闇拠点6-神聖光輝
長老の山を囲む六祠(竜骨、深蒼、薫風、星輝、紅蓮、轟雷)は、強固な結界を成しています。
アオとサクラは、その外側を十二祠で囲み、結界を強化しようとしています。
「アオ、ルリさん。少し、いいかしら?」
サクラと虹藍を残し、先に大婆様の部屋から出ると、モモに呼び止められた。
「はい、モモお婆様」にこにこ♪
「お城から連絡があって、サクラの成人の儀と同日に、三組の婚約の儀と王族入りも、との事なの。
アオには急だけど……」
「明後日ですか……確かに急ですね」苦笑。
「王太子ではないから、族内儀式になるからと――それに、クロとサクラは、相手方が主ですからね。
それで、急にはなるけれど、皆が集まれるうちに、してしまうことに決めたそうよ。
それでね、ルリさん。
私の実家の養女に、いかがかしら?」
「俺が咄嗟に言ってしまった事を本当に?」
「そうね」うふふ♪
「アンズも、ですか?」
「もちろんよ♪」
「ルリに説明しますので、お待ちください」
(モモお婆様の実家は、エレドラグーナ家。
王族なんだ。
婚儀には、近い親族が、必ず出席しなければならないんだよ。
だから形だけ養女に、と仰ってくださっているんだ。
まぁ、そもそもは何家なのか聞かれて、俺が咄嗟に言ってしまったんだけどね。
だからアンズは、ルリの妹になるんだよ)
(形だけの養女なのか……)
(もちろん、家族が欲しいのなら、そう接してくださるよ。
お婆様のように穏やかな皆様だから、心配は要らないよ)
(いや、やはり死人だからな。
形だけの方が、気が楽だ。
必要ならば、そうして欲しい)
(うん、そうさせてもらうね)
「モモお婆様、よろしくお願い致します」
「こちらの手続きはしておくわね。
書面だけですからね。アオ、署名お願いね」
「ルリの名は、どうなるのですか?」
「姓はカムルだったわね……
そのままにしましょう」にこっ
「ルリ、こうなるからね」書いて紙を見せた。
(ルリ=カムル=エレドラグーナか……長いな)
(結婚すると、更に長くなるよ)書く。
(ルリ=カム=エレ=シャルディドラグーナ……まるで術だな)
(まぁ、書類は俺が書くからね。
ルリは気にしないでね)
(しかし、全て任せきり、というのも……)
(やりたいと思うものは、やってね。
でも……おしとやかなお姫様なんて出来るの?)
(確かに苦手だが、頼りきりも嫌だからな。
きちんと教えて欲しい)
(うん。
なら、出来る限り融合しておくから、勉強して)
(それは気楽でいいな)
(ルリなら、そう言うと思った♪)
「アオ、これから人界に行くの?」
「はい、そのつもりです」
モモが大きな包みを持って来たので、そう答えた。
「お友達の皆さんにもね。
こちらはフジとアカにお願いできるかしら?」
「はい、ありがとうございます」にこにこ♪
本当に穏やかな表情になったわね。
ずっと隠していた影が消えて良かったわ。
「ルリさん、アオの事、お願いね?
生きていてくださって、本当に良かった……」
「あっ、いえ、そんなっ、私なんて……
あの……何も出来ませんが、どうか宜しくお願い致します!」
「すでに、アオの笑顔を戻してくださったわ。
ルリさんでなければ、できない事よ。
ありがとう」
アオが真っ赤になってルリに替わった。
ルリも頬を染め俯いたが、顔を上げ――
「何が成せるのかは分かりませんが、私が、まだ存在している意味は、必ず有る筈だと思っております。
アオ様と共に、精一杯、生きさせて頂きます」
そう言って頭を下げた。
モモはルリを優しく抱きしめた。
「それと、これね。
ウェイ教授とリさん達から、お祝いなの。
術技と魔宝。
短時間しかできないそうだけれど、慣れれば時間は延ばせるそうよ」にこっ
「これは……これなら!」「いけるな!」
「ありがとうございます!」二人揃った。
二人の喜び溢れる声に、提案したモモも、幸せに包まれた。
サクラと虹藍が来たので、兄弟への団子配りを二人に任せ、アオはウェイミンの家に行った。
♯♯♯
フジの屋敷に行ったサクラと虹藍が見たのは――
「魁蛇殿、初等上級一式をお願いします」
「畏まりました、フジ様」
「ちょっ! 流石にソレは――」
「そこからしなければ進みません!」
クロがフジに数学を習っていた。
「あ……サクラ」「虹藍様!?」
「これ、モモお婆様から」
「団子だ♪」「解けるまで駄目ですっ」
「それと~、ランが天竜王族入りしたからね♪」
「よろしくお願いします。
クロお兄様♪ フジお兄様♪」
「え!? 嫁入り!?」
「それはありませんよ。両方ですよね?」
「うん。
俺達、両王族に籍を置いて、二国の懸け橋になるんだ。
だから義妹じゃなくて、ちゃんと妹として、よろしくお願いします」ぺこり。
「ランとお呼びください、お兄様」お辞儀。
魁蛇が箱を抱えて戻って来た。
「こちらで御座います、フジ様」
「魁蛇さん、クロ兄お願いできますか?
フジ兄を休ませないと障るから」
「はい。
こちらから、お願い申し上げたく存じておりました所で御座います」恭しく礼。
「クロ様、箜蛇と共に、お待ち申し上げておりますので、いずれのお屋敷でも、何時でもお越しくださいませ」
「クロ様、時には御自身のお屋敷にもお戻りくださいませ」
魁蛇に箜蛇が並んだ。
「ゲッ……来てたのかよぉ」
「さ、クロ様、再開しましょう」二人揃う。
「う……」(なぁ……サクラ、教えてくれよぉ)
(俺、フジ兄に用があるんだよ。頑張ってね~)
「フジ兄、行こっ♪」
三人はフジの部屋に移動し、サクラは治療を始めた。
「サクラ、その箱は?」
「人を天界にも、魔界にも運べる箱なんだ。
アカ兄から借りて来た。
姫を連れて来ようと思ってね」
「クロ兄様に会わせる為ですか?」
「うん。頑張ってるご褒美かなっ♪
それとね、明後日ランの天竜王族入りもするから、姫もどぉかな~と思って」
「サクラは、いろいろ考えているのですね。
クロ兄様も少しは……」ため息……
「だよね~
だから今、頑張ってもらってるんだけどね」
きゃははっ♪
「そうですね。
クロ兄様は、なぜか解かなくても全問正解しますから、勉強する必要はありませんよね」
「あれね~、天性の無駄遣いなんだよ」
「それは、どういう……?」
「クロ兄の天性は、供与と神眼なんだけど、俺が神眼 見つけた時には、既に隙間が開いてたんだ。無自覚にね」
「それで、卒業は出来たのですね……
クロ兄様らしいですね」ふふふ♪
「クロ兄、気づいてないし、今ヤル気になってるから、迷惑かけるけど、このままにしといていい?」
「いいですよ」にこっ
「でね、フジ兄にはコレなんだ」
箱から器を取り出した。
「このヒトは、唔器呟って竜宝なんだ。
竜宝の魂を運ぶ器なんだよ。
神聖光輝さん、よろしくねっ♪」
【畏まりまして御座います、我等が王】
光の球が、器から出で、フジの中に入り、再び器に戻った。
「サクラ……これは……
聖輝煌水より、ずっと強いのですね」
「うん♪ 神様の光そっくりな聖水なんだ♪
これなら、魔王の因子を消す事ができると思うんだ」
「神様の水なのですね……」
「作れる?」
「もちろんですよ」掌に瓶が現れる。
「どう? 神聖光輝さん」
【成功で御座います】
「ありがと♪ すぐ戻すからね」曲空。
「本当に、サクラって不思議で、凄い人……」
「そうですね」ふふっ♪
戻った。「これから、毎日 連れて来るねっ♪」
「そういえば、署名の日に、たくさんあると言っていましたね」
「昔々に絶えてしまったもの。
神様しか使ってなかったもの。
記録されていなかったもの……
いろいろ たっくさん いるんだよ♪
そろそろ体力的にも大丈夫かなって思ったから、試しに連れて来てみたんだ」
「これからの武器なのですね。
ありがとうございます、サクラ」
「これから必要そうなのから来てもらうけど、こんなの欲しいってのがあったら言ってね♪」
♯♯♯
アオはウェイミンとリジュン、リ姉弟の家を訪ね、礼を言った後、屋敷に帰っていた。
(その箱は?)
(ルリの衣装だよ。頼んでおいていたんだ)
(またヒラヒラか?)
(また、って?)
(城の部屋に有っただろ?)
(ああ。有ったね。
もう少し動き易いものだよ)開けて見せる。
(もっと何とかならないのか?)ため息。
(俺なら十分動けるけど?)自信満々。
(動けないとは言っていない!)
(なら、いいよね♪)集縮に移す。
(仕方ないな……
それはそうと、『術技』とは何だ?)
(うん。魔人が使う魔術の中には、文言が短くて、属性依存なものが有るんだよ。
唱える『術』と、属性依存な『技』の両方を兼ね備えているから『術技』なんだ。
でも、ウェイミンさんが言っていたように、技だと思えばいいからね)
(確かに、技名を思い浮かべる程度の文言だったな)
(ルリの闇障が不可欠だから、やはり技だよね)
(ふむ。アオの役に立てるのは嬉しい……)
(ルリ~♪ 可愛い~♪)ぎゅっ♪
(その崩れた所が見られぬよう、気をつけるのだな)ぷいっ
(大丈夫だよ♪ 隠し徹すから♪)よしよし♪
いや、漏れ出ていると思うぞ。
それに……可愛いのはアオの方だ。
桜「クロ兄、フジ兄トコいたんだね~」
黒「あの後すぐにアオが出してくれたんだけど、
フジに引っ張られたんだよぉ」
桜「ふぅん。
でも、いっぱい勉強できてよかったね♪」
黒「うん……だなぁ……」
桜「元気ないねぇ」
黒「頭に入んねぇんだよな~」
桜「ほえ?」




