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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
257/429

闇拠点12-スミレとヒスイ

 地下魔界に片足突っ込んでますが、

準備が整う迄は『大陸編』です。m(__)m


「アオ兄、スミレが浄化したんだよね?」


「したんだけどね」あはは……


「相変わらず、おっちょこちょいだなぁ」


「うん、そうだね。

神になっても、あんまり変わっていないよ」


【アオ! 悪口 言ってるでしょ?

なんで置いてっちゃうのよぉ!】


(声は掛けたよ。返事が無かったんじゃないか)


【一旦、魔界から出てよぉ。

中に入らないと魔界に行けないんだからぁ】


(解ったよ)天界へ曲空。




【ルリ♪ 今日も よろしくねっ♪】


(スミレ様、よろしくお願い致します)


 伯母で、王妃だったんだよなぁ……

 しかも、民を護って散った『慈愛の王妃』


 誰に聞いても、

 立派で、美しくて、清らかな王妃と、

 同じ色の鱗で、同じ名前の可愛い少女。


 サクラと一緒に、卵から出てきた事もあって

 同一人物だとは、全く思えなかった……



――――――



「アオにいちゃま♪

きょうは なんの おはなし?」

キラキラと輝く六つの瞳が、俺を見上げる。


ルリを失った悲しみが、あまりにも大きく、公務からも外してもらい、息をしているだけの屍のような状態で、ただ漠然と時を過ごしていた頃――


三人の末っ子が孵化した。


親にも、他の兄弟にも見えない二人には、鳥の翼のような小さな翼が有り、いつも可愛くパタパタしていた。


「ヒスイ、絵本を持って来たんだね。

そのお話にしようか」


「うんっ♪」絵本を差し出す。

「ずる~い! あしたゎ わたしねっ」

「ぼくは いつなのぉ?」


三人の頭を撫で、ゆっくり絵本を読み聞かせた。


弟妹の存在が、少しずつ悲しみを癒し、のどかで穏やかな時間が流れた。



――――――



 普通に考えたら、誰にも見えない弟妹なんて

 あり得ないんだけど……

 あの頃の俺は、

 すっかり抜殻だったからなぁ……


 翼が有るんだから神竜なんだ、って事すら

 考えられなかったんだから、

 抜殻にも程があるよなぁ……



――――――



「サクラは大学に行っちゃうの?」


「うん。僕、竜宝の学者になるんだ」


「ヒスイも一緒に行くの?」


「ついて行くよ。スミレは?」


「私……アオ兄様と一緒にいたいから……

アオ兄様は、サクラと一緒に行かないの?」


「俺は、もう医者になったからね。

スミレも大学で勉強したらいいよ」


「アオ兄様と離れたくない!」しがみつく。


「泣かないで、スミレ。

なら、ここに居ればいいよ」髪を撫でる。


「でも……」

サクラとヒスイを見、アオを見上げた。


「なら、俺も、そろそろ動こうかな」にこっ


そうしてサクラは、快進撃の第一歩を、俺は、復帰への第一歩を踏み出した。



――――――



 成り行きのようだったけど……

 あれも守護神としての行動だったのかな?

 スミレに、その自覚なんて、

 全く無かったんだろうけど……



――――――



「これは……」


アオ、クロ、アカの成人の儀の日。

サクラに付いて城に来たスミレが、肖像画の前で立ち止まった。


「ねぇ、ヒスイ……この方、知ってる?」


「知らない……けど、知ってる気もする……

スミレと同じ名前だね。

それに……そっくりだよ」


「王妃様……なのね」


「アオ兄様も、サクラも行ってしまったよ。

行こうよ」


「うん……」




 大広間で儀式が始まった。

王達が入場する。


「コハク……」


「うん、コハク王様だよ。

どぉしたの? スミレ――あっ」

(ダメだよ! そっち行っちゃ!)


(スミレ、待って!)

飛んで行ったスミレを追って、ヒスイも飛んだ。


スミレはアオの背後で、コハクをじっと見上げている。


ヒスイは、それ以上 行かないように、スミレの腕を掴んでいた。



 そのまま宣詞が始まり、王笏から光が降り注ぐと――


スミレとヒスイも光に包まれ、翼が輝き、ひと回り大きくなった。


「あ……なた……」スミレの頬に涙が伝う。


生まれ直す迄の記憶が解放され、ヒスイとスミレは立ち尽くしていた。


(スミレ、ヒスイ、どうしたんだい?

大丈夫なの?)


アオの声にハッと気付き、二人は顔を見合せ、サクラの後ろに戻った。



♯♯♯



 それから数日――


スミレとヒスイは、姿を見せなかったので、サクラから儀式の間の様子を聞いた。


「どこに行ったんだろ……」しゅん……


「戻って来るよ。

その話だと、何か変化したんだ。

だから神界に行っている。それだけだよ」


「神界?」


「神竜が住んでいる所だよ。

二人は神竜なんだからね」


「一緒に生まれたのに? 僕は?」


「サクラは俺と同じ、天竜だよ」


「なんで一緒に生まれたの?」


【それは……そうしないといけなかったから】


「ヒスイ♪ 戻ってくれたんだねっ♪

また一緒にいてくれるんだよねっ♪」


【うん。ずっと一緒だよ。

時々神界に行かなきゃならないけど、戻って来るよ】


「よかったぁ……あ、スミレは?」


【そこにいるよ】


アオとサクラが振り返ると、スミレは黙って立っていた。


「スミレ、おかえり。どうしたんだい?」


【記憶が……

竜として生きていた時の記憶が戻ったの。

それで……】


 それだけではないよね……

 二人共、身体を切り離したんだね。


「そうでしたか……スミレ様。

コハク王様にはお会いになられましたか?」


【やっぱり……そうなっちゃうのね……】


「俺も、伯母上にはお会いした事はありませんが……どうすれば……?」


【今までのままがいいけれど……】


「でも王妃様に向かっては――」


【今の私は王妃じゃないし!

私にとっては、甥じゃなくて兄様なの!

遠く感じるから……だから『様』なんて付けないでよ!】


「解ったよ……スミレ。

でも、もう『兄様』だけは、やめようね。

ちゃんと神竜になったんだからね」


【アオ……】恥ずかしくなって俯く。

【まだムリよ……】


「そのうち慣れるよ」にっこり


「僕も『スミレ』って呼んでいいの?」


【もちろんよ】


「ヒスイも?」


【もちろんだよ】



――――――



 スミレは、すぐに慣れて呼びまくり、

 ひとりで居たい俺に付きまとっていたが、

 人界に行くと言ったら、置いて行かれると

 思ったらしく、拗ねて神界に籠ってしまった。


 その勘違いの結果、俺が封印された事を知り、

 竜として生きた者が受ける試練の過酷さを

 知った上で、『神に成る!』と決めた辺りは

 流石、慈愛の王妃なのかもしれない。




【アオ、見つけたわ! これでしょ?

でも……これは……】


(そうなんだよ。闇を感じないんだ)


【そうね……むしろ、光?】


(出してみては、どうだ?)(そうだね)


【サクラも手伝って!

同時に、引くわよ!】(せ~のっ!)


四人で光に包んで引き出した塊は、衰弱しきって色を失った神竜であった。


「だれだろ?」「とにかく回復だ!」

四人、全力で回復の光を当てる。


(何か……呪なのか?

何かで心を雁字搦めにされている)


【巧妙な呪だわ……私が やってみる!】


(気をつけて。強い悪意を感じる)


【解ったわ】術を唱え始めた。


(気付かれた!)

(心の内に入ろうとしている!)


解呪の術はスミレに任せ、三人は光を浄化に変え、闇障と神眼を極限まで高め、掌握で呪の鎖を掴んだ。


(掴んだ!)(浄化、強めて!)(せーのっ!)

浄化の強い光が炸裂する!


浄化の光に依って千切れた鎖を各々が引き出し、空かさず回復に戻る。


【光輝神雷!】輝きが降り、鎖に刺さった!


呪の鎖が弾けた。


呪の闇が消え去った時、アオは別の闇の気配を感じ、見回し、一点で止まった。


それは、またしても、神竜を引き出した鏡からだった。

(スミレ! 回復、代わって!

まだ何かいる!)


【私が探すわよっ!】


(いや、スミレの方が回復が強いから!)


【あっ、はい! 兄様っ!】回復! 【あ……】


アオとルリは背を向け、潜んでいる何かを探していたし、サクラも必死だった。


 誰も聞いてなかったのかしら……

 それなら いいんだけど……

 つい言っちゃったぁ~


(ルリ、闇だ)(掴んでみる。構えろ)(頼む)


(見えたぞ!)掴み引きずり出した。

(浄癒閃輝!)光が闇を掻き消した。


『何か』の姿が露になった。


(竜だな……まだ生きている!)


神竜と並べて横たえ、全力で回復の光を当てた。





凜「アオの回想って、いつの頃なの?」


桜「絵本のは、森に入ってすぐだよ。

  スミレとヒスイは、ちゃんと子供だった。

  だから、二人が寝てる時に

  アオ兄から勉強を習って、鍛練して。

  あとは二人に合わせてたんだ」


凜「アオは、ちゃんと起きてたの?」


桜「あの頃のアオ兄って、なんだか中に

  二人いるみたいな感じだったんだ。

  起きてるのか眠ってるのか……

  なんか……『無』みたいなアオ兄と、

  ちゃんとしてるアオ兄が居たんだよ」


凜「今のアオとルリが一緒に入ってる

  みたいな感じ?」


桜「う~~~ん……ちょい違うけど説明ムリ~

  回想の話の方ねっ。

  大学は27歳(2人歳)で入ったよ。

  アオ兄達の成人の儀は、

  アカ兄の150歳(15人歳)の誕生日だったよ。

  だからアオ兄は155歳(15人歳)で、

  俺は60歳(6人歳)


凜「アオは、サクラが大学生の頃、

  どうしてたの?」


桜「何か調べてた。

  アオ兄は大婆様トコに通ってたし、

  長老の山や大学の書庫にも行ってたって。

  もちろん誰にも会わないよぉにね」


凜「一緒に?」


桜「ううん。俺、アンズだったんだよ。

  一緒に行動できると思う?

  ウロチョロするスミレに口止めするのが

  イッチバン大変だったよ」


凜「そういえば、人界の任の直前に

  スミレと喧嘩したとか言ってなかった?」


桜「うん……大人げない理由でね……」


凜「兄妹喧嘩なんて、だいたい大人げない

  んじゃない?」


桜「だとしても……スミレはともかく

  俺は……アレは無かったと反省してるよ」


凜「で、どんな理由?」


桜「……アオ兄の取り合い……」


凜「アオが、どっちを好き、とか?

  どっちが、よりアオを好き、とか?」


桜「……うん……」真っ赤。


凜「か~わ~い~い~♪」


桜「もおっ! だから言いたくなかったぁ」


凜「で、言い負かしちゃったの?」


桜「『スミレなんてコハク王様の次だろ!

  俺はアオ兄が一番なんだからね!』

  って言っちゃったんだ……」


凜「そっか~

  その後で、あんな事になったから……」


桜「うん……」


凜「でも、今は、みんな幸せだし、

  もう時効でしょ。ねっ」


桜「なんか……凜に慰められた……」ガーン……


凜「なんで落ち込むのっ!?」


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