闇拠点7-複製
前回まで:アオは、魔人達から、
とても良い御祝いを貰いました。
「魁蛇さん、箜蛇さん、休憩しませんか~?」
「サクラ様っ!? お茶など私がっ!」揃う。
「いいからいいから~♪
クロ兄がご迷惑おかけしております」ぺこり。
――お茶の香りが漂う。
「この香り……
茶葉までお持ちくださったのですか?」
「厨房から拝借~♪」
「是非とも当屋敷の者に御指南頂きたいのですが」
「できますれば、私共の方も――」
「いいよ~♪ 毎日 来るから♪」にこっ♪
「教えに来てくれるのか?」
「もちろん治療だよ~
クロ兄ん家にも寄るね~」
「そっちか……」ため息……
「ね、クロ兄 借りていい?」
「どうぞ」ため息。もちろん安堵の。
フジの部屋に入ると、フジは机に向かっており、虹藍と姫が、楽しそうに話していた。
「あれ? 姫、どうやって来たんだ」
「そこな箱に入って参ったのじゃ♪」
「なんだこりゃ?」
「人を天界や魔界に運べるんだよ。
クロ兄、明後日、何の日か覚えてる?」
「……なんだっけ?」
「やっぱりね~、婚約の儀だよ。
昨日 言ったトコなのに……
姫、ホントにクロ兄でいいの?」
「まことにのぅ」ため息。
「いやっ、それは覚えてたからっ!
明後日が何日かってのを忘れてたんだよっ」
「それでね、姫。
姫も天竜王族に入らない?
俺もランも、両方に属するんだ」「無視すんなっ」
「ふむ。
懸け橋としては、その方が、しかと動けよぅな。
お頼み申しても、よいのじゃろぅか?」「おいっ」
「もちろんクロ兄も天竜王族のままだよ。
じゃ、これからランの手続きしに行くから、一緒に行こっ♪」
二人の手を取って曲空。
「サクラ!?」
「クロ兄様、追いかけてはいかがです?」
「あ、おう」曲空。
――城のルリの部屋。
「クロ兄、来ちゃったの?
許可もらってないから、ここで待っててね」
姫と虹藍とアンズは出て行った。
城だよな……ここ。
この部屋は、誰の部屋だ?
アオが現れた。「クロ!?」ぱちくり。
「ああ、そうか。姫と来たのか」奥に入る。
「まぁ、そんなところだ。
そっか、アオとサクラの拠点なんだな?」
「正確には、ルリとアンズの部屋だよ」
「スゲーな。もうこんな部屋 貰ったのかよ」
「ああ。エレドラグーナ家の御令嬢だからな」
アオが話しながら、着替えたルリが出て来た。
「そういう設定なのか?」
「いや、正式な手続きをする為に来たんだ」
続いてアオが出て来た。
「おわっ!? なんでっ!?」
「出来たな」「思っていたより扱いやすいよ」
「なんで同時に居るんだよっ!?」
「技だよ。じゃあ行こうか」「うむ」
二人のアオ(?)ルリとアオ(?)は出て行った。
ギンの執務室には、王、王妃、王太子とアンズ達が居た。
「失礼致します」ルリが入る。
「揃ったな。では――」
「失礼致します」アオも入る。
「え……」全員 言葉を失う。
「お待たせ致しまして申し訳ございません」
「父上、昼間は失礼致しました」揃って礼。
「どっちがアオなんだ?♪」楽しそうなハク。
「どちらもです」「はい、どちらも」
「それで儀式をするのだな?」
「はい、キン兄さん」
「では、各手続きを――」
「お前ら、よく落ち着いてられるな」ギン睨む。
「まあ、掛けたらどうだ?」にこやかなコハク。
アオは王妃の隣に、ルリは女性の並びに着いた。
「確かに、アオよねぇ」しげしげ。
「はい、母上からのお叱りを踏まえ、この技を頂き、よくよく考えまして、この方法に至りました。
これならルリと、きちんと婚儀を行う事が叶います」にっこり
「まあ♪ それは良かったわね、ルリさん」
「はい。御助言、ありがとうございました」
「もうよろしいですか? 父上」キン苦笑。
「技なら技だと言え」ふんっ「進めろ」
「あなた、喜ばしい席ですのに、どうして、そのようなお顔ですの?」
「王子が皆、結婚するので寂しいのでしょう。
お気になさらず進めてください」コハクも苦笑。
アンズが虹藍に、ルリが姫に説明しながらの署名が終わり、アオが日程を説明した。
王妃が、お茶を用意しているからと女性達を連れて出、男ばかりになった所で――
「ギン、そろそろ機嫌を直さないか?」
「直すも何も、俺は別に――」
扉を叩く軽い音がした。
「署名、終わりましたよ」
モモが書面の束を持って来た。
アオがサッと立ち、受け取る。
「ありがとうございます、モモお婆様」
「母上が直々にお持ちくださったのですか?」
「クロが連れて来てくれたのよ。
ギン、少し、よろしいかしら?」
「あ……はい」連れて行かれた。
「どうしたんでしょう?」「さあなぁ」
「アオ、今日はスミレに会わせてくれて、ありがとう」
「いえ、俺は何も……」
「実はな、サクラの宣詞をした時にも来てくれていたんだが、あの時は幽霊だと思っていたんだ」
「アオ、今スミレ様は?」
「モモお婆様と一緒ですね」
「何 話してるんだろなぁ」
「そこまでは分かりませんが……
こちらに向かっていらしてます」
ギンが戻って来た。モモとスミレも。
「アオ、昼間の暴言……すまなかった」
「いえ、そんな……
俺の方こそ、すみませんでした」
(スミレ、今、父上とモモお婆様には姿を見せているの?)
【いいえ。山ではご挨拶したけれど、あとは消しているわ】
(昼間の事を、お婆様に?)
【私はアオの守護神ですもの♪】うふふ♪
【それにね、本っ当にギンの方がオネショ王子だったんですもの♪】
(スミレにとって、父上って……?)
【ん~、やっぱり弟ねっ。
一緒に育って、私が真ん中。
だから、コハク兄様とギンだったの】
「アオ、スミレがいるのか?」
「あ、はい」
【コハクを連れて行っていいかしら?】
「お部屋でお待ちしますと仰ってます」
「そうか♪」いそいそと出て行った。
ギンが ため息をついた。
「なぁ、アオ。
スミレ様は俺の事、何か言ってたか?」
「いえ、何も」
「今、何を話してたんだ?」
「スミレ様は昨日まで、同腹のヒスイ様を神になさるお手伝いをなさっておられました。
ですので、これからの戦いには、お力添えくださると仰っていたのです」
「それだけなのか?」
「はい。今は、それが最も大きな事ですので」
「本当か?」「ギン! いい加減になさい!」
モモはギンにツカツカと寄り、
「アオは大変な戦をしていて忙しいのよ!
引き留めてネチネチと、情けない!
そんなだから、スミレはコハクを選んだのよ」
あ……止め刺してしまいましたね。
ギンは、その後暫く落ち込んでいたが、謁見の為に呼ばれ、執務室を出た。
キン、ハク、アオは、そのまま話していたが、キンとハクがコハクの代理として会議に呼ばれて部屋を出たので、アオも城を出ようと、机上を片付け、立ち上がった。
「アオ様、少々よろしいでしょうか?」
茶を片付けていたマオが呼び止めた。
「構わないけど、そんな深刻そうな顔をして、どうしたんだい?」
「はい。ギン王陛下の事で、お話が御座います」
マオは、ギンだけに話した事をアオにも話した。
「今、俺に話したって事は、今日の父上から闇の反応を感じるんだね?」
「はい。その通りで御座います。
何処で接触されたのかは存じませんが、御様子から、そう判断致しました」
「魔物に遭遇してしまったのか、幹部や影にされていた者の中に闇が残っていたのか――
あっ! 魔竜王国で魔物と戦ったと――そうか!
では、光で浄化すればいいんだね?」
「それがよろしいかと存じます。
時の経過と共に薄れる筈では御座いますが、何事か起こる前に、お願い致します」
「ありがとう、マオ。
これからは俺も気をつけるよ」
「アオ様を苦しめた私なんぞに、そのようなお優しい御言葉を――」
「あれは、マオが悪いんじゃないからね。
解っているから、そんな風に言わないで。
これからも父上をお願いします」
「そのような――あ……これだけは、お伝えしなければ!
ギン王陛下には口止めされておりますが……
陛下は、もしも闇に操られたならば、御自身の御命よりも、アオ様を御護りするよう、強く仰ったので御座います」
アオはギンの執務机を見詰め、ひとつ頷くと、少し潤んだ瞳をマオに向けた。
「大丈夫だよ。何があっても親子だからね」
決意を新たにし、微笑んだ。
そして扉に向かい、マオには背を向けたまま、
「伝えてくれて、ありがとう」
小さく言って扉を開け、
「俺は父上に殺されるようなヘマはしないし、父上を護り抜けるからね。
父上よりずっと強いから」
照れ隠しの軽口を言って、閉めた。
瑠「アオ、回復が遅くなっている。
休むべきだ」
青「でも、急ぐべきでもあるんだよ。
俺の勘では、だけどね」
瑠「アオの勘は、ただの勘ではないが……
それでも、今は効率が悪いぞ」
青「最低限にしておくよ。
ルリ、ありがとう」
瑠「礼など……当然の心配をしているだけだ」
青「当然……夫婦だから?」にこにこ♪
瑠「……まぁな……」
青「うん♪ 元気になったよ♪」
瑠「気のせいだっ! ちゃんと休め!」
青「うん♪ 後でね♪」




