:魔王の鏡部屋を調査中です。


♯♯ 長老の山 ♯♯


「兄上が生きておったじゃと!?」


シロは驚き過ぎて、それ以上、言葉が出なかった。


「まだ意識は戻っておりませんが、時間をかければ、お話しも出来ると思います。

たくさんの神様がいらしておりますので」


「行ってもよいのじゃろうか……」


「その為に参りました」シロの手を取り、曲空。



――深蒼の祠。


「スピネル様、ありがとうございました。

呼び掛けて貰おうと思い、祖父を連れて参りましたので交替します。

隣室でお休みください」


「兄上……本当に、兄上じゃ……」


「そうですか。でしたら、お言葉に甘えます」


(サクラ、スピネル様を頼んだよ)(うん)

アオはアサギに光を当て始めた。


「しかし……あまり変わっておらんのぅ……」


「時空の間に閉じ込められておりました。

その為だと思います」


「そうか……

兄上、あれから八百年も経ちました。

兄上がいなくなり、代わりに私が即位し、姉上が亡くなり、ムラサキが即位しました。

今は、私の子供達が統治しております。


兄上、早くお戻りください。

未熟な息子達に、政の何たるかをお教えください――」


キンが来た。

「アオ、ここは、私とハクに任せて欲しい。

サクラと二人、すべき事が有るのだろう?」


「ありがとうございます。では、お願いします」


(サクラ、鏡を片付けようと思うんだけど、一緒に行ってくれるかい?)


(もっちろ~ん♪

こっち、ハク兄が来てくれた~♪)



♯♯ 地下魔界 ♯♯


 アオとサクラは鏡の部屋に戻り、一枚一枚 確かめ始めた。


「アオ兄、この鏡……誰かの視線を感じるんだ」


「うん……確かに、どこかに繋がっていて、誰かがこっちを見ているね」

掌を当てる。


サクラも掌を当てた。「移動用じゃないね」


「他の移動鏡で繋げる事が出来るのかな?」


「あ、さっき『鏡なら』って言ってたヒト~」


一枚 光った。

「キミは?」


迸案鏡(ヘイアンキョウ)と申します】


「この向こうって鏡だよね? 行ける?」


【はい。お繋ぎ致します】


「ここどこ? ――って、あれれ!?」「ん?」

「志乃さんだ~♪」「ああ、姫の――」「ん♪」


「こんにちは~♪」鏡の向こうに声を掛けた。


『へっ!? さっさっさっ――』わたわたっ!


「鏡が繋がっているだけです。

驚かせて、すみません」アオも声を掛けた。


「見えてるんだよねぇ?」手を振る。


『あっ、はいっ!』声 裏返る。


「この鏡は、前々からお城にあった物ですか?」


『いえ。

先日、仁佳の国より賜った物でございますが……』


(監視用だったのかもしれないね)(そっか~)

「視線など感じた事はありませんか?」


『はい……腰元達の部屋の姿見として置いたのでございますが、見られている気がすると申しますので、先程、広間に飾りましてございます』


「それで、ずっとこっち見てたんだ~」

サクラが対の鏡を持って、迸案鏡をくぐった。


「桜丸様っ!? 鏡からっ!?」


「これ、この鏡の対なんだ♪ あげる♪」

並べて置くと、自然と覗き込む形になり――


「こちらの鏡にも桜丸様が……」ぱちくり。


サクラが少し離れて、手を振った。


「まあっ! しかも左右が!?」


「近くだからかなぁ? ハッキリ見えるね~♪

じゃあ『カラクリ鏡』ってことでっ♪」

(アオ兄、聞こえる?)


(うん、迸案鏡から聞こえているよ)


(じゃ、くぐれるかなぁ?)


(サクラ、掴んで)鏡から手が出た。


「ひゃあっ!」


「驚かせて、すみませんっ!」顔も出した。


「あ……青右衛門(アオエモン)様……」


「別の鏡で繋いでいるんです。

今後は、こんな事ありませんので御心配無く」


「お客人ですかな? 志乃殿」家老が来た。


中途半端に鏡から出ているアオとサクラが振り返り、目が合った。


「のわわっ!?」腰抜かす。


「志乃さん、説明よろしく~♪」きゃははっ♪

二人は鏡の向こうに行ってしまった。


「しっかりなされよ、御家老様。

竜の皆様の『カラクリ鏡』でございますよ」


「この向こうは……?」


「それは伺ってはおりませぬが、もう出入りは出来ぬようでございますよ。

ただ――」一枚の前に立つ。


「ほお……二枚共に姿が……」


「こうして楽しむ鏡だそうでございますよ」


「ならば……」もう一枚の前に立つ。

各々、相手側の鏡に映った。


「写っているのではなさそうですな」


「然様でございますね。左右が……」


「ならば――」一枚 持って、襖の向こうへ。

『離れても見えますな』そのまま歩いて行く。


「声も聞こえておりますれば」


『然様ですな。あ、殿』『何をしておる?』

『仁佳よりの賜物の鏡で御座いまするが――』


志乃側の鏡に、殿が映る。

『儂が志乃になっておるではないか!』


「いえ、それは――」『貸せっ!』『殿っ!?』


手が迫り、暗くなった。

袖で拭いているらしい。


『殿、こちらへ――』団体さんの足音が近付く。


「おお、志乃」鏡を拭くのを止めた。

「儂が、そちらに!?」


「カラクリ鏡にございます」


「この鏡は確か……仁佳からの賜物……」

「先程、申し上げましたが」ぼそっ


「その対なる鏡を、青右衛門様と桜丸様がお持ちくださいましてございます」


「竜の方々ならば、さもありなんじゃな。

儂が貰ぅておこう」二枚共、持って行った。




 こうして、魔王作・監視用の鏡は、中の国で客人を楽しませるカラクリ鏡として、新たに活きる道を得たのだった。




「これ なんだろ?」拾い上げる。


【先程お持ちになられた鏡の一部です】


「これが取れちゃってたから、ちゃんと見えなかったの?」


【その通りです】


「じゃ、付けるから、また繋いで~

あれ? 違う部屋だ。だれか、いる……」


「背中だね。着物が上等だから、殿様かもね」


「ふ~ん……こんにちは~♪」顔を出す。


「おおっ!?

そのような事も出来るのですかな?」


「これは特別だよ」にこっ「ちょっと修理♪」

カチャカチャ「失礼しました~」引っ込んだ。


「ほう、この飾りを付けに――

細やかなるお気遣い、誠に忝ない」




♯♯ 赤虎工房 ♯♯


 夕刻、ワカナは妃修行を終え、工房に帰った。

しかし、作業場にアカの姿は無く――


コトッ……カタカタッ……


暗室から物音が聞こえた。


扉を叩き「アカ?」覗いてみた。


「ワカナ、どうした?」ぽふっ


背後から掌が肩に乗った。


「ねぇ、アカ……

あの鏡は何? 今度は何を作るの?」


恍恒大鏡の周りに、たくさんの鏡が有った。


「知らぬ」鏡に近寄る。ワカナも。


「鏡の名前? それと、使い方なのかしら?」


全てに小さな紙が貼られていた。


(この鏡は何だ?)


(アカ兄が気づいた~♪)


(魔王作の鏡達だよ。

暫く預かって欲しいんだ。

呪は浄化したけど、魔王や配下が、まだ使えるかもしれないから、蔵には置けないんだよ)


(移動用のには、相殺は、かけてあるよ~)


(うむ。置いておけ)(ありがと♪)


「安全を確かめる。近寄るな」

ワカナの手を引いて、庇うように肩を抱き、暗室を出た。


「どうした?」「何でもないっ!」真っ赤!


「友に紹介する。こちらだ」

そのまま居間へ向かった。




♯♯ 地下魔界 ♯♯


「アオ兄、竜宝と魔宝の鏡は、どぉするの?」


「星輝の祠で浄化して貰ってから使おう」


「深蒼の祠じゃないの?」


「いっぱいだからね。

闇を浄化するんだから、光の祠にも浄化竜宝は揃っていると思うよ」


「その後は、道 探しに行くの?」


「鏡達から情報を貰ったからね。

行ってみるよ」


「アオ兄も、もらったんだ~」


「やっぱりサクラも、なんだね」にこっ♪


「もっちろ~ん♪」にゃは♪





桜「姫~♪ 俺、成人したら、

  なんて名前になるの?」


姫「桜左衛門(サクラザエモン)じゃ♪」


桜「それって、なんだか~

  背中に桜吹雪があるヒトみたいだねっ♪」


青「それは、遠山左衛門尉様だよ。

  それより、俺のは、どこかの世界の

  耳を鼠に噛られた猫型の――」


桜「あ♪ ドラえ――」


姫「アオ、サクラ。

  まさか文句が有るのかのぅ?」


桜「いやっ! ないないっ!」(せーのっ!)


姫「曲空しよぅとも追えるのじゃぞっ!」




黒「あれ? 姫~、どこ行ったんだ?

  修行の続きしねぇのか~?」


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