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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
259/429

闇拠点14-鏡の中

 魔王は何をしているのやら……


♯♯ 地下魔界 ♯♯


 アサギとスピネルを深蒼の祠に預け、アオとサクラは鏡の部屋に戻った。


「サクラ、ここで鏡を確かめながら待っていてくれるかい?」


「この鏡に入るんだね?」


「俺は二人を連れて行けるし、引き出す方が、強い力が必要だからね」


「あんまり遠くに行っちゃダメなんだよぉ」


「解っているよ。頼んだよ、サクラ」



 アオは光を纏い、両手を鏡に突き、鏡から術を聞き出し、唱え始めた。


鏡に入って行くアオに、サクラは光の紐を巻き付けた。

(念のためだからね)(うん。ありがとう)




 アオは、どこまで見えているのかも分からない灰色の世界を進んでいた。


(違和感は、まだまだ先だぞ。

あまり遠くには行けない。どうするのだ?)


(ここまで離れれば、鏡には影響しないかな……

吸着してみようと思うんだ。

ルリ、闇障をお願い)


ルリが発動した闇障に、アオが光を注ぎ込み、増大させた。


闇の球が膨れ上がると、アオも闇障を発動し、それを圧縮し、小さく纏めた。


(繰り返して、大きな引力を生むんだ)


三度目に纏めて、小さな球にした時、周りに歪みが生じた。


(何かが来るぞ!)【闇に覆われてるわ!】


(捕まえるから、ルリは、この球を支えて。

スミレは浄化して――来たっ!)


アオが掴み、スミレが浄化する。


(背後には、闇の球を影響させぬ。

後ろに置け!)

ルリが、背後を闇の牆壁で囲んだ。


次々掴んでは浄化を繰り返す。


(もう来ないのかな……?)

可能な限り遠くまで、辺りの気を探る。


【少なくとも、生きている方はいないわ】


(…………)


【何で返事してくれないのっ!】


(念の為に探っているから、静かにしてね)


【信用してくれないの? 神なのに~】


(光も闇も無い気を探した?)


【あ……】


(天人も魔人も、その可能性が有るんだからね)


【何も無い人は?】


(何の為に、魔王が、そんな人を連れて来て、態々(わざわざ)ここに放り込むんだい?)


【あ……】


(一応、無属性も探してはいるけどね)


【兄様の意地悪ぅ~】(何か言った?)

【何も言ってないっ】(そう?)


ルリは必死で笑いを堪えていた。



(もう居ないみたいだ。ルリ、解除しよう)


二人は慎重に闇の球を解除し、牆壁も解除した。


アオは巻き付いているサクラの紐を解き、複数本に分割して、うち一本は再度、自身に巻き付けた。


そして、横たえている ひとりに、分けた一本を巻き付けた。

(サクラ、この紐を引いて。

魔人に巻き付けたから)


(うん)スッと、紐を巻き付けた魔人が消えた。


(流石、サクラだな)(そうだね)


(もぉいいよ~)


アオは次の魔人に巻き付け、引いて貰った。


そうして、横たえていた人々をサクラに回収してもらい――


(この方が最後だよ)


(じゃ、アオ兄♪

手を繋いで~、せ~のっ♪)



――鏡の部屋に出た。


 横たえられた人々には、サクラが光の球を被せていた。


「これ、移動用の鏡だよ。

深蒼の祠に繋いでるんだ」


「流石、サクラだな……」


「ありがと♪ ルリ姉♪」るんるん♪


「なら、先に運べるくらいに浄化しないとね」


スミレがアオから出て、浄化を始めた。


神様(スミレ)が浄化してくれるんなら~」

サクラが鏡をくぐった。

(アオ兄、浄化したヒト送って~♪)


(解った。待ってて)

アオとルリも浄化し始めた。




(サクラ、そっちはいいかい?)


(は~い♪ 集まったよ~♪)




 深蒼の祠には、神竜や神達が集まっていた。


「皆様、重篤な方々が運び込まれますので、どうかよろしくお願い致します」


鏡から引き出しているサクラの横で、ムーントが神達に声を掛け、頭を下げた。


「サクラ様、私でも、引き出す事は可能でしょうか?」


「ムーントさん、ありがと♪

それじゃ、お願いしま~す」ぺこり♪


サクラも魔界側に行き、浄化を始めた。




(アオ、あの鏡の向こうは、仕置き部屋か?)


(たぶんね。

魔王に叛いたとか、失態があったとか、そんな事で放り込んで、じわりじわりと苦しめながら、命を蝕む場所なんじゃないだろうか……)


(酷い事をするのだな……)


【伯父上様は、なぜ そのような所に……】


(いつから影を作るようになったのかも分からないからね……

影にしていて何かがあったのか、それとも、依代にしようと試みたけれど出来なかったのか……)


(アオの体も放り込まれたかもしれぬのだな)


(そうかもね……)


(奪還出来て本当に良かった……)


(ありがとう、ルリ。ありがとう、サクラ)


【私が間に合わなかったから……】


(言いっこなしだよ、スミレ)(そうだよ)


話しているうちに、残るは ひとりになった。


(浄化おっしま~い♪)

サクラが抱えて、鏡をくぐった。




「スミレ、まだ何か気になる?」


【そうじゃないけど……】


「どうしたの?」


【私……アオの役に立ててる?】


「もちろんだよ。

何を言い出すのかと思ったら……

ずっと待っていたんだよ。俺もサクラも」


【ホントに?】


「今は戦っていないから、神としての力を出しきって貰えないけど、これから嫌と言う程、頼りにするからね」


【うんっ♪ 任せといて♪】


「戻るよ。入って」【うん♪】



 アオとサクラは、アサギとスピネルの様子を見に行った。

スピネルは、すっかり元気になり、アサギに回復の光を当てていた。


【まだ寝てなきゃ駄目よ!

神竜も神も大勢 来てるんだから、貴方が無理する必要は無いわ!】


「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう」


(スミレ、役に立ちたい思いは、きっと同じだよ)

「それではスピネル様、少し離れますので、よろしくお願い致します」


(サクラ、隣の部屋から、スピネル様に回復を当ててくれるかい?)


(どこか行くの?)


(王と大婆様に話さないといけないからね)


(父上と会うの!? だいじょぶなの!?)


(大丈夫だよ。ここの事は頼んだよ)


(うん……)




♯♯ 天竜王城 ♯♯


 ギンとコハクは各々の執務室に居た。

ギンの執務室の扉を叩く。


(スミレ、コハク王様を呼んでくれるかい?)

ギンの返事を待つ間に、そう頼み、扉を開けた。

「なんだアオ、どうしたんだ?」


コハクも来た。「何があったんだ?」


「単刀直入に申します。

魔界でアサギ様を発見しました」


「御存命であったのか!?」王達。


「まだ意識は戻られておりませんが、御命は御無事です。

即位より千年経過しておりませんので、今後の事を検討する必要があるのではないかと思い、先に、こちらに参りました」


(スミレ、こっちに残ってくれるかい?)


【王妃として?】


(それを王子に聞くの?)


【あ……】


(姿を見せて、話し合いに加わってもいいし、消したまま聞いていてもいいと思うよ。

それじゃ、長老の山に行くからね)


「では、大婆様に報告しなければなりませんので、失礼致します」曲空。




♯♯ 長老の山 ♯♯


 アオの話を聞いた大婆様は、大層 喜んだ後、暫し考え、口を開いた。


「まずは、アサギの意識が戻るかどうかじゃな。

アサギが、どうしたいと言うかにも依るしのぅ。

全ては、これからじゃな。

アオ、医師としても、よろしく頼むぞ」


「はい。全力を尽くします」


「シロには?」


「これから一緒に、深蒼の祠に向かおうと思っております」


うんうん。「そちらも頼んだぞ」


「はい」礼。





瑠「アオ、ひとつ頼みが有るのだが……」


青「どうしたの? ルリ。

  遠慮なんかしないでよ」


瑠「ふむ。では……

  複製の服なのだが……」


青「うん」


瑠「確かに以前よりは動けるが、

  もっと動き易さを重視してくれぬか?」


青「どんなのがいいの?」


瑠「ヒラヒラしていなければ構わない」


青「うん♪ わかったよ♪」


瑠「何を企んでいるっ!?」


青「なんにも~♪」


瑠「企んでいるだろ!」


青「ちゃんと考えるから~♪」


瑠「いや、私に選ばせろ!」


青「それはダメ~」


瑠「このアオ……皆に見せてやりたいものだな」


青「それもダメ~」


瑠「まるでサクラだな」


青「そぉ?」


瑠「とにかく!

  服は私が選ぶからなっ!」


青「させないよ♪」


瑠「戦う事を考えろ」


青「考えているからね♪」


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